「命令無視による
DA 東京支部司令官執務室内。
椅子に腰かけ語る楠木は制服姿で立ち並ぶ二人のリコリスの内一人に視線を向ける。
紺色の制服姿のセカンドリコリス、井ノ上たきなは苦々し気に床を見詰めたまま首を横に振った。
「・・・いいえ。ありません」
「そうか。・・・・・・フキ」
「はい」
「どう思う」
たきなの隣、姿勢良く直立するファーストリコリス、春川フキはその楠木の何気ない問に一歩踏み出て答える。
「エリカの人質、たきなの命令無視・・・これら全ては現場指揮官である私の未熟さが招いた事態です」
「責任は全て自分に在ると?」
「はい」
その言葉に驚くたきなは顔を上げ、前に立つフキの発言を否定しようとするも。
「ち、違います!エリカさんの負傷も銃の行方も全てわたっ「黙ってろ」ぐッ?!」
振り向きざま、フキの拳がたきなの左頬を強かに打ち抜く。
たたらを踏み、自身よりも低い身長のフキを見上げるたきなの目は混乱に満ちていた。
「・・・同僚に対する私的な暴力も追加だな」
「はい」
「いくらファーストリコリスとはいえ、これらの行動は看過出来るもではない」
「承知の上です」
「では、春川フキ。本日をもって DA 東京支部での任を解き ─── 」
自分を置いて淡々と進む状況にたきなはただ命令のまま、黙って立ち尽くすことしか出来なかった。
「殴る必要はなかった筈だが?」
「・・・一応、エリカの分ということで」
「そうか」
「はい」
たきなと共に執務室を出た後、間を空けて再び楠木の前へ、先程と変わらず直立姿勢のフキは淡々と答える。
「・・・もう一度確認するが、本当にこれでいいんだな」
「はい」
「これがたきなの為になると?」
「それはあいつ次第です」
その突き放した物言いに楠木は溜息を吐く。
目の前の少女にとって、たきなの今後よりも、自身が指揮する班内で起きてしまった不祥事に対する自責の念の方が強いということが楠木にも見て取れたからだ。
「・・・まあどの道、通信の件で誰かが責任を負う形にせねばならん」
「・・・」
「エリカの負傷が無ければお前も態々名乗り出ることもなかっただろう」
「はい」
いっそ清々しく、自分が責任を取るついでに、たきなには責任を取らせず悩ませてやろうという意図を隠しもしないフキに楠木はジト目を向ける。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「変わると思うか?」
「・・・少なくとも、あいつにとっては良い薬になる筈です」
その言葉を信じ、楠木はフキを送り出す。
「ミカには改めて私から報告しておこう」
「はい」
僅かに上がった少女の口角を見なかったことにして。