たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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その3

 

 

 

 

 

 

 

「・・・何で殺さない」

「何だっていいだろ。お前等は生きてる。ただそれだけだ」

 

 プロ寄りのアマ三人に対しファーストリコリスが二人。

 ファースト内にも各々ある程度の実力差はあるが、概ね DA 内での認識では過剰戦力とされるものだった。

 

「先行ってるね~」

「後二人居るぞ」

「分かってるって」

『逃走ルートは確保できてる。心配するな』

 

 奪ったライフルを分解しているフキはウォールナットになりきる全身着ぐるみ姿のミズキと緊張感の無い千束を不安げに見送る。

 流石に公道で銃撃戦をする訳にもいかず、近くのスーパー跡地で相手戦力の無効化を図ることになったリコリコ一行はそのままウォールナットの爆死偽装(・・・・)もすることに。

 一人だけ失敗した時の被害が大きいと渋るフキを「派手でいいじゃん映画みたいで!」とノリノリの千束が説得とも言えない何時も通りの強引さで押し切り今に至っていた。

 

「両手は使えんだから止血は自分達でやってくれ」

「クソっ」

 

 非殺傷弾で倒された後、綺麗に片脚を一発づつ打ち抜かれ廊下の壁に凭れ座り込む三人は言われるがまま千束が置いて行った止血帯と薬剤とダクトテープとを使い各々処置を施していく。

 

「できるだけ骨と動脈、腱、靭帯は傷めないように撃ったが神経は知らん。歩けなくもないが後遺症が出る可能性も・・・おい、何だその縛り方は?止めろ私がする、てコラっ!傷口を汚すなそのままにしとけ!そこも余計なことすんなじっとしてろっ!」

 

 銃器だけではなく爆発物類も細かくばらすついでに聞かれてもいないしする必要もない銃創についての説明も態々していたフキはぎこちない応急処置で済まそうとする三人を見るに見かねて口だけではなく手も出し始める。

 

「( ・・・おい、本当に何なんだこいつ等。自分で撃っといて自分で手当てしてんぞ? )」

「( 俺が知るかよ。もう何かめんどくせえし任せときゃいいだろ )」

「( あれだ、クラスの学級委員長とかにいる口うるさいタイプのヤツだな )」

 

 一人に三十秒と掛けず処置を終えたフキは「余計な手間掛けさせやがって」と三人を睨み舌打ちを飛ばす。

 その理不尽さに「全部自分でやっておいて・・・」と呆れるも、本来なら応急処置どころか死体袋に突っ込まれていてもおかしくなかった三人は黙って傷口を手で押さえる。

 

「後二人、同じ状態で連れてくるから余計な真似すんじゃねえぞ」

 

 千束の後を追うべく拳銃を構え歩き出したフキの事もなげな宣告に男達も頷き見送ることしか出来ない。

 

「お、おう」

「お手柔らかにな~」

「・・・・・・そっちは止めとけ」

「あ?」

 

 ただ一人だけ、二人に指示を出していたリーダー格の浅黒い肌の男が忠告を口にする。

 

「・・・いいのか?」

「俺は別にいいけど大丈夫か?」

「いいんだよ。というか大丈夫なら訊くな」

「おい。呑気に相談してないでさっさと話せ」

 

 不穏な気配を感じ取ったフキは銃口を向け「話し易い様にしてやろうか?」と脅すもその顔にはありありと不安が見て取れた。

 

「うちのハッカーがドローンで監視している。待ち伏せだ」

 

 

 

 

 

 

 

 男が話し終わるよりも早くフキは走り出す。同時に響いた銃声に全身の産毛が逆立ち、脳裏には過去の様々な嫌な光景が巡り出す。

 それはリコリコに来てから離れていた感覚だった。

 随分と遠く、忘れかけていたものだった。

 

「なっ、あのバカ?!」

 

 角を曲がりフキの目に飛び込んで来たのは右手に持った拳銃も構えずふらふらと無警戒に外へ出ようとする千束の後ろ姿。

 フキは拳銃も放り出し腕を伸ばす。片脚が外へ出てしまった状態の千束の鞄を何とか掴むと後ろへ倒れ込む形で思いっきり引き下げる。

 再び鳴り響く銃声。

 間一髪の所で千束をしゃがみ込ませ銃弾を見送らせることに成功したフキはそのまま、千束の拳銃を奪い外のプレハブ小屋へと狙いも気にせず撃ち続ける。鞄も盾にし、自ら動こうとしない千束を引き摺り何とか母屋の中に戻れた頃には既に全弾撃ち尽くし意味もなくただ引き金をガチャガチャ鳴らすだけとなっていた。

 

「くっそ。確りしろ千束。ウォールナットは・・・」

 

 千束の鞄を漁りマガジンを交換するフキは漸く落ち着いて外の光景に目を向けた。

 

「ウォー ─── 」

 

 その瞬間、フキの頭の中で何かが自動的に切り替わる。

 もしくは頭の片隅に置かれていた可能性の一つを拾い上げるという機械的な動作だったかもしれない。

 フキは冷静に一歩引いた感覚で、その景色をあるがまま単なる映像として受け入れた。

 ただぼんやり、嗚呼と。

 

( ─── なんか、久し振りだな )

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