「・・・定員オーバーじゃね?」
「えっ、救急車って定員人数とかあんの?」
「あー、確か七人だったか?」
「俺らに JK 二人に死体に運転手で九人か」
「僕も入れて十人だ」
「大丈夫かよ?途中でパクられたり・・・おい、ガキが紛れ込んでるぞ」
「そいつがウォールナットだ」
「ああ、こいつがウォール・・・はあっ?!」
「おい、勝手にバラすな」
「じゃあ俺等が殺したこいつは・・・」
「報酬に目が眩んで進んで替え玉になった私等の仲間だ」
「「「「「ええぇ・・・」」」」」
クリーナーが用意した救急車に自分達が殺した死体共々、縛られ詰め込まれた男達は窮屈な思いどころか肩身の狭い思いを味わっていた。
「( おい。もしかしてこのまま死体と一緒に俺等も処理されちまうんじゃないのか? )」
「( もしそうだったとしても文句は言えん。諦めろ )」
「( あ~あ。楽な仕事だった筈なのになあ )」
「( 飯の予約もしてたってのになあ )」
「( やっぱあれか?腑分けされて売り飛ばされるみたいな・・・ )」
「安心しろ。普通に行きつけの病院で手当てしてそのまま解散だ」
狭い車内に加え担架に横たわるミズキを挿み左右に三対四で分かれているため、ひそひそ話のていを成さない話し声にフキは遠慮なく交る。
「それとそっちの報酬、消えてる可能性が高いから確認しとけ」
「え?」
銘々にポカンと間の抜けた声を出す男達にフキは少し前にした通話について説明する。
「お前らから雇い主についての情報が欲しかったから話し易い様に殺されたと思わせた」
「・・・うっわマジだ。前金含めて消されてる」
一つのスマホを全員で覗き込み口座を確認する男達はがっくりと肩を落とす。
「タダ働きどころか撃たれ損じゃねえかチックショォ!!」
「飯の予約はキャンセルかあ」
「つうか殺された事になったんなら斡旋所の名簿からも・・・」
「普通に削除だな」
「今日から無職か~~」
「いい機会だから足洗って真っ当に働け」
「この脚でか?無茶言うぜ・・・」
隣に座るリーダー格の男がお道化た調子で撃たれた右脚を見せるもフキの反応は意外な程真剣なもので。
「マジで言ってんだよ。今回が異例なだけで普段の私なら全員殺ってたし、私ら以外のこの制服の連中もやっぱ全員殺ってただろうしな」
僅かに息を吞む男達に対し着ぐるみ姿のままのミズキを見詰めるフキは淡々と続ける。
「本来なら死人無しで終わる筈だったがコイツは、ミズキは運が無かったからこうなった」
合流してからも一言も発さず隣で俯いたままだった千束の身体が僅かに揺れるも、車で移動中だからだとフキは気にしない事にした。
「今回はアンタらの方にツキが回った。言ってしまえばただそれだけだが、私らがアンタらを殺さない様に動いてたのも事実で・・・・・・あー、つまりあれだ」
話が長くなり今一つ伝えたい事が上手く言えないフキは無造作に髪をかきあげ、どの口がと思いながらも呟く。
「折角拾った命だ、大事にしてくれ。でないと誰も殺さないなんていうアホなやり方に付き合ってたバカな姉貴も浮かばれねえ」
言いたいことは言い切ったと、静まり返る車内に気にもせずフキは座席に背を預け目を閉じる。
フロントシート側の窓から差し込む夕日が眩しかった。
「ま、実際良い機会なんじゃねえの?」
沈黙に耐え切れなかったのか、それとも何か感じ入る事でもあったのか、男達の一人が切り出す。
「今まで貯めた金使って、暫くのんびり暮らすのも悪くないか」
「だな。療養も兼ねてゆっくりしようぜ」
一人、また一人と男達は口にする。
「あんな近くで撃って全弾外しちまうヘタクソな俺らがこれから先、何事も無く続けていける訳もねえしな」
「あれは外したっつうか避けられたって感じだったろ」
「何だそりゃ。マックストリックかよ」
「避けた側じゃなくて外した側ならパピルスフィクションだろ?」
「止めろ縁起でもねえ。外した側死んでんじゃねえか」
男達の会話に耳を傾けるフキはこれで良いと自身を納得させる。雇われただけの連中を同じ雇われただけの自分達が糾弾など出来る訳もないのだと。
( ・・・こいつらの依頼主に関しても、運が無かっただけ )
フキはこれから DA やラジアータに狙われ続ける事となるであろう、元 DA という立場の人間に目を付けられた、録音した音声の人物を憐れみ幾らか留飲を下げる事に。
だが隣の幼馴染みはまだ心の整理がついていない様子で。
「・・・ねえ、フキ」
「あ?」
「・・・ごめん」
「・・・・・・いちいち謝んな」
漸く口を開いたかと思えばズルズルと自分に寄りかかる千束に対し、何時も通り舌打ちを飛ばすフキはこちらへと押し付ける頭に腕を回す。
「おいオッサン共」
「そこそこの歳なのは認めるがオッサンって程じゃ「少し騒がしくなる」・・・あーー、オッサン歳だからよ。最近耳が遠くてなー」
「・・・俺も今日は撃ち過ぎてよく聞こえねーな」
「俺は暫く寝てるぜ」
「俺はもう寝てる」
「救急車のサイレンもうるせえし、何も聞こえないよなあ運転手さんよ」
「君達ノリノリだな。まあ僕もヘッドホンしてるし、何も聞こえないよ」
クルミの言葉を最後にサイレンが鳴り響く。
急ぐ必要もない救急車は道を譲れらながら病院を目指す。
夕日に紛れ赤いランプの光が時折入り込む車内に身を屈めすすり泣く少女の懺悔が混じるも、それは少女の頭を撫でつける幼馴染と傍で横たわる着ぐるみにしか届くことはなかった。