たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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その2

 

 

 

 

 

 

「フキっ」

 

 寮内の廊下を行くフキは呼び声に足を止め振り返る。

 

「ヒバナか。どうした」

「いや、どうしたはこっちの台詞」

 

 後ろから駆け寄る篝ヒバナの視線に気が付いたフキはこれかと、隣のキャスターに乗せた大きめのトランクケースを見やる。

 

「それもだけど、たきなのこと」

「そういやアイツ、部屋に居なかったな。今どこにいんだ」

「医療棟。エリカのとこ」

 

 目を丸くするフキに追い付いたヒバナは自分の左頬を指す。

 

「あれ、フキでしょ」

 

 ニヤニヤとフキに寄るヒバナは今回の作戦にも参加しており、たきなのやらかした件についても相当に憤っていた。

 そんな、同僚であり友人でもあるヒバナがやはり仲の良いパートナーのエリカをたきなと二人きりにしてきたのだ。

 

「ありがと。フキがやってなきゃあたしがたきなの両頬ボコボコにしてた」

「・・・別にしといてもいいぞ。私も流れでやっただけだし」

「いや、顔面にパンチする流れってどんな流れよ」

 

 呆れ顔のヒバナは何事もなかったように再び歩き始めたフキの隣に続く。

 

「やっぱり、出てく感じ?」

「ああ」

「たきなとも解消?」

「だな」

「そう・・・」

「・・・」

 

 寮の出入り口までの短い距離を二人は並んで歩く。

 年代物の割には静かに動くキャスターの音が二人の耳にはやけについた。

 

「正直、ちょっと悔しい」

「・・・ああ」

「あたしも助けに入りたかった。フキだってそうでしょ?」

「だな」

「なのに命令無視して何も言わず勝手に一人で突っ走って、それでエリカに大怪我させて、フキが全部おっ被って・・・・・・なのにエリカはたきなの頬っぺたの方を気にしてる」

「・・・」

「なんだかなあって思っちゃうよ」

 

 立ち止まり窓の外を眺めるヒバナにフキはその背中を軽く叩く。

 気にするなとは言わずキャスターを引きながらフキは語る。

 

「暫くはたきながお前のパートナーだそうだ」

「それ本当?」

「エリカが負傷した時点で私かたきなかのどっちかが処分を受けるのは確定。二人抜ければ班も解消」

「そのまま余り者同士で臨時のパートナー、か」

 

 やれやれといった雰囲気で溜息を吐くヒバナは再びフキの後を追う。

 

東京支部(ここ)にはまだファーストも何人か居るが人員不足は否めねえ」

「他所から引っ張って来る感じかあ」

「そうなるな。ただファーストの抜けた穴を直ぐ別のファーストが埋めるなんてことはねえ」

「セカンドもでしょ」

「となると二人も来ねえだろうから、お前は気長にエリカの復帰を待ってな」

「そうする」

 

 検問所を何事も無く通り抜け、外に出た二人はフキを待つワゴン車の傍で向き合う。

 

「たきなとは上手くやれそうか?」

「この前までなら無理って諦めてたけど・・・今のたきなとなら何とかやれそう」

「また一人で突っ走るようなら言えよ。戻ってきた時にでも訓練でのしとく」

「直ぐ戻って来られるの?」

「ライセンスの更新に」

「直ぐじゃん」

 

 互いにニヤリと笑う二人はそれ以上語り合うこともなく、じゃあな、じゃあねと別れる。

 次の任務でへまをすれば今生の別れ。

 それを理解しつつ、互いにあっさりとした見送りになってしまうのは二人の関係性よりもリコリスとして在り方がそうさせるのか。

 寮の中、何時の間にか見なくなる顔に増える見知らぬ顔。

 そんな中、何事も無く過ぎる少女たちの日々。

 それでも確かに今回の別れは DA の少女達にとって、少なくともフキ達にとっては良いものなりそうな、そんな予感も。




千束には負けると思いますが、ヒバナとエリカも付き合いがそこそこ長いイメージで書いてます。
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