たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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アニメの流れだけではなく思いついた話も取り敢えず書いてみてます。
今更ですがフキさんに色々と夢見がちです。




The child is mother of the woman 2 その1

 

 

 

 

 

 

「 ─── はい。 ─── はい。 ─── いいえ、違います。 ─── そうです、はい。 ─── ではその様に」

「司令部は?」

 

 物が散乱する広いリビングの中、通信を終えたフキは拘束され口も塞がれた顔色の悪い標的に銃口を向けたままのたきなへ答える。

 

「こちらで保護。ま、何時も通りだな」

「・・・私達で、ですか?」

「他に誰がいんだよ。エリカ、荷物はまとめたか」

「ごめん。もう少しかかりそう」

「あの・・・」

「早くしろよ。お前はそっちに集中しとけ」

「・・・了解」

 

 何か言いたげなたきなは相手にせず、フキは衣類棚や洗濯籠をひっくり返すエリカを急かす。

 

「どれも同じだろうが」

「でも~~」

 

 あれでもないこれでもないと、選り好みをするエリカにフキは壁に掛けてあった大きめの手提げ袋へと落ちていたものを適当に掴んでは入れていく。

 

「ヒバナ、そっちもか」

「うん。全然見つかんない」

「座敷の仏壇周りは?」

「ああ、了解」

 

 二階から降りてきたヒバナとも短く言葉を交わしフキは手提げ袋を肩にかけダイニングへ。

 

「そっちは終わったか」

「間もなく」

「一週間分で問題ない?」

「というか一週間分もありませんよ」

「・・・買い出し」

「いや、ある分だけでいい」

 

 シンク周りの棚をエリカ同様ひっくり返す四人のサードリコリスにも指示を出しつつ、はやはり手提げの中へ荷物を詰め込んでいく。

 

「たきな、代わるから連れてこい」

「え?」

 

 再びリビングへ顔を出すフキは少々重そうに手提げをかけ直し、そのまま拳銃を引き抜き標的へ。

 何をとまでは言わなかったフキの指示だったが、それを理解するたきなは目を白黒させ、二人から銃口を突き付けられた標的は一層顔色を悪くし何かを懇願するかの様に首を横に振りだす。

 

「あの・・・連れてきて何を?」

「何をって、見送りだろが」

「見おっ、正気ですか?!」

 

 さも当然の様に、事もなげに告げるフキの普段通りの態度にたきなは困惑も露わに声も大きく荒げてしまう。

 フキはそれについてやはり説明するでもなく、ましてや同じ様に声を荒げ言い返すこともなく慌ててたきなの口を手で塞ぎにかかる。

 

「( バカッ?!デカい声出すんじゃねえ!! )」

「( ぐむぅッ!? )」

 

 たきなの大声が響いたその時、拘束された標的も含めリビングとダイニングに居た全員が、座敷で無遠慮に仏壇下の引き出しを物色するヒバナまでもが動きを止め、一瞬の静寂が大きな一軒家の中を支配するもそれは長くは続かなかった。

 

「ぶぇ・・・」

 

 さも寝起きで不機嫌ですよと言わんばかりの声にもならない小さな発声が、壁や扉越しにも関わらず全員の耳に届く。

 続けて「ゔ~~っ」と、ぐずり始める前の高い呻き声を聞いたフキは肩を落とし舌打ちを飛ばす。

 

「持ってろ。私が連れてくる」

「・・・すみません」

 

 受け取った手提げ袋をたきなが肩にかける頃には甲高い大きな泣き声へと変わったそれに拳銃を仕舞うフキは静かに近づくと手を伸ばし ────── 。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・慣れたもんだな」

「ミズキじゃああはならないよね」

「アンタもでしょっ」

「あだッ」

 

 ひそひそと小声で、ミズキに指で弾かれた額を摩る千束を中心にカウンターテーブルで固まる三人は抑えきれない関心を隠すことなく向け、座敷席で赤ん坊をあやすフキを静かに見守っていた。

 

「お~い。オムツが届いたぞ~」

「サイズ確認するまで袋から出すなよ」

「ミルクの温度はこんなもんでいいか?」

「そっちも飲ます前に確認するから気にすんな」

 

 入れ替わり立ち代わり、フキから出る指示に忙しなく、されど静かに対応するクルミとハツも何所か落ち着きがなく、無意味に座敷席の傍を通ってはチラチラと赤ん坊を盗み見ていく。

 

「ねえフキぃ」

「駄目だ」

「ぅえぇ」

 

 そのソワソワとした、浮かれた空気感に当てられ千束も身を乗り出し堪らずといった甘えた声を出すもぴしゃりとフキに止められてしまう。

 

「先生~」

「諦めてフキに任せなさい」

「ミズキ~」

「首もすわってなさそうな赤ちゃんにいきなり高い高いかます様なアンタじゃ無理よ」

「うぅ~~」

 

 期待した援護は貰えず、それでも諦めきれない千束は出来るだけ近い距離で赤ん坊を眺めようと座敷席へ、席を区切る衝立の陰からフキの肩越しにふくふくと柔らかそうな小さい顔を改めて覗き込む。

 

「( おぉ~~! )」

「( 静かにしろよ )」

「( わーってるって )」

 

 フキの腕の中、横抱きにされ落ち着いた様子の赤ん坊はおしゃぶりを咥えたまま不思議そうに千束の赤い瞳を見詰め返す。

 赤ん坊連れの家族客が時たま来店することもあり見慣れた存在ではあるものの、まじまじと観察する様に見つめたり触れ合う機会は殆どなかった千束はその珍しい来客を好奇心の赴くまま、満面の笑みで迎えた。







評価、感想、お気に入り、ここすき等々ありがとうございます。


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