たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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 書きたくなったので続きです。





The neighbour's flowers are redder その1

 

 

 

 

 

 

 梅雨入りから数日続く曇天模様に気温どころか気分までもが下がる、そんな少し肌寒い平日の昼下がり。

 都外某所にて、公共の文化施設や交通機関の密集した、都会という程ではないがそこそこ大きな街の乳児院へ一人の女性がベビーカーを押して入って行く。

 

「良かったの?」

「・・・んだよ」

 

 その様子を幾つか通りを挟んで建つビルの屋上から、ビニールシートの下で並んで腹ばいになりスコープ越しから眺める少女達が居た。

 

「もう何度も話し合ったろ。今更 ─── 」

「じゃなくて~」

 

 ビニールシートからはみ出さない様に気を付けながら、小さな三脚の付いたスコープから目を外し千束はフキへ皺の寄った顔を向ける。

 

「もう会うつもりないんでしょ!」

「そーだな」

「今日で最後なんだよ?!」

「私は昨日で最後だった」

「んも~~~っ!!」

 

 隣で千束が騒ぎ立て肩を揺するもフキは無視してスコープを覗き続ける。

 マスクとサングラスで顔を隠した慌てふためくミズキと、顔を真っ赤にして泣くフミを慣れた手つきで抱き上げるエプロン姿の職員が窓を通して見て取れた。

 

「いいんだよ、これで」

 

 普段と変わりない声音。

 付き合いの長さから千束はそれがフキの本心であることを理解する。

 尚且つ肩の荷が降りた様な安堵感を漂わせる彼女に、千束は言いようのない淋しさと不満にへそを曲げてしまう。

 結局のところフキにとってフミは最後まで赤の他人であり、一時的に保護し名前を付けただけの赤ん坊で身内足り得なかったのだと。

 

「・・・・・・ばーか」

「・・・」

「アーホ。フキのあんぽんたん」

「・・・仕事の邪魔したいんだったら先に帰って良いんだぞこのすっとこどっこいのこんこんちき」

「誰が一人馬鹿囃子じゃい!」

「そこまで言ってねえだろ大間抜けのぽんぽこりんがよ」

「キィーーっ!!」

『 ─── あの、お二人共。もう少し真面目にお願いします』

「そういうのは何かの間違いで十年以上もファーストやってるコイツにだけ言ってくれ」

「まだ言ぅ?!」

『はぁ・・・。あっ、来ました』

「ん」

「了解」

 

 

 

 

 

 

 変化は一瞬だった。

 インカムの奥から流れるのは先程の賑やかさが嘘の様な、何処か機械染みた冷たささえ感じる静かで落ち着いた指示。

 

『通路奥から1、2、3』

『1 ─ 2』

『右に動くよ ─── 今』

『3クリア』

 

 連続して廃ビルに響く窓ガラスの割れる音と呻き声。

 五百メートル近くも離れた地点から届く声だけが状況を正確に伝えていた。

 

『手前動きそう。突入準備』

『援護する』

「了解。突入準備」

 

 紺色の制服姿の少女達に緊張が走る。

 たきなは目の前の鞄を掴み指示を待つ。

 鞄の持ち主から舌打ちが飛ぶもたきなの意識はインカムの奥から離れる事はなかった。

 

『待った。情報より一人多い』

 

 そのイレギュラーを告げる声にたきなの思考は一瞬膠着するも。

 

『見えねえ。交代 ─── 突入はしなくていい、下がってろ。こっちが追い立て『 X ロスト』─── 撤回。二手に別れ陽動は左のドアから突入。直ぐにエアバッグを展開。後退して誘い出し挟撃』

「了解」

 

 指示の細かい詰めを無言のまま、淀みなく回るたきなの手の動きを読み解くエリカとヒバナが迷いを見せる事もなかった。

 

「配置完了」

『合わせる。何時でも良いぞ』

 

 何もかも違う状況ながら、たきなの頭の片隅では春先やそれ以前の任務が過る。

 非殺傷弾と実弾、ワイヤーとテーザーが入り交じる中、鞄を構える新しいパートナーの不満気な横顔が視界に入る度に背中がむず痒くなるのを感じた。

 

 

 

『 ─── おい、生け捕りだからって拘束して終わりじゃねえぞ。武装解除させるまで油断は「あ~もぉ~~ッ!!んなこと言われなくともそんぐらい解るっす ─── ってえ?!」・・・どうした?』

「気にしないで下さい。脛をぶつけただけです」

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