「ふきおねえちゃん、またねー!」
「おう。またな」
「あれ?私は?」
「ちさともまたなー」
「“も”って何だ“も”って!」
「おら、さっさと次行くぞ次」
「そうそう。熱心なのはいいんだけど、ちょくちょくふざけて変な言葉を覚えさせようとするのが問題でね」
「えっ?!」
「じゃあ私が初心者のクラス担当しますんで、千束にはその辺り各自で判断できるベテランの方を」
「そうだね。よろしくお願いするよ」
「あれれー??」
『エクササイズ ワーン 戸惑っています!』
『トマドッテイマス』
「そちらのお嬢さん・・・只者じゃないな。お名前は」
「春川フキです。以後お見知りおきを」
「おう、よろしくな。お前ら!」
「「「「フキ姐さん、よろしくお願いします!」」」」
「姐さんは止めろ、姐さんは」
「・・・・・・」
特に何事も無く組事務所の配達も終え、二人は休憩と時間潰しもかね公園のベンチへ。
子供連れも目立つ時間帯でフキは他にも誰か座るかもしれないと、五人は座れるベンチの端の方へ。千束はそのままフキの真横に腰を下ろす。
「・・・んだよ」
「べっつにい~~」
ベンチの背もたれにではなくフキに背中を預けグイグイと押し出す様に揺する千束は何時の間にか買っていたパックのトマトジュースを口に。
「な~んか慣れてんな~って」
ストローを噛み、先輩面が出来なかったと不貞腐れる千束にフキはただただ面倒だと舌打ちを飛ばす。
「お前、私がリコリス棟でどれだけ問題児の世話してたか知らないだろ」
「えっ?フキったら問題児押し付けられてたの?」
一転、不機嫌な顔からうっける~~!と笑い飛ばす千束を今度はフキが押し返す。
「まあ、その問題児が出てってからは少しは楽に・・・はなってねえわ」
「なになに、その次はどんな子押し付けられたの?」
目を輝かせて先を促す千束に反しフキはイライラと組んだ脚を揺すりだす。
「世間知らず・・・っつうか、私は馴合いません?みたいなお高くとまったヤツだよ」
「ああ、フキみたいな感じね」
「むしろお前似のボッチだよ」
その言葉に千束は背中ではなく顔を寄せる。
「は?ボッチじゃねえし。ていうかフキだってそんな多くないでしょ友達」
「私以外にリコリス棟で連絡取り合うヤツも居ねえ癖によく言うぜ」
「居ます~。みんな遠くに行っちゃって連絡取れてないだけです~~」
「あいつら含めるんだったら私だってそこそこの数になるわ」
額を突き合わせグイグイと押し合う二人だがベンチに響くアラーム音にピタリと動きを止め、フキはそのまま立ち上がりスマホを取り出す。
「時間だ。次行くぞ」
「え~~。もうちょっとのんびりしてこうよ~」
フキはスマホのアラームを止め空になった紙パックを奪い取るとベンチに腕を回す千束の鞄に押し込みそのまま襟を掴んで引き摺りの態勢に。
「ちょっ、やめやめ脱げる脱げる?!」
「ならさっさと立って歩きやがれ世話してやってた問題児」
「え、何それ?ってキャーっ!!」
公園中の視線を集めていることに気が付かない二人はそれでも足早に、もしくはゆっくりと歩を進めベンチから離れて行く。
結局その日、二人が腰かけたベンチに他の誰かが座ることはなかった。
千束が DA を出てどのくらい間が空いているのか解らないのでたきなと組むまでは他に同室者が居なかった態で書いています。