たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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その6

 

 

 

 

 

 

「この目付きが悪いリコリコの新入り、私の幼馴染みで名前は春川 ─── 」

「確かフキさんだったかな。ほら、何年もちょくちょくお店を出入りしている。数ヶ月前もお店で千束ちゃん達と楽しそうに話してたね。入れ違いで直ぐ出て行っちゃったから挨拶も出来なかったけど・・・覚えてる?」

「・・・いえ。すみません」

「じゃあ改めて、警視庁の阿部です。よろしく」

 

 朗らかに笑う中年刑事に対し、気付かれぬよう半歩後退るフキは短く「どうも」と返した。

 

 

 

「・・・おい」

「ん~~~?」

 

 阿部に見送られながら警察署の自動ドアを抜け歩道に出て直ぐ、終始だんまりだったフキが背後を気にしつつ千束の腕を取り耳に顔を寄せる。

 身長差がある所為で千束側が少し屈みフキが少し背伸びをするという、周りから見れば大変微笑ましく、ひそひそ話を持ち掛けた側からすれば気にしそうな態勢だが当の本人はそれどころではない。

 

「( 何だあのヤバい刑事(デカ)は?! )」

 

 髪を上げた額に冷や汗を滲ませ目尻を更に吊り上げたフキの表情に、千束はリコリコを出てから漸く顔色を変えたと喜色満面にニヤつく。

 

「( いやいや。ヤバいとか、阿部さん良い刑事だよ? )」

「( あぁそうだなヤバいくらい仕事の出来る良い刑事なんだろうよ!! )」

 

 腕を絡めたまま警察署から怪しまれない程度で足早に離れようとするフキにつられ千束もひそひそ声に。

 

「( あの年齢であの目立つ恰好が許されて女子高生に捜査協力も出来るフットワークが軽いベテランの刑事なんざドラマの中だけなんだよ!いくら支店の捜査員だからって普通ここまで自由に出来るかっ! )」

 

 自然に足を止め、ぐるりと千束の前を通り腕を絡み直すフキはなお続ける。

 

「( なんだあのワークシューズ。他は全部真新しいクセして踵だけの擦り減り具合ときたら、交通網と監視情報の発達した都内の刑事がしていい減り方じゃねえんだよ )」

「( ねえ。今さ、尾行確かめる意味あった? )」

 

 警察署から離れ幾分か冷静さを取り戻したフキは何時の間にか絡まっていた千束の指を離し嫌そうに制服の裾で払うと建物の陰へ身を寄せ腕を組む。千束も倣う様に隣へ。

 

「あの自由さで上の席は在り得ねえし、かと言って自由に出来るくらいだ、上からは重用されてる」

「阿部さんの話まだ続けるの?」

「相棒か部下は?」

「一人。三谷さんていう若手」

「睨まれたらしつけえぞ」

「そりゃまあ刑事(デカ)だし?」

 

 ボロ出してねえよなと凄むフキに少しは信用してよと口を尖らす千束。

 数秒見つめ合うも、その間の抜けた顔に気が削がれたのかフキは大きく息を吐き出し顔を伏せ頭を掻く。

 

「さっきの件、なんかあるって確信してるぜ」

「じゃなかったら態々頼まないし、いうて痴情のもつれ程度でしょ」

「だといいがな」

 

 あくまで気楽に、ストーカー被害に悩むという篠原沙保里に連絡を取る千束だったがその後直ぐ額を押さえる羽目に。フキも暫くやっぱりバレてないかと頭を悩ませる事となった。




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