「私はパス。母さんにこの前学校で無くした千円のこと相談したい」
店を出て直ぐ、沙保里にとりあえず今夜は泊りで様子を視ようと提案する千束に対しフキは首を振る。
「えぇ~~?フキは今うちのお父さんの所じゃん。明日お父さんに相談しなよ」
「養育費は母さんが出してんだから先に話すのがスジだろ」
「相変わらず教育ママにべったりな優等生ですことっ」
「放任主義でデロッデロに甘やかされてる家出娘よかマシだろ」
「・・・ふ、複雑なご家庭?あぁ、だから刑事さんとも仲良いんだ」
一人妙な納得を見せる沙保里を無視しフキは背を向け歩き出す。千束もじゃあ私たちだけでと沙保里の背中を押し反対方向へ。このままお開きかと思われたがしかし何を思ったのかフキは数歩の所で直ぐに立ち止まり振り返ると二人を呼び止める。
「やっぱ私も泊まるわ。着替えとか諸々適当にこっちで買って用意するから先行ってろ」
その急な掌返しに驚き千束も歩みを止め振り返るも。
「え?・・・あーはいはい。じゃあ場所は後で送るから。ああ、料理は私がするから余計なもん持ってくんなよ」
同じ様な切り替えの早さもだがその発言に沙保里も驚く。
「うん?千束ちゃんが夕飯作るの?」
「はあ?私が料理した方が早いし上手いだろうが私に任せろ」
「フキちゃんも作れるんだ・・・じゃなくて夕飯なら出前でも・・・」
そう提案するも二人は止まらない。
「いやいや。フキが作ると残さず全部食べることになるじゃん明日のおかずに残しておかなきゃだし私がするって」
「あら家庭的・・・というかフキちゃんの料理そんなに美味しいの?あと無視して話進めないでほしいかなあって・・・」
「一人前残しときゃあ問題ねえだろ心配されなくてもそこら辺上手く調理してやんよ!」
「一人前で足りるわけないじゃん余るくらい多目に作って全品残して全品持ち帰るの!」
「うるせえ黙って私に料理させろ無駄飯喰らいの穀潰し!!」
「そっちこそ好き嫌いせず私に作らせろ杓子定規の石頭!!」
「えっとお・・・二人の作るご飯は食べてみたいかもだけど、取り敢えず静かにしよっか?お店の前だし、ねっ?」
ただの口喧嘩の様相を見せる二人は沙保里の仲裁により半ば強引に外食という方向へ。
それに案外あっさりと了承する二人に拍子抜けしつつ、外食ならそれこそストーカーに絡まれる可能性もあると千束が父親を呼ぶ事に。
人数も増え、それなら車を出せる姉も呼んで少し良い所で食べようかとフキが提案し、一旦別れ沙保里のアパート近くで集合という形に落ち着いた。
その夜、人通りの少ない一方通行の車道で追い抜きをかけた赤い SUV に道を譲ろうと電柱の立つ塀の近くまで脇に寄せた白のワゴン車が。目の前の電柱により一度停車せざるを得ない状況の中、 SUV がワゴン車へと幅寄せしその真横で何故か停車。
サイドミラーを畳んでまでのギリギリ過ぎる幅寄せにワゴン車側も何かおかしいと騒ぎ出すも束の間、ハッチバックドアが急に開き揺れる狭い車内で火花が弾け中の四人組の影を窓に映し出した。
しばらくして二台とも何事も無かったかの様に動き出す。
ワゴン車は人目のつかない何処かへ。
SUV は途中で赤い制服の女子高生と眼鏡の女性を拾いどこぞのレストランへ。
とあるハッカーがドローンで撮影した映像はそこで終わっていたが、そのレストランへは暫くして杖を突いたアフリカ系の男性が。赤い制服の女子高生二人と眼鏡の女性二人の席へ自然と混ざり少々注目を集めたが、同席者の女性が「やっぱり複雑なご家庭・・・」と一人で勝手に納得していた以外、特に変わった様子もなく時間は緩やかに過ぎて行った。
感想ありがとうございます。
たきなの独断専行がなく千束かフキが尾行の車にいち早く気が付いていれば案外あっさりと終わる筈。