「どしたの先生?難しい顔しちゃって」
「ん?ああ、昨日捕まえた連中について色々とな・・・」
リコリコ店内、カウンター席で昼間から酒を煽るミズキの隣に座る千束は店内奥からスマホの操作をしつつ渋い顔で出てきたミカに訊ねる。
「もしかしてクリーナーの代金、結構掛かっちゃった?」
「え? DA に引き渡したんじゃないの?」
「するわけないじゃん私が捕まえたんだよ」
「あー-、いや。なんだ、その・・・」
「・・・え?」
「あらら~」
何故か気まずそうにするミカに対し千束は察するも信じられないとばかりに驚きで固まってしまう。
「すまん。今回は引き渡した」
目を伏せ謝るミカの言葉に椅子を倒す勢いで立ち上がった千束はカウンター越しにも関わらず身を乗り出して掴みかかってしまう。
「うっそなんでどうして信じらんないぃー-っ!!」
余程ショックだったのか若干涙目でミカの着物の襟を掴んで揺する千束は大声で抗議する。
「車も道路も塀も破損無しで出血もなかったから何時も以上に費用抑えられてた筈なのに何でなんでナンデ~~っ?!」
「いや、クリーナーの費用がかかるから DA に渡した訳じゃあ・・・」
「だったらクリーナーでいいじゃんお父さんの裏切り者ー-!!」
「むうぅッ・・・」
昨夜のレストランのノリで駄々を捏ねる千束の言葉にミカも少しショックを受けたのか苦しそうにしてしまう。
ふざけているのか本気なのか、いまいち判りづらい二人の遣り取りを引きつつも眺めるミズキは「お店の経営的にはありがたいんだけどねえ」と少々冷めたもので。それに反応する千束はミズキにも噛み付く。
「普段は DA のこと気味悪がってるクセにぃ!」
「コソコソ陰で子供に人殺しをさせてるのがあれだってだけで犯罪者自体がどうこうなろうと知ったこっちゃないわよ」
「この人でなし!」
「おーおー、何とでも呼べぇ」
「アル中の行き遅れ! DA から離れられない薄給社会不適合者!」
「ぐうぅッ・・・」
確りダメージを受けるミズキから酒瓶を奪い千束は「もうこんなお店出てってやるー-!!」と捨て台詞を吐き外へ。
丁度入れ違いで奥の廊下から顔を出したフキはそんな千束を憐みの含んだ目で見送りつつ、カウンターに手を突く二人に近づく。
「すみません先生。私のせいで千束が騒がしく」
「・・・聞こえていたか」
「まあ、あの大声ですし」
「気にするな。どういう扱いを受けるか知っていて最終的に連中を引き渡したのは私だ」
「なによぉ・・・ DA 手配したのあんたな訳ぇ?ていうか私への謝罪は~~?」
「そっちに関しては殆ど身から出た錆じゃねえか。普通に節制して健康的な生活心掛けろ」
「あんた等何で私には感情論じゃなくて事実を淡々と並べ立てんのよ」
顔を両手で覆い「泣くぞ。いい歳した大人が泣いちゃうぞ」とぐずるミズキを無視しフキはミカに昨夜の男達が持っていた情報を訊ねる。
「それだが連中、下請けも下請け。まともな情報は何一つだそうだ」
「そう、ですか・・・」
傍目には変わらず澄ました態度だったが、フキの顔には憂いが。
それは千束ほど大袈裟なものではないが、訓練教官として短くない時間を少女達と接してきたミカならば直ぐに気が付いてしまう程のもの。
確かにこちらの損害はゼロ。沙保里の撮った写真も全て消して阿部刑事にも問題は無しと報告。この件に関しては丸く収まったが消えた千丁もの銃の行方は未だ不明。
更にはこれらの結果を得るのに、事実ろくでもない連中だったとは言え、毒にも薬にもならず無駄死にした人間が四人。これを多いと捉えるのか少ないと取るのか。
「ま、気にするなとは言わないけどさあ。千束には黙っててやんよ」
勿論。ここには長年そんな少女達を見詰めてきた女性も。
「・・・ミz、アル中」
「おい今何で言い直した??」
「お一人様ごあんな~~い!!」
「そしてあんたも少しは空気読みなさいっ!」
先程の涙は何処へやら。
元気溌剌といった千束が男性を連れ店内へ。
「ちょっと千束、私の“泥酔”は?」
「近所の神様にお供えしてきた」
「はあっ?!」
「ていうかフキっ!ほら、教えた通りに!」
「らっしゃっせぇー」
「こらーっ!」
一気に姦しくなる店内。
しかし、男達の間に流れる空気はどこかぎこちなく。
「やあ、ミカ」
「・・・あっ」
二人を見詰めるフキの目もまた。
取り敢えず一話目終了です。
最後一纏めにしようかと考えていましたがこっちの方が修正しやすいのでこのままで。