たきなの代わりにフキが出向する話   作:沼田もんざえもん

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Pretty high school girls have thorns その1

 

 

 

 

 

 

『ウォー「黙れ」 ─── ッ??』

「ちょっ、いきなりは不味いってしまえしまえ!」

 

 一方通行の細道に颯爽と現れた軽自動車の助手席窓から全身着ぐるみの不審者が頭を覗かせるという不信極まる行為にフキは何の迷いもなく拳銃を抜くと車窓の奥に銃口を定めスライドを引いた。

 その有無を言わせぬいきなりの暴挙に千束は慌ててフキの腕を掴み不審者は両手を上げた状態で言われるがまま押し黙ってしまう。

 

「取り敢えず待った!今この犬さん何か言いかけたでしょ?!多分きっと依頼主!」

「猫だろ。それともし依頼主だとしてもこんな不審者の護衛は御免被る」

「も~~っ。普段は指令第一のくせに DA の仕事じゃないからって選り好みし過ぎ!」

『・・・あの~~』

 

 二人の会話に銃口を突き付けられたままの着ぐるみの不審者はフキに今すぐ引き金を引く意思がある訳ではないと踏み、恐る恐る今以上に危ない現状を口にしようとするも。

 

『今、追手が「勝手に喋んじゃねえ。まず黙ったまま合言葉以外でお前に敵意が無いことを証明しろ」・・・なッ?!』

「んな無茶な」

「上のドローンは仲間か?もしそうなら頷け」

「え?」

 

 フキの要求に一瞬呆れるも続く言葉に千束は助手席窓から上半身を突っ込みバックミラーをいじる。

 

「あちゃ~。どうすんのハッカさん?これ、本当に護衛依頼かどうか怪しくなっちゃったけど・・・」

『ぼっ、僕のドローンじゃない!』

「“頷け”と言った筈だが?」

『ヒィッ?!』

「魔女裁判じゃん」

 

 些か過剰ともいえるフキの警戒心だったが、相場の三倍という報酬、ミカが駐車場に用意した車ではなく依頼主が運転する車、依頼主は身元不明のハッカーに加えこちらを監視していたドローンと、流石に不審な点が多すぎたのか千束すらも妥当な判断と納得してしまう。

 ただ、実際に追われ命を狙われているかは二人にとって不明瞭な状態になってしまったがミズキ経由でミカの口から得られたプロ寄りのアマが五人から十人という情報は疑う筈も無く。

 

「狙える?」

「ギリ何とか。新しい足用意しとけ」

「スーパーカー!?」

「弁償できるんならいいぞ」

「中古のライトバンにしときまぁす」

 

 フキは鞄から幾つかのツールを取り出すと千束に投げ渡し、そのまま自身は頭上のドローンを狙うべく新たにサイレンサー付きの拳銃を引き抜く。

 

『・・・こっちは丸腰だから下げてもらっても構わないぞ』

「そっちこそ、そろそろツラ拝ませくれても構わないぜ。つうかどこが丸腰だ、助手席のでけぇスーツケースは報告になかったぞ」

『これは僕の全て「あっそ。興味ねえ」・・・・・・くそぅ』

「うっし。千束!」

「おっまた~~」

 

 運転席から手を振る千束は落ちたドローンを引き潰し歩道へ乗り上げ軽の隣へ。

 スライドドアは既に開いた状態でフキは着ぐるみから目を逸らすことなくライトバンの後ろの席に。

 

「さっさと乗れよ。追われてるんだろ?」

 

 出会ってから一度も逸れる事のない拳銃の銃口に逆らえる筈もなく、護衛対象から護送対象に格下げされた着ぐるみは助手席の大きなスーツケースも降ろそうと手をかけるも。

 

「そいつは置いてけ」

『・・・僕の全てだと「危険物じゃないと証明しろ」・・・無理だ』

「早くしてね~。このままじゃ追手どころか飛行機だって間に合わないよ~~」

 

 目の前の不審者が害の無いただの依頼主か、何らかの意図を持ってリコリスという日本の暗部に触れようとする不審者なのか、未だ見分ける事が出来ない二人はここが分水嶺だと判断する。

 その大きなスーツケースが無害なもので、本当に持ち主の全てだと言うのなら中身を見せれば済む話なのであるから。

 

「ミズキは?」

「ダメ、出ない。本格的にヤバいかも」

『・・・・・・』

「先生に連絡する?」

「ダメだ、狙いが判らない。私等じゃなくて先生の可能性もある」

『・・・・・・』

「あ~~、連絡受けて出てきた所を囲んで確保する流れかあ・・・てことは先生人質枠?ミズキはともかく」

「妥当だな。一気に手が出し難くなる。ミズキはともかく」

『・・・・・・』

「だとしたらめっちゃ調べられてんじゃん私達」

「流石は凄腕ハッカーってところだな」

『・・・・・・』

 

 運転席側からも拳銃を構え始めた二人は知る由もない事だが、不審なドローン(ひと)つで作戦の全てが裏目に出てしまうことになった中の人の一人は人質対応枠外という事実にショックを受けつつ作戦の失敗と報酬の取り下げを心配し、もう一人の中の人は案外冷静に現状を俯瞰していた。

 

「んん~~。この犬さんと追手が仲間かどうか一発で判ればいいんだけど~~」

「それが出来てたらこんなに疑心暗鬼してねえだろ。あと猫な」

 

 これまでの会話から命に係わる様な不要な発砲は有りえず、身内が考えた作戦をただ身内にバラすという至ってシンプルで確実な解決法があるという安心感もあるが、呑気に今後の対応を相談する二人から武装グループという死への危険性に対する緊張感が見えなかったというものも大きい。

 むしろ余裕すら感じられる二人を見てハッカーは、ウォールナットは切羽詰まった状況にも関わらず興味を抱いてしまう。

 日本の治安を陰から守る秘密組織。

 その構成員で実働部隊。

 殺し屋。

 それらの情報が、知識が、未知が、触れてはならない歩くタブーが目の前に居るという現実がウォールナットというハッカーの心を引き付けてしまう。

 

『 ─── そもそも』

 

 敵味方がはっきりとしないまま追手も含め交戦状態に陥っても秘策で何とか切り抜けられるかもしれない。

 バイアスのかかった未来の結果を夢見る程、未知との遭遇で徐々に周りが見えなくなるハッカーは思考を鈍らせる。

 頭を回すのは逃亡方法にではなく彼女達の生態に。

 その在り方に。

 思想に。

 世に知られることもなく消されていったであろう多くの悲劇に。

 

『例え追手と僕がグルだったとしてだ ─── 』

 

 

 だからこそ。

 

 

『君達を嵌めて僕に何の得「ラジアータ」gyうぁ、る・・・何だって?』

 

 

 僅かな隙を見せしまえばあっという間だった。

 

 

「どうした?動きがぎこちないぜウォールナット」

『・・・・・・』

「だんまりか」

 

 偶然が重なる。

 フキは DA の古株であり、その任務中に起きた通信障害がどんな意味を持つのかを正確に理解しており、今回の依頼の話を聞いた時点で既にある種の直感とも言える警戒心を抱いていたがために。

 着ぐるみはフキがいきなり DA の機密情報を口にした事に対し驚き。

 発する音声は追われる原因となった先月の仕事に対する核心部分を不意打ちで指され動揺し。

 

「いきなり何?どゆこと?」

「あの取引の際、一時的にやられて通信障害が起きた」

「マジか」

 

 二人の拳銃の引き金に指が掛かる。

 

「疑うにはちょっと弱い気もしなくはないけど・・・」

「さっきの動揺で十分だろ。お前の勘は?」

「んー-、黒寄りのグレー」

「やっぱ十分じゃねえか」

「殺すなよ?」

「たりめーだ」

 

 尤も。

 

「マジかそれっ?!」

「は?」

「え?」

 

 元 DA 情報部員という肩書の存在により、言い訳を考える時間が与えられた悪運の強い齧歯類はまんまと神経質な追跡者から逃げ果せる事が出来るのだった。

 

 

 

 

 

 

 今回は。




ここすき等ありがとうございます。
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