魔術師上がりの錬金術ーMagician's Alchemistー   作:エヴォルヴ

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何だか人形表現はもっと違うものが良さそうなので色々加筆及び修正です。


自分を鑑みる月食神波

変なやつ? そんなに変かな、俺。そりゃあ、嫌なことはあんまりないし、警戒解くのも早いけど……血が通った人間だぞ?
好きなものもあるし。その好きなものって何か? うーん……錬金術、笑うこと、頼ってくれる人……とかか? 良いことも悪いことも、全部倍以上で返ってくるって言うだろ? 笑ってればいいことあるだろ。父さんと母さんにも笑ってろって言われたし。


7.移動手段はレールガン

 家族に幸せであってほしい。

 そう思ったのは、いつからだったか。多分、生まれた時から、だったと思う。

 家族が喜ぶなら何でもやった。笑っていてほしいと言われたから、ずっと笑うようになった。

 

「■■様、そこはこうです」

 

「■■様、ここの問題もう一回復習しましょう」

 

「正解です、■■様」

 

 才能がないから別の方向で根源を目指せと言われたから、錬金術に手を伸ばした。僕のお世話をしてくれているホムンクルスのアルファ、シグマ、デルタに教えてもらいながら、たくさん。

 きっと、これで家族は笑ってくれる。お父さんとお母さんは喜んでくれる。だって、お父さんとお母さんは僕にそうあってほしいって望んだんだから。望んだことを、望まれたようにやるのは、間違いじゃないんだ。

 

「魔術回路が少なすぎる」

 

「これでは根源への到達も、錬金術師としての頭角を現すこともない」

 

 なら、僕はどうすればいいの? どうすれば、お父さんもお母さんも喜んでくれるのかな? 

 何度も、何度も考えた。考え続けて、僕の価値は何なのかを考えた。ずっと考えてたけど、見つからなかった。

 ……だから、お父さんとお母さんに聞いたんだ。どうすれば二人が喜んでくれるの? って。そしたらね、お父さんとお母さんがこう言ったんだ。

 

「その場に座っていなさい」

 

「私達は準備をするから」

 

 それだけでいいの、と首をかしげたけど、お父さんとお母さんはそれだけでいいと言ってた。だからそこで大人しく座って、準備が終わるまで待っていた。

 

「これで準備は終わった」

 

「あなたは、最期まで私達の誇りよ」

 

 その言葉が何よりも嬉しかった。僕を必要としてくれている人が、僕を必要としてくれている家族がいることが、とても嬉しかった。

 

「な、何だこれは!? 貴様、何を──ゴアッ!?」

 

「当主様からの、ラストオーダー完了」

 

「人形、風情が……! なぜ……! ──そうかッ! どこまでも、邪魔をするかッ! 月喰らいィイイイ!!」

 

「■■様、お暇をいただきます」

 

「■■様、お元気で」

 

 お父さんの怒鳴り声が聞こえる。アルファ、シグマ、デルタの声も聞こえた。

 

「■■! 生きなさい! あなたは、あなただけは──」

 

 ねぇ、お父さん、お母さん。僕は役に立ったんだよね? 役に立ったのなら、褒めてよ。褒めて欲しいな。よくやったって、僕は役に立ったよって、褒めてよ。

 あ、でも、それもいいけど、この痛いの止めて……止めてほしい。痛くて、痛くて堪らないんだ。

 

「■■……!」

 

「ああ……■■! ■■! ごめんなさい……ごめんなさい……!」

 

 痛くて目が覚めた時、お父さんとお母さんはいなくて。その代わりに、お爺ちゃんとお婆ちゃんが白いお部屋で僕の手を握っていたよ。

 ねぇ、お爺ちゃん、お婆ちゃん……お父さんとお母さんはどこ? 僕、役に立ったよ。役に立ったから。お父さんとお母さんに褒めてもらうんだ。

 いっぱい頑張ったんだよ。お父さんとお母さんの言うこと聞いて、全部頑張ったよ。

 

「■■、もういい。もういいんですよ。自分のことを心配しなさい」

 

 何で? 何も心配することなんてないよ? お父さんとお母さんの言うことを聞いてればいいんだから。

 

「──ごめんなさい。■■……」

 

 どうして謝るの? ねぇ、お婆ちゃん、その目と喉のそれ、怖いよ。どうしてそんなものを向けるの? 

 ──────────────────あ、れ? 何で、こんなところに……俺は、いるんだ? 

 

「…………」

 

 あれ? 爺ちゃんと婆ちゃんだ。どうしたんだよ、こんなところで。……というか、俺の足、凄い軽いんだけど! 

 

「──おはよう、■■。久しぶりに月食家に行ってみたら、血塗れで倒れてたのだから驚いたぞ」

 

「ええ、本当に。何をしたんですか?」

 

 え? 何を、って……あ、そうだ。父さんと母さんがぐちゃぐちゃになったんだよ。アルファと、シグマと、デルタ崩れ落ちたし。

 いきなり、俺の真下に大きな目が出てきたと思ったら、引きずり込まれて。何か通行料? ってのが欲しいって言われた。

 

「……それで、■■は何て言ったんですか?」

 

 えーと……ああ、脚と魔術回路! 俺、父さん達に魔術師としての才能は無いって言われたからさ。いっそ捨ててしまおうって考えたんだ。どう? 我ながら冴えてると思ったんだけど! 

 

「全く冴えとらん!」

 

 痛ぁ!? 怪我人なんですけど俺!!

 

「もっと自分のことを考えて行動しなさい!」

 

 ん? いやいや、考えたよ? 考えた結果がそれだったんだって。ほら、脚が無くても生きていけるじゃん? それに、魔術の代わりにもらった力もあるんだ! そっちを勉強したいって思ってる。

 

「……はぁああああ……仕方ない……いくつか、条件を出す」

 

 条件? 

 

「お前自身の心に従え。誰にも負けないように強くなれ。──いいな?」

 

 心? 心かぁ…………うん、分かった。そうする。そうすれば爺ちゃんと婆ちゃんも納得するし、嬉しいんだよな? 

 

「……ええ、とっても」

 

「……ああ、もちろんだ」

 

 うん、じゃあそうする。自分の心に従って、強くなれるように、俺は頑張るよ。約束する。

 爺ちゃんと婆ちゃんがそう望んでくれるなら、俺は頑張るよ。父さんと母さんの分まで、俺の世話をしてくれていたアルファ、シグマ、デルタの分まで。

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

 死徒、ロア。俺の研究内容を知っているかもしれない存在。

 誰も望まないものを、望む害悪のような存在が、この町に来ているのだという。

 

「……」

 

 そもそも、賢者の石を造ろうとした理由は何だったっけ……あの時の俺は確か……錬金術師が到達したことのない領域を見たくて……じゃないな。俺は元々真理を見たんだし。……なら、どうして造ろうとしたんだろう? 

 

「……あれぇ? どうして造ろうとしたんだ?」

 

 分からない、思い出せない。うーん……まぁ、いいや。それよりもマーリオゥさんにも言われてしまった、変な奴ってどういうことなんだろ? 

 人形っぽい、って話?別に西洋人形みたいな見た目をしてるわけでもないし、ホラー映画みたく人形が喋ってるわけでもじゃないんだけどなぁ。俺の在り方? みたいなのが人形っぽくて気持ち悪いとか言われたけど、別に人形っぽくはなくない?

 頑張れって応援されたら嬉しいし、困ってる人に頼りにされたりしても嬉しい。人として当たり前だと思うんだけどな。変な奴ではないでしょ、きっと。

 

「どう思う、シエル」

 

「はい? 何の話ですか?」

 

 ビルの屋上から人の営みを眺めていたシエルに声をかけると、首をかしげた。

 

「俺が変な奴って話」

 

「はい……?」

 

「ああ。マーリオゥさんとかに言われたんだよ」

 

「変な奴、ですか。……まぁ、確かに……私はそこまで気になりませんが」

 

 えっ、あるんだ。

 

「あなた、人のお願い断ったことありませんよね? 自分の陰口言ってる人でも」

 

「ん? そりゃあな。だって、やれないことじゃねぇし、あいつらも用事あったみたいだし」

 

 度々小さなことから大きなことまでお願い、相談されるため、手伝ってたりはするけど……それが変な奴ってことなの? だったらお人好しは全員変な奴判定かよぉ!? 

 

「あと、何もかも拒もうとしないところとか、でしょうか」

 

「? 普通じゃないの?」

 

「……そこです」

 

 普通だろ。暗示をかけようとしてきたのも、必要だと感じたからだろう。その後、俺は暗示を無理矢理外したし警戒もしたけど、シエルはちゃんと素性を明かしてくれた。今までの関わりも鑑みて、問題はないと判断した結果なんだが……

 

「……気持ち悪いか?」

 

「まぁ、普通に考えれば。あと、あなたの考えの中に、自分がいないことも起因しているのかと」

 

「え、いるぞ? ちゃんと心に恥じない選択をするために」

 

 そうあってほしいと爺ちゃんと婆ちゃんが言っていたから、そうあれと生きてるんだけど。

 

「んまぁ、いいや。んで? ロアって奴はどこにいるのか目星は付いてるか?」

 

「とりあえず三択です。一つ目はあのホテル付近ですね。気配が強いものがある」

 

 そう言って指し示したのは、総耶にある建物の中で一番大きな建物。人が多く集まるし、あれだけ大きなホテルとなれば、相当な魔術工房にもなるだろう。攻め落とすとなればそれ相応の準備が必要となるはずだ。

 

「その次は?」

 

「総耶高校の地下です」

 

「地下? ……ああ、あの下水道から行ける?」

 

 大昔、戦争があった頃に建造されたという大きな防空壕みたいな地下。学校の下にあるというのが大分不吉だが、子供を守るという観点からすれば正解だったのだろう。だが、あの防空壕っぽいのはそこまでのサイズを有していなかったはず……ロアとやらは穴掘り名人なのか? マインクラフターなの? 

 

「地下は死徒が潜むには最適な場所ですから」

 

「なるほどな。で、最後は?」

 

「最後は廃病院です。町の外れにありますが、あそこは可能性が一番低いですね」

 

 廃病院……霊的なものを扱う上では優良物件だが、総耶からは遠すぎる。シエルの言う通り、可能性は限りなく低いだろう。ならホテルか、学校の地下……なんだけど。

 

「シエル、他の死徒が出張ってきてる可能性はあるか?」

 

「はい? ……まぁ、あり得ますよ。ロアは結構な規模の派閥を持っていましたから」

 

「ふーん……」

 

 なら、それをよく思わない連中がいたりする可能性だってあるわけだ。その辺りはよく知らねぇからいいや。

 さてさて、どうするかなぁ……ツーマンセルが一番いいんだろうが……シエルと共闘なんてしたことがない。下手に合わせようとして失敗するのは愚の骨頂だ。

 

「シエル、質問なんだが……あんたパートナーとかいないのか?」

 

「ああ、いますよ。いますが……その……私の動きに付いて来れないので、ほぼ事後処理担当……ですね」

 

「ええ……」

 

「あ、多分月食(つきばみ)君は大丈夫です。アルクェイドから逃げ仰せたのなら」

 

 ああ、なるほど。シエルは強すぎて、組むとしても上位の代行者じゃないと話にならないと。多分、ミスター麻婆豆腐とか、メレムさんとかが当てはまると思われる。

 

「もうすぐ夜明け。今夜、または明日の夜で終わらせます」

 

「了解。ならさっさと行くか」

 

「──あの……なぜ私は抱えられているのでしょう?」

 

 ん? 妙な話をするじゃねぇか。何でシエルを抱えているのかって、そんなの分かりきっているだろうに。

 

「一気にホテルまで一飛び──いや、二飛び? どっちでもいいか」

 

 青い稲妻が両方の靴から輝き、持ってきていた大量の金属が電流を帯びていく。

 

「さぁ、馬鹿弟子。ここで授業だ。一様磁場を仮定した場合、金属片に働く駆動力Fはどうやって求める? 磁束密度はB、電流強度をI、レール間隔をαとする」

 

「え? はい?」

 

「正解はF=αI×Bな」

 

 これを、今やろうとしていることに当てはめる。駆動力、というか砲弾が俺とシエル。磁束密度、電流強度は今回省略する。ちなみにこれはレールガンの真似事で、アルクェイドから逃げた時の切り札となったものだ。

 

「目標捕捉、方位角固定……風圧及び摩擦熱への対策完了!」

 

「月食君!? まさかとは思いますけど──!?」

 

「落とすつもりはないけど、掴まってろよ」

 

 バチバチと電流が迸り、俺とシエルという名前の砲弾が今──

 

「レールガンで飛ぶ準備はいいか?」

 

「できてませんけど!?」

 

I am.(俺はOKだ)

 

 放たれた。

 

 

 ──────────────────────────────

 

 

「真祖の姫。その心臓を、おれに──?」

 

 突然、ヴローヴと名乗った吸血鬼の言葉が止まる。

 ……何が、起こっている? そう思った時だった。

 

「こんばんはー! 配管工事レールガンでーす──オルァアアアア!!」

 

「──!?」

 

 何かが壁を貫きながら、ヴローヴの土手っ腹を蹴り飛ばしたのだ。雷光を纏った見事なまでのライダーキックだったが、ヴローヴは直感に従うままに飛び退いていたようで、そこまでのダメージにはなっていない。

 

「何だか嫌な気配を感じて貫通し続けてきましたが、いかがお過ごしかな、マイソウルブラザー」

 

 雷霆の如く突っ込んできた存在は、俺の魂の兄弟とも言えるほど仲がいい先輩、月食神波(つきばみ かんな)であった。そして神波が抱えていたのは、目を回している少女である。

 

「か、神波!? それに──」

 

「あれ、この子気絶してない? 頑丈なんよね? 頑丈なんだよな? ヘイヘイヘーイ、甦れ甦れ」

 

「シエル先輩まで……!」

 

 目を回しているシエル先輩を抱えてるとか何て羨まし──いや、何でこんなところにいるんだこの二人!? 

 

「で? あんたがロア──じゃあねぇよな?」

 

「“──恐れを知らぬ少年よ”」

 

「“あ? 北方の言葉分かんねぇよ。せめて古ノルド語で話せや”」

 

 いや、神波の言ってる言葉も普通は分からないからな? 言語を理解できる俺も大概だけどさ。

 

「“それは失礼した。……月を食む一族がいると聞き、この(まち)へと来たが、少年がそうか? ”」

 

「“月を食むだぁ? 確かに俺は月食って名字だけど……”」

 

 何だ。何かがおかしい。

 ヴローヴの気配……幽鬼のような雰囲気が消え去り、理性を取り戻しているような気がする。神波が来てからのあいつは、真面なような……? 

 

「“知らぬ、か。……じきに夜明けだ。此度はここまでとしよう”」

 

「“へぇ、俺があんたを逃がすとでも? ”」

 

「“ああ。少年は、守りながらの戦いに慣れていないようだ”」

 

 そう言って、ヴローヴは炎を生み出し、神波の後ろにいる俺達を狙おうとした。だが、それを許す神波ではない。

 手を合わせ、炎を防ぐ大理石の壁と水の壁をほぼ同時に作り上げた。

 

「あ、これじゃあ追えねぇや。実は筋肉痛だし!」

 

「最後の最後で締まらないな……」

 

 壁がなくなった先にヴローヴはおらず、外は白み出している。死を覚悟した夜が、やっと明けたようだった。

 

 

 

 

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