銀杖の担い手 ライト版   作:海に流れるアリ

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二章 (9)白影の器

 

 暗闇の帳を超えて、体感数秒だった。白い領域に落ちる最中、視界が点滅する。知性がある。理性がある。……院内の術式を探知する。

 にわかに戻る五感と鮮明な意識の中、撫ぜられる風圧の温度を感知して、まるで浮遊するように『器』が浮き上がらされた。後ろから背中を押されるように白い影に前へ促される。青一色の空間に展開する魔方陣を通して、足がもつれた瞬間、放り投げられる様に黒い魔方陣の外に『器』を押し出された。

 

 目を丸くしているウィナフレッドさんの正面に立っていた。よろけて手に持っていた黒杖を突けば、白い影が糸を掃うように魔方陣が展開している青一色の空間次元戻っていく。

 おまけとばかりに渡された銀杖を慌てて抱え込めば、浮遊が徐々に解かれて地面に足が着く。

 

「……何分経った?」

「まだ十秒も経ってないよ?。」

 

 混乱する頭で二本の杖を胸に抱えたまま外を見る。観測した時間を見れば、まだ経過は三十二秒。ウィナフレッドが呆然と此方を見ている。時計を見る。回帰の時刻を超えている。器の感覚がつかめなくてよろければ、慌ててウィナフレッドさんに支えられる。すみませんと零して見上げれば、ウィナフレッドさんが緊張している。互いに首をかしげる。

 

「ヘズさん一ついい?」

「どうぞ?」

「手を握ってもいいですか?」

「いいですけど?」

 

 両手を預ければ、緊張した面持ちで手を握られた。十秒ほどして徐々に赤みを増していくウィナフレッドさんの頬。

 指を握り返せば吃驚したように目を覗き込まれた。驚愕が徐々に醒めていき、俺の『眼』を見ては引いた顔でウィナフレッドさんが此方の足元を見る。

 白い影の糸がゆらゆら揺れている。それはウィナフレッドさんの足元に触れると、すぐに水面に沈む様に影に消える。

 ウィナフレッドさんは一度口を開いたがすぐに閉じた後、無言のまま手短に俺をベッドに寝転がらせた。

 

「何回死にました?」

「……全盛期状態だったからノーカウントです。」

「実数」

「……七桁。」

「そのままでいいから。ヘズさん今すぐ治療室行きね。」

 

 問答無用。青杖を構えなおしたウィナフレッドさんに『器』を浮かされた。

 

 

 朝を迎えて、騎士殿が涼しい顔でメフィスと一緒に戻ってきた。

 

 治療中の俺とウィナフレッドを交互に見て、包帯の姿で、また死んだんですか、と騎士殿が困ったものを見る目で俺を見てくる。まだ死んでないやい。

 あの直後、気絶することはなかったが、浮かされた瞬間、反映時間が途切れた。あえていうならば、この時間の体に巻いていた包帯が全部脱げて大変だったぐらいだろうか。

 上着来てなかったら裸一貫で鯉のぼりをするところだった。ウィナフレッドに謝りながら、首飾りの装備ですぐに服を着たけど。身に纏っていた衣装は全て光のように消えたから、この器を戻す際に、あの子たちが再現してくれただけだと思われる。

 

 騎士殿が戻ってきた今でも、酩酊状態に似た浮遊感が続いている。

 

 すぐにベッドの前にメフィスを降ろされて、騎士殿に正面に立たれた。くらくらする中、ウィナフレッドさんの手のひらが額に触れると気持ちが良い。

 すり寄る様にじんわりと目を細めれば、ウィナフレッドさんの目が泳いだ。

 

「これはまた、ずいぶん特異な性質を有してますね、器が『理』に連動してます。」

「やっぱ切っても駄目ですか?」

「器が譲られたものならば、改変は成さない方が良いでしょう。体現でどうにかしてください」

「そうですよね。」

「……ヘイニーさん、この者、何してきました?」

「僕の口から何も言えずですね。」

 

 ヘズ、と問われて、はだけかけている上着を直される。そのまま目線を合わされると正座をした騎士殿が俺の前に手をかざす。片手ですっぽりと顔を覆われて微動だにできずに凭れかかってると、無言で此方の姿勢を正される。何の確認だ今の。

 首飾りと云われて黒杖にまとわりついていた品を渡せば眉間を指で押さえてる。

 

「……、ライラック・ヘズさん」

「なんでしょう」

「院の外に出るなと言いませんでしたか。」

「云われたので出てはいませんが?。」

 

 ひくり、と頬を引きつったガウスを無視しつつマジで落ちそうな気分を制御する。後ろ髪が長い。本気で全盛期を模したなあの子、と上司殿の俺への印象深さを嘆く。襟元で束ねる気力もない。約束はちゃんと守ったしぃ、と開き直ってはうつらうつらしていると騎士殿が長いため息を吐いた。困ったように眉を下げてウィナフレッドさんを見ている。

 

「ヘイニーさん、これがヘズの本性です。現在の状態だと、この首飾りを掛けてないと真面に思考も出来ません。気合で回答してます。自力で自立行動を編んで回答しています。そして今、とてつもなく我儘です。」

「え!?今正気じゃないんですかこの人!?」

「思考の裏では激痛でのたうち回ってると思いますよ。考えないように一切の感覚を切ってます。……ヘズ、ヘズ。ライラック・ヘズさん。怒りませんから首飾りをつけなさい。火花が極限まで弱ってるじゃないですか。納得した上で器を譲られたなら奪ったことにはなりません。」

「……。」

「意固地になるなら私がつけますよ、いいんですか。その者たちもまだ生きてるじゃないですか、なら未来を考えて器を戻す算段をつけるべきです。暗号は覚えてますか。」

 

 ウィナフレッドさんが沈黙を保つ中、手渡される首飾りを手のひらの上で見つめる。戻れと念じると、首飾りが装備状態に戻った。途端に戻る、俺の思考。

 ぐっちゃぐっちゃに混ぜあわさった感情の中、素面を保って黒杖に触れれば解析が走る。魔法の手袋に小さな『器』と領域を作って白い影のモノたちは俺に付いてきたようだった。自身の器を全て譲って。

 騎士殿が急に静かになった俺の頭を撫でる。完全に失態だよこれ。

 

「ランテッドさん、譲られたかすら把握できていない場合、それは奪ったことになると思いますか」

「いいえと私は断定します。その物事には理由があり、その責の因果は必ず過去と未来に置いて今に絡んでいる。不明な現状を嘆く暇があるなら、理由を解明することに足を進めるべきです。」

「奪って戻せないことが理解できた場合、取る道筋は懺悔のみだと思いますか」

「死をもって命を救われたものは、現状を理解した時点で死ななければならないと思いますか?」

「そんなわけないだろ、結果が全てなら、次に起こる事態へ前を以て良を目指すのが先だ。」

 

 二人そろって難しい話をしてるが聞き捨てならなかった。ウィナフレッドさんも騎士殿もはっと我に返ると、俺を見て困った顔をした。

 

 

 白い影が興味深そうに俺の姿を眺めている。愚者の鎖の効果が途切れても、髪の長さが戻らなかった。白い影にもみくちゃにされて元気出してとエールを送られれば自己嫌悪も止めざるを得ない。あーーーーくっそーーー。試しに体現を成せば、戻る固定された姿も、神霊寄りの理寄りのまま。これはまずいなぁ。

 

「わかっちゃいたが、体現を解いても自然な状態で『理寄り』の器で再現されるのか……」

「元の姿ですよね?」

「いや、全盛期の姿だから。正確に言えば祝福を承った上司たる女神の余波かね。理の回路の方に器を象っているから、その影響が出てるんだと思う。俺の生まれの器は男性型だし」

 

 復元した体を見ても、傷が治ってなかった。器を切り替えても反映されるとなると、これはもう概念浸食だ。良く生きてたね騎士殿と褒めれば乱雑に頭を撫でられる。首飾りがあるから回路を開かない限り全然痛くないぞ。ダメージリソースはえぐいほど表示されるけど。

 

 剥けた肩の傷口を見れば、えっぐいほど黒ずんでいた。指で恐る恐る触れると激痛が走る。概念浸食の痛みは、首飾りでも防げないのだ。

 これ、なぞるだけで、最初に刺された時のあの赤霧の棘並みの痛みなんだけど。無言で隠そうとすれば、ウィナフレッドに普通に見咎められた。指で軽く小突かれただけで悶絶した。冷静を貫いたけど騎士殿に抑えられてウィナフレッドサンに再度触れられたら耐えられなかった。涙声でぜいぜいと息を吐き枕に顔を隠せば、カルテを見たウィナフレッドが蒼白になってる。

 

「……悪化してる。うそでしょヘズさん!?他は!?」

「うぇ!?、まっ、ちょっ、ちょっとまってくれ!?」

 

 下着ごと服を剥かれた。真剣な目で穴ぼこだらけの穴と裂傷に触れられる。くすぐったいので枕を握って耐えていると、白い影が足元から浮いてきた。裏切ったな君たちぃ!

 

「治療をしたのに状態が戻ってる。こんなの、普通の傷じゃできない」

「全てに概念浸食を受けてますね。これは補完するものが無いと駄目です。器に残らないで理に刻まれる、存在に直接するので、器が在ろうとなかろうと引きずりますよこれ」

「……通常の手段では治療は無理なんですか?」

「現代ではほぼ、無理でしょうね。」

 

 『白い影』が念話で二人に何かを伝えている。ウィナフレッドがそのまま青杖で『オギナギ』を起動してくれるが、すべて白い影に持っていかれてる。

 

「……、この子たちが直してくれるって、でも原因をかきださないと駄目だって、大本が受けた術式だからこの子たちも解るって言ってるんだけど、どういうこと?」

「主殿、事情を説明してないんですか」

「できるものなのか?」

「できませんね」

「詳細な情報開示を求めます。治療が困難なので。」

「はい。」

 

 事情を説明すると、互いに十分ほどで作動をやめて、原始的な治療に戻ってきた。騎士殿が俺の背にずっと治癒術を流している。

 切開するけど麻酔効くのかな、と恐る恐る一部で試したけど駄目だった。俺の防衛機構が邪魔してる。

 あなた手術や治療の時どうやってたんですかと冷たい目で見つめられて無言を貫いた。基本寝かせられてたし。

 

「『理』が無いと治療できないんで、外すことが困難なんですけど、ヘズさん、あなた何を貯め込んだんですか。」

「大丈夫だ。一思いにやってくれ」

「……大丈夫じゃないんですよ、この残滓だけで、七桁ぐらい魔術の防衛機構が混じってるんだ。全部のフィードバックがあなたに行きます。……どうすればいいと思います?」

 

 騎士殿が面を覆っている。同じ解析結果が出たらしい。十中八九あの領域、神域での全面戦争だわ。流石に上司殿とメフィスを残して死ねなかったし。

 

「腕の良い防士とかいます?、私、宣誓上、ヘズ相手に手出しが困難なので。紹介さえして頂ければどうにか致します。」

「……一名居ますが、三日程休暇を取ってるので、……信頼できる相手じゃないと駄目ですもんね」

「駄目ですね。」

 

 情報開示は私から行いますので、どうかこの状態ですが秘匿していただければ、と騎士殿が頭を下げて、ウィナフレッドが大変慌てていた。

 

///

 

 図書塔の地下施設、点間門を通って内部に戻ってきた情報部の幹部の一人は徹夜続きで機嫌の悪い貌のまま最上階へ招かれた。

 青い軍服ではない私用の服。桜色の長髪にシアン色の瞳をしており、魔力が走っているのか、瞳は常に勿忘草の色の様に淡く煌めいている。中型人類ではあるが、イークスランフの骨格としては長身の部類。幹部は大股でデスクに詰め寄った。

 

「すまないがもう一度言ってくれないか?」

「解決しました。」

「……はぁ?」

「確率は一つも残っておりません。第一大陸と同時に第五大陸の地脈が爆発した程度ですが、既に正常に戻しました。」

「あれだけ、災禍が来る前に備えては後手に回っていた厄災の一つが、解決した?」

 

 L字型デスクの開けた空間、大きな椅子を横に角度を四十五度。半分傾斜した姿勢のまま白い制服に身を包む上官を見る。

 虚偽を報告される意味が無い、と召喚した組み立ての椅子を横に立てて座る。情報を手渡しされて『情報の球』を解読すれば意味不明な現象が一秒の合間に起ってる。このニハイで登録前の旅人が停止術を敷かせられるはずがない。件の騎士殿かと問えば是。軍部で詰んでた複合因子を根こそぎ奪って浄化を成した御仁だ。真夜中に起きたこの事件は緘口令が敷かれており、幹部の中でも厳しい制限が課せられている。秘匿事項に決定したのだろう。

 

「僕の休暇の三日間は?」

「ありませんが、今日からとればよろしいでしょう」

「かーーー君好き勝手云ういうけどなぁ!周囲の予定とか都合があるんだからな!それよりも君の方こそ休暇はどうしたんだよ」

「そんなもの二か月前から一切ありませんが?」

「仕事半分寄越せ」

「そうするとオークション会場の警備が手薄になるので駄目です。」

 

 他の部下はどうしたんだよ!と叫べば療養中とのこと。幹部が無言でクリーム色の上着をデスクの上に畳んだ。タートルネックの黒い長袖一枚になる。

 とんとんと指を額で弾いて、右手は上官の額に当てる。そのまま左手で自身の面を覆っては不幸に見舞われ過ぎだろう僕たち、と嘆く。

 水道からの貴金属潜伏は盲点でした、と都市全土の機構を再構築真っただ中を告げられて群青色のカラーコートを纏う大工たちの幸運を祈る。

 曰く、それは『風』に舞ってきたらしい。構造は一見どおろか精密機器すら素通りしたのに、水分に触れて一定量が循環した瞬間機構化して物理を成したのだとか。幹部が僕らの警戒網を凌ぐ使い手が堕ちてたってことかと問えば、是。不幸中の幸いはこの都市が『浄化と正常』の代名詞であったことであろう。

 臨界点を超えて点間門のエラーも再度起こり始めた昨昼から始まり、ものの一夜で他国が一斉につぶれるところでした、とさらっと零されてため息をこぼす。

 

「マッピングさせて要点から全土で浄化させました。が。市井は現在進行形です。軍が援助に向かってますが九十九の類は拒否を示しており、まぁ、今日最悪の形で現れた後、一秒でけりを付けられました。すさまじい借りを作りました。」

「……引き込めないのか?」

「封鎖領域の要になる可能性が高く、拒否と共に因果を戻すぞと脅されましたね。辛うじて移動手段の制限は課しましたが、まぁ、今回初めてあの『異界』が出現した時点で既に私の知らぬ因果も絡んでいます。星見の者が断言するのですから、我々のこれが最善ですよ。」

「地頭君と並ぶってことは演算可能なんだろう。情報の伝達は?」

「既に。共謀も。」

「……僕はまだ反対だぞ。」

「ですがまぁ、可能性が増えたのは喜ばしいことでしょう。ウェバナポーラン。地獄の道づれが一人増えたのですから喜んでください」

「……。」

 

 いやまて、等価は何だと幹部が問えば相互の『切り札』の秘匿だという。情報隠蔽は確実にせねばならない、という理論は理解しているが、共謀する間柄で伏せるのは損失が大きすぎる。

 裏切る算段を付けているのでは、と咄嗟に思考を回せば失笑が零れた。見舞いの品に選んでいた香の一つを窘める様に上官の額に落とせば両手で受け取られる。

 

「旧知の身内でしたので、悪いようにはなりませんよ。」

「君の旧知とかログが終えないほど膨大なんだが、本気で大丈夫か?」

「地獄の受け皿になるというならば、まぁ、大丈夫ですよ。」

 

 信用の為に仕事は半分持って行ってもらったので、と告げられて、幹部は長いため息をついた。

 

///

 

 

 

「ウィナフレッドの聴いた音はアレか?」

「……多分。先ほど別れる前に天の次元間に戻った分は過去に置いてきた分ですね。あなたが普通に回復してたら本体が戻ってきたかもしれませんが」

「となると、目論見通り全部対消滅するのか」

「隻という法則は本当にずるい存在ですね……。悪用厳禁でここまで回帰が制限を敷かれる理由がよくわかる」

 

 騎士殿が同軸の時間で認識した瞬間、あの情報機構染みた黒い煤は空の果ての中に吸い込まれたあと消滅したらしい。時間のループは一定方向に定まっている為、過去の機構は消えなかったという事後か。存在の対消滅を成しても、線形時間に至った歴程は残るのか。やっぱ俺たち一族がバグなのかな。

 末端だから致命傷にはなりえないだろうが、しばらくの間は世界は平穏であろうとのこと。連続して短時間で襲ってこれない理由があるらしい。

 

 そういえばヘズさんが戻ってきた後、動く度、上空で花火みたいな音がした、と、ウィナフレッドが対消滅時の轟音について零したので、騎士殿が説明をした。

 

「流石に軍に連絡をしてくるついでに報告をしますが、……僕の中で信頼のおける防士に連絡を入れてもいいですか?」

「どうぞ。」

「さらに申し訳ありませんが、観測者が出ている以上、メフィスちゃんも保護を受けないとなりません。了解を取るために一緒に連れて行ってもよろしいでしょうか。」

「メフィス、ウィナフレッド『に』悪さしないか?」

「メフィスはお利巧ですよ。誰かさんよりも」

 

 なんと。

 

「……ヘズさんも、ランテッドさんも、あまり危機感が無いように見受けられますが、どうしてでしょうか」

「あなたはその選択をしません。断言しておきます。主殿をここまで保護してくださってる時点で、もう大船に乗った気分ですよ。」

 

 非情に苦い顔をして騎士殿を見つめたウィナフレッドがメフィスと一緒に無言で部屋を出ていく。白い影がなぜか自慢げに眼を細めた。

 

 

 ウィナフレッドとメフィスが出ていくと俺はすぐさま騎士殿に治験を頼んだ。無言で肩に切れ込みを入れられて渦を回されるが、やはり作動しない。

 荒治療中、痛覚の割合を数値で示せば、雑に頭を荒らされる。私の術式も交じってますね、と申し訳なさそうに告げられて眼を瞬いた。

 

「……つまり、メフィスの汚染事項が俺に回って来てる?」

「はい、メフィスの痛みの反応が無かったので容赦なく全力で術を回しました。解析を掛けても大丈夫そうだったので、すみません。」

「いや、騎士殿が謝ることは何一つとしてないし、俺もイレギュラーが合って、別の術式を見る羽目になったというか。そうか、メフィスに一定の割合以上の苦痛が無いならいいんだ。」

「藁人形の変わり身みたいなものですよ?」

「あの容赦ない攻撃を楽しめるなら、その感性だけで十分だよ。欠損破損崩壊、壊死して死ぬのは慣れてるしな。」

「主殿、本来は慣れてはいけないんですよそれは。」

 

 一応、全部置換で消していけるのだが、いかんせんメフィスに覚えられる恐れがある以上、俺はそれ以上の手順と思考を回せない。

 騎士殿も同じ意見。俺が再現できない術式で解除してもらえれば最高、と言ったところである。なんと悪質な状態でしょうか、と騎士殿が嘆いていると、ちょんちょんと白い影が伸びる。曰く、これからは白い影が術式の情報をメフィスに回さぬよう防いでくれているらしい。二人して褒めると胸を張る白い影を見て、寂し気な騎士殿の瞳が一瞬垣間見えて、俺は目を瞬いた。

 

 見上げれば、何でもありませんと告げるので、そうかと是を返す。

 

「主殿、何が在ろうと、絶対に、絶~~~対に傷口は置換しないでくださいね」

「わ、わかってるよ。でも一つだけ今試していい?」

「一つだけですよ」

 

 秘匿が掛けられていた情報制限の宣誓を切る。口に出せない事項を切れば、ヴァテストゥデレの情報が口に出せるようになった。

 騎士殿が居ないと駄目な制限だったな。

 秘匿を切ったのを理解した騎士殿が、膝をついて俺と目線を合わせた。もう少しかかるよ、という伝言を『長』経由でもらって腹を決める。

 

「ヘズ、あなたの器が無い理由はなんですか。」

「存在の対消滅して復活してきたからでっす。」

「……、……、怒らないといいましたが、叱らないとは言ってませんよ。あなた、私が戻るまでどこへいってました?」

「メフィスと攻防してた」

「あれだけ院から出るなと言ったのにですか。私が死んだ原因十中八九あなたのせいじゃないですか?。」

 

 七桁死んだ原因を探りに行くだろ普通。対消滅を見届けて自分もそのリスクを犯すとか馬鹿なんですか、と騎士殿。きちんと計算したし。

 

「一先ずメフィスの器がある理由は俺。」

「……続けてください」

「そんで、意識ない間、外側から騎士殿が俺の器の守護を担ってくれていたから、メフィスを外に出せた」

 

 この院の中だと、実は念話はもちろん『眼』での情報開示もできないんだよな。ウィナフレッド以外。俺たちは特例と『長』の措置があってできるけど、単身でも厳しい。やるとしたら、もう院の術式を上書きする形だから騎士殿がやらない限りやらない方針。戻せるのが騎士殿だけってのもあるけど。

 

「……メフィスは何故対消滅していないんですか?」

「揃ってないからじゃないか?、分身とか分霊扱いなんだろ、そもそもメフィスの器はその時代の俺の『器』とは構成、形成した星色のすべてが違うし。」

「回帰が禁止されている最たる理由が愚者の鎖を壊すあなたたちじゃないですか?」

「よく言われた」

「褒めてないんですよね。で、何がわかりました」

「お前、なんで最初にメフィスの『理』のことを言わないんだよ。だから俺が唯一メフィスの目に成ったんだろ?」

 

 時間が止まる。ガウスが目を見張って俺を見るので首飾りに触れさせて情報を渡せば、片膝をついて俺の両肩に手を添える。

 

「……、主殿、助けられたんですか?」

「助けてきたよ。ガウスによろしくってさ、うぉ!?」 

 

 直に抱き上げられた。でかい騎士殿の体で宙に浮く。お、おい、と声をかけるが正面から顔を見つめられ、そのまま片手に乗せられると、もう片方で頭を混ぜられて抱きしめられる。器用に同時進行で黄金色の重杖を背中側で浮かせて治癒の術式を作動させてるし。直に霊気を流してやがる。理の回路に直に効く。じんわりと熱が祓われる間、信じてました、と俺の体をぐりぐりと犬っころのようにかわいがってくる。ずっと封じていた回路を開くと、全面で俺の治療にあたってくれる。困ったことに貫通する治療で理を回されていると、丁度戻ってきたウィナフレッドが目を瞬いている。理が回ってる。やばい。

 

「やめろやめろ、外から見たら事案だぞガウス。」

「あなたは本当に素晴らしい、私には成せないことを簡単に成してくれる」

「色んな意味が混ざってるな!まってウィナフレッドサン誤解なんだ!」

 

 ウィナフレッドがなぜか空気を読んで食事の準備をしてくるね、とメフィスと一緒に部屋を離れてしまった。動けない以上成すがまま。私にできるのは与えた傷の治療のみです、と告げられて、抉られた箇所をガウスの情報対価で保全される。深層は私ではだめですと告げられて、騎士殿が俺を降ろして、正面に片膝をつく。

 

「死んだ原因はメフィスですか?」

「いんや、ついた瞬間対消滅した。観測されたんだ。」

「あなたを褒め称えたいと同時に日が暮れるまで叱りたいのですが、どちらがいいでしょうか」

「前者にしてくれ。」

「仕方ありませんね。」

「結論から言うと、メフィスの中のヴァテストゥデレ殿に観測された。『理』の意識がずっとあったんだ。メフィスの中で冥の天秤のモノたちをどうにか助けられないかと攻防しながら。俺が戻った時点で衰弱してて、メフィスもろとも取り込まれていないのが奇跡だった」

「……根こそぎ主殿の理力も魔力も奪っていたのはもしや?」

「現在進行形でメフィスの中の神域の形成に使われてる。一応、白い影のこの子たちのおかげで、パスが繋がってる。」

「すみませんでした……」

「騎士殿が謝ることじゃないだろ」

 

 苦笑すれば騎士殿が顔を上げた。気が緩んで零れた涙を指で拭っては、浅く息を吐く。どうやらメフィスの中にいると理解したようだった。あの頑固者めと悪たれをついては深呼吸を二回する。思い当たる節が多すぎて、混ざったか、転生してしまったのかと思ってました、と騎士殿が照れた様子で告げる。でも寂しさが晴れたようで何よりだ。

 

「というわけで、ヴァテストゥデレは外に出る器がないからメフィスを通して言葉を聞いている可能性がある。」

「ウィナフレッドさんにメフィスが移動した理由ですか。」

「多分。……騎士殿、ヴァテストゥデレ殿は一部の瑕疵もなく無事だ。器に戻す必要があるが、出て来れなくてもきちんとメフィスの理を中で見てる」 

「それです、主殿の器がなくメフィスの器は消えてない理由。構成する理が灯で器が白な理由はあなたが奪われる前に、意図的にエンセーシュミンに譲ったからですね?」

「その通りです。」

 

 騎士殿は瞬時に俺の『理』に触れて解析を施した。難しい顔をして俺を見ている。魂魄自体を見終わると、ため息をついて俺の頭を撫でた。

 俺が旅人時代器に刻んだ『渦』はメフィスが実質、理、器共に持っていることになる。揃った術式の作用は倍どころか累乗に近い。だから騎士殿も苦戦した。メフィスが白く在れる理由は、中にいるヴァテストゥデレ殿のおかげ。浄化が切れれば浸食がすぐさま始まってもおかしくない。

 割かし早めに、段階的にメフィスを『個』として保護する守護と術式、汚染に対する対処をしなければならない。

 

「主殿が『理』だけ蘇生された理由は?」

「観測された瞬間、ヴァテストゥデレ殿が慌てて神域外に出た為に同じ次元で観測されたという条件が揃ってしまって、その、領域の維持に使っていた概念条文とその余白を全部瞬時に消費して俺の『理』だけ捕まえてきたから」

「愚者の鎖の効果が無ければ介入前に即死じゃないですか。」

「対消滅した後も効果が反映されてたから、理よりもさらに深い霊核と連動している可能性が高いんだよな!初めて分かった!」

 

 その後も殺しかけたのか、と呆れてるが、上司殿は不可抗力だろ。

 

「……、そもそも、記憶に損傷なく復権できるのですか?」

「怪異化が良い方向に作用してるな、正直この事態を見越して念に念を入れて打たれたんじゃないかと思われるぐらいだ。普通に怪異化が無かったら転生措置だと思う。メフィスが永劫回帰の呪いを刻んだ理由が、俺のこの最初の復権時に要素が失ったら何が起こるか解らないからじゃないかって言ってたけど。」

 

 笑顔で威嚇するの止めてくれ。

 

「まぁ、ヴァテストゥデレ殿は出自で言えば魔神の類だろ、置換の術式を俺一個体に当てた瞬間、別の存在として顕現させられてる。で、その瞬間互いに無意識に守護対象を優先した結果、メフィスの器が確定して、メフィスに知性が生まれた」

 

 ドン引きした顔するな。

 

「あなた、怪異になってさらに何に成ったんですか」

「ヴァテストゥデレ殿が強く願ったから、完ぺきに連なる存在になってる」

「神話にでも残る気ですか?」

「俺は偶像として残るなら人生で終わりたいことは断言しておくぞ。こんな事態に成ったのはヴァテストゥデレ殿が神域の構築物質全部俺に宛てたからだな、一回」

「もしかしなくても、あなた、今怪異に襲われたら一発で死ぬのでは?」

「そう思うんだが、器が怪異のそれに取り込まれてる形で、俺の概念が顕現してる。理力が上回ればヴァテストゥデレ殿の願った姿に。伝えられた情報が定かなら、魔力が上回れば器の俺の姿に戻るはず」

「そして現状、その膨大な理力と魔力は回復しない理由が、回路に到達する前に今メフィスの中でエンセーシュミンが食べてると」

「そういうことになる。で、均等であれば存在の割合値が『理』に対応しているのでこの姿のままってわけだ」

「装備がない限り絶対に冥界に潜るのを禁じます」

「わーってるよ。」

「ヘズ、これが一番聞きたかったことなんですが、器を譲られた理由の切っ掛けを話なさい。通常ならあなたはあんな弱りません。何をしました。」

「……、四面楚歌だったので、その、死ぬ前に俺を食わせた」

「怒っていいですか」

「も、もう怒ってるじゃないか!?」

 

 あの時点で顕現する器があるはずがないので、と語れば騎士殿が呆然と俺の『眼』を通して情報を探る。

 看破される前に渡せば、騎士殿が固く目を瞑って白旗を掲げた。処理落ちした時に騎士殿が放熱休憩を求める合図である。あの馬鹿者、あの状況ではヘズに耳飾りを渡してもどうにもならんだろうという声に呆れが混じってる。

 

「何度も言いますし言いましたが、私に譲る前にあなたが生き延びなければならないと言ってますよね?、私は断固として継ぎませんし、それを継がされた瞬間、楔を打って他の者かエンセーシュミンに担わせると断言してますからね。」

「わかってるけど、エンセが生きてるのに乗っ取れるわけないだろ」

「混じったとしても分離はできます。そういった特異な性質を希有に有したので。」

「だけどいやだろ、一度でも大事な存在が消されるってのは。俺だったら嫌だ。」

 

 あなたもあの者も何故そう似た者同士なのですかとかいうつぶやきは聞こえないからな。

 

「ヘズ、あなたの選択肢は尊重しますが、残された側は絶望するということを覚えておいてください」

「お前はエンセといるなら立ち直れるだろ」

「本っっ当にあなたは自分以外には気を回せるのに何故顧みないんですか。」

「頑張って生きてるからそれで許してくれよ。俺はできる限りが尽くせないと、その、死んじゃうし」

 

 長いため息と共に頭を撫でられた。騎士殿のお説教が終わった。やったー。

 

「あ、あと時間を飛んでる」

「それを早く言いなさい……、なぜ?」

「ブラッグドッグでも『長』でもない。あの討伐時の渦の大本の器が俺の器になってる。二度目の対消滅で死ぬ前に、その器に取り込まれてこの時代に戻ってきた。その時に時間を飛んでる原因が未だに不明なんだ。」

 

 白い影の子たちを見下ろして、揺れる糸に指を渡しては顎を擦る騎士殿。位相空間に飛んでますね、と告げられて目を瞬く。

 

「戻った時点のあなたは神域の存在だったのでは?」

「ややこしい順序になるんだが、メフィスの器が俺の器で形成されてるだろ?。怪異の器として認定されているのはどっちか?という話になるんだが。」

「主殿、理と器が分離している為に、もしかして今メフィスが死んでも主殿の『理』が生きてる限り死亡判定されません?」

「そう。俺の中に戻る可能性が有る。逆に俺が死んでも、メフィスが生きてる限り蘇生する可能性が有る。その場合、一度変転してるから、完璧に怪人となる。固定されてるからどれだけ進んでも、怪異の性質は有したまま。」

「主殿に一切メリットが無いように思えるのですが」

「あるよ。知性を保ったまま、怪異でも神域の存在でもなれる。だって『存在』は俺のままだから。」

 

 騎士殿が俺を見つめた。

 

「つまり、理と器を経由されても、霊核の火花浸食されることが一切ないと?、存在の対消滅を成さぬ限り。」

「そういうこと。これが怪異化の最大の良い点だな。最大の難点は、この怪異の分離。『存在』の固定された俺は死んだ時点の隻と陣、永劫回帰の呪いが固定された最弱の状態で怪異認定、固定されてるから、どれだけ強靭に作っても、器が俺になった時点で数値が固定される。ゆえに、両方剥奪されると、守る術がないので、分解して取り込まれた時点で消失する。怪異の効果は引き継がれる。」

「あなた永劫に討伐対象じゃないですか」

「だから、存在の対消滅すればすべて綺麗に持って逝けたんだが、まぁ、色々とあなた達のおかげで誤算が生じた。」

「……メフィスですか」

「まぁ、仕方ない。無垢な魂は守護対象だし」

 

 騎士殿がぐりぐりと頭を撫でてくる。メフィスを生み出した時点で『概念』が歪んじまってるからな、まぁ存在の対消滅も出来なかったかもしれないけど。

 

 

 俺の器は今、陰に潜む白い影の存在に借りてる状態。培養して器を作ったとしても、回路そのものが使えなくなる可能性が高い。理、器共に回路は筋肉と一緒で鍛えるものなのだ。器を一新すると、逆に弱点になる可能性が高い。

 

 そのために作っておいた魔石なんだが、と騎士殿に通達すれば困った顔。

 

「自身の分は作らなかったのですか?」

「二つの余分は白いこの子たちに。魔石はメフィス、疑似霊薬はヴァテストゥデレ殿へ渡しちまった。それに、今の俺だと下手に魔力を持つと感知される恐れが高いから首飾りに仕舞っておいても分解されて消えちゃうから丁度良かったんだよ。アーティファクトの品なら保存できるけど、俺がしたのはただの凝固だし。爆薬通貨に施した高度な術式は俺には専門外だ。」

「対価なく、その器と共存できるのですか?」

「多分。聞いたけど、渡した装備と、魔法の手袋、情報対価で十分だって。ついでにいうと、個として確立するのに、ヴァテストゥデレ殿の概念条文が上手いこと作用してる。現状、……白繭に取り込まれて、内側に保護されている感覚だな。神域の霊核になっても分解されていないから、保護をしてくれてるのは間違いないんだが。ただ、どうにも意思疎通が難しい。念話は通じるんだが、思考が複数混ざるのか、意図する単語が良く飛ぶんだ」

 

 また目線を合わせられては屈まれる。なに騎士殿。

 

「……ヘズ、器の大本は異界時のメフィスの大本の分霊器、怪物化した者たちの残骸、増幅した宵影の器ですよね?」

「そ。メフィスの大本の分霊器は変転して再構築していたからその余波で天秤が逆さまになったんだと思う。騎士殿が浄化の剣でひたすら大本となった媒体を屠り続けた奇跡の結果だな。騎士殿の破片も食べてたから、間違いない。怪異の成れの果ての器だが、俺が浄化した魂の器の残滓だ。騎士殿が抑え込んでいた程度には強大であったが、群や個に分割し、……」

 

 騎士殿大胸筋が誰よりも厚いんだからやめてくれ。

 満面の笑みで覆いかぶさるように歓喜で包まれた後、米俵のように持ち上げられた。全身で喜びを表現されるのは久しぶりである。別れの時の、式への贈り物以来だろうか。動物の子供のごとくひょいと持ち上げられて腕で高い高い。足が宙ぶらりんだ。再び片腕に下ろされて仕方なくガウスの涙をハンカチで拭えば、恥ずかしがって自身の指で拭う始末。今マジで考えなかったな君。

 

「全て、救えたのですか?」

「ヴァテストゥデレ殿がな!。天秤があった分は全てヴァテストゥデレ殿が自らの『門』の神域の中に連れ込んでた。あの暴発時に呪いに壊れていたら無理だったが、全て手繰り寄せたヴァテストゥデレ殿のおかげだな。俺は何にもしてないよ。全部はあの子が自己犠牲を成して常時祓い、浄化を張り続けていたからだ。」

「その一言でエンセーシュミンへの今回の小言は不問にしましょう!」

「対応が甘いが、甘いが痛いぞ騎士殿ー」

 

 これは完璧に器寄りに戻ってるな。騎士殿、ヘルプヘルプ、それいじょうは内臓が出ちゃうって。

 ベッドに降ろされては歓喜を示されていると、入るよーという声と共にウィナフレッドサンが戻ってきた。

 

「……取り込み中?」

「いや、まったく!おい、騎士殿、騎士殿、!」

「取り込み中です」

「嘘つくな馬鹿!」

 

 戻ってきたウィナフレッドが盆に食事をのっけた状態で固まっていた。俺も困り果てて騎士殿の肩を叩くが、解っていても衝動を抑えきれないのか、放してくれる素振りが一切ない。満面の笑みのまま、目を細め、守護を果たせました、と感涙極まった様子で俺を持ち上げて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。こんな騎士殿は百年に一度見れるかどうかの貴重さである。ごめんウィナフレッドと眼で謝って、肩越し、戯れに頭を撫でれば懐くように背が丸くなった。内臓が出る。

 ガウスは基本対面を気にせず我が道を行くから忘れかけてたけど、ここに来てから一度も労わって無かったわ。すまん。

 完璧に飛んでる騎士殿の背を軽く叩いて宥めていると、ウィナフレッドは俺を一瞥した後、慌てて盆を机の上に置いた。

 

「終わったら食べてね」

「すまん、恩に着る。騎士殿今完全に地が出てる。」

「ううん。素直な表現で感心するよ」

「わりかし君も苦労してるのか?」

「え?、ううん。単純に綺麗な喜び方だなって、思っただけ。」

 

 そこでふと気づく。今の俺の姿は理寄りの女性型だった。騎士殿に抱え上げられているので見下ろす形になっている。米俵のように肩に上半身を乗せられた状態。こんな状態で会話をすれば、やはり、正面からのぞき込めるウィナフレッドサンが目を泳がせている。

 ほんと、何でもないんだ、とウィナフレッドがそっぽを向くので何て返せばいい?。なんでもない反応じゃないんだが、と騎士殿を見れば。……騎士殿、急に正気に戻って生暖かい目はやめろ。

 

「ウィナフレッドさん、誓って、騎士殿は不埒なことは働いてない」

「え?、ううんランテッドさんに関しては断じてそっちの心配はしてないんだけど、これは別に動揺しているわけじゃないよ?」

「?、具合がまだ悪いのか?」

「いや、体は快調だけど、あー、うん。エネルギー不足なのは否めないかな」

「そこは物理的に補えず申し訳ない。治療に騎士殿はいるか?」

「大丈夫です。頭の霧も晴れたし、すみませんでした。……ランテッドさんも食事になさいますか?」

「お気持ちだけ受け取っておきます。私は主殿と違って自己再生できますからご心配なく。」

「だとさ。ありがとな。」

「いや、ヘズさん。これはヘズさんの分の食事だからね?。なぜって、理も器も動かないなら外から補給するしかないでしょう」

 

 ランテッドさん、という言葉になぜか騎士殿が深く頷いている。君たち仲がいいよね。

 騎士殿に降ろされるとそのままベッドの上に座らされた。

 

 

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