銀杖の担い手 ライト版 作:海に流れるアリ
ヴァンジョーを呼ぶのは最終手段。それまで、かりそめの休日となった。戻るための研究は最優先で進めています、というヴーヨン・ザゴ殿の辛そうな表情に頷きつつ、俺たちも検討してみますと頭を下げてワンユオ殿に背を向けた。
これは俺が業火を伏せていたから起きた事項だろうか。もったいぶっていたわけじゃない。本当に業火で済むのかという疑問が残る。だから他の価値を示し続けている。
「どう考えても神域全土を破砕して関連する要素を祓う為に冥界に落ちるのは絶対事項なんだよな。」
「ヘズさん、なんで一度冥界に堕ちないと駄目なの?」
「点間門の時間要素が全て駄目になるから。だから全部壊さないと『共鳴』が起きちゃうって結論が出てるんだと思う。ただ、記録されてる個体情報は世界条文に記されているから抹消不可能。それ成すなら一度外に巡るか大本に還って核自体を組みなおさないと駄目だから実質不可能の代名詞だな。……だから、ワンユオ殿のかたる、満足のいく終焉の真っただ中、というわけだ。君の時代においても落ちかけているのはもしかしたらこういった因子が蔓延っている為かもしれないな。」
「でも、もう、この時代じゃ、堕ちたらそれまでだ。……ヘズさんの時代でも、そうだったんでしょう。」
「是だ。残るのは灰色になるまで永遠と防衛を続けることと、狂気と集う灰色の世界の討伐が絶対事項で成される、気の休まらない戦場の世界だから。それでもこの領地の人たちはあきらめきれなくて、最たる模索を続けるワンユオさんに惹かれて居るんだと思う。」
知らせてくれただけ温情がある。ワンユオ殿の評価を見直して偉そうに顎をさすった。精霊を呼んでも正直道連れにするだけで意味がない。改変可能な大本を祓ったとしても、すでに菌糸類宜しく別個体として発生した同種が種をばら撒いて以下同文。詰んでる。
俺に軍師としての才能はない。素直に謝れば、ウィナフレッドが首を横に振ってはあなたとしての決断が一番重要だと肯定してくれる。
ワンユオ殿があれだけ毛嫌いした『業火』のバトン、俺がヴァンジョーの情報を伝えたら完成しまうかもしれない。何が最善かを考えては考えて、結局俺は一人では何もできない無力だと知る。
呼ぶべきだった、と騎士殿に断言されたあの日。騎士殿がそう告げる程の切羽の詰まり具合、アレは詰んだら絶対に呼ばないと駄目ってことだ。多分。
ウィナフレッドが風呂に入っている間、俺はウロボロスの陣を解析しては模範出来る術式を考えていた。
式神の分霊器の骨組みはこの領地由来なので、こいつで大本食って操作できないかな、とワンユオ殿に取り上げられる前の『萌芽の因子』で試して見たけど、キャパが死んでた。死んでたのでワンユオ殿に素材を回収されたのだが。
ちなみに悪さをした後、ワンユオ殿に問答無用で笑顔で式神の分霊器の機構は『眼』で解除されてしまった。式神の分霊器は白影の器に統合されてしまったので、ヴーヨン・ザゴ殿の加護もそのままである。現状維持で問題ないらしい。
まぁそれがある限りそなたの改変以外はアーティファクトが不変で通してくれるであろうよ、とのことなので、召喚式も魔術も使って可とのこと。やったね!
一応現在の禁じ手たる血の権能は、権能を使わなければ置換も行われない。先代殿から承った祝福は俺の権能のじゃないので『体現』は可能。
試しにワンユオ殿の言葉を信じて旅人時代の器に改変してみる。気合を入れないとすぐに戻りそう。不変。器の絶対事項がこれかぁ、と額をかけば、ウィナフレッドサンがお風呂を浴びて戻ってきた。生来の器のまま自然に頭を抱きしめられた。固まれば、悪戯気。流れる様に寝台に押し倒される。手際が良すぎる。
両手を軽く掲げて緊張と共に斜め下に目を反らしていると、苦笑の後、左手を取られてウィナフレッドサンの頬に寄せられる。指が絡んで、そのままウィナフレッドが隣に寝転がる。
「ヘズさん、沢山悩んでるでしょう」
「そらね。」
「僕らが火種になるのを見越して、ワンユオさんは釘を刺しに来てる。僕らが下手な希望を見せつければ、もしかしたら神域同志で戦火が起きるかもしれない。」
「そうね。」
「ワンユオさんは、悪い人じゃないよ」
「知ってるよ。この時代に置いてたぶん誰よりも死力を尽くして存続を模索しておられる御仁だ。だからこそ、部外者である俺たちだけでも逃がす算段を付けてる。身を削って。普通ならば、染め上げて、俺は利用される立場にある。たとえ霊格を保護したとしても怪異であれば、通常ならば手引きした要員とみられてもおかしくない。だから、こうして自由に施行出来て、生きてるだけで御の字。」
「……、何を賭しても、今を生き抜くならば、僕は利用されても構わない。足掻き続けるならば、何年だって付き合う覚悟はある」
「だからこそなんだよ。あの御仁が諦めきれていないのに躊躇する何かがある。恐らく、ウィナフレッド、君が死力を尽くしてもどうにもならない条件が在る。」
目を瞬かれた。これだけ用意周到に俺たちに加護と祝福を贈り、徹底して秘匿を成してしかし手を引けない御仁。打算が無いわけじゃない。ただ、可能性が見いだせないがために逃がす算段を付けざる得ない。考えられる要素はもう一つしかないんだが、俺が彷徨えてもウィナフレッドは無理だ。発狂して自我が崩壊しちまう。そうなると、俺は全てを捨てて内側で保護するしかなくなる。そうなればウィナフレッドは永遠に負い目を追うことになる。俺が怪異である以上、その状況は絶対に避けねばらない。難しい。俺も結局人のことは言えない立場だった。身勝手に考えてる。
ワンユオ殿が開示を成した理由は猶予がないから。もてる全てを尽くさないと死ぬから。そして、俺たちに動かれても破綻する定めにあるから。
死を見過ごせても、それは俺が持ちうる手段が全部なくなった時だ。出来る以上、模索して手段を探さないといけない。何もせずに見捨てたら、それこそ、必死に生きてきた者たちへの冒涜だ。俺の理念も矜持も死んでしまう。
辛そうな表情でウィナフレッドが俺の頭を手繰り寄せた。それからしばし、無言でウィナフレッドサンの労わりを受け賜わっていたが、寝付きたいのに寝ないウィナフレッドサンにそろそろ心が嬉しくては辛くて泣きそうになってきたので、お風呂に入りますと弱弱しく告げて撤退した。
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この世界の冒険者の水準は高いのだが、祓いが不足していたあの世界と比べるとどうしても離脱への練度が少ない。
あのウィナフレッドの時代の危機感理力の高さは群を抜いて高かったのだな、と今日も被弾しに行く戦士集団を見つめながら今日も討伐と遊びにふけっている。
良い手段があればとっくのとうにワンユオ殿が通達を出しているであろう。あの御仁とヴーヨン・ザゴ殿がそもそも匙を投げかけているのだ。横から新しい案が浮かんだと述べるだけの自信が無い。手段はあるのだが、失敗したら全てが滅びるために、俺は今日も覚悟がつかない。
正直、神域の存在が死んでも俺は悲しくても後悔はない。そういった定めにあるモノたちだからだ。それでも回避できるならそうあってほしい。悲惨な未来全てをひっくるめて、俺だけに収束して死ねればよいが、まだ、ウィナフレッドが未来に還せる手段がない。誓った以上、ウィナフレッドに生存可能な未来が無いと、どちらにせよ俺は死ぬ。それに後悔はない。
この期に及んで切り札をまだ隠している。ワンユオ殿から見れば、俺は殺したくて仕方がないほど傲慢に視えることだろうに、察せられても一度として責められたことはなかった。だけど釘を刺しに来た。この定めにおいて『業火』は恐らく諸刃の剣なのだ。
プライベートの保証された私邸以外で業火の話題を口に出したことはない。偏にヴーヨン・ザゴ殿が観測してしまう為に。
どう考えてもワンユオ殿に交渉を持ち掛けないと駄目なパターンかーこれー。
正直であった誰よりも老獪が滲んでて交渉したくない。情に厚い御仁なのは見て取れるが、俺の好感度一切解らないし。悪くはなさそうだけど、ヴーヨン・ザゴ殿が絡むと在らば、容赦はしてくれないだろうな。
騎士殿の苦言がちらちらと脳裏に浮かぶが、俺はしたいように生きないと死ぬ理念なので聞こえません。ご苦労をおかけいたします。騎士殿なら呼べるかもしれないが、そもそも今の時代、封鎖領域を転々としてるから、無理だな。あの異常な数の灰色の世界で騎士殿が抜けたら、普通に戦線崩壊する気がする。
足掛け植物の蔓に乗って上空に弾丸宜しく発射、風の術式を広げて賽の目にして一番大きな核を保有する心臓部だけを残して切断すると、一度だけ回避を緩めて光系列の行動を狙ってみる。閃光、もしくは空振の方が良いかと逡巡したところに攻撃が飛来。植物型の魔物って基本核を潰さないと再生しまくるから、土地の土壌を吸い上げるか燃やさないと駄目なんだよね。普通に痛い。
思い返せば俺の領地の練度も異常だったが、ニハイはそれ異常。おかしくない?。流石に比肩する要素が限られてはいるけど、万全だったら勝ち目がない気がする。誰が指揮してたんだろう、と自ら水の中に飛び込んで電撃を流しに行った戦士殿に敬礼しつつ爆散していく血の塊を風で避けて破砕する。復活したら謝ろう。
ニハイは多くの冒険者を見たが、皆絶対先制攻撃回避マンだった気がする。特に被弾に関しては凄まじい気の使い方だった。
それと比べると、この戦士たちは、練度が、まじで、アマチュアとプロぐらい差があるというか。種族特性とこの再生機構が在ったら当然なんだろうけど。
ウィナフレッド曰くニハイの練度はあの世界においても類を見ないものらしいので、やはりあそこだけが特異なのだろう。
とはいえ、手数も魔術の規模、花火の強さもこちらが上。場数ならば此方が上回る。上なのに、なぜ、こうも練度が違うのだろう。
緊張の差か?、情報統制で言えば、この配られたイヤーカフスだって負けてないと思うんだけどな。
あ、傭兵諸君その地下マッピングできなかった巨大な株が地下深くに眠ってる。やばい。
『眼』で座標を入れ替えて上空に傭兵諸君を哨戒部隊に放り投げれば間髪入れずにたこ足の如く根を一瞬で構築した。槍衾よろしく根の棘を土を裏返して大地を二分割。おまけにそこから放出された種が地面に触れた先から株が生えるから、乾いた大地なのに草が生える。
ぶちこまれた植物の核を置換せぬようにして大地の割れ目に堕ちようとしたら、引きつった顔をするウィナフレッドサンに咄嗟の片腕で引っ張り上げられた。
何わざと食らってんの!とウィナフレッドの怒声が背中に響く。基本一度食らってみないと術の構成が解らないし、使い勝手も違うじゃん?、と告げて干渉不要と申せば、点間を把握した植物の蔓が空間を歪ませて、あッ学習しちゃった、とウィナフレッドサンが上空に全員風でぶっ放してニハイで見た赤いモノリスを周囲の冒険者全員に張る。間に合わなかったウィナフレッドサンの前方に盾に成れば、加速した種にどてっぱらに拳ほどの大穴を開けられて血反吐を履いて笑顔を浮かべれば空間破砕する。
あらかじめ聞いていたヴーヨン・ザゴ殿のお墨付きで再生機構を信じて死んでみることにした。対策をしても、もう波長解析を会得して進化しかけてるんだよねあの株。
司令官の念話と共に座標の入れ替え後、学習した変異種が共鳴できぬよう、術式たる『黒い箱』の中、対策された結界の中で消滅していく。安堵の声が漏れる先、俺はウィナフレッドへ不意打ちの秘匿の箱を掛けると飛び出した。『黒い箱』が消滅寸前の黒点ほどで止まっている。すいませんそれが本体の狙いです、と驚愕に染めた司令官の波長を読み取って座標情報を抜き取れば、加速を敷いて『黒い箱』を内側から打っ壊した人型の白い影が手のひらを翻して空間を捻ろうとする、のを竜種の友人たちが一斉に叩き潰した。読み通り、俺に打ち込んだ種が、模した株分けされた大本の次世代の命核だった。
青杖で額を小突かれる。当たり所悪かったから即死じゃなかった。蠢く肉塊が内側から閉じて行き、すとんと穴がふさがる。まあふつうにざくざくと『眼』で見て穴を再度丁重に開ければドン引きした波長が伝わってくる。種があるが、星の魔力で封をしてたために萌芽しなかった。収穫収穫、と小瓶に詰めていくと普通に額をドつかれた。
「痛いでしょ!?痛覚あるよね!?」
「痛い超痛い。」
「え、痛覚死んでないのになんでそういうことできるの!?」
「どのくらいの痛みなら他人が耐えられるかとか解るじゃん、基本俺は血の陣で要素の回収して破片だろうと誰にも吸収されないし。今の俺は情報機構染みてるから、器自体の損傷は別にかまわないんだよ。俺自身が血で構成を改変しちゃうと大変だから今は体現できないだけで」
「視てる方が痛いからそれ禁止!」
「あーでもさ、やっぱり、見てくれウィナフレッド、こいつら蔓の端にも液があって、これ、細胞自体が種になりかけてる。だからひっかけてられるだけで触れられただけで寄生されるっぽい。ツサニー悪いが俺事燃やしてくれ。これは切断対策してきてるな」
「恐れ多くもガゼットさん、冷静ですが、遠回しに俺に死ねとおっしゃってる?」
「燃やすなんて些事だよ。」
些事なわけないでしょ!と間髪入れず全員に叱られてウィナフレッドに摘出された。抉られると痛いんだよね。後、痛いの普通に好きじゃないよ。必要だから耐えられるだけで。
監視役と指揮官殿に笑顔で出禁を言い渡された。進化を促したために、戦力外通告を出されてしまった。解除されるまで討伐も駄目だっていう徹底ぶり。
でもさ、これいずれ発展する進化の兆しだったじゃん?、とウィナフレッドに愚痴れば無言で頭をかき混ぜられる。萌芽した種、に擬態した『命核』は因子を改変したために共鳴要素はない。しかし、この命核からはリンクせずとも、時限式で眷属の共鳴指示を出せるのだ。怖くね?。だからほら、これを改変してこちら側の式神にできないかなぁと竜種の友人、男性型のハーゼックに持ち掛けたら、ワンユオ殿が回収しに来た。やっぱ駄目だった。でも素材化した植物の部品を売って儲かったからオッケーです。ちなみに燃えても痛みはなかったことから核に寄生されると霊核自体がまずいのかもしれない。検査の結果、因子はなかったけど、情報量がちょっとだけ増えてることから俺の怪異の本能も学習した模様。
死亡復権後、俺の器は無事万全の器にひょいと意識を戻された。しかし他と違ってヴーヨン・ザゴ殿の邸宅の中で、である。
ホログラム装置の検査後、問題なしを告げられた俺はウィナフレッドと共に特級の宿に戻されてしまった。そのため気晴らしに散歩中である。
「……、自暴自棄になってないよね?」
「なってないぞ、どう考えてもあれは討伐に対して有用な情報を持ち帰るための手段だったろ」
「いや、あれは普通に株を採取して別の媒体で行うべきだった。ただの自傷だと思う。」
「そんな馬鹿な。」
東に寄せられた自然公園の森があった。一帯は大きく、地面は整備されているが、七割がむき出しの土地のままだというこの場所は、街から外れた辺境にある。多くの観光客が訪れて自然の日光浴をするのだというこの場所は、いくつかの対の位相世界の為か人が居ない。パス形式になってるね、と告げるウィナフレッド曰く、渡された宿の『木札』が並列した位相に飛ばしてくれるらしい。サービスにしては随分大掛かりな仕組みである。特級の宿の領域内らしく、遊んでも叱られないらしい。なるほど。反応即答、連絡可能なのに従業員の姿が見えないことから、直系管轄の特別扱いなのだろう。周囲に一切監視の目が無かった。
土を返して足跡を残し、緑豊かな景色の中、小川、小さな橋。渡る丸太の三連橋には数重の種類が生え誇る。猫じゃらしのような植物を揺らしては、鼻先をくすぐられてくしゃみをする。朝の散歩、せっかくだから次の日は別の場所に行くとあって、午後の予定に合流するまで散策することになった。
せせらぎの聴こえる柳に似た巨木の下、丸太の長椅子に腰かけて水筒の水を飲んでいると、ウィナフレッドが隣で顔色を窺っている。
何か食べるかいと借り受けてきたバスケットを開けば、サンドイッチを選んでウィナフレッドが両手に持つ。
俺もたまにはご相伴預かるか、とマフィンを手に取って食べ始めれば、無言でウィナフレッドが俺を見る。
手を拭いて、どうしたんだいと目線を合わせれば、ぽふりと両頬を手で挟まれた。
「ヘズさん、僕はね、無力が一番応えるよ」
「そらね」
「手の尽くしようがない事態に至ると、残せるものを選び始める。その時、私情によって左右してはいけない事象も絡む。優先順位を嫌でもつけないといけない。……等しく命を預かっている為に。」
「そうだなぁ。」
目尻を撫でられる。ハンカチの上、傍らに置かれたサンドイッチを持ち上げては僕らは種を問わず命を食べていると告げる。是だ。
精霊の要素と星の恵みの絶対事項を顧みると、進化のサイクルを経て食物の摂取は徐々に減っていくらしい。
巨大な竜種も実は果実や穀物を好む草食なのだが、其処に至る前は狩猟をしていた生物だった。種として成型して放たれたヒュラス・テラーでさえその機能は残されている。進化すればするほど、自身で要素を循環できるために、その過程を楽しむ自由も在ろう。種の歩みと命題は個々によって定められていた。
そして、人という種に宿った我々はそれぞれその可能性に賭した自由を得ている。まぁ、それに踏ん反り替えって星を壊していたら馬鹿の極みなのだが、現実は堅実に研究を進めていてもふとした負の連鎖で星が滅ぶこともあった。らしい。
つまるところ、生存競争の末の終焉なのであろう。殴り合ってでも生を掴まんとするのは、どちらの進化が正しかったかという矜持もあるのかもしれない。
恐怖は種を低下させるから、俺はやっぱり武力より、手を取り合って努力、改良、改善を望む種の方が好きだが。矛を交えられると、そうもいってられないのが現実というやつである。自衛のための手段は必要だとも。
「……俺は君の傍に居ると命を奪う」
「それは過ぎたよ。奪われる以上の循環が完成している。僕が肯定を成せばそれは問題じゃないじゃない」
「効率は解ってるが、俺の真情が駄目なんだ。心が折れたら火花を燃やす意思も消える。君には薄情に聞こえるだろうが、強制的に君の命を奪うことがあれば、俺は自壊する気でいる。」
「あなたは僕と契約をしてくれた。」
「……、是だ。だから君に命を繋げられている。条件を対価に、君は無償で俺に理由をくれているんだ。これは一方的な行為ではないと。その上で、この世界をどうにかしないと未来に戻れないなら、最悪、君と離れる可能性がある。それでも、未来に同時に合流できるはずだ。契約は成功させる。」
もそもそと食べるウィナフレッドの顔が暗い。吹く風で撓る樹々の葉音をききながら、食べ終わるのを待つ。
食べた端から互いにエネルギーに変わるのは、精霊寄りの器の利点だ。精霊とはいかなるものか、と問われれば、それは光系列のエネルギーの大本なのである。万物、生物に宿っている為に、全員の器が精霊化することは可能。機械だろうがゴーレムだろうが、『世界条文』が保証している。
怪異の末、変転して安定した生物や怪物は、感情や意志、自然の副産物を多く好む。『霊果』は要素が具現化するもので、星の魔力や感情の波の中でも生まれる。美食家が居るならば、こだわりがあるものもいるだろう。負をエネルギーに変える種も少なからずいる。
「俺の最優先事項は君だ。この領地じゃない。」
「……でも、僕が望めばあなたは付き合ってくれるでしょう。」
「既にお二方に先手を打たれているよ。火花の開放が最優先。それは変わらない。部外者にできることは限られている。」
「でも、僕らが来たから過程が変わったなら、未来だって覆るかもしれない。それを目の当たりにしたのなら、協力してくれる人もいるはずだ。」
断言できる真直ぐな瞳に憧れる。
「情報の収穫が大量で、できるなら実地にて集めて未来につなげたいと思っている。恐らく君も感づいているが、君たちの厄災と異界の因果がここから始まっているかもしれない。ガーランド国が予見していた情報網の一つがこの世界の霊格ならば、対策が可能かもしれないんだ。……しかし、俺が知る過去に飛んでいる。だけど、もしも、ここが過去でないのならば、ここはどこだろうという話になる。確証が持てない。」
「確証が持てたら、僕らは未来に戻れる?」
「戻れる。『長』が呼べる。本線が別ならば『過去』に該当しないのでパスが通じる。だけど、パス自体が今はないんだ。永劫回帰の呪いが稼働していないように、器のリンクが途切れてる。白影のモノがいれば、パスが通じる証明になる。でも白影の子たちはどれだけ呼び掛けても、存在自体がいない。」
「地続き、徒歩で未来に行くとしたら?」
「その道を整備するために、やっぱりこの世界の存続を模索しないといけない。滅んだら、ブラックドックの管轄ではない冥界じゃ、君は生き残れない。」
「過去の確定できない為に、カードを切るか悩んでいる?」
「是だ。本来であれば、ヴーヨン・ザゴ殿に全面的に協力をしなければならない立場だが、先の討伐で出入り禁止の措置を講じられて確信した。この世界は一度学習されたら終わりなのかもしれない。進化の速度が異常だ。ニハイのように。」
開示できない要素が多すぎる。だからもしも独立して動くことを決めたらヴァンジョーは呼ぶ。それはあいつと互いに誓った契約でもあるから。
それでも、薄情でも、友人に生き延びてほしいだけの情がある。数ではないが、大切な者が増えれば増える程、相対的に責務は膨れ上がる。
ヴーヨン・ザゴ殿も、ワンユオ殿もきっと、大切な何かを選び始めている。あの人達だって、日常を謳歌していた町の人だって、等しく。
この命題は、六百年の経過の中、オフラインの時にいくらでもやってきた。それなのに、今はそれが辛くて仕方がない。見捨てた。殺した。だけど、いつだって、艱難の中、諦めきる者たちがいた。
一度に水筒の抽出する限界まで、コップに水を注ぎ飲み干した。はやる気持ちを落ち着けるために断りを入れて、長椅子をゆっくりと立ち上がって、せせらぎの聴こえる方に歩く。
その最中、降る道中、川辺に降りる前に腕を引っ張られた。俺を繋ぐ細い腕。木の幹に凭れかかってゆっくりと目線を合わせれば、悲痛そうに俺を見ている
腕を離したウィナフレッドさんが俺の両手を取る。
目を反らした。一工程で風の座標転移、長椅子に誘導されて、座らされる先、ゆっくりと正面に屈みこんだウィナフレッドさんが見上げる。
下を見ても駄目。上を見てもきりがない。繋がれた手の中、現状で最善を求めるならば、俺達は指示があるまで何もしない方が良いと告げる。積年の努力を無駄にするかもしれない。それが千年単位で織られた末の結末ならば、猶更。俺たちは何も知らない部外者なのだと。
記録すら残っていなかった過去の事象、現在進行形だが、保存される未来が無い。ただの位相世界ならば、確実に先代が協定を結んでいたはずだ。先代の名も知っているのに、どうして交流が無かったのだろう。
これだけ大規模な神界は隣だってあればすぐに気づけるはずだった。なのに、俺の知る過去の一切では、文献を紐解いた記憶すらない。
未来であろう数年後でさえ、領地に居た時でさえ、風聞すら届かずに忽然と姿を消した。
繋ぐ両手に縋る。指に力を籠めれば、熱いぐらいの激情と共に握りしめられる。固く目を閉じて、滅ぶ定めにあったとしても、足掻いた過去がここにあると告げる。
「期限は未定。未定の未来への足掛かりはない。一蓮托生だというならば、君ならばどうする。」
「僕が全て集める。」
「この領地において俺たちは部外者だ」
「端でも携わって分岐が成せたなら、新しい可能性が見つかるはずだ。僕にあなたが来てくれたように。」
その言葉の強さに動揺してしまった。無言で言葉を紡げずに眉を下げれば、俺の弱さが露呈している。眼を瞬いたウィナフレッドサンに謝罪を入れて、片手を外した。
首飾りに指を這わせる。俺の指環はネックレスのチェーンに通して外している。二つの指環が首飾りと共に揺れるが、不可視の透過であるために視えはしない。それが俺の意志で一瞬煌めいては、消える。
二人きりの話し合い。場を作るために円陣を足元に浮かばせた。黄緑色の五重の円が簡易に防音、認識阻害の結界を張る。不可視となった空間の中で視線を交わすが、彼女はすぐに視線を外す。
「……、ごめんなさい、僕があなたに一緒に記憶を見てと言ったばかりに、地獄を歩ませる決断をさせてしまっている。あなたの体調の不安定さは、僕がよく知っていたのに。」
「これは事故に等しい、こうなる未来は誰にも予想できなかった。君が、謝る理由は何一つない。むしろ俺がいたために、起きた可能性が高い。申し訳ない。」
謝罪を口にすれば首は横に振られた。
「……先の君に、この事態が予見できたようには見受けられなかった。これは偶発的な事故だ。被るようなことはやめてくれ。」
「『――――――』」
苦しそうに告げられる先。口に出せない縛りが見えた。契約の対価だ。……これはまだ、進行形の契約だ。この領域でさえも発動するならば、可能性は二つ。
立ち入れない関係の中に、俺は土足で入ることは出来ない。困り果てて、空いた片手を蓋をするように彼女の手の上に戻せば、俺の手の甲に指先で触れて、祈る様に縋られて。……。ウィナフレッドさんと呼びかけて、泣いてしまっているウィナフレッドさんに手を伸ばす。オーバーコートを貸して顔を隠す先、両手で握りしめられる。右手、腕裾の手に片手を添えて、涙を掬って前髪を梳けば、眼を瞬いて混乱している。予備のハンカチ、置いてきちゃってるんだよな。裾布でもいい?、と、予備の制服を取り出せば無言で耳を赤く染めている。
「……俺たちの未来が君たちの世界を食いつぶした結果かもしれない。俺が気づけない事項を君は気づいているのだろう。ごめんな、責任ばかり背負わせてしまっている。」
「逆でも、仮にそうだとしても、その結果、あなたはまた、……。」
力尽きたご様子。気力が消失してしまった様子の体躯は力尽きている。
一先ず地べたはよくないな、と抱き上げれば、足の上、素直に腰を下ろしてくれたウィナフレッドさんが俺の頬に指先で触れてくる。
謝られる。祈りを込める様に縋られて、面を伏せられる。泣かせてしまった。揺れ返しをつついて、安定してないのに気丈に振舞っていた彼女に無理をさせてしまった。背中をさすっていると、涙がさらに零れて来る。あー、トラウマを刺激してしまったかもしれない。
「巻き込んだのは、僕らなんだ。あなたの成果は決っして死を追及される業なんかじゃない。だからこそ、ヘズさん、教えてください。あなたが生きようとするのは何のためなの?」
「俺の為。」
「だから、あなたは後悔が無いために終わりを手段として持ち込んでしまう。誰が、死んでほしくないと願っても、あなたはそれを置いていける。僕はそれが悔しくて、仕方がない。……あなたに責は無いと解っているのに!自分勝手に、つらくなる!」
深い悲しみの気配がする。そのまま無言を貫いて、固く目を瞑ってとりつくろっては、独り言を聴いてもらえないだろうか、とぼやいてみた。彼女の寛大さの示しである頷きを以てそれは受け入れられた。
「あなたはずっと俺を救い上げてくれる。俺の知らない本心も、欲望も全部。俺の寿命はそんなにない。それは開示した通りだ。いつ眼が覚めなくなるか、その感覚さえも無い。綱渡りの末、ウィナフレッドさんの善意で、俺は生かされてる。一方的にあなたを食いつぶして。責を追わせて。……いつかの未来、俺が望めば延命できるとしても、俺はその意思を受け入れられない。俺が壊れてしまうから。どうしてかと問われる前に簡潔に答えると、俺の性質だ。そして、俺等の号でもある。未来を考えると俺の一族は気が狂うんだ。」
「代行者を降りたのに?」
「代行者を降りても、改変が成されている。そういった受け入れ皿に改造されてしまっているんだ。」
手の中、非常に激しい怒りが渦巻いて、周囲に風を起こすウィナフレッドさんが俺を見上げている。苦るしそうに。笑して、そう怒るなと宥めれば無理に決まってるじゃないかと切り捨てられる。なんとも、情に厚いんだこの人も。彼女の手を取って、ゆっくりと屈んだ。自身の頬に彼女の手を借りて、押し付ければ、途端霧散する怒気と気配。瞳越しに直線を結べば、俺自身が望むことはない結果が現れる。まぶしいほどであった。皆無の解答と応答だけど。望まれる度、求められる度、生きる意志が湧く。つらいほどに、きれいとはこういうものだろうか、と余韻が浮かぶ。照れが浮かばないのは初めてだった。
「あなたに救われている。在るがままのあなたに、心底。これが俺の精一杯の答えだ。これ以上は紡げない。だけれども、それ以上に応えてあげたい気持ちが、ある。」
「……、……。」
屈みこんだ俺の手を取り、ウィナフレッドが両手を握りしめてくれる。なぞるように、無言で指の腹でウィナフレッドを労われば、後悔の念と共に、わずかに慌てる気配。そのまま無言を貫いて、座標と体勢を入れ替えてウィナフレッドの手を取った。手の甲に額を当てた。祈り、戻し、両手を広げた上に彼女の手を添える様に置く。君と出会ってからずっと思っていたことなのだが、と添えた。
「承るささいな安らぎに、一生の感謝の念を抱くのは間違っているだろうか。一命をとりとめて死力を尽くし、生涯をかけて終わりを定めるのは非難されることだろうか。」
「……」
縋るように首に腕を回されて、大好きと云われた先、激情が渦巻いて力を籠めたくなる腕を必死に抑えた。
僕がたとえ今生の愛を囁いたとしても、使命があるためにあなたは気が狂うと告げられて、息を呑む。
「どうしたらあなたを繋ぎ留められる?」
「……、……、……。」
紡ぐ言葉を呟けずに区切ると、見上げたまま、彼女は此方の意図を静かに待ってくれている。
――胸が苦しい。応えたいのに、理性が全ての邪魔をする。解っている。地獄の道連れは、最も嫌うことだ。
この結末を往くならば、答えたら最後、この人まで道連れにする。それだけは、俺は、絶対に嫌だ。
「……怪異のきっかけは様々に在れど、二つある前身は情報機構化の術だったとこの時代で知った。僕の知る世界と、この世界の怪異という性質が機構染みていることも。だけどあなたの知る怪異の前段階の宵影は九十九の成り立ち。恐らくあなたの世界を侵食したのが、ここか、僕らの世界だ。もしもです。ヘズさん、あなたが、……死すらも取り上げられてこの世界に招かれたとしたら、どうしますか。」
「それはもちろん、石になって不貞腐れて因果を断ち切るが?」
「らしい答なのは納得するのだけど、あなたは恐らく独りになっても永遠に考え続けると思う。そして与え続ける。その上で告げるのだけど、僕等は何度巡っても会いに行ける世界に居る。火花がある限り。この世界の法則は知ってるよね。そこでね。もし、僕が、仮にそんなあなたの姿を見つけたらね、永っっ遠に保護を司ると思う。たとえ置き去りにされても気合で追いつくし」
「え、なんで!?」
「これはね、ヘズさん、僕は火花を分ける手段を知っている。貴方が望むならいつでも差し出していいと思ってる。むしろ与えたい。そして、それはこの領地の者の総意だ。ライバルがいっぱいいる」
「え、怖」
「『寿命が尽きるならば延命を。』、……僕らは手段が在るなら何でも使う。あなたの権能は有用すぎる。そして僕の星の性質も。開示するべきだと踏んだら僕はワンユオさんの一存に任せる。互いに僕らは気づいているね。もうここで終わらせないと、未来では打つ手がない。だからこそ、収束してなければ因果が成り立たないんだ。僕は歴程の全てをヴーヨンザゴ様に曝け出した。未来につながるなら、過去から布石を打てる手段が幾つもある。釘を刺されても、僕らでなければ動けない立場がある。その上で、僕の完全な私情を告げるね。ヘズさん、僕はあなたが誰かに染められるなら、自身の手で染めたい」
「……きみ、まじでさらっとすごいこというな……?」
「そして、あなたは僕の気持ちをきちんと把握して理解している。だけど答えられない制限が課せられている。それでもね。ヘズさん、向き合われなくても、一方的なものでも、続く形は沢山あるんだよ。愛も憎も、情も罰も、法たる絶対の裁定でさえ、……利己的な面がまさることもある。たとえ式の過程で結末を迎えても、回答が無くても、僕はこの日常で培った全てが宝物だったと断言できる。あなたはもう僕に随分な思い出を残してくれた。たとえ短くてもね。嬉しかった。楽しかった。」
「……。」
「あなたが僕の弱音を聴いてくれた時の様に、僕もあなたの寄る辺になりたい。これは僕の我儘で、あなたはそれをくみ取ってくれる人だと信じています。もしも明日が来ないなら、僕の我儘を聞いてはいただけませんか。」
それでもあなたが死に至るまで弱音を隠すなら、僕たちは利己的な面を優先するかもしれないと告げられて、意志全てが白旗を掲げる。
意図的に触れられて、無意識のどこかで、何かが壊れる音がする。それは怖いものではなくて、俺の弱さが欲しいと、この人が云ってくれるから、本心が揺さぶられて、反射的な本能が疼く。
こんな短い間柄なのに、あげられるならば全てを差し上げたかった。混乱する理性は既に何を考えているのかも自身で解らないほどになっていて、口元を覆う。眼を閉じて、暗闇の中。暴かれるならこの人が良いと、心の底で思ってしまった。一瞬息が短く刻まれて、冷静を取り繕って、固く目を閉じる。霊核に引き継いでいた『眼』の機構を一時的に外して、首飾りの中の秘匿を解いた。気配の変化を察知して、緩くなった指先へ弱く縋った。ここまでは駄目だ、止まれと命じて、固く歯を結ぶ。
「……ヘズさん?」
「……っ、君に、……」
ブレる視界の中、久方ぶりの肉眼でウィナフレッドさんを見れば、息をのんだように彼女の瞳に『緑色』の瞳をした俺が映っている。逆鱗型のアーティファクトの色ともまた違う、俺本来の色だった。
「君が察するほど取り繕えず、無力を嘆く暇もなく、提示されるレールに乗るしかない俺は今、とても悲しいのだと思う。」
「うん。」
「ここは過去だ。君も知識として知っているように、これから来る惨劇は未来たる俺たちのいる世界では、一切なかったものにされる。神域も、この土地に住まう人々も生物も全て。これだけの神域を維持できた同胞の存在もいるのに。」
「……、うん」
「友誼を結び、温情を賜り、好意を寄せられ、生活を謳歌する日常を見せてもらった。知恵を借り、力を教授され、忘れかけていた記憶を手繰り寄せて、懐かしむ幸せをもらった。……暖かい温もりに触れて、肩の力を抜く安らぎを受け賜わることができた。」
この世界の人々は足掻いて藻掻いて、必死に今日を生きぬいている。出来ることに限りが在ろうと、生きた証を残す算段を付けている。家族もいる。友人もいる。励む学問も趣味も遊びもある。それなのに!
「過去は変えられない。それは事実で、不変であろう決定事項だった。だが、その事実は未来にいる者が告げる言葉でなければならない。奇しくも時代を超えて、俺の今はここにあった。そして、傲りであろうと、多少なりとも力があるんだ。あるがために、俺は出来ることがないかとずっと探している。俺の優先事項は君の保護だが。もしも、もしも、友誼を結ぶことを許されるなら、俺は彼らと時間を費やす幸運を願えればと思っている。」
「……、」
「滅ぶと知っていても日常を守り、時間の分からない中を生存するために情報を探す。それはきっと君たちが常に行ってきたことで、俺には想像のつかない尊い仕事だった。目の当たりにして初めて突きつけられて、こんなにも苦しくて切ないものなのだと思い知らされた。……」
言葉を終える前に涙が零れてくるのに気づいた。我慢すらできなくなった感情があふれ出して、揺り返しで駄目になってる。反射的に貌をそらした。
無言で口を覆って顔を背ける。謝罪をこぼしても手は離されず、俺は地面に膝をついたまま。ベンチ越しに触れ合う手が結ばれて、もう片方の手が頬に伸ばされる。
小さく触れる許可を問われて無言で是を返せば、壊れモノを扱うように優しい手つきでハンカチと共に涙が拭われた。
「ヘズさん。」
「……もう十分だからいいだろうか」
問えば笑顔の駄目だし。厳しすぎないですか先生、と目線を下げれば苦笑される。
次に見せてくれるのがいつか分からないから、と希うように願われて、情けなくも眉を下げた。腕に涙をはらって、呼吸を整えてウィナフレッドさんを見る。まさか封を掛けた日常を思い出すとは思わなかった。
引き出せる記憶に限りはあるけど、俺は生きていた。そして、それはここの世界の住人も同じ。同じ痛みを感じる機構を持っている。
「辛いのは、全て俺の弱さだ。君も、騎士殿も上司殿も、温情を受け賜わった先代にも、友人の彼らにも。こんな俺にも親愛を示してもらうと、辛くなる。――俺という偶像は、君が視るような優しさできたものじゃない。ガゼット・ライラック・ヘズ・セモニ・リンギーチ・オブスサーバー、それは俺のこの世界の身命と真名だが、全てを費やしたものじゃなかったんだよ。答えられないのは俺のわがまま。全ての自己の業を自身で負う為に制約を設けて、雁字搦めに縛った。だから否定も言い訳もない。なのに、弱っちいから君を振り払うことができない奴なんだ。……君が優しさから切り出してくれた選択だって、云われて初めて、俺が言うべきだったと思ってる。君を置いていって!、俺が全てを解決して!、君をすぐに未来に戻してやると!、断言することもできない。できなかったんだ!」
年甲斐もなく、輝きを見せつけられて感傷に浸っている。すぐにでも切り替えて目の前の人を安心させてあげねばならないのに、気持ちが渦巻いて止まらない。馬鹿みたいに正直に感情をあらわにしたせいで、答を口にできず。不格好に離れようと指を放してくれないかと窺うように願えば、逆に結びが強くなって、立ち上がったウィナフレッドさんに引き寄せられる。情けなさ過ぎて、もう嫌だ。
「ヘズさん。僕を見て」
気分が最下層に落ちようとしていたのに、ウィナフレッドさんの声で今に戻る。上げたくないと首を横横に振れば、ため息とともに優しい抱擁が頭を包む。意識しない間にこの人の声で我に返るほど、信頼を置き始めている。再度声を掛けられて二度目にようやく応じれば、最中に腕を引っ張り上げられては真っすぐに立たされた。
「辛くても、あなたはきちんと前を向いて問題に向き合ってる。答えが出なくても、模索して足掻いてる。それの何が悪いの?」
「この世界は結果主義だ」
「至る答にヒントを得るのは駄目なこと?、たくさんの支えと先人の軌跡があって、僕らは生きている。答えを出すのにバトンを渡しちゃいけないなんて誰が決めたのさ」
「だが、ここではその答えを出さないと全てが滅びる。」
「滅びたとしても、終わったとしても、それは全部、意味が無かったことになるの?」
「……。」
優しく微笑まれて、名前を呼ばれながら結ばれた両手が熱いほど。零れる涙、ごめんなさいと謝罪を続けようとすれば、告げる前に肯定でさえぎられて、涙を優しく指で拭われる。きっと俺は情けない顔をしているというのに、何を言う前にも許されている。
顔を伏せても見上げられるから、目線を斜め下に反らすしかない。顔を覆いたいぐらい、情けなさすぎる心境も相まって再び沈み込めば、屈みこんだ先にもウィナフレッドさんがついてくる。名前を呼ばれても、目も反らせない。応えたいから、見つめることしかできない視線の先、一度何故か瞼を固く閉じた後、何かを吹っ切ったように両手が結ばれて、勢い良く立ち上がられた。
「ヘズさんは、親愛にこたえたいと思ってくれるんだよね。」
「ああ。」
「でも、色々とやらなきゃいけないことがあって、でも見捨てられなくて、自分だって精一杯なのに、他者を優先してしまうんだ」
「いいや、それはちがう」
「違くないよ。ヘズさんが悩むのはずっと他のことじゃないか。あなたは自身のことなんて顧みないのに」
明るい煌めきが徐々に宿って。困り果てた俺が映っている。包まれた手を見つめれば、指をなぞられて顔を上げてと告げられる。応えれば、笑ってくれるから、馬鹿みたいに救われた気持ちになる。やっぱ無理だと腕に顔を伏せてベンチに凭れれば、指をなぞられて結び付けられる。この人絶対に離してくれないでしょ。
流石に買い被りすぎである。困り果てて俯けば、ウィナフレッドさんが結んだ手を揺らすから俺の腕も揺れる。気が付けば互いに立ち上がったまま、俺も自身の足で立って彼女を見つめている。
ヘズさんと声を掛けられて片膝をついて顔を上げれば、頬に口づけを受ける。何故か逃げれない。本心が邪魔してる。
悪戯気なウィナフレッドさんが、外そうと思えば外せるのに、と今度は目尻に祝福をくれては、僕のために捕らえられてくれていると耳元でささやかれて赤くなる。微笑まれてぎくしゃくとする。
「あなたは今、真剣に僕のことを考えてくれている。」
「……当然じゃないか」
さらにあなたはお人好しで、精一杯全力を尽くせないと弱る人だと断言されて二の句が継げなくなる。掻きまわされる胸の感情。撹拌して混ざりきってしまった感情に名前が付けず、苦しすぎて息をこぼせば凭れかかる様に肩に引き寄せられては、ようやく外された腕で抱きしめられては背をさすられる。放してくれと言えば否が返され、せめて立ち上がらせてくれと告げれば固く拒まれる。相反する様に笑われても、その声は温情に満ちている。縋りつきたくなる意思を押し殺して、頑張って矜持を熾すが、ほぼ湧かない。
意地悪はやめてくれと弱弱しく窺えば、一瞬だけ間が置かれた後に風の浮遊でウィナフレッドさんに持ち上げられた。椅子に座らされて、見上げる先。煌めき増して何故か上機嫌なウィナフレッドさんが俺の頬に手を添えては額に口づけを落とす。
なんで元気なんだいと涙ながらに告げれば、彼女は照れるように笑っては、何故でしょうと答える。両頬を手のひらで挟まれてはウィナフレッドさんの瞳が心底うれしいのだと歓喜する。
「僕はあなたの在り方に惚れている。悩んでも、見捨てようと、逃げようと、弱くても、僕は今を悩むヘズさんがとても好きだよ。もちろん完璧を目指すのは素晴らしいけど、理想であり続けるのは、僕は治癒士の観点から可としないかな。」
「……君は大人すぎる。」
「あなたはきっと、今、とても深い悲しみの中に居るんだと思う。あなたは文字通り死力を尽くして結果を掴み取った人だった。それは確実に成し得たことで、この世界ではまだ誰も到達がしたことのない景色だった。終幕だと語れる未来を以て。」
「ああ。」
「ヘズさんは、ようやく日常に戻っていく明るい未来を見れるはずだった。それなのに、……いつの間にか巻き戻っては進んで、あなたが望んだ希った未来が消失した。……あなたは独りぼっちでこの世界にいる。今までの話を聞いた僕なりの解釈なんだけど、あってるかな」
「うん。でも、騎士殿が居るし」
「あなたは置いていくつもりで線引きを守ってる。頼れても、本当の意味では共に在れない。だから、辛い。」
「……」
「……無責任に僕を残していくのも辛いのでしょう。」
駄目だ、さすってくれる手が優しすぎて涙が止まらない。片腕を外してもらって、面を覆って情けなくも号泣していると、顔を上げてと言われる。嫌だと告げれば、正面にウィナフレッドさんが居た。立ち上がったウィナフレッドさんが頭を抱きしめてくる。そのまま頭をなでると首筋に口づけを落とした。そのまま俺の横に着席をして、ウィナフレッドさんが俺を見上げてくる。
「全ての結末が終わりを迎えるのだとしても、僕はその過程で足掻いた軌跡を尊ぶべきだと思う。その過程にこそ一番の価値があって、今を積み重ねた瞬間の連なりが奇跡の様に紡がれて、最後に至ったのだから。」
「救われない結末は俺は嫌だ。どんな暗い道を歩んだって、望んだ結末があってこそだ。光がなくちゃ全てが影になってしまうじゃないか。」
「望む結末が暗い道の先の果てだったら?」
「その闇の果てに再び光があればいいと願う。それは法の下にある平等な権利だ。」
「……闇に染まっても?」
「いくらだけ闇に染まってもいい。だけど、その最後に安らぎが在って、できれば本当の意味で終わりがあってほしい。一人切を望むのならば尊重を。しかしそうでなければ誰かの手を差し伸べられる機会が在ってほしい。堕ちても砕けても、再起する火花があるのならば、また試行錯誤して、助けられて、再び光に戻っていければいい。心折れてもいい。失敗してもいい。だが、どんな結末でも、救いだけはあってほしい。」
「終焉の迎え方はそれぞれだけど、そうだねぇ、どんな結末であれ、誇って、あの時は楽しかったねって笑えるほうが好きだなぁ。祓ってくれる人が居たらなおさら素敵だね」
何を言っても肯定してくる。無敵かこの人。
「ヘズさん。あなたが頑張って一緒に居られる機会が少なくても、その分僕が頑張って一緒に居れるようにする。悩んだ時に腰を下ろせる場所を用意する。涙がこらえきれなければ、一人の時間を作るし、今のように止まり木の様に見てくれたっていい。全てを融通できることは確約できないけど、寂しい時に、弱音を吐ける場所を作ることを約束する。……たとえあなたが選んでくれなくても、僕はあなたに与えたいと思ったものを渡す。これは僕の自由だよね?」
「そう、だな。」
「ねえヘズさん、僕はやりたいことはたくさんあるけど、いつだって死ぬ覚悟をしている。理由は様々にあるけど、それがやりたいことを優先した結果なら仕方ないと思う。だからこそ、ヘズさん、僕もあなたも、死にたがりではないはずだ。バトンを置けない過酷な使命があっても、前に進むしかない。だからこそ、今休める時に休んだ方が良い」
「――っ、誰かに代わりを務めさせるなら、俺は死んだほうがましだ!」
こらえきれずに衝動的に出た言葉が信じられなかった。立ち上がって背を向けたまま一拍置いて口をふさぐ。
こんな子供じみた癇癪、従者時代だってしたことがないのに、よりによってこの人に不安にさせる言葉を吐いてどうする気だ。
鈍間にも口を塞いだ手が放されて、ウィナフレッドさんが微笑んでくれる。八つ当たりされたのに、あなた、僕は真情を話してもらう方が嬉しいよ、じゃないんですよ。
「どんな気持ち?」
「それを今聞くのか君……?」
再び結ばれた指に捕えられて顔を背けるが放してくれない。鳥のさえずりが届く数秒が経っても全然指が離れなかった。弱り切って頼み込めば、大変の良い否が返ってきた。そこで拒否されるのは困るんですけど。
「頼りないのは解ってる。だけど、僕とあなたは運命共同体のはずだ。あなたが僕の不調を尊重してくれるなら、あなただって自己管理に時間を割くべきだ。許されているのだから。」
「だが、そうするとヴーヨン・ザゴ殿達にさらに苦労を掛ける。俺は仮にも神域の存在だったんだ。これぐらい一瞬で切り離せる。時間が限られているならば猶更動くべきだろう。」
「……ヘズさん、僕は休める時に休むよ、じゃないとつぶれちゃうから。釘を刺しに来た意味がよくわかる。……ヘズさん、あなたは予想以上に、休むことになれてないんだね。あなたがそこまで頑なに怖がる理由を聞いても良い?」
「……怖い、?」
「あなたは休んだらすべてが終わってしまう様な焦燥感に駆られてる。必死に感情をはぐらかしても、鈍らせようとしても、あなたの性質じゃ不可能だ。」
否だ。代行者時代は可能だったと告げれば、今のあなたは条件がそろってないという。なんでバレてると赤面すれば、触れられる度に無言で暴かれる。今すぐ離れたいのだけど、察せられて先手を取られている。首飾りが起動しているのは確認したのに、ウィナフレッドさんに触れられていると、加護も祝福も、何故か意味を成さない。
考えあぐねて、言葉を探す、ぐるぐると巡る単語。応援する様に擦られた指先の熱が脳の奥を焦がすぐらい苦しくて、何も考えられなくなる。
「ずっと、ずっと君のことを考えていた。」
「……、ウン」
「気が付けば、深く考えてしまう。どうしてこんなに君に対して心が揺れるのかを。仮にも六百年時代を過ごしてきた。中身が伴ってなかろうと、浅くても歴程と共に経験はある。その中で、経験したことが無いほどに、ひどく感情が揺れるんだ。……秘匿を切ったせいもあるが、在っても氾濫しそうだった。この感情は、これは俺の本心なんだ。そうでなければ伝えられる熱に応じたい等と思うわけがない。代行者時代に徹底して検査したから、俺は自分の感情を分析できる。」
「……うん。」
「出会って間もなく君に救われて、立場もあろう選択の中、君は迷うことなく俺の手を取った。もしも他の誰かに助けられても俺はきっとすぐに姿をくらませたと思う。君が居るから名残惜しくて、許されることに甘えて、自分勝手に惹かれて、懐いてしまった。」
「僕のこと好き?」
「解らない。解らないんだ。君の求める回答を口にする誠実さは俺にはなく、永劫口にしたくないと思ってる。口にできないでくれと願ってる。短すぎる時間の中、あらゆる原因が絡み合って俺たちは強制的にこの関係になってしまった。」
「語る境遇は平等と平和によって保障されてないと思い合うことも許されないの?」
「この関係はどこかで選択肢を一つ変えれば共になかった運命だった。」
「じゃあ運命だね。」
ね?。じゃない。涙目のまま呆れて視線を向ければ悪戯気に笑顔を浮かべられる。あなたが弱音を口にしてくれるのは僕は嬉しい。だからその心情の一端を僕に汲ませてはくれないかと問われて、目を反らす。駄目な理由を問われて、何故駄目なのだろうかと、滑稽にも首飾りに触れてしまった。駄目に決まってるだろ。今は怖い理由だ、怖いって何だっけ。出来る限りを尽くせないと後悔をすると告げれば、ウィナフレッドさんがため息とともに抱きしめて来る。この理由じゃだめらしい。深堀しろと無言で促されるが何も浮かばない。無理だと首を横に振れば、固く抱擁が増した。公衆セクハラになっちゃう。
「じゃあさっきヘズさん曰く八つ当たりされたから今の感情を口にしてくれたらちゃらにしてあげる。」
「ずるすぎないか」
「以後は任せるよ。だけど今は聴きたい。あなたの不調は僕の死活問題だといえば納得してくれる?」
「そんな打算で動いてくれるなら今の関係に落ち着いてない」
「そうだね。」
「俺は、君に言い訳をしたくない。だけど、言葉も残したくない。我儘で、みっともない、これは俺の矜持なんだ。だけど、……だけどそうだな。対価に払えと、そう言ってくれるなら、もう一つだけ、弱音を零してもいいだろうか。」
どうぞと揺らされる手。情けない顔のまま深呼吸をして、ウィナフレッドさんの顔をまっすぐみた。
「俺はこの世界に置いて、何があっても死に際に後悔はしない。したくない。だから俺はずっとずるをして隠し事をしていた。」
「いいよ。誰だって一つや二つ秘密は抱えている。ヘズさんのそれはずるじゃない。それはれっきとした処世を渡る防衛術だ。生きるための不可欠な技術だ。誰かにとって些細なことだって、それが何よりも重く感じる人もいる。それに付随する何かを図るのは難しい。全部考えることは出来ない。だから、話したくない気持ちには理由がある。説明できなくても接すれば嫌というほど苦手なことがよくわかる。ありがとう。」
「……もういいのか?」
「あなたはその一端を話してくれた。それだけで十分だよ。」
「さっきの回答じゃダメだったのに。」
「あのね、口にできないなら断っていいんだよ。ヘズさん、僕の言葉に左右され過ぎだよ。あなたは解らないと口にしてもいいんだ。」
もっとやさしくしてくれないか、と無言で難し言い回しをするウィナフレッドさんに抗議すれば不貞腐れてる面も似合ってるじゃないかと回答。こ、この人俺で遊んでるな。
悪戯気なウィナフレッドさんが俺を肯定する。良いよ良いよと許されて、終わっても良いのだと示される。
何も言ってないのに、許される。説明をしなくてもよいという許容を示されて、涼しく通る風と共に湧き上がる熱が吹き出して、胸が熱くてたまらない。木漏れ日の中、ゆるやかに微笑みに移ろったウィナフレッドさんを見つめると、外されることのない手に少しばかりの熱を込めて、両手で握りしめて額に押し当てた。
「……ウィナフレッドさん」
「いいよ?」
「……まだ何も言ってないんだけど、?」
「滲み出てるから。言葉が見つからなくても、湧き出るその気持ちは全部本心なんでしょう?」
あ、やばい駄目だ。本心を通して加護が全部外れてしまった。縛りが消えて、口にできてしまう情報を、息を吸うように、真実を曝け出すようにして言葉に乗せてしまう。
「上司殿の祝福は秘匿、そして感情の制御。俺は代行者時代、ずっと悲しみと恐怖に蓋をしていた。それは今もだ。」
「……、うん。」
「一度捨てても戻ってきてしまった。制御が切れて初めて目の当たりにして、突きつけられた現実に生きる君たちの覚悟を知った。……持てる手札を矜持の為に使わずに捨てるのは、果たして許されることだろうか。」
「呪われても恨まれてもその責任を負うことを承知で進むのなら、それは一つの覚悟だと思う。だけど万能に視える力が在っても、制約される場面がある。可というには僕に情報が足らず、綱渡りを認識しているあなた達が厭う何かを、僕はいまだに悟れないんだ。成功と失敗は誰にもわからない。しかし定められた定義に乗っ取るならば、……足掻けるならば、僕は、成功を目指すべきだとは思う。」
「俺も、そう思うよ。……」
情けなくも涙が止められなくなった。上手く言葉が回らない。顔を見れずにしゃがみ込む。
痛いほど苦しい胸の中、浅く息を吐いて腕に顔を押し付けて居ると、彼女は俺の背を静かに抱き寄せて、泣き止むまで撫でてくれた。
「ごめんな、助けてもらって。でも、うれしかったんだ。」
訳が分からないぐらい、この人に惹かれてる。出会いも日常も短いのに、押さえつける気持ちが苦しくてたまらない。
馬鹿みたいにぐるぐると渦巻く感情を押し殺しても、回答を求めてる。許されるのであれば、この人に言い訳を口にせず、真情に答えられる立場にありたかった。
「俺は、ずっと君たちのやさしさが怖くて、君たちの生き方が眩しくて仕方ない。好きで、怖くて、逃げたくなる。卑怯なほどに、与えらえられるのは好きなのに、自身の判断を渡すのは辛いんだ」
その後の記憶はあいまいだった。気が付けば理寄りに戻ったところで眠りに落ちていた。慌てて起きたらベンチ上、膝枕と共にオーバーコートを羽織らされていた。ウィナフレッドさんがアイスを食べては友人達の集合を待っていたところだった。