友人「櫛田さんを優待者で撃つね」俺等『……はい?』 作:一汎人
数年と1ヶ月って誤差みたいなものですよね。
あの船上の悲劇から数日が経過し、俺たちの夏休みもいよいよ終わろうとしていた。
これはその夏休みが終わる丁度1週間前の話で、その時俺は特に何かを買いたいわけではないのにも関わらず、ショッピングモールを訪れていた。
とはいえ特別欲しいものとかはないのでどうしたものかと考えながらフラフラと歩いていたところ、今日はやけに人が多いことに気がついた。
特にエレベーター前には結構な数の人がおり、それを見て引き返す人も居るくらいには混み合っていた。
今日来たのは失敗だったかもしれないと少し後悔しながら歩き回り、途中本屋に寄って一冊寮で読む用の本を買ってまた歩き始めると、同じクラスの生徒であるロールと坂柳、それから神室の3人と出会った。
ロールが他のクラスメイトと一緒に行動しているなんて珍しいと失礼なことを思いつつも、何をしに来たのかと問えば服を買いに来たようで、今は早速買ったアクセサリーを付けているようだ。
……どう見ても聖夜の木のようなそれに突っ込んでいいのか悩んだが、藪蛇なのでやめておいた。
そしてその買い物の荷物持ちとして坂柳と一緒に神室を連れ回しているようだった。
何というか、ご愁傷様ですとしか思えなかった。
その後坂柳から占いにでも来たのかと問われたので、俺はそれを聞いて首を傾げた。
話によると、どうやらこのショッピングモール内には噂になってる占い師が来ているようで、それでこんなに人がいるんだとか。
まあ気にならないかと聞かれたらほんの少しは気になっていたのだが、やはり混んでいるというのと、2人1組でしか受けれないという要素から俺は断念した。
因みにそちらは受けないのかと思って聞いてみるとロールが露骨に焦って「い、いや、べ、別に占いなんて、興味ないし? うん、ね?」と言っていたので、なんか怪しく無いかと思い他2人の方を向くと、何やら他2人も少し目を逸らしていたような気がした。
一体なんだというのだ……
その後色々あって他に相手がいなかった人と結局占いに行くことになったのだが、何か数ヶ月後に良く無いことが起きるとか言われたり身内がヤバイみたいな話をされたり白だと言われたりと、なんかよくわかんなかったけどよくわかんなかった。
そして夏休み最終日、折角なので泳ごうと思い俺はプールの方へ行くことにした。
その道中、またまた偶然俺の姿を見かけたらしいロールが背後から声をかけてきたので、少し話をして、一緒にプールに行くことにした。
プールに着き更衣室に入って着替えてる最中に数人の男子生徒がこちらの方に近づいてきて、何かあったのかと思えば、そのうちの1人が拳を鳴らしながら睨みつけてきた。
率直に言って怖かった。
なんか色々言ってきたけど恐怖でそれどころじゃなかったので、俺は落ち着いてゆっくりと着替え終えて更衣室を出た。
プールでロールと合流してから適度に準備運動でもして早速泳ぐことになったので、それなりに泳いでいる最中、ふと思った。というよりも気がついてしまった。
コイツ、息を切らさずに一定の速さで泳いでやがる、と。
夏休みも終わり久々に教室の机に座りながらロールと世間話をしていると、先生から体育祭について説明されたのだが、どうやら参加種目の順番全てを生徒側が決定しなければいけないようで、一瞬学校側の怠慢かと思ってしまった。
とりあえず俺たちAクラスはDクラスと共に赤組であるということだけは頭に入れておいて、他のことは賢い人たちに任せようと俺は完全に思考を放棄していた。
因みにロールはその時何やら神妙な面持ちで何かを考えているようだった。
きっと良からぬことを考えているのだろうと俺はその時思っていたのだが、後からその考えはやはり正しかったということがわかった。
さて、色々練習とかを重ねていよいよ体育祭が始まったのだが、ふと何かがおかしいことに気がついた。
徒競走でDクラスの大半の生徒がCクラスの生徒に負けていた、ということではなく、ロールがぶっちぎりで1位を取っていたことだ。
お前そんなに早かったのかと驚くと、ロールが速さを3倍くらいにしておいてよかったよと言っていたので、俺の頭上にはてなマークが浮かんだ。
……3倍?
その後競技が続き、途中男子が棒倒しで負けたり女子が玉入れで勝ったり男子側の綱引きでトラブルが起きたりと色々あったが、内容が濃すぎて逆に言葉が出てこない。
その後障害物競走が始まったのだが、ここで何とロールが学年内でも特に早い女子2人と一緒に走ることになっていた。
競技が始まってからはロール含めた3名が抜き出ており、その中でもDクラスの堀北という生徒が1番早く、時点でCクラスの木下と続き、ロールは3番手にいた。
そんな状態で、何故か堀北はチラチラと後ろを振り向いていたら、堀北と木下が接触し、その近くにいたロールも巻き添えに……と言ったところで時間が止まった。
比喩表現ではなくマジで時間が止まった。
一体なんだと認識する間も無く、時間は進み始めた。
いや、進んだというよりかは、むしろ逆に時間が巻き戻り、ただ1人を除いて全てのものの時間が巻き戻る中、ロールだけが全てを置き去りにして前へと進んでいき、そしてゴールへと到達したのだった。
競技が終わった後、俺はロールの元に駆け寄って一体何があったのかと聞くと、ロールはしてやったりというような自慢げな笑みを浮かべて言ったのだった。
「タイムマスターが発動したよ」
「……はい?」
……タイムマスターって、何?
まあ、そんなわけで次は騎馬戦ということになり、まずは女子からというわけなのだが、その直前の休み時間の最中にロールが何やらゴソゴソと怪しい動きをしていた。
どうやら俺以外は誰も見ていないようで、俺もまたロールが怪しいのはいつものことだとその時は気にも溜めなかった。
その後女子の騎馬戦では無事に赤組が勝利し、男子の騎馬戦が始まることとなったのだが、その前にロールは俺が付けるはずの鉢巻を奪うと即座に何かを塗りたくって俺の方に渡してきた。
周囲に人がいない中での堂々とした犯行だった。
何なんだこれはと尋ねたところ、いいからこれをつけろと有無を言わさない様子のロールを不審に思い、鉢巻を付けてからその液体の正体に気がついた。
あ、油塗りやがったコイツ……
文句を言いたかったのだが、時間がなかったのでやむを得なかったので仲間のところに向かったところ、ロールから証拠隠滅はしっかりしろと言われた。
で、実際の騎馬戦でなんやかんやあって一騎討ちになり、色々あって相手の騎馬が崩れて勝利となったのだが……本当に申し訳なさで心がいっぱいだった。
勿論、その後証拠隠滅をした後ロールのことを問い詰めたのだが、タスクだから仕方ないと言ってきたので、とりあえずデコピンした。
その後Aクラスは特別アクシデントもなく午前の部の競技を終え、昼食となった。
なんでも昼食は高級弁当が支給されるらしいので、俺は数人分の弁当を持って坂柳達のところに行った。
何やら上機嫌なようで、一体何があったのかと聞けば、まあなんか運命の人? 的な人をみてウッキウキらしかった。
取り敢えず良かれと思って弁当を持ってきたので、それをその場の人たちに手渡すと、坂柳からは一緒に食べないかと聞かれたが、先に葛城君と食べる約束をしていたので断ってその場を去った。
さて、葛城たちと一緒に食べることになったわけだが、まあその場には当然ロールもいるわけで、彼女もまた弁当を食べるのだが、それはそれとしてまた自作のバーガーを持ってきているようだった。
日替わりでランダムに具材の順番が変わることからAクラス内でも名物となっているロールのバーガーなのだが、やはり持ってきているようで、気になるその具材はというと、上からレタスタマネギトマトトマトレタスであった。
……ただのサラダでは? とその場の全員が思ったことだろう。
昼食も終わり、午後からは推薦競技となるわけだが、借り物競走、四方綱引き、男女二人三脚とそこそこの成績をうちのクラスの運動ができる人たちは叩き出した。
ただ一つ思うことがあるとすれば、借り物競争のお題の中にセカンドユーザーって書いた人は何を思って書いたんだろうか?
そして何故それでロールが俺を連れて行き、それでマルがもらえたんだ?
そして体育祭最後の競技である全学年全クラス対抗の1200メートルリレーがスタートした。
俺等のクラスは4人目の走者の段階で結構上位に食い込んでおり、そしてアンカーのロールにバトンが渡ってから暫く経ってのことだった。
バトンを受け取ってからこれまで止まっていた筈の生徒会長が、突然走り始めたのだ。
1人、また1人と次々と抜かしていく2つの影は、最後のコーナーを曲がる時にはかなりロールと接近していた。
このままじゃ抜かされてしまう、Aクラスの誰しもがそう思ったその時、再びその時は訪れたのだった。
目に焼き付いてしまった、決して忘れることのないその時が。
青く染まる世界。
巻き戻る時間。
困惑する観客と審判。
高速で逆走する生徒会長。
ゴールした筈なのにゴール前へと引き摺り出される副会長。
千切られたはずが、再びピンと張られたゴールテープ。
──そして、それら全てを置き去りにして走り去っていく
こうして俺たちの体育祭は幕を閉じた訳なのだが、やはりあの珍事は話題となり、何人もの上級生やら何やらが問い詰めたのだが、その度にドヤ顔で「私、タイムマスターなので(キリッ)」と返すので、これには先生含め全員が納得してそれなら仕方がないと帰っていってしまった。
……いや何故?
その後も龍園からガン飛ばされたりAクラスが分裂したりロールがDクラスの生徒に絡まれたりロールが生徒会長と書記の2人と一緒に写真を撮ってたり御曹司から君達は面白いだのなんだの言われたりもした。
大半の元凶がロールであることを考えると、良くも悪くもコイツといると退屈しないなと思わずにはいられなかった。
ああ、退屈しないさ。
だから、ロールよ、やめてくれ。
「俺を追跡するのはやめろォ!」
「大丈夫、私はトラッカーだから大丈夫だよ」
登場人物欄
・A君
割と図太い系男子。足は特別遅いわけでもなければ早いわけでもない。順位も3〜6位のどれか。最近の悩みはよく龍園から睨まれること。
・ロール
何故か移動速度が速くなれる系少女。彼女だけ移動速度が速くなっていることに関して突っ込んではいけない。学校が始まって数ヶ月が経ったというところでようやくA君の他にまともに話せる生徒が見つかった模様。尚全4名(同じクラスであれば2名)。最近の悩みは成長期がまだ来ていない(と思っている)こと。
・坂柳
ロールの力の一端をその身で感じた(A君基準の)怖い人。勿論例の彼にも8年と243日ぶりに出会ってきた。最近の悩みは問題児の行動が読めないこと。
・龍園
今回の策が大体ロールのせいで瓦解したせいで結構マジでピキッてる。1学期や特別試験でのあれこれも相まって、次回以降の特別試験でロールを最優先撃破目標に据えている。尚次回の特別試験。最近の悩みは文字通り常識外れな奴がAクラスにいること。
・原作主人公
もっと加速するぞをやった瞬間に時間が戻り、結果としてもう一回やる羽目になった。ロールが規格外の存在だということを認識してから頭を抱える一方で、随分と懐かしい顔に出会い声をかけようとしても間が悪くてなかなかうまくいかない。最近の悩みは担任のパワハラ。
・生徒会長
もっと加速するぞをもう一回やられた人。勝敗は想像に任せる。あの後何故かロールと書記の人の2人と一緒に写真を撮る羽目になり、ロールからは現像できたら渡すと言われた。最近の悩みは自分の卒業後に副会長が何かしでかそうとしてること。
・櫛田
メインタイトルにはいるけれど今回は出番なし。まあA組と特別交流があるわけでもないし、あってもA君とは関わらないのでスルー。最近の悩みは堀北。
ちょっとした補足
・Aクラス
最初のうちはなんとかなったが、概ね勝ってることを踏まえるとやや余裕があることに気がつき、結果分裂した。精力的には葛城派と坂柳派が半々くらいの割合。A君とロールは中立である。
・堀北の負傷
なんやかんや収束した結果200m走の際に同じようなことが起きた。尚タイムマスター初回発動時には堀北は宇宙猫のような表情になっていたとは、同じクラスの男子生徒の言葉である。
・能力発動
1回目も2回目も特にロールを対象として攻撃されたわけではないのだが、結果的に巻き込まれた結果タイムマスターの能力が発動した。細かいことは考えないほうが良い。
・リレーの順位
最初は副会長がゴールしたはずだったのだが、時間が戻りゴールテープも元に戻ったことでゴールしたない扱いになった。流石にこういう時のマニュアルは用意してないので、学校側がすごい混乱したことは言うまでもない。
・A君とロール
A君からロールにはライク。ロールからA君にはライクベストと言った矢印。後解説には関係ないが、矢印が重たい人間関係っていいよね。
・能力の種類
今回ロールが使った役職は全4種類。付け加えるのならば、体育祭が始まってから終わるまでは一種類の役職だけである。
もう少しA君やロールの私生活とか前話で省いた部分とかBクラスとか書こうと思ったのですが、それなら1から作ったほうが早いので諦めました。
流石にこれ以降は書けるネタが思いつかないので続きは1ヶ月後に書きます。
ロールのデータベースっている?
-
いらない
-
どちらかというといらない
-
必要ない
-
ちくわ大明神