ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第一章 少女達と戦車?
第1話 始まり


 梅雨も明け、まさに夏真っ盛りなある日。

 

 一人の少女が道を行く。

 

 風に飛ばされぬよう帽子を押さえ、美しい黒髪を靡かせながら、新たに出来たばかりの道を行く。

 

 ……いや、道自体は前から存在していた。

 ほとんど獣道だろこれといった様相を呈しており、彼女は気付いていなかったが。

 それがちゃんと整備された事で、少し通ってみようと思ったのである。

 

 そして道半ば。

 ある事に気付いた彼女は、周囲に人が居ない事を確認し──

 

「あーもーなんなのこの道!!めちゃくちゃ坂なんだけど!?」

 

 思いの丈をぶちまけた。

 

 

1話 憧れた少女


 

 さっさと帰ってエアコンの効いた部屋でアイスを食べるべく彼女が選んだこの道だが……。

 実は起伏が激しく、結構タフな道になっている。

 地図上ではかなりの近道であるように見えたが、実は大した時短にはならないのである。

 それに気づいた彼女は結構ショックを受けた。

 普段被っている猫を被らず叫んでしまう程に。

 

 戻るかと言う考えが浮かぶが、ここまで来たら進んだ方が速いと前に進む。

 ここを抜けた先にはバイト先であるカフェがある。

 出費は痛いが、そこまで辿り着けば日が傾くまで涼む事も出来るだろう。

 

 流石に自宅まで帰る気力は無い少女であった。

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす。渡辺さんいつもの、……ってあれ?」

 

 無事にバイト先まで辿り着いた少女はいつもの(メロンソーダ)を注文しようとしたが、カウンターの中に店主の姿は無かった。

 店内を見渡すと、テレビ前のテーブル席に大量のお菓子やら何やらを用意してくつろいでいる店主の姿が。

 

「……なにしてんです?店ほったらかしにして」

「あら、優香ちゃん。こんな時間に珍しいわねぇー。一緒に見てく?」

 

 そう言うと店主はテレビを指で示す。

 その画面には小高い丘と──

 

「見るって何を」

 

ギャィィイン!!

 

「ひえッ!?」

「あはは、優香ちゃん怯えすぎでしょー」

「びっくりしただけです!……何ですか?これ」

 

 それを登る茶色い何かが映されていた。

 先ほどの音はそれに何かが当たった事で出たらしい。

 

「戦車道って知らない?」

「知らないです」

「戦車は?」

「知ってます」

「その戦車に乗って戦うスポーツよ」

 

 戦車って言うとこう、キャタピラが付いてて、その上に回るのが載っていて……、とそこまで考えた少女は画面に目を戻す。

 

「……戦車なのこれ?」

 

 それは戦車と言うよりも動く巨大な凸だった。

 

「あー、うん。まぁ一言に戦車って言っても色々あるのよ。これはヤークトティーガーって戦車ね」

「へぇ……」

 

 よく見てみると、画面に映っているのはまさに戦車と言った形をしている物から、戦車らしくない物、またサイズも大小様々である。

 少数の戦車が山頂に陣取り、それを多くの戦車が囲むように迫っていた。

 

「えぇと……、立て籠ってるのは6台だけ?他は囲む側みたいだけど」

「あ、戦車は輌って数えるの。1輌だけ単独行動してるけど、それで全部だね」

「え、それだけ?見た感じ囲む側15輌ぐらい居るんだけど。30分でそんなに差付くんだ」

「最初から8対20だよ?」

「なにその不平等っぷり」

「20輌の方は一昨年まで9連覇してた学校で、8輌の方は今年戦車道を復活させた学校ね」

「更に酷かった!?」

「でも少ない車両での逆転劇が起こるのがフラッグ戦よ。現に大洗はここまで勝ち上がって来たしね」

 

 聞けば少数側の方こと大洗女子学園は、学園の廃校を阻止するべくこの大会への参加を決めたのだとか。

 廃校云々ってそう簡単に覆るのか?と思ったが、よく考えてみれば負ければその可能性すら消えるのだと気付いた。

 その先でどう転ぼうが、ここは負けられない戦いという訳だ。

 

 

 

 その後も大洗チームのピンチは続いた。

 川でエンストし、バカでかい戦車に蹂躙され、遅れていた敵本隊も合流し、残り1輌まで追い詰められ。

 

 しかし、その全てを跳ね返して見せたのである。

 

『黒森峰フラッグ車、行動不能!よって、大洗女子学園の勝利!!』

 

「凄い……」

 

 少女が気付いた時には、既に試合は終わっていた。

 フラッグ車同士の一騎討ち。

 この結果で全てが決まる戦い。

 

 それを制したのは大洗女子学園であった。

 

 すっかり炭酸の抜けたメロンソーダを口に運ぶ。

 勿体ない事をしたと思ったが、こればかりは仕方ない。

 飲むのを忘れるほどに見入っていたのだから。

 

「はいこれ、サービスね」

 

 見かねた店主が新しい物を持ってきてくれた。

 

「ありがとうございます」

「それにしてもずいぶんと気に入ったみたいじゃない?」

「一緒にやりません?」

「んー、私はもういいかな。若人は若人で楽しみなされ」

「若人って……。まだ30行ってないでしょうが……」

 

 

 

 

 

 戦車道の存在を知らなかったとは言え、少女にも戦車が1人で動かせない事ぐらいは分かる。

 そこで、戦車を動かすためのメンバーを集めるべく活動を開始したのだが。

 

「なんで誰も捕まらないのよ!」

 

 帰ってくる答えは芳しくない物ばかりだった。

 

「あんな試合見せられたら誰だってやりたくなると思ったのに……」

 

 素晴らしい試合だったのは確かである。

 

 だが少女は気付いていない。

 戦車道自体がマイナーな競技であり、そもそも見ている人数自体がそこまで多くない事。

 

 そしてメンバーを集めても足りない物がある事に。

 

「ふぁ……、ぁふぅ。なんか眠くなってきた。寝よ……」

 

 普段運動をしないのに長い坂など登ったらこうもなろう。

 実に夜9時の出来事である。

 

 

 

「やばい」

 

 だが、早く寝る=早く起きるではない。

 

「やばいやばいやばい!完ッ全に寝過ごした!!」

 

 目を覚ました少女の目の前には『私は仕事しましたよ』と言わんばかりにアラーム画面を表示しているスマートフォン。

 その時計は遅刻するかしないかギリギリの時間を示していた。

 大急ぎで最低限の身だしなみを整え、はたと気付く。

 

「あれ?今日って日曜日じゃない?なんでアラーム鳴ってんの」

 

 昨日は土曜日だった筈。

 試しにテレビを点けてみるが、流れているのは毎朝見てから行っている占いであった。

 日曜日なら良く分からない討論が流れている筈である。

 

「まさか……、丸一日ずっと寝てた……?」

 

 そのまさかである。

 

「ってマズい遅刻する!!」

 

 

 

 ギリギリながらもどうにかバスに間に合い、丸一日放置していた通話アプリを確認する。

 どうやら昨日はテーマパークに行った子がおり、その話題で持ちきりだったらしい。

 羨ましい限りである。

 

「ん?」

 

 その前まで遡っていくと、同級生の一人から少し気になる情報が寄せられていた。

 

「戦車道経験者が、うちのクラスに……?」

 

 

 

 

 

 ──これは、大洗女子学園の戦車道に魅せられた少女たちが、戦車道を全力で楽しむだけの物語である。




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