ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第三章 対 大学選抜戦
第10話 秋の歌


「知らない番号から謎の詩が届いたんですけど、まほさん何か知りませんか?」

『ダージリンは君にも暗号文で送ったのか……』

 

10話 秋の歌


 

『前置きは省かせてもらうとして……、大洗が廃校の危機に瀕しているのは知っているな?』

「はい。全国大会で優勝すれば撤回されると聞いていましたが。……まさか?」

『そのまさかだ。学園艦管理局は所詮は口約束だと白を切ったらしい。しかも8月末に早めるというオマケ付きでな』

 

 いやいや……。

 

「中々えげつない事しますねぇ……」

 

 高校生が道を切り拓いたというのに、それを言葉ひとつで無かった事にするとは。

 そういうのは大人同士でやっていて欲しいものだ。

 

『そこで大洗の生徒会長が連盟の会長や私の母を巻き込んで取り付けてきた条件が、大学選抜チームに勝てば廃校は撤回する、それだけだった』

「それだけ、ですか」

『あぁ。車輌数の上限も、戦闘形式さえも未指定だ。だがこれは予想できる』

「上限30輌の殲滅戦、でしょうね」

『恐らくな』

 

 国が推進しているプロリーグのルールだが、相手にとっては理由付けがしやすく、大洗にとっては厳しいルールである為、今回選ばれる可能性は高いだろう。

 

 黒森峰の20輌相手にもフラッグ車しか残らなかったというのに、今度の相手は大学選抜で、しかも30輌。

 黒森峰より練度も車輌数も上の相手に殲滅戦を挑んで勝てる可能性は低いだろう。

 ……だが。

 

「ただ、条件には『大洗女子学園の戦車道チームが』という文言も存在しない、と。突くとしたらそこでしょうか?」

『理解が早くて助かる。一応短期転校の手続きはしておく事になっているがな。試合は来週末なんだが……、来てくれるか?』

 

 大洗の戦車道チームと言い張って、それがダメでもそもそもチームは指定されてないと言い張れる訳だ。

 よく考えられているような、考えられていないような。

 

「まぁM18の整備は終わってますし、うちの学園はまだ夏休みに入ったばかりなので、時間自体はあるんですけど、少し移動が難しい状態でして」

『……今その艦はどこにいるんだ?』

「沖縄に寄港中です……」

 

 夏休みに南国でバカンスというのはこの学園の理事長のこだわりらしいが、今回ばかりは裏目に出てしまったか。

 まぁ他校の廃校に首を突っ込む物好きがいるなんて想定できるわけもないが。

 

『少し待っていてくれ。どこか輸送機を動かせないか確認してみる』

「分かりました。私も皆に参加するか確認しておきます」

『頼む。それでは5分後にこちらから掛け直す』

 

 ……さて。

 来週末は皆で合宿をする予定だったのだが、合宿を提案した時は何故か怯えた様子だったし、試合になったとしても文句は出ないだろう。

 だが念の為、グループチャットに書き込んでおく。

 そして、書き込んでからわずか数秒で優香から『行く』と返事が書き込まれた。

 まぁ大洗の奮戦から戦車道始めた訳だし当然か。

 少し遅れ、真琴と夏帆の二人からも同じ返事が帰ってくる。

 書き込んでから僅か10秒。

 満場一致で参戦する事が決定したのだった。

 本当に聞くまでもなかったな……。

 

 

 

 大学選抜の情報を調べているとあっという間に5分が経過し、まほさんから電話がかかってきた。

 

『各校に確認したところ、サンダースが飛ばせるそうだ。そちらはどうだ?』

「満場一致で参戦する事に決まりました。どこに向かえば?」

『金曜日の昼頃に沖縄空港まで来れるか?』

「分かりました」

 

 まほさんとの通話を終え、皆に連絡を回しておく。

 それに呼応するように真琴から城島重工が魔改造した車輌の一覧が届いた。

 大学選抜の車輌の多くは載っていなかったが、それでも1輌。

 ……いや、2輌か。

 

「T28にT92仕様の側部履帯を追加、ボタン1つでパージ可能に、ねぇ……」

 

 正直な話、ワンタッチで外せるようにする理由が分からないのだけれども、この際それはどうでもいい。

 問題はこっちだ。

 

「カール自走臼砲に操縦室を追加、自動装填装置を搭載する事で戦車道で使用可能に、か。ただでさえ厄介なのが揃ってるってのに……」

 

 その依頼者は大学選抜ではなく──

 

「辻 廉太。同姓同名の別人とは考えにくいな」

 

 学園艦教育局局長の名前であった。

 その依頼日時は大洗が1回戦に勝利した直後の事である。

 もし優勝されたら大人の策略こと屁理屈で圧し通り、それでも粘るようなら大学選抜をぶつける事をその時点で考えていたという訳だ。

 どうやら彼は本気で大洗を廃校にしたいらしい。

 ……まぁ、それなのに本人が依頼するとか詰めが甘過ぎるけれども。

 何と言うか。

 

「実際には全然頭を回していないみたいだな。口約束だと言い張ってみたり、試合の条件に関してもそうだ。最悪二大流派の家元、師範代を連れてきて大学選抜を破っても満たされる文面だし」

 

 流石にそれは人として駄目だろうが、公務員の書く誓約書としては赤点もいいとこである。

 現に他校の参戦を許してしまっている。

 彼がもう少し頭の回る人物だったら大洗の廃校は不可避なものになっていたかもしれない。

 

 ……そもそも普通なら口約束すらしないだろうしな。




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