ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第14話 狂い始めた歯車 ☆

 ダム湖跡から少し離れた密林。

 そこに停まる1輌の戦車の中で会話が交わされていた。

 

「それにしても彼女達は面白い事を考えるね」

「そう?」

「そうさ。……普通に飛び移れるんだから、わざわざ八九式の上に載せる必要は無いだろう?」

「それならなんで言わなかったのよ」

 

 何故言わなかったのか。

 答えは簡単。

 

「……戦車で戦車を投げられるのか、気にならない?」

「……気になる」

 

 ただの知的好奇心からである。

 

「なら無事に投げられるように、私達も精々働くとしようか。……行くぞ」

 

 少女はそう言うと、車内に持ち込んでいた弦楽器(カンテレ)を手に取り、爪弾き始めた。

 

14話 狂い始めた歯車


 

 今回杏から任されたのは、まず護衛の注意を引き、可能であれば撃破する事。

 空を飛び、パーシングを1輌瞬殺して見せた事で、最低限の目標は達成しただろう。

 だが。

 

「やるからには最高の結果を出すよ」

 

 この程度で最高と誇る事は出来まい。

 ちらと橋の上に目をやると、セモヴェンテを乗せた八九式が突撃を開始した所だった。

 パーシングは2輌とも下に降りている以上、カールは自分で八九式に対処するしかない。

 当然、カールによる直射が放たれる。

 だが、照準が合うのを待たずに放たれた砲撃は、八九式にもセモヴェンテにも当たる事無く、その奥に続く橋に当たり──

 

「ミッコ、行けるね」

「……どうにか!」

「ちょ!?」

 

 崩落を始めた橋の瓦礫を全速力ですり抜ける。

 あとは相手が車幅を意識していなかったり、変に躊躇ったりすれば……。

 

「よし」

「よしじゃないよ!?危ないなぁもう!!」

 

 その巨体は瞬く間に瓦礫に挟まれる。

 しかも砲身に瓦礫が直撃し、撃破も出来た。

 今日の運はまだ良い方だったらしい。

 

「さて、セモヴェンテは……」

 

 残り1輌を翻弄しつつそちらに目を向けると、そこにはひっくり返ったセモヴェンテと、その手前で横に避けている八九式、その横を駆けるヘッツァー。

 

 そして、5輌目の敵の姿があった。

 

 警告を発する間もなくヘッツァーが空中に飛び出し。

 5輌目から放たれた76.2mm砲弾がヘッツァーを直撃した。

 そのまま流れるように止まっていた八九式へと砲撃。

 こちらからも白旗が上がる。

 

「アキ、右」

「もう狙ってる!」

「ミッコ、少し手を出して逃げ回ったら退くよ。もし追ってくるようなら相手するけど、今はその必要を感じないからね。そうだろう?杏」

『そのとーり。出来ればもうちょっと西住ちゃんの事助けて欲しいからね~』

 

 突如として現れた5輌目、敵の大隊長車であるセンチュリオンに向けて砲撃。

 当然、指揮系統を狙われた敵の火力はこちらに集中するが、そのまま少しの時間注意を引き付ける。

 実は()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、そうしないのは──

 

「千代美、セモヴェンテはどうだい?」

 

 偵察の要を失わない為である。

 

『おかげでなんとか逃げれたけど千代美って呼ぶな!!』

「よし、ミッコ、退くよ」

 

 

 

 

 

「退いた、か」

 

 2輌がかりの砲撃をことごとく回避してのけたBT42が崖の向こうに消えるのを見ながら、センチュリオンの車長、島田愛里寿は、橋の上を見る。

 そこにひっくり返っていたセモヴェンテも、いつの間にか姿を消していた。

 BT42がこちらの注意を引いている間に立て直したらしい。

 

(失敗した。その交戦で脅威じゃなくても、逃げられたら厄介だったのに)

 

 普通の戦車であれば、ひっくり返っていれば戦闘不能になっているものだが、人力で元に戻して再び参戦できるのは豆戦車ならでは。

 そしてその本領は小さな車体を活かした索敵にある。

 

『追撃しますか?』

「いや、どうせ追い付けないなら回り道をせずに本隊と合流した方が良い。カールは……、すまないがそのまま砲撃を頼む」

『了解です。……まぁ、移動しようったって橋がなくちゃ動けませんからね』

 

 

 

 

 

「そうですか。センチュリオンが……」

 

 ミカさんからの報告を聞きながら、次の手を考える。

 

(なんとか湿地で袋叩きになる事は避けられた。今残ってる敵はミカさん達が2輌撃破、あさがおが3輌撃破で25輌。最後に確認されたのは湿地に9、密林に13、ダム湖に3。湿地と密林の部隊は私達が下がってもそのまま合流したらしいから、距離的にしばらく大部隊の襲撃はない。となるとやっぱり怖いのは──)

 

 そこまで考えた所で、遠方から聞こえてきた砲撃音によって現実に引き戻される。

 

「各車散開!」

 

 皆さすがの練度で、突然の指示にもすぐさま反応してくれる。

 だが。

 

『いったぁ!?』

『……っ!!』

『アリサ!ナオミ!』

 

 アリサさんのM4A1と、ナオミさんのファイアフライが着弾の衝撃で吹き飛んだ。

 

 着弾地点に近かったM4A1はひっくり返った衝撃で。

 ファイアフライは飛ばされた後、不運にも砲身から着地、砲身が折れてしまった事で、それぞれ白旗が上がる。

 

「2輌とも怪我は!?」

『私に双眼鏡が当たっただけだから大丈夫よ!ナオミも平気でしょ!?』

『あぁ。ファイアフライは全員無事だ』

『そういうことだから試合に集中しなさい!勝たなきゃ承知しないわよ!!』

「……わかりました!」

 

 撃破された車輌の乗員の無事を確認した後、手元のノートに目を向ける。

 そこにはカールが砲撃した回数が記されていた。

 自動装填機構の装弾数は10+1発らしいので、残りは3発か。

 

「これがあと3回も……」

 

 一撃で複数輌を撃破しうる砲撃をあと3発も凌がなくてはならない。

 更には味方の戦意も低下しないように気にかけて……。

 つくづく厄介な車輌である。

 

「カールの残弾はあと僅かです!そのまま味方車輌に付かず離れずの距離を保ってください!」

 

 気落ちさせないように言葉を選び、味方を鼓舞する。

 直後、ずっと誰かと話していたケイさんから、衝撃の言葉が飛び出した。

 

『……その心配はいらないみたいよ?』

「え?」

 

『偵察に出てたアオイが、ちょっとカール討ってくるって』

 

「……はい?」

 

 ケイさんから突然飛び出した爆弾発言。

 それがあまりに軽い口調で言われた事もあり、多少混乱してしまった。

 

(え?うつって撃つの方?それとも討つの方?……いやそうじゃなくて!)

 

 どちらにせよそこから導かれる意味は変わらない。

 

「マズイですよ西住殿……!センチュリオンは1輌でなんとかなる相手では……!」

 

 たった1輌のM18でカールとその護衛に仕掛けるという事だ。

 その護衛にはセンチュリオンも含まれており、どう考えてもマズイ。

 

『……いや、大丈夫なんじゃないか?』

『……ですね』

「なっ……、お姉ちゃんまで!?」

 

 ケイさんにとどまらず、お姉ちゃんにエリカさんまで何を言い出すのか。

 

『歳上相手だろうと無理な物は無理とはっきり言う奴だ。センチュリオンの相手をするつもりは無いのか、或いは……、取るに足らない相手だと考えているか』

「流石にそれは無いと思うけど……」

 

 もしそれが慢心と言えない程の実力者なら、優香里さんが知らない事はないだろう。

 ……ん?

 

「待って?お姉ちゃんって葵さんと知り合いだったの?」

『……そう言えば言っていなかったか。少し前に富士でな』

 

 それってもしかして。

 

「野良試合でパンター3輌とティーガーⅡ相手に大立回りをしたM18が居たらしいって優香里さんが大興奮してたんだけど、もしかして黒森峰と葵さん達だったの?」

『……あぁ。私の参加は拒否されたがな』

『まだ言ってるんですか……。結果として私と相討ちでしたし、ちょうど良かったと思いますが』

「相討ち」

『エリカが出た結果としてはそうだったかもしれないが、私が出たら変わっていただろうし、何より強い相手との戦いはそこまでの経過が楽しいんじゃないか』

「強い相手」

『次は受けると言ってくれた訳ですし、より強くなった彼女達と戦えると考えれば良いのでは?』

『……確かにそれはそうかもしれないな』

 

 エリカさんと相討ちに持ち込み、お姉ちゃんに強いと言わしめるような選手が自信をもって『やる』と言っているのであれば、それを止める理由はない。

 

「……分かりました。葵さん、よろしくお願いします」

『了解』

「遊園地跡に到着後、損傷している車輌は中央広場に移動して修理をお願いします。レオぽんさんチームはそのサポートに回ってください」

『こちらM18、カール撃破しました。これより遊園地跡に移動します』

「分かりました。……え?」

 

 はやっ……。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
チャーチルMk.Ⅶ18KV-2
ポルシェティーガー19Ⅲ号突撃砲F型
三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数22輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数24輌




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