ソ連との戦闘で鹵穫したBT-7をフィンランドが魔改造した車輌、BT42。
この車輌には、他の戦車ではあまり見られない機能がある。
『10時の方向よりBT42が接近中!』
「砲撃開始。……何だ?」
「──履帯が、無い?」
履帯を外し転輪を車輪として用いる事で、悪路踏破性を犠牲にして機動力を跳ね上げる、真のクリスティ式。
その機動力は、戦車道で使用可能な車輌の中ではトップクラスとなる。
『速い……ッ!!』
「気を付けろ!奴は既にパーシングを3輌食っている!!普通の戦車だと思うな!!」
その機動力にそれを駆る者達の技量も加わり、今のBT42は大学選抜チームにとって明確な脅威となっていた。
──それこそ、撃破するために全神経を集中させる程に。
17話 単身では渡れずとも
敵の注意を一身に集めているBT42だが、その乗員はそんな状況にあっても平然としていた。
ミカはこの状況に飛び込ませた張本人として、当然こうなる事は想定しており。
ミッコは『ここが腕の魅せ所!』と、ハンドルを握る手に力を込め。
そしてアキは、ミカの一見無茶に見える指示と、それに応えるミッコの腕を信じていた。
とは言え、さすがにこれは文句の一言も言いたくなるという物。
「ねぇミカ、やっぱり千波単のみんなに合わせた方が良かったんじゃないの?」
「そうかもしれないね」
「そこは否定してよ……」
そしてさらっと流されるまでが彼女達のお約束である。
「でも現にアヒルさん達はバレていないだろう?」
「それはそうだけど……」
あれほど簡単にバレそうな擬装を施された千波単の戦車達だったが、ミカの言う通り、未だに発見された様子はない。
ミカが打った手は至極単純。
アヒルが敵の視界に入る直前にBT42で強襲、注意を引き付ける事で、警戒に割く余裕を無くしてしまえという物である。
どこから来るかと警戒させてはいけない以上、得意とする神出鬼没な動きを封じられた上で、5輌ものパーシングを相手取る必要がある。
また、仕掛けるのが早すぎては冷静になる時間を与え、遅すぎても仕掛ける前にアヒルが視界に入ってしまう。
そんな綱渡りじみた作戦だったが、なんとかパーシングを千波単の目の前に引きずり出す事に成功した。
「出番だよ、アヒルさん達」
『承りました!全車輌、突撃!!』
「……っ!?しまった!!」
アヒルに擬装して、敵が至近に迫ったら突撃する、至極単純な作戦。
突撃する段になればさすがにパーシングも気付き、砲塔をそちらに向けようとするが……。
もしそれで突撃の足が鈍っていれば、迎撃されていただろう。
──だが、突撃しているのは千波単学園である。
その程度の事で足が鈍る筈もない。
砲身が向ききる前にその懐に飛び込み、砲撃を叩き込む。
ゼロ距離から立て続けに砲塔基部に砲撃を食らっては、いくらパーシングと言えどもひとたまりもない。
不運にも千波単のキルレンジに踏み込んでしまったパーシングから白旗が上がった。
時に、大学選抜のメンバーは、その多くが高校で戦車道をやって来た者達である。
したがって各高校の改善点というのも当然理解していた。
例えば黒森峰は突発的な事への対処が鈍く、聖グロリアーナはOGの干渉から車輌の更新が進んでおらず、サンダースは稼働性を重んじるあまりシャーマンで固めがち等々。
では、千波単はと言うと……。
突撃の速さは中々の物であるが、その反面、逃げるのは非常に遅いというのが挙げられる。
西裏門では敵の車体のほとんどが水中でろくに狙えなかった事もあり、取り逃がしてしまった。
だがこの状況であれば、逃げられる前に余裕を持って仕留められる。
──筈だった。
「なっ……」
しかし、千波単の戦車はその全てが足を止める事無く後退していく。
それは以前の千波単学園、それこそ少し前のエキシビションマッチの頃からは考えられない事であった。
「追撃を……ッ!?」
当然ながら追撃に移ろうとするも、BT42からの砲撃がそれを許さない。
足回りを狙われ、回避機動を余儀なくされる。
「あぁもう!厄介な!」
そうこうしているうちに千波単の戦車は建物の裏へと消えていった。
「ねぇミカ。あの子達に何を吹き込んだの?」
「そうだね、強いて言うなら愛好者としての心構えかな?」
「心構え?」
「好きなものを使い捨てる人は居ないだろう?」
| 県立大洗女子学園 | |||
|---|---|---|---|
| 1 | Ⅳ号戦車H型 | 16 | T34/85 |
| 2 | ティーガーⅠ | 17 | IS-2 |
| 3 | チャーチルMk.Ⅶ | 18 | KV-2 |
| 4 | ポルシェティーガー | 19 | Ⅲ号突撃砲F型 |
| 5 | 三式中戦車(チヌ) | 20 | ヘッツァー |
| 6 | ルノーB1 bis | 21 | M4シャーマン |
| 7 | 八九式中戦車甲型 | 22 | M4A1シャーマン |
| 8 | マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ | 23 | ファイアフライ |
| 9 | クルセイダーMk.Ⅲ | 24 | M3リー |
| 10 | CV33型快速戦車 | 25 | M18スーパーヘルキャット |
| 11 | BT-42突撃砲 | 26 | 九七式中戦車(新砲塔) |
| 12 | ティーガーⅡ | 27 | 九七式中戦車(新砲塔) |
| 13 | パンターG型 | 28 | 九七式中戦車 |
| 14 | パンターG型 | 29 | 九七式中戦車 |
| 15 | T34/85 | 30 | 九五式軽戦車 |
| 残存車輛数 | 22輌 | ||
| 大学選抜チーム | |||
|---|---|---|---|
| 1 | A41センチュリオン | 16 | M26パーシング |
| 2 | M26パーシング□ | 17 | M26パーシング |
| 3 | M26パーシング△ | 18 | M26パーシング |
| 4 | M26パーシング◇ | 19 | M26パーシング |
| 5 | T28重戦車 | 20 | M24チャーフィー |
| 6 | カール自走臼砲 | 21 | M26パーシング |
| 7 | M26パーシング | 22 | M26パーシング |
| 8 | M26パーシング | 23 | M26パーシング |
| 9 | M26パーシング | 24 | M26パーシング |
| 10 | M24チャーフィー | 25 | M26パーシング |
| 11 | M26パーシング | 26 | M26パーシング |
| 12 | M26パーシング | 27 | M26パーシング |
| 13 | M26パーシング | 28 | M26パーシング |
| 14 | M26パーシング | 29 | M26パーシング |
| 15 | M26パーシング | 30 | M24チャーフィー |
| 残存車輛数 | 16輌 | ||
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