ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第19話 鬼、出陣 ☆

「……思ったよりも戦力が削られるスピードが早いな」

 

 遊園地の跡地から少し離れた丘の上。

 味方から入る戦況報告を聞きながら、センチュリオンの車長、島田愛里寿は介入タイミングを測っていた。

 戦車道で使うべく、継戦能力を削ってまで限界までチューンアップされたセンチュリオンは、その性質上、タイミングが早過ぎては車輌にガタが来てしまう。

 だがそれで1輌のみで相手をする事になっては本末転倒である。

 

「隊長?」

「少し早いが……、出るぞ。まずは──」

 

19話 鬼、出陣


 

 やはり大学選抜は大洗チームの狙いを把握しているのか、中々ばらけてはくれなかった。

 T28は落伍したが、それを除いて殆どの車輌が一団となってこちらの戦力をじわりじわりと削ってきている。

 だがこちらも黙ってヤられている訳にはいかない。

 と言うか本来こちらが攻勢に出ている筈なのだが、車輌性能と技量の差から消極的になっていた。

 それでも数に2倍近い差があるという事もあり、少しずつ撃破を重ねていたのだが……。

 はぐれたまま合流出来ずに居たM3からの報告が優位と断言出来なくしていた。

 

『こちらウサギさんチーム!すみません!チャーフィー撃破しましたが此方も撃破されました!センチュリオンが遊園地跡に向かっています!気を付けてください!!』

 

 敵の中でも他とは一線を隔す戦力の投入。

 その情報だけであっても、押せ押せのムードの漂っていた大洗チームの勢いを削ぐには十分であった。

 そしてその数分後、にわかには信じがたい勢いで撃破報告が入り始める。

 残っている敵車輌はセンチュリオンとパーシング3輌の計4輌のみ。

 

「何をどうしたら3分で14輌も持って行けるのよバケモノでしょ大学生」

 

 しかし、そこまで削るまでに要した此方の戦力は14輌。

 7輌撃破するのに14輌も撃破、或いは修理待ちにされていては到底持たない。

 私達の他に残っているのは千波単とBT42、そして西住姉妹。

 足回りと電気系統がイカれて修理中のティーガーⅡを含めても9輌だけである。

 そして残念だが、損傷状態を聞いた限り、ティーガーⅡの修理は間に合うまい。

 となると8輌。

 そして千波単の車輌の火力では残った敵を撃破出来ない……、とまでは言うまいが、撃破可能な状況に持ち込めないだろう。

 

『千波単4輌行動不能!面目ありません……!』

 

 と言うかたった今不可能になった。

 

『私達も撃破されました。センチュリオンの現在地は西駐車場付近。それとミカから御武運を、と』

 

 ん?西部って確か……。

 

「……フル加速!」

 

 若干アスファルトを抉りながらも、そのパワーはM18を一気にトップスピードまで加速させる。

 立て看板を吹き飛ばしはしたが、悪い予感は的中する物で。

 お土産屋さんの影から飛び出した直後、後ろで地面が吹き飛ばされた。

 

「あっぶな……」

 

 継続高校からの忠告が無かったら当たっていただろう。

 感謝してもしきれない。

 

 飛び出した先には、隠れられるような遮蔽物も、滑るような悪路もない、まっ更なアスファルト。

 そしてその端にセンチュリオンが待ち構えていた。

 

「こちらM18。西駐車場にてセンチュリオンと遭遇、交戦中。Ⅳ号とティーガーの状況はいかがです?」

『こちらあんこう。敵中隊長車を捜索中。いつでも向かえますがどうしますか?』

『ティーガーも同じだ。何分持たせられる』

 

 何分と聞かれても。

 貴女方の決勝みたいな事は出来ないんですけど。

 全力で集中すれば避けられるかな……。

 

「5分以上は私の集中力が持たないです」

『了解した。すぐに向かう』

『あんこうは距離が離れているので結構ギリギリになりそうです。到着まで何とか持ちこたえてください』

「分かりました。今から突っ込みます。無線に返す余裕は無さそうなのでご容赦を」

 

 ……さてと。

 

「島田流家元の娘にして飛び級大学生、か。普通にやってたら勝てない相手だけど、この位置なら……」

 

 

 

 

 

(……これは、うん。アズミが苦戦する訳だ。本当に良く周りを見てる)

 

 突如として最高速で駐車場に突撃して来たかと思えば、BT42の影で何事か言葉を交わした後、ヘッドセットを外した彼女。

 私との戦いに必要無い雑音をシャットアウトしたのだと気付いた時には、M18の突撃が開始されていた。

 すかさず砲撃を加えるが、いずれも軽くいなされる。

 それもそのはず、こちらは相手の背に居る千波単の車輌とBT42に当たらないよう、どうしても狙いが甘くなる。

 的確にこちらの狙いを誘導し、それを読んだ上で回避されるとあっては、いかに大学で最優秀の砲手であっても当てるのは至難の技だ。

 それならばと交戦軸をずらしても、その回避能力に変化は見られなかった。

 

(となると……、狙いを誘導するよりも読む力が抜けているのか?厄介だな)

 

 そして、その砲撃精度もまた然り。

 あれだけの速度で動きながらも、こちらの未来位置を的確に射抜いてくる。

 必然的に双方動きながらの砲撃戦を強いられる事になる。

 そして機動力でも相手に分があった。

 こちらに食らい付き、ちょこまかと動き回るM18は、狙いを定めた次の瞬間には別の方向に逃げている。

 操縦席からは死角になる位置であっても。

 そしてその不可解な回避の動きに遅れずに付いていく砲塔。

 それはまるで電子制御されているかのようであり……。

 

(いや、違うな。たまに砲塔が先に動いたり、角度が合わなかったりしてる。……そのおかげで当たってないのはちょっと気に入らないけど)

 

 そして、ひとつの可能性に思い到る。

 

(もしかして、全部車長が細かく指示を出してる……?)

 

 そうして相手の車長に目を向けてみると、確かにヘッドセットは無かったが、喉元を押さえながら常に細かく指示を出していた。

 それはやはり乗員への指示で間違いないだろう。

 

(となると、車長さえ欺いてしまえば上下の連携は瓦解するか)

 

 ならばとフェイントで揺さぶりをかけるが、急な加減速も、タイミングをずらした砲撃も、あえてフェイント抜きで放った砲撃すら交わされるに到り、その方針では勝てないと結論付ける。

 

(ティーガーⅡとの戦いでは激突した衝撃で白旗が揚がったと聞くが……、並走しているこの状況ではな)

 

 愛里寿の駆るセンチュリオンは、完全に相手のフィールドに踏み入ってしまっていた。

 

 だが、戦場に残っている戦車も2輌だけでは無かった。

 

「うげ……」

 

 中隊長車3輌による連携は、隊長を任される私をも追い詰める事がある。

 交戦域に侵入してくる3輌のM26を見たM18の車長は、今まで崩さなかった表情を崩し、とても苦い顔を見せるのだった。

 

 

 

 

 

県立大洗女子学園
Ⅳ号戦車H型16T34/85
ティーガーⅠ17IS-2
チャーチルMk.Ⅶ18KV-2
ポルシェティーガー19Ⅲ号突撃砲F型
三式中戦車(チヌ)20ヘッツァー
ルノーB1 bis21M4シャーマン
八九式中戦車甲型22M4A1シャーマン
マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ   23ファイアフライ
クルセイダーMk.Ⅲ24M3リー
10CV33型快速戦車25M18スーパーヘルキャット
11BT-42突撃砲26九七式中戦車(新砲塔)
12ティーガーⅡ(修理中)27九七式中戦車(新砲塔)
13パンターG型28九七式中戦車
14パンターG型29九七式中戦車
15T34/8530九五式軽戦車
残存車輛数4輌

 

 

大学選抜チーム
A41センチュリオン    16M26パーシング     
M26パーシング□17M26パーシング
M26パーシング△18M26パーシング
M26パーシング◇19M26パーシング
T28重戦車20M24チャーフィー
カール自走臼砲21M26パーシング
M26パーシング22M26パーシング
M26パーシング23M26パーシング
M26パーシング24M26パーシング
10M24チャーフィー25M26パーシング
11M26パーシング26M26パーシング
12M26パーシング27M26パーシング
13M26パーシング28M26パーシング
14M26パーシング29M26パーシング
15M26パーシング30M24チャーフィー
残存車輛数4輌




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