「ここからだと……、あと1分と言った所か」
M18との通信が途絶してから既に4分が経過していた。
到着する頃には5分を過ぎてしまう事だろう。
落ちた橋とそれを塞ぐT28によって回り道を強いられた事で、余計な時間を取られていた。
妹と合流出来たのは不幸中の幸いと言えるだろうが、それはつまり到着はギリギリになるという事でもある。
「まぁ、何も言ってこないという事は無事なんだろうが……」
そうこうしている内に、駐車場が見えてきた。
もう既に約束の時間は過ぎている。
しかも聞こえてくる砲撃音は2つだけではなく、少なくとも3つ以上。
「……まさか中隊長車まで居るのか?」
敵の砲撃を警戒しつつ、建物の角から様子を伺う。
そこに広がっていたのは、まさに衝撃的な光景だった。
20話 迫撃!トリプル・パーシング
センチュリオンとの戦いをドッグファイトに持ち込んだまでは良かったが、これは完全に予想外だった。
このタイミングで中隊長車3輌が揃い踏みとは。
(どうするかな。もう少し遅ければ西住さん達含めて3対4に持ち込めたのに)
だが、まだティーガーもⅣ号も到着していない今、無い物ねだりをしていても仕方ない。
(……まぁ、やるだけやってみようかな。やらなきゃやられるだけだし)
「前に出るふりをした後に本当に前に出て一気に左ターン。中隊長車の方に仕掛けるよ」
センチュリオンは確かに強いが、多少強引な手を使えば時間を稼ぐぐらいは出来る。
例えば──
「……よし、撃ってこない」
「……ッ」
味方へ誤射する可能性を許容できる人はごく僅かだろう。
まぁ私も撃たないし、武道としてもそれで正しいのだが。
人によっては味方に当たろうがお構い無しに撃ってくる人もいるから、ある種の賭けだった。
少しばかり申し訳なく思いつつも、中隊長車の方に集中する。
「1輌目は向かって左の履帯を。2輌目は多分右に飛び出すからその側面に。直後砲塔を後ろに向けて3輌目の背面を」
「それじゃ真ん中を抜ければ良いか?」
「それでよろしく。……撃て」
指示を出して後方を確認するが、やはりセンチュリオンから砲撃が飛んでくる様子は無かった。
軸をずらそうと横に移動を始めていたが、それだけの時間があれば十分だ。
放たれた砲弾が、狙い通り先頭のパーシングの履帯を切断する。
さすがに履帯を切られた程度であれば撃破までは行かないが、全速力で走っているパーシングの進路をねじ曲げる事には成功する。
向かって左に逸れながら急停車する先頭の車輌に対して、2輌目が取った行動は──
「よし、そのまま」
予想通り、反対側に避けながら飛び出してきた。
その横っ腹に砲撃を叩き込み、センチュリオンと3輌目の様子を伺う。
センチュリオンは……、あの位置なら彼女達に任せておけば大丈夫だろう。
問題はパーシングの3輌目。
3輌目は2輌目の直後に控えており──
今にもこちらを撃たんと主砲を向けつつあった。
「砲塔そのまま!合図で急制動を!」
「え!?」
「分かった」
「……今ッ!」
急遽予定を変更し、砲塔の向きを変えず、その射界に収まる直前で急制動をかける。
キューポラから身を乗り出していた私は慣性に耐えつつ──
敵の車輌がM18の車体を捉えるのを待たずに砲撃を放つのを確認した。
振動が落ち着いてからすぐさま装填を済ませ、目の前で後退しようとしているパーシングに向けて砲撃。
「左バック、信地旋回」
白旗が上がるのを確認しつつ、あえて超信地旋回ではなく、信地旋回で1輌目に向き直る。
「危なかったな……」
半分ほど向き直ったタイミングで、ほんの半秒前まで自分たちの車体があった場所をパーシングの砲弾が通過していった。
そのまま向き直った先には、砲塔をこちらに向けた1輌目のパーシングの姿が。
もう少し余裕があるかと思っていたのだが、かなりギリギリのタイミングになってしまった。
やはり動き続けるのは正義。
「撃て」
旋回と装填を終え、残った1輌目に砲撃を叩き込む。
……まぁ、ロクに動けないパーシング相手では外す方が難しいだろう。
予定とはだいぶ違ったが、パーシング3輌は撃破出来た。
「……さて、それじゃセンチュリオンの相手に戻るとしようか」
最後に確認した際、センチュリオンは駐車場に現れたティーガー、そしてⅣ号との交戦に入りつつあった。
そこまでお膳立てされて撃破されましたじゃみっともないし、本当に撃破できて良かった……。
「な……」
大学選抜はその名の通り、各大学の精鋭が集められている。
その中でも中隊長を任せられている3人は、当然その世代のトップクラスの選手という事になる。
そしてその彼女達が愛里寿に挑むべく磨き抜いたのが、3輌で相手に当たるバリエーション豊かな連携攻撃。
彼女達がバミューダアタックと呼んでいるそれは、時に愛里寿を追い詰める程であり、先程は大洗チームの多くの車輌を瞬く間に行動不能に陥らせている。
もし破られるとすれば西住流のどちらか、或いは複数輌相手に仕掛けた時ぐらいだろうと考えていた。
「こうも呆気なく破られるなんて……」
しかしあのM18は、単独でありながら、20秒にも満たない僅かな時間で3輌全てを行動不能にして見せた。
何か特別な技術を使われた訳ではない。
砲撃による誘導、緩急で敵のタイミングをずらす、足を止めずに動き続ける。
いずれも大学選抜の選手なら、程度の差はあれど息をするように出来る事だ。
ただ、その精度と、早さ。
そしてそれに応えられるだけの車輌性能。
これらが組み合わさる事で、異常なまでの強さを発揮していた。
(読み合いに強いのかと思ったけど、違った)
(読み合いで負けても、それを無理やりカバー出来るんだ)
今までの交戦の様子を見る限り、1対1でもまだ有利なのは間違いない。
だが、既にティーガーとⅣ号との交戦に入っている以上、M18との1対1に持ち込む事は難しいだろう。
ならばまずは──
「こっちを先に片付ける!」
| 県立大洗女子学園 | |||
|---|---|---|---|
| 1 | Ⅳ号戦車H型 | 16 | T34/85 |
| 2 | ティーガーⅠ | 17 | IS-2 |
| 3 | チャーチルMk.Ⅶ | 18 | KV-2 |
| 4 | ポルシェティーガー | 19 | Ⅲ号突撃砲F型 |
| 5 | 三式中戦車(チヌ) | 20 | ヘッツァー |
| 6 | ルノーB1 bis | 21 | M4シャーマン |
| 7 | 八九式中戦車甲型 | 22 | M4A1シャーマン |
| 8 | マチルダⅡMk.Ⅲ/Ⅳ | 23 | ファイアフライ |
| 9 | クルセイダーMk.Ⅲ | 24 | M3リー |
| 10 | CV33型快速戦車 | 25 | M18スーパーヘルキャット |
| 11 | BT-42突撃砲 | 26 | 九七式中戦車(新砲塔) |
| 12 | ティーガーⅡ(修理中) | 27 | 九七式中戦車(新砲塔) |
| 13 | パンターG型 | 28 | 九七式中戦車 |
| 14 | パンターG型 | 29 | 九七式中戦車 |
| 15 | T34/85 | 30 | 九五式軽戦車 |
| 残存車輛数 | 4輌 | ||
| 大学選抜チーム | |||
|---|---|---|---|
| 1 | A41センチュリオン | 16 | M26パーシング |
| 2 | M26パーシング□ | 17 | M26パーシング |
| 3 | M26パーシング△ | 18 | M26パーシング |
| 4 | M26パーシング◇ | 19 | M26パーシング |
| 5 | T28重戦車 | 20 | M24チャーフィー |
| 6 | カール自走臼砲 | 21 | M26パーシング |
| 7 | M26パーシング | 22 | M26パーシング |
| 8 | M26パーシング | 23 | M26パーシング |
| 9 | M26パーシング | 24 | M26パーシング |
| 10 | M24チャーフィー | 25 | M26パーシング |
| 11 | M26パーシング | 26 | M26パーシング |
| 12 | M26パーシング | 27 | M26パーシング |
| 13 | M26パーシング | 28 | M26パーシング |
| 14 | M26パーシング | 29 | M26パーシング |
| 15 | M26パーシング | 30 | M24チャーフィー |
| 残存車輛数 | 1輌 | ||
分かる人には分かるサブタイトル
どんな決着になるのか自分でも分からんとです(沼ってるとも言う)
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