ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第4話 初練習

「ん?どこで乗ってるかって?この下だよ」

「はい?」

 

4話 訓練


 

 土曜日。

 どこで練習しているのか訊ねたところ、思いもよらない答えが返ってきた。

 どうやら格納庫奥の扉がエレベーターになっているらしい。

 曰く、艦内にある『格納庫』と呼ばれる倉庫スペースの半分ほどを借り受けているのだとか。

 50Mほどの高さにある天井のライトが点灯すると、そこにはちょっと狭い大自然が広がっていた。

 奥の方には市街地も見える。

 さしずめミニ演習場と言ったところか。

 

「紛らわしいから、ここの呼び方は『演習場』で行こう」

「はいよ」

 

 格納庫というのは、改設計の元となった空母時代の場所からの呼称らしいが、戦車の格納庫なのかこちらなのか、分からなくなる可能性がある。

 

「……それにしても葵ちゃん随分気合入ってるね?」

「え?」

「だって髪束ねてるし、眼鏡じゃなくてコンタクトだし」

 

 あぁ、なるほど。

 

「戦車の中だと髪は邪魔だし、眼鏡はふとした拍子に割れたら危ないからね。気合が入ってるのも間違いないけど」

「……普段からそうしてれば良いのに、勿体無い」

「……何が?」

「なんでもない」

「そう……。それじゃ、総員搭乗」

 

 担当はあらかじめ決めてある。

 真琴が操縦手、優香が砲手、残りの装填手と車長が私である。

 今回は通信する必要が無いため、通信手は無しだ。

 

「どうする?」

 

 逆に言えば、決めてあるのは担当だけだ。

 大体やりたい事が決まっている以外は、基本的に行き当たりばったりである。

 地図を見て、的の向きと位置から大体の射点を決め、一番高低差が少なく狙いやすい組み合わせを選ぶ。

 そして、そこまでのルートは人によって時間が大きく変わるものを選び、真琴に伝える。

 

「H4からA2経由でC1まで移動、これを全開で。まずこの車体の性能と真琴の腕を知りたい」

「りょーかい」

「優香はそことここ掴んで踏ん張って」

「ここ?」

「そこ。……よし、戦車前進」

 

 

 結論から言えば、何もかもが予想の範疇を大きく凌駕していた。

 M18は登坂能力から察するに、相当な馬力を有している。

 と言うか、平地と大差無い速度で急坂を駆け上るんじゃない。

 そして真琴も、履帯が空転する直前まで使い切る、TCS顔負けの操縦技術を見せた。

 林の中もほとんど減速せずにすり抜けるし、これなら行けるかと思って出した急な停止の指示にも瞬時に応えてくれた。

 ……これに慣れると、他の戦車に乗る時にもその感覚で指示を出してしまいそうである。

 

「C1に着いた訳だが、どこに止まれば良い?」

「……右前方の丘の茂みに」

「りょーかい」

 

 予定のポイントに着いた為、射点を決め、車体を隠す。

 まぁ狙ってくる敵が居るわけではないが、次にやるのが砲撃訓練であるため、私のスタイルから一番機会が多いであろう茂みからの砲撃を想定しての事である。

 

「お疲れ様」

「全開でって言われたからかっ飛ばしたけど、二人とも大丈夫だった?」

「私は慣れてるから平気だけど、優香は──」

「怖かった……。でも大丈夫!てか途中からは結構楽しかった!!」

「「ほぉう?」」

「なんか二人とも悪い顔してるんだけど!?」

 

 なに、帰りが少しばかり絶叫アトラクションになるだけである。

 

 茶番はさておき、装填手席へと移動する。

 

「葵ちゃん。操作は分かったけど、当てるのにコツとかある?」

「数撃ちゃ当たる」

「嘘でしょ!?」

「まぁちょっと意味は違うけど。よっぽどじゃない限り、何回も撃ってるうちにコツが掴めて当たるようになる」

「あぁ、なるほどね」

 

 ……それにしても重いな。

 90ミリでこれでは、マウスの120ミリとかだと持ち上げるのも大変そうである。

 

「よし、装填完了。試しにあそこの的を狙って撃って」

「分かった!」

 

 イキイキしてるなぁ……。

 

「……この辺かな」

「え?」

 

 ッドン!

 

 撃ったし。

 もう狙い付けたのか……。

 優香の手によって放たれた1発目の砲弾は、その軌道を僅かに逸らし──

 

 的の支柱を直撃した。

 

「……これは驚いたな。普通1発目はもっと外れるんだけど」

 

 しかも左右の狙いはドンピシャと来た。

 流石の一言である。

 

「……ごめん。感心してるところ申し訳ないんだけどさ。私狙ったの隣の的……」

「あ、そうだったのか。それでも初撃にしては十分高精度だ。……装填完了。いつでもどうぞ」

 

 そして2発目。

 今度は大きく外れて、結構奥の地面に着弾した。

 

「いや、なんでそんな上行くのよ!?」

 

 ……実は、何発も撃つ際の最初の数発には、ちょっとした落とし穴が潜んでいるのだ。

 落とし穴と言うか、単純に砲身の歪みの問題である。

 自重で垂れていたり、熱膨張で戻ったり、同じく熱で垂れたり。

 短砲身ならまだしも、長砲身だとそれが顕著になる。

 

「2発目と3発目の感覚も覚えておいて。弾道変わるから。あとは少し移動してから撃った時の感覚も違ってくる」

「……本当に数撃たないと当たるようにはならなそうだね」

「試合ではどっちも全速で動いてるなんて事もある」

「ひえぇ……」

 

 

 その後、場所を変えては砲撃という流れを繰り返しているうちに暑くなってきた為、練習を終了する。

 

「え~?もう終わり~?」

「うん……。熱中症になったら大変だし、それに──」

 

 そろそろ昼食を摂らないと、午後の座学の時間がなくなってしまう。

 

 車内に優香の悲鳴が響くのだった。




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