第5話 新メンバー
「東富士演習場行きたい」
「……唐突だね」
夏休みも折り返しを過ぎ、秋の気配が近付いてきた、そんなある日の事
突然、優香からそんな要望が出された。
5話 チームメイト
東富士演習場。
自衛隊の総火演や、高校戦車道全国大会の決勝が行われる、日本の戦車乗りにとっての聖地とも呼べる場所。
「土日は一般向けに開放されてるんでしょ?行ってみようよ!」
そこは毎週末、戦車の練習用に開放されており、各校が練習に勤しんでいる。
だが。
「良いけど……、危ないよ?」
「危ない、ってなんで?カーボンは?」
「何か揉めてるなぁって思ったら急に戦車を使った喧嘩……、もとい練習試合が始まったりする。その時練習中だと巻き込まれる」
「えぇ……」
戦車道とは血気盛んな乙女を育てる武道では無かったはずなのだが。
それはともかく。
「現状だと装填中に周り警戒できないから、少なくとも1人、出来れば2人欲しいかな」
敵が迫っていても移動しないM18など、ただの対戦車砲である。
装甲が厚いならまだしも、M18に関して言えばもはや紙だし。
現状、巻き込まれたらひとたまりもないだろう。
「そっか……」
と、言うわけで。
「真琴、確保よろしく」
「はいよ」
「へ?きゃぁぁああ!?」
お菓子片手にやってきた真琴に頼んで、格納庫の入口からこちらを覗いていた不審者を連行してもらう。
「何でここにいるの?夏帆」
彼女は東雲夏帆。
中学時代の同級生で、今はその学園の高等部に通っている筈の友人だった。
久し振りの再会なのだが──
「ん?葵ちゃんに変な虫が付かないか心配で編入してきた」
──ちょくちょくこういう事を言ってくるのだけは苦手だ。
暑いのに身体中鳥肌だらけである。
「……心配だったのは本当だよ?戦車道やめてから葵ちゃん抜け殻みたいになってたし」
「いや、抜け殻ってほどじゃないでしょ。……そこもなるほどって顔しないで?」
閑話休題。
「まぁ編入してきたならちょうどいいや。確かタンカスロンやってたっていってたよね。今ちょっと人数足りないんだけど、戦車乗ってみる?」
「乗る」
「よし」
装填手も確保できたし、これならなんとかなりそうである。
「真琴って公道乗れる免許持ってる?」
「いや、私有地でしか乗るつもりなかったから、まだ持ってないぞ」
「……まだ?」
「一緒に始めてから通い始めたけど、早くても来月だな」
「なるほど」
となると、どこかに輸送を頼むか私が操縦していくかの二択か。
……正直どっちも厳しそうである。
輸送を頼むと言っても、戦車を運べるクラスとなると金額がえらい事になるし、操縦出来る免許はあれど、このじゃじゃ馬を乗りこなすのはまず無理だ。
「と言うかそもそも私達が公道乗れなくても平気じゃないか?うち輸送車あるし、それに載っけて行けば」
「……あるの?」
「そりゃここ以外で試験することもあるし、大規模整備は本社の方でやってるしな」
「待て」
何となく分かったわ。
やたらと高級パーツばかり使われている事。
先生の営業用発言。
そして今の本社の方でという台詞。
「もしかして、城島重工って……」
「じいちゃんの会社だけど……。あれ?言ってなかったっけ?」
「……聞いてない」
要するにこのM18は『うちのパーツを使えばここまで出来ますよ』という宣伝のための魔改造車だった、と。
「え?なに?城島重工って」
「高いけど高性能な戦車部品売ってるところ」
「……?戦車って高いんじゃなかったっけ?そこから更に?」
「そう」
「???」
この間パーツの値段を調べたら、このM18、戦車が数輌買えるほどの値段が掛かっていた。
だが、そういう事なら納得である。
「それじゃお嬢、アタシは寝てるんで、帰る時には叩き起こしてください」
「人前でお嬢はやめろって言ってるだろ……」
土曜日の朝。
M18の整備士さんの運転する輸送車に揺られる事数時間。
富士演習場に到着した。
ここから必要書類を提出したり、改装点の確認を受けたりして、ようやく演習場内に乗り込むことが出来る。
「次の方、こちらへどうぞ」
書類に関しては何度か来ているので問題はない。
問題があるとすれば──
「えっ?これ全部、ですか?」
「はい」
魔改造による確認資料の多さだろう。
例の分厚いファイルを渡して確認してもらう。
「ん?M18 城島スペシャル……。あぁ、城島重工さんの。えぇと、前回から変わったのは……、砲塔が屋根付きになったぐらいですね。カーボンもちゃんと張ってあるようですし、これでしたら問題ないのでどうぞお通りください」
「え?」
あっさり終わった。
聞いてみれば、個人所有の戦車は魔改造がされた車輌も多く、その中でも安全面に問題が無かった車輌は改装点をまとめた資料を保存してあるらしい。
その後、資料と車輌の改装点に相違がないかの確認を受け、待機区域に乗り込んだ。
待機区域には多種多様な戦車が並び、その多くにはその車輌の属する学校の校章が描かれている。
その中には──
「ねぇ葵ちゃん、これってこの間の決勝のチームじゃない?」
「うん、黒森峰女学園だね」
今年の全国戦車道選手権の準優勝校も含まれていた。
ゲートを通った順番から、私達はその隣にM18を止め、各自降車する。
「確か黒森峰も艦内に演習場が──」
「ん?鴻上か?」
そして、黒森峰の生徒から声を掛けられた。
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