ガールズ&パンツァーイェーガー   作:Valid Bear

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第9話 昼食会にて

 昼下がり。

 黒森峰の主力の練習も見学させてもらい、練度の高さを目の当たりにした所で昼食に誘われた。

 

「真琴ちゃんこっちこっち!このソーセージも美味しいよ!!」

「あ、あぁ……」

 

 そして向かった先には、山盛りのドイツ料理が所狭しとテーブル上に並んでいた。

 優香がはしゃぐのも分かる。

 ヴルスト美味しかったし。

 でも確かこの間帰りに買い食いした時「ダイエット中だ」と言っていた気がしたのだが、大丈夫なのだろうか。

 それ以外にもノンアルコールビールやパン、……肉じゃが?

 

「楽しんでくれてるかしら?……その顔を見れば聞くまでも無いわね」

「あ、逸見さん」

 

 肉じゃがのような何かを小皿に取っていると、黒森峰の副隊長から声を掛けられた。

 ……凄いな。

 6枚もハンバーグプレート持つ人とか初めて見た。

 

「エリカで良いわよ。それで今、少し時間良いかしら?」

「あの、私はいつでも大丈夫なので一旦そのプレートを置いてきては……。危ないですよ」

「そうさせてもらうわ。今回はあくまで橋渡し役だし。……それでは隊長、私はこの辺りで」

「あぁ。すまなかったな」

 

 大量のハンバーグを持って優香達の方へ向かうエリカさんを見送り、視線を戻す。

 そこには何故かこちらに強大なプレッシャーを放ってくる黒森峰女学園の隊長、西住まほがいた。

 

9話 昼食会にて


 

 ……いや、試合中かと思うほどの圧をぶつけられる心当たりは無いのだが。

 確かに参戦の申し入れは断ったけども。

 現にエリカさんのティーガーIIにはやられた訳だし。

 ……どうしたものか。

 

「そんなに張り詰めてたらせっかくのご飯が勿体無いですよ。これでも食べます?」

 

 とりあえずよそっていた肉じゃがを差し出してみた。

 原因が分からない以上、これで収まるとも思えないが……。

 

「……ふむ。私とエリカの両方が知らなかったのが信じられんレベルの胆力だな」

 

 収めてくれた。

 もしかして、試されていたのだろうか。

 

「私は黒森峰の隊長を勤めている西住まほだ。試すような真似をしてすまなかった」

 

 本当に試されていたらしい。

 買い被りすぎである。

 

「私はM18の車長の鴻上葵です。こちらこそ手合わせの申し入れを断ってしまい、申し訳ありませんでした」

「なに、次の機会に受けてくれればそれでいい。……それにしても君はなかなか面白い戦い方をするんだな」

「面白い、ですか?」

 

 変とか奇天烈とか言われた事ならあるが、面白いと言われた事は無かったな。

 

「最初は射程の差を活かす動きだったが、途中からはそれを捨てて接近戦に切り替えただろう?既に位置は特定していて、狙撃で片を付ける事も可能だったというのに」

「あぁ、そういう事でしたか。それは単純に時間が無かったからですよ。ティーガーIIが出てくる前にパンターは倒しておきたかったので、確実に仕留められる距離に突っ込んだんです」

 

 射程ギリギリで2輌狩れたのは純粋に「運が良かったから」と言うのが大きいだろうし、ティーガーIIが迫っている状況では確実に行きたかったのだ。

 

「坂を待ち構えられてるのは分かったので、上から飛んで真横に出ようとしたのですが、まさか空中でぶっ放すとは思いませんでしたよ。確かに飛んだら撃ってとは言いましたけど……」

「……まぁ普通は着地してから撃つだろうな。君以外に経験者は?」

「装填手がタンカスロンを、操縦手が実家の手伝いをしてたぐらいですね」

 

 あの2人に関しては到底素人とは言えないのが現状である。

 しかし……、タンカスロンでは10トン以下の戦車しか使えなかった筈だが、なぜ夏帆は90ミリの装填があんなに早いのだろうか。

 最初片手で装填しだした時は目を疑った。

 

「砲手は素人という事か」

「はい。……そういえば黒森峰って砲撃用のシミュレーターってあります?」

「ん?ある事はあるが……、それがどうかしたのか」

「1ヶ月で新品のトリガーが壊れました」

「……それはあれだけの腕を持つのも頷けるな」

 

 いったいどれだけ撃てば1ヶ月でトリガーを接触不良にまで追い込めるのか。

 普通は最低でも半年はもつ筈なのだが。

 

「全く、何故こうもドイツ行きが決まった途端、国内に気になる事が次々出てくるのか……」

「そんなもんですよ」

 

 その後も少し他愛ない話をしたところで、エリカさんが枚数の減ったハンバーグプレート両手に戻ってくる。

 優香達の方を見ると、ハンバーグを食べながら秋名さんと何やら盛り上がっていた。

 今朝の出会いが出会いだっただけに一瞬「大丈夫かな?」と不安になったが、どうやら心配は無用のようである。

 ……どちらかと言えば、心配するべきは自分の方だろう。

 エリカさんの手には3枚のハンバーグプレート。

 そしてここには私、まほさん、エリカさんの3人がいる。

 それが意味する事は──

 

「鴻上さん、隊長。ハンバーグをどうぞ」

「ありがとう、エリカ。エリカの作るハンバーグは絶品だ。鴻上さんも食べてみるといい」

 

 このままでは黒森峰の隊長、副隊長と3人でのランチタイムである、という事だ。

 

 少し離れた所でこちらをニヤニヤと見ている4人に視線で助けを求めるが、声に出さず「が・ん・ば・れ」と言ってきた。

 険悪どころか全員息ぴったりである。

 

 

 連絡先を交換し、まほさんは黒森峰の保有する飛行船の中に入っていった。

 ……まさか黒森峰の隊長と連絡先を交換する事になるとは。

 人生何があるか分からないものである。

 

 それはさておき、別れ際に「出来るだけ早くM18を動かせるようにしておいてくれ」と言われたのだが……。

 ドイツに行く前に蹴散らして行く宣言だろうか。

 まぁ、急ごうが急ぐまいが3日ぐらいかかるだろうし、別に気にしないでも平気か。

 

 

 

 

 

 その1週間後の事である。

 

 ──知らない番号から謎の詩が届けられたのは。




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