寄生虫美女で蜘蛛の世界 作:坂本祐
この一年、更新せず本当に申し訳ありませんでした…
これからゆっくり更新できればいいなぁ…(先月、部署異動したばかり)
誰もいないリビングで一人、降り頻る雨をぼんやりと眺める。強風に煽られて窓はガタガタと不快な音を発し、夜空を切り裂く雷鳴が鳴り響いて眩い光が真っ暗闇の部屋に差し込んだ。窓に反射した自身の顔は疲れ切った顔をしており、我ながら情けない顔をしていた。
「父さん……」
悄然と零れ落ちた声に誰も応えてはくれず、僕は気持ちを切り替えようとテレビの電源をつけた。
「昨夜、オズコープグランドホテルでテロ事件があり、捜査委員会は、これまでにオズコープ社理事会の重役であるヘンリー・バルカン氏を含む合わせて15名が死亡したと発表しました。犯人は未だ逃走中。捜査当局は、事件の背景などについて調べを進めています」
テレビに映し出されたのは連日連夜に及び特集されているオズコープ社主催のパーティーを襲った事件であり、思わずチャンネルを変えようとするも事件当時の映像が流れて手が止まる。
その凄惨極まりない映像はまるで映画の撮影かのような非現実的なもので、ファンタジー映画に出てくる緑の小鬼を思わせる覆面を被り、空飛ぶグライダーに乗った怪人が甲高い哄笑を上げてパーティー会場を爆撃していく。そして、たちまちにパーティー会場は見るも無惨な姿へと変わり果てた。
広大な天井は崩れ落ち、細かい装飾を施された柱はぽっきりと折れ、奢侈な造形をしていたであろうシャンデリアは見る影もなく無惨にもその姿をひしゃげた姿で地面に横たわっている。そして、爆破された天井の破片や瓦礫が地面に散乱して所々に真っ赤な血が……
年若い女性アナウンサーが台本通りにニュース内容を読み上げるも内容は一つとして頭には入ってこなかった。依然として頭が混乱しており、今もなお、テレビに映し出される映像がフィクションで、この現実が夢であるかのように感じられる。
机に置かれた各社の新聞紙の一面を見遣る。やはり、どの新聞社もパーティー襲撃事件を特集していた。
「オズコープ社の株価は大暴落!?倒産の恐れは!?」
「オズコープ社パーティー襲撃事件、犯人は空飛ぶ怪人!?その恐るべき実態とは!?」
「元CEOノーマン・オズボーン氏が犯人!?襲撃直前に行われた怒りのスピーチとは!?」
「ノーマン・オズボーン氏、行方知れず!?やはり、事件の犯人か!?」
新聞紙一面にプリントアウトされた父、ノーマン・オズボーンの顔をぼんやりと眺めた。オズコープ社主催のパーティーが開かれたあの夜から父さんは行方不明になっていた。
事件当日、どういうわけか僕の記憶は曖昧だ。オズコープ社のパーティーに向かうべくパレード会場でみんなと解散し、一度帰宅してリビングで支度をしていたところからその先の記憶が全くない。
どうやら僕はいつの間にか寝室で寝ていたらしく、事件を耳にした執事の爺やに起こされて今回の事件を知ったのである。幸いなことといえば、パーティ会場に赴いた友人たちは誰一人怪我もなく避難したことが唯一の救いか。
各新聞社や報道番組が報道している通り、今回の事件でオズコープ社の理事会に属する重役達が一度に大勢亡くなり、CEOである父が事件の容疑者でありながら依然行方不明ということで今やオズコープ社は株価は大暴落し、このままでいずれ倒産の危機すらある。一夜にしてオズボーン家とオズコープ社は奈落へと突き落とされたも同然であった。
「父さん……どうしてこんなことに……」
「ハリー…開けてくれ、私だ……」
扉越しに弱々しい父の声が聞こえ、僕は勢いよく立ち上がり扉を開けた。そこには頬が痩せこけ疲れ切った表情の父が立っていた。
「父さん!?今までどこに行ってたのさ…!?」
「わからない、気がついたら玄関に居たんだ…それよりも、どうしてそんなに慌てているんだ?」
「分からないの…!?ほら、これを見て…!」
困惑する父の手を掴み居間に連れて行くと、机に置いてある新聞記事を手渡した。唯ならぬ僕の様子に父は戸惑いながらも新聞を受け取り、一面の記事を読み始めると眉を顰め、まるで今知ったかのような仰天した表情でこちらを凝視した。
「ハリー、これは……一体どういうことだ?」
「まさか、記憶にないの……?」
「ああ、全くない。くそっ……どうなってる!?」
父は困惑しながらも食い入るように新聞の記事に目を通していく。すると、徐々に様子がおかしくなっていった。記事を読むに連れて呼吸が荒々しくなり、苦痛に顔を歪めて額からは大量の汗を流し始める。明らかに尋常ではない様子に不安と心配の感情が渦巻いた。
「父さん…?」
「ノーマン・オズボーン、事件の犯人か…?馬鹿な、私はそんなこと…やって……ない。くっ……頭が……」
そして、遂には苦痛のあまりか両手両膝をついて呻き始め、痛みを堪えるかのように新聞を力の限り握りしめて蹲まったのである。
「父さん…!?だ、大丈夫…!?」
「あ、ああ…大丈夫だ……それよりも、水を……水を一杯くれ…!」
苦痛に顔を歪めながら必死に縋り付くよう頼み込む様子に気圧され、戸棚からコップを取り出して水を注ぎ込む。恐る恐るコップを差し出すと、震える手でコップを受け取るや懐から小瓶を取り出して中の錠剤を徐に口に放り込んだ。
そして、まるで薬物中毒者のような震える手でコップを口に持っていき水を含むと、ごくりとゆっくりと嚥下した。大きく息を吸って深く吐くことを繰り返すこと数回、荒れていた呼吸は徐々に落ち着いてゆき、幾分か心持が楽になったらしく顔色が良くなっていた。
「父さん……?」
「そうだ、そうだった……な。この薬のおかげで全て思い出した……」
先程までの様子とは打って変わって随分と心地良さそうな父を見て安堵の吐息が漏れるが、あれほどまで乱れた様子からこうも症状が劇的に変化したことで父が服用した錠剤から目が離せない。
「今まで聞かなかったけど、その薬、なんの症状を抑える薬なの…?」
「この薬は症状を抑える効果はない。これはな……」
直後、雷鳴が轟き、眩い光に照らされた父の顔は、
「内なる自分を曝け出す薬だ……」
狂気に満ちた表情でニヤリと笑っていた。
グリーンゴブリンによるパーティ襲撃事件から三日が経とうとしていた。未だ捜査に進展はなく、ノーマン・オズボーン氏も依然として行方知れずのまま。各報道機関は明確な真実が出せない今、好き勝手に憶測や根拠のない報道を続けている。まあ、我らが愛するJJJのデイリービューグルはいつも通り頓珍漢な報道していたけど…
今回の一件でCEOのノーマン・オズボーン氏の行方不明、オズコープ社の理事会役員たちの半数以上亡くなったことで当然ながら社内は大混乱。株も大暴落で改善される目処が一向に見られない。
如何にオズコープ社が世界有数の大企業とはいえこのままでは本当に倒産する可能性もある。そうなれば、オズコープ社に身を置く大勢の科学者が露頭に迷い、その果てにヴィランへと変貌してしまうかもしれない。それだけは絶対に避けたいが今の私にはどうすることもできない。
(なら、今の私に出来ることは何か。現状、本当に彼がグリーン・ゴブリンになっているのか確かめたい。まさかとは思うけど、ノーマン氏は誰かに嵌められたという線も無きにしも非ず。さて、もし、彼が目覚めているなら真っ先に向かうところは何処か…?そんなの決まっている…)
すると、目的地が見えてきた。ニューヨークの一等地に建てられた見る者全てを圧倒する豪華絢爛の大豪邸。オズボーン家の屋敷である。
(人一倍家族を愛する彼が最愛の我が子のところへ赴かないわけがない…)
遠目ではあるが屋敷のカーテンは昼間だというのに全て閉めており、今日の灰色がかった曇天模様の空と合間ってか屋敷はどんよりとした陰鬱な空気が漂っている。屋敷を眺めながらポケットからスマホを取り出すと、ハリーの電話にかけるもやはりというべきか連絡がつかなかった。
あの事件以来、ハリーはショックのあまり病気で伏せているとのことで学校も登校しておらず、更に親友であるピーターやグウェン、MJも連絡が取れないという。ただの病気なら一日二日も連絡が取れないというわけはないだろう。おそらく、グリーン・ゴブリンが連絡手段を絶っているか。
(さて、ハリーの電話も依然として繋がらないし、これはもしかすると…いや、それは決めつけすぎか?最悪のことを考えて、一応保険を打っておくか)
ハリーへの通話を一旦切ると、再び、スマホを操作して今度はハリーではなく別の人へと電話をかけた。
(出てくれよ…流石に一人で虎穴に入るのは身が重いから…)
すると、件の人物は珍しくワンコール目で出てくれた。
「もしもし、アヤ?どうしたの?」
「はい、ピーター。今ちょっといいかしら?」
そう、言わずもがなスパイダーマンことピーター・パーカーその人である。流石にグリーン・ゴブリンという凶悪なヴィランを一人で相手取ることなど命知らずなことはしないし、まだ不確定とはいえ単身でヴィランの根城と思われる伏魔殿に赴くのだ、彼に応援を要請しない手はない。
ピーターはいきなりの通話に困惑した声音であったが、通話口から聞こえてきた風を切る音が止んだ。どうやら、スパイダーマンとなってニューヨークの街をスイングしていたらしい。おそらく、私同様にグリーン・ゴブリンの行方を探しているのだろう。
「うん、大丈夫だけど……」
「良かった、今からハリーのお家にお邪魔するから良ければ一緒にどうかしら?」
「えっと……ごめん、今日はちょっと」
「……そう、わかったわ、気にしないで。あと、一つ頼み事があるんだけど…」
スマホをポケットに仕舞い込んだ私は、眼前にある大きな門を前にして大きく息を吸って小さく吐いた。覚悟を決めろ、アヤブレア。やると決めたのだろう?大いなる力には大いなる責任が伴う。これは私の見通しの甘さから引き起こされた惨劇だ、ならば、自らの手で対処しなければ…
「さて、行きます…か」
(でも、どうやって入ろうかしら…塀をよじ登って入るわけにも行かないし、流石に開いてるわけ…)
すると、装飾が彩られた大きな門がゆっくりと開いてゆく、まるで私の来訪を歓迎しているかのように。屋敷を見やれば、一瞬だけ誰かと目が合った気がした。気のせいではないだろう、今は閉まっているがとある部屋の一箇所だけ僅かにカーテンが開けられていた。以前、屋敷に招かれた時の記憶から察するに恐らく件の人物は居間にいるのだろう。
「なるほど、おもてなししてくれるってわけね……それじゃあ、遠慮なく……」
そして、私は屋敷の敷地へ足を踏み入れた。十中八九、グリーン・ゴブリンによる罠だ、だが歩みを止めるわけには行かない。このまま事件が解決されなければ状況は好転しないし、さらに悪化するばかりだ。
屋敷に近づくに連れて、身体が火照り始めた。やはり、いる。綺麗に手入れされた庭を通り抜け、玄関へとつながる大きな階段を登りきると今度は玄関の扉がひとりでにゆっくりと開いた。そのまま、導かれるかのように屋敷の扉が次々と開いていき、歩みを止めることなく進んでいく。
以前、屋敷に訪れた際は至る所に拘りを感じさせる意匠や調度品の素晴らしさ、当代無双の絢爛豪華な造りに興奮したものだが、今回ばかりは心は踊らず、一歩一歩と足を進めるたびに身体が熱く燃え沸る感覚に思わず顔が歪む。そして、遂に居間へと足を踏み入れた。
居間では先程までは締め切っていたカーテンは全て束ねられており僅かに部屋に光が差し込み、天井を見上げればシャンデリアが灯され、奥では暖炉が炊かれていた。まるで客人をもてなすかのような…
すると、居間の奥にある暖炉その目の前に置かれた、こちらを背にしている高級なシングルソファに、誰かが座っているのが目に入った。
「何故、ここに居るのがわかった……アヤ・ブレア?」
先日、会話した時とは打って変わり、その声音は冷酷で冷徹な響きがあった。私の答えを聞く前にその男はゆっくりと立ち上がる。
「さあ、勘かしら?ノーマンさん…いや、グリーン・ゴブリン」
そう答えると、ノーマン・オズボーン、いやグリーン・ゴブリンはこちらを振り返り、ニヤリと狂気的な笑みを浮かべた。
スパイダーバース、USJのスパイダーマンthe ride、PS5 スパイダーマン2と立て続けに鑑賞&プレイしてモチベ回復しました…
今後、5,000字を目処に更新していきます!あと、戦闘描写少なめで…
前回の話を見ているとノビが悪かったので1話であんまり詰め込むのも…と思いました。
なので区切りがいいところで一回全話見直し予定(最悪、新規で作り直し)なので悪しからず…