寄生虫美女で蜘蛛の世界 作:坂本祐
買おうか悩むけど英語読めないし、全部買おうとすると総額何十万もいきそうなのでマジで悩みます。日本語版だったら悩まずに買うんですけどね、でも翻訳版出る気配全くないし…
そんなわけで、第四話どうぞ
前世を含め警察官に取り調べに受けることなど今までなかったため、少し緊張していたが入室してきた人物を見て、幾ばくか肩の力が下りた。
というのも、警官のうち一人は親友の父親であったのだ。何度かお食事にお邪魔したこともあるし、ご自宅にお泊まりさせてもらった仲で、そのときにはたくさんお話しさせてもらった。
ハンサムな顔立ちながらも厳格であまり表情を崩さないことから人を近付けず誤解を生みやすい人だが、家庭にいる時は幾分か和かになるのを私は知っている。正義感が強く不正を許さない警察官の鑑のような人。
作品によってはスパイダーマンの恋人となるグウェン・ステイシー、その父親であるジョージ・ステイシー警官であった。
病室に足を踏み入れたジョージさんだが、ベットに座る私を見て少しだけ顔が歪んだ気がする。やっぱり、正義感のある人だ。娘の友人が犯罪者に襲われて重体に陥っていたことに、心を痛めているのだろう。彼の責任ではないのに。
ここで痛ましい姿を見せてしまえば尚更、気を病んでしまう。少しでも彼の心が晴れるようにと、にこやかに微笑んだ。
「ご無沙汰してます、ジョージさん」
「意識が戻って無事何よりだ、アヤ君。体のほうはどうかね?」
「今のところ問題ないですよ、幸い、銃弾は臓器に当たることなく貫通してくれたようなので。それでそちらは……」
ジョージさんから目線を外して彼の後ろに控える、もう一人の警官に目をやった。見た目はアジア人、年若い女性だ。ショートカットに切り揃えた黒髪に新品同様のNY市警のジャケットを羽織っている。まだ、駆け出しの女性警官なのだろうか。彼女は私のいるベットまで歩み寄ると、視線を合わせるように腰を屈んで、手を差し伸べた。
「ユリ・ワタナベ巡査よ、私も日系人なの。同じ日系人同士、宜しくね」
「アヤ・ブレアです。こちらこそ、宜しくお願いします」
差し出された手を優しく握ると、ニコッと笑う。愛嬌のある笑みだ。ユリ・ワタナベ、彼女だったか。
原作ではユリコ・ワタナベという名の女性で表は婦警、裏では正体を隠し自警団員のレイスとして悪党を捕まえる、正義感の強い二面性を持った人物として描かれていた。
ps4版のゲームでは、警察官でありながらもスパイダーマンの相棒のような存在で、警察側とスパイダーマンの関係が良好だったのも彼女の存在が大きかったと見える。
作中にスパイダーマンと彼女が繰り広げる、スパイダーコップのネタは大好きだった。まあ、彼女の方はスパイダーコップのネタは嫌いだったみたいだけど。
そんな彼女だが物語終盤に多くの同僚を殺されたとはいえ、時には裁けぬ悪もあるということに絶望し、正義感が暴走するあまりマギアの幹部を愉快犯のように殺害。プレイしてた時は、闇落ちしてしまった彼女に衝撃を受けたため印象に残っている。
離れゆく彼女の手をぼんやりと眺めながら、当時の心境を思い出すもジョージさんが口を開いたことで思考を打ち切った。
「さて、今日私たちが来た理由だが…」
「取り調べ、ですか?」
「ああ、その通りだ。それにまず、一つだけ君に伝えておくことがある。辛いことだろうが、君のお母さんは……」
言い淀むジョージさんに、彼の言わんとする言葉を察して口にした。ああ、分かっているさ。あんな光景誰が見ても……
「亡くなった……そうですよね?」
私の言葉にジョージさんは、ゆっくりと頷いた。
「ああ、誰かから聞いたのかね?」
「いえ、撃たれる前に母の死体を見ました。血溜まりのフローリングで倒れているところを……」
視線を下げ、あの時の光景を脳裏に思い浮かべると、どくん、と大きな鼓動が高鳴った。心なしか、じんわりと体が火照り始める。
子供の頃に父親が行方知れずとなって以来、女手一人で育ててくれた尊敬する私の母親、マナ・ブレア。エンパイア・ステート大学に勤務し、専攻の細胞学の教授として教壇に立っては熱弁を振るい、分野の枠組みを越えて学者、教授界隈では名の知らぬ者などいないほど優秀と評されていた。あと、とある学説を唱えたことにより一躍有名となったらしい。
仕事熱心、研究熱心な人ではあったが、家庭を疎かにせず毎日必ず帰宅しては私のことを気にかけてくれる、とても優しくて温かくでも内実人一倍寂しがり屋で構って欲しさに悪戯やちょっかいをかけてくるなど、何処か子供らしさを残した人だった。
彼女との思い出が走馬灯のように私の脳内を駆け巡るも、ちらりと隣に置いてある心電図に目をやった。
思った通り、バイタルが上昇し始めている。
これ以上、深く思い出せばまた前と同じように危険値まで到達するだろう。今は、目の前の取り調べに専念すべきだ、と脳内に駆け巡る彼女との思い出を振り払い、俯いていた顔を上げた。
「犯人の顔は見たかしら?特徴とか覚えているなら教えて欲しいの」
「いえ……ということはまだ捕まってない、それも犯人の目星がついてないんですか?」
いきなり犯人の顔や特徴を聞くとなると、まだ警察側は犯人の特定までは至ってない、または候補すら絞り込めていない状況なのかもしれない。
というのも、犯人が捕まっていれば、そんなことは聞かないはずだ。既に逮捕されているのなら、無事捕まえましたという事後報告で済む。もしくは、犯人の顔写真を手渡して確認するとか、はたまた犯人の特徴を述べて貴方の記憶と一致しますかとか尋ねるだろう。
案の定、二人の表情に曇りが差す。
「恥ずかしい事だが、そうだ。現時点では、まだ犯人の顔すら分かってない」
捜査が難航しているのだろう、だから面会が許可された今日、朝早くから取り調べに来たのかと妙に納得した。被害者である私ならば犯人の顔を見たのではないかと藁に縋る思いだったのかもしれないが、残念なことに背後から撃たれた所為でわたしも犯人の顔を見ていない。これでは、警察もお手上げだ。
このまま目撃者の証言が得られず、犯人の残した証拠が見つからなければ事件は迷宮入りして、最悪捜査が打ち切られてしまう。そして、母を殺した犯人はのうのうと何処かで暮らし続けるかもしれない。その事実に思わず、拳を握り締めた。幸いにも手は布団の中にあったため見られていない。だが、表情に出ていたのだろう。此方を心配するかのようにユリさんは私の肩に優しく添えた。
「アヤちゃん、犯人は必ず私たちが捕まえて見せるから、辛いだろうけどその時の状況を教えてくれないかしら?」
「わかりました、と言ってもお役になるようなことはないかもしれませんが…あの日は、高校の部活で少し帰宅がいつもより遅くなったんです。多分、20時前だと思います。ガレージに車があったので母が帰宅していることはそこで分かりました。防犯意識が高い人でしたから、必ず上下の鍵をロックするんです。でも、その日は二つとも鍵がされてなくて、珍しいこともあるんだなって、その時は思ってました」
「不審に思ったのは、玄関のドアを開けたところです。帰宅した時は必ずただいまって声を出すんですけど、返事が返ってこなくて。そしたら、キッチンから物音がしたので、キッチンに向かったら……」
「お母さんが倒れていた…と」
「はい、びっくりして叫びそうになった時、後ろから音がして…今思えば、あれが発砲音だと思います」
「辛かったでしょうに……」
「いえ、もう過ぎたことですから……」
「背後から撃たれれば犯人の顔は見えないのも道理か、ほかに何か気づいたこととかあるかな?」
「そういえば、撃たれて倒れた時に何か歌が聞こえてきた気がします。男性の声で低い声でした。歌の内容は、たしか……虎よ虎よ、あかあかと燃える…とか何とか」
私の言葉に二人は顔を見合わせた。予想外の答えだったのだろう。
この情報は警察に有益なものだと言える。というのも、薄れゆく意識の中だったため、その声が犯人のものなのかはたまた犯人ではなく別の人が歌った録音のものなのかは判別つかないが、犯人は現場でこの歌を残したという事実は変わらないのだ。その内容が例え不可思議なものだったとしても、ほんの僅かとはいえ捜査が一歩前進したと思う。
それにもし、あの歌声が犯人のものであったのならば男性で声が低い人物とかなり大雑把ではあるが絞り込める。犯人の性別すら分からない状況下から一応脱却したのだから大きな前進とも言えよう。
「虎よ虎よ、赤々と燃える?なにかの詩でしょうか?」
「分からん、そっちの方はさっぱりだ。男性で低い声か…アヤ君、有益な情報をありがとう」
「いえ、こんなことでしかお役に立てませんから……」
「何かあればこの電話番号まで連絡してくれ。娘も心配していた、ゆっくり療養してまたウチに遊びに来なさい。娘も喜ぶ。とりあえず、今日はこの辺りでお暇させて貰うよ」
手渡されたメモにはジョージさんの携帯電話の番号が書かれていた。良かった、これで何かあったときに彼に連絡できる。今後のことを考えると警察官であるジョージさんの力をお借りすることが多くなるかもしれない。というか、必ずその機会が訪れると思う。
「ありがとうございます、あと、グウェンに宜しく伝えておいてください」
「ああ、わかった」
「アヤちゃん、無事に退院したら私と美味しい喫茶店どうかしら?絶対気に入ると思うの」
「是非、行きたいです。退院した暁にはユリさんのオススメ、食べてみたいです」
「良かった、ならまずはしっかりと傷を治してね。それじゃあ、またね」
「あの……!」
踵を返して病室を後にしようとする二人に私は静止の声を上げる。ずっと考えていた。どうして、私がこのスパイダーマンの世界にどの作品にも登場しない、というか登場するはずもない【パラサイト・イヴ】の主人公、アヤ・ブレアという少女の肉体に憑依してしまったのか。原因は分からない。だけど、私は決意したんだ。憑依してしまった以上、この世界がスパイダーマンの世界で私の知る悲劇的な結末を迎えてしまう人がいるのなら、どんなことをしても止めてみせる、と。
「警察官になるためにはまず何をすればいいんですか?」
二人の目が見開いた。これが運命だと思う。私は警察官になる。一人でも多く、例えヴィランであっても悲劇的な結末を迎えさせないために、そして、大切な人を殺した犯人を捕まえるために。これが、この世界に偶然産み落とされた、私の最初の決意であった。
本当は昨日更新したかったんですけど残業で疲れて書けませんでした、本当申し訳ないです…
あと、この場をお借りして誤字脱字報告をして下さった方、本当にありがとうございます。なるべく、しないように何度も読み返してはいるんですが、どうしても見落としてしまうようで…今後とも気をつけますので、どうか宜しくお願いします。
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