寄生虫美女で蜘蛛の世界 作:坂本祐
ご想像の通り、今回はある人物視点の話です。
いつもより、気合を入れて書きました。
あと、作中で僕の敬愛する作家さんと同じ展開が見られますが許可を得ていますので何卒ご容赦を…神からのお許しは頂きました。
では、第五話どうぞ!
OK、じゃあもう一度だけ説明しよう。
僕はピーター・パーカー、今まで半年間、この世でただ一人のスパイダーマンだ。とある事情により放射性の蜘蛛に噛まれて以来、超人的な力を得た為に、僕は自作のマスクとスーツを着て人助けをするようになった。
それも、僕の叔父であるベン叔父さんと約束をしたからだ。大いなる力には大いなる責任が伴う。僕は、この言葉を蔑ろにした為に大切な家族である叔父さんを失った。だから、絶対にもう大切な人を失わないと誓い、叔父さんとの約束を忘れずに今日も人助けをする。
その日は、普段通り、街で困っている人を助け、助け、助けていた。流石に疲れて一息つこうとしたその時、メイおばさんから電話がかかってきたのだ。いつものようにお使いかな、ってその時までは気楽に考えてた。でも、違った。幼馴染みのアヤが銃で撃たれた、病院に来てほしいっていう内容だった。そんな馬鹿な、僕は祈りながら病院に向かった。
アヤ・ブレア、彼女は僕の一つ年上で僕が叔父さんの家に預けられる前から叔父さん達と彼女の家族は交流があったらしい。初めてアヤを見た時は彼女のことを天使だって呟いたようで、今でも偶に叔母さんに揶揄われたりする。そんな彼女は成長するにつれてその美貌は更に磨きが掛かった。
日系の母親であるマナさんの血を引くその容姿はまさに端麗で、金髪碧眼でありながら東洋的な神秘性を秘めた、きめ細やかな美貌と抜群なスタイルに惹かれる人は多い。
そんな彼女は今や、ミッドタウン高校のマドンナとして近隣では知らぬ者はいないほど有名人になっていた。誰もが見惚れる絶世の美女で見た目だけなら、女王蜂のカーストになってもおかしくない彼女だが、性格は誰にでも分け隔てなく接する心優しい心の持ち主で、成績優秀、運動神経も抜群と非の打ち所がない。
科学部に在籍しており、同じ部活の部員である友人のグウェンから聞いた話だと、専門家に負けないくらいの知識を持っているらしい。特に細胞に関しては他に追随を許さない、と言わんばかりの凄さと言っていた。
噂によるとハリウッドからスカウトが来たって話だけど、彼女の美貌を考えると虚偽じゃないと思えてしまうのが凄いところ。
そんな彼女が、銃で撃たれた。転がり込むように病室に行くと、其処には意識不明で眠っているアヤがいた。いつものように僕の心を明るくさせる柔らかな笑顔はなく安らかに目を閉じ、包帯を頭部に巻いて、点滴や心電図などを体に繋ぎ、簡素な病衣服を着た痛々しい姿だった。
病室で叔母さんは泣いていた、どうやらアヤのお母さんであるマナさんが射殺されていたらしい。あれほど仲の良かった友人を失くしたのだから、悲しむのも無理はなかった。不幸中の幸いなのは、まだアヤが死んでいないということ。そして、犯人は未だ捕まっておらず逃走中だという。
僕はベッドの上で眠るアヤの寝顔を一瞥すると、叔母さんの静止の声を振り切り、病室から飛び出した。誰もいない病院の屋上でスパイダーマンのマスクを被り、NYの隅から隅まで犯人を探した。だけど、どれだけ探しても犯人は見つからなかった。
警察も未だ犯人の特徴が分かっていないようで、聞き込みの最中だと言う。事態が難航する中で、事件から三日経ったある日、叔母さんから電話がかかってきた。
アヤが目覚めたとの一報だった、僕は大急ぎでNYの街中をスイングしながら、新記録を更新する勢いでアヤのいる病室に再び駆け込んだ。
其処には、叔母さんと真面目そうな医者、そして二人の看護婦がいた。病室に駆け込んだために看護婦から叱責をくらったが、正直言ってそれくらい許して欲しい。こっちだって急を急いでいるんだ。意識が目覚めたアヤは、普段よりも何処か余所余所しい様子で挨拶もせずただ僕を見つめていた。なんだが、他人を見るような、そんな視線だった。
不審に思いながらも、叔母さんの横に歩み寄ると、如何してか叔母さんは初めて出会った人物に連れを紹介するかのように僕のことをアヤに説明するから尚更困惑した。
だけど、そこから事態が急変した。アヤのバイタルが危険値まで急上昇したのだ。その後、病室から追い返されるように締め出され、その日はそれ以降面会出来なかった。仕方ない、医者も予想外の出来事で驚いていたようだし、
その日の帰り道で、異常がないか精密検査を実施したと看護婦からメイ叔母さん伝てに聞いた。結果は特に異常がなかったらしいけど、医者からは何故バイタルが急上昇したのか分からないため、次の日も安静にして問題なければ面会を許可するとのことだった。
後日、叔母さんか聞いた話だけど、意識を取り戻した後少しの間だけ記憶喪失になっていたようだ。だから、あんな余所余所しい様子で僕を見ていたのかと納得した。でも、容態が急変したときに、無事に記憶を取り戻したらしいからもう心配はいらないと病院から連絡がきたらしい。
あの時は、本当にびっくりした。あんなに辛そうなアヤは初めて見たし、なにより心電図から鳴り響く無機質な音が妙に恐ろしく感じた。なぜ、恐ろしく感じたのか分からないけど、アヤは無事なんだ、今はその事実を素直に喜ぼう。
そして、現在。僕は三度、アヤの病室に訪れる。
ニューヨークの中でも指折りに施設が整った中央病院の受付を済ませて、アヤのいる3階の病室まで階段で歩く。途中二人の警察官にすれ違った。
一人は何処かで見たことある人だったが、もう一人は若いアジア人の女性警官でなにやら深刻そうな表情で会話をしていたし、何度も警官には追われている身なので正直言って苦手だ。向こうも僕のことなど気にしていないようなので、そのまま通り過ぎた。
そして、迷うことなく病室にたどり着き、逸る鼓動を感じながらもドアをノックした。
「どうぞ」
落ち着いた優しい声音が病室から聞こえてきた。ドアを開けて病室に足を踏み入れると、そこにはもう体調が良いのかベットの上で身体を起こした彼女がいた。いつも通りの穏やかな笑みを浮かべて、入室した僕をベットの上から迎えてくれた。まだ、心電図はつけているらしい。機械から正常値を示すぴこぴことした音が一定の間隔で鳴っている。
「アヤ、体調は大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。この前はごめんなさいね、心配かけちゃって」
「いや、仕方ないよ。アヤが無事なら問題ないから」
本心だった、彼女が無事ならそれでいい。僕はもう大切な人を二度と失いたくはない。そして、僕のような大切な人を不幸な事故や犯罪で失った人がこれ以上増えないようにマスクをかぶって正体を隠し、スパイダーマンを続けているのだ。
例え、デイリー・ビューグルのジョン・ジョナ・ジェイムソンのように自警団気取りの犯罪者のマスクマンと人々から罵られようとも、警察から追われようともスパイダーマンは決してやめない。それが、僕が決意した信念だからだ。
「ふふふっ……」
そんな僕の決意を知ってか知らずか彼女は、楽しそうに破顔一笑した。その笑顔に思わず顔が紅潮するのを自覚するがどうしようもない。だって、これほどまでに綺麗な笑顔は見たことないからだ。くすくすと笑みをこぼして口元に手を添える仕草なんて彼女がすればまるで恋愛映画のワンシーンのようで、見惚れてしまうのも無理はない。
「え、どうしたの?」
いつにも増して上機嫌な彼女に少し驚いてしまった。なにか楽しいことでもあったのだろうか。情けないが若干、吃りながらそう問いかけると彼女は首を左右に振った。
「いや。なんでもないわ。それで、ピーター。今日はどうしたのかしら?」
こてん、と首を傾げた彼女に僕は背負っていたリュックサックを下ろして、中から封筒を取り出すとそれを彼女に差し出した。
「アヤにお見舞い。それと頼まれたものを持ってきたんだ」
「ああ、メイさんに頼んでた新聞ね。それとお見舞い?別にいいのに、ピーターったら…」
差し出された封筒にキョトンとしたアヤだったが、僕の言葉を聞いて何処か嬉しそうに受け取った。
大切な家族を亡くしてしまったんだ、気落ちしているだろう彼女に何か元気付けることが出来たらと考えたが、万年金欠の僕ではまともなプレゼントを贈ることもできず頭を悩ませるもすぐに僕にしかできないことを閃いた。出来栄えは僕の想像を遥かに超えるものが出来た、あとは彼女が気に入ってくれるかどうか…
「ありがとう、開けてもいいかしら?」
頷くと彼女は封を切り、中身を取り出した。それは、僕が撮った写真集であった。それもただの写真集ではない。僕だけにしか出来ない、世界に一つだけのスパイダーマンの写真集である。
「わっ、スパイダーマン……」
驚いたような声を漏らした彼女は、すぐに嬉しそうに目を輝かせた。やった、成功だ。心の中で勝利のガッツポーズをして、叫びたい衝動に駆られるが何とか堪えた。ここで奇行に走ろうものなら、これまでの努力は無駄に帰す。堪えろ、堪えるんだ、ピーター・パーカー。
「えっと、スパイダーマンが好きだって言ってたから喜ぶかなって…」
以前、スパイダーマンのことを好意的に見ていたことを思い出し、彼女のためにいつもより写真の撮影場所、ポーズやアングルを考えながら自撮りをした。デイリー・ビューグルに写真を渡すときよりも緊張したが、彼女が喜んでくれたのならこれまでの努力と苦労も全て報われる思いだ。
「ええ、ありがとう!とても嬉しいわ!」
僕のことを一瞥することもなく写真に釘付けになりながらお礼を言うアヤに思わず口元がにやけそうになるのを堪える。まさか、ここまで喜んでくれるとは思わなかった。一枚一枚、丁寧にじっくりと眺める彼女の横顔はいままでで見た彼女の中で一番嬉しそうな表情をしている気がした。普段はクールで妖艶な雰囲気を漂わせている彼女だが、今の姿はまるで長年欲しかったおもちゃをずっと飽きもせず眺めている子供のようで思わず目を丸くした。
「そんなに喜んでくれると思わなかったよ…」
「ふふふ、やっぱりピーターはカメラマンの才能あるわ。このアングルなんてとても良いじゃない」
そういうと、彼女は一枚の写真を見せてきた。それは、写真集の中で一番綺麗に撮れたと思った渾身の一枚だった。NYの夜景をバックに街中をスイングしている写真。後ろに映るダイナミックなビルと僕の躍動感溢れるポーズが絶妙にマッチし、新聞の一面になってもおかしくないくらいの迫力を持っている。もし、これを新聞社に持っていったら幾らになるか検討もつかないくらいの出来栄えだが、この写真はアヤだけが持っていて欲しいためそんなことをすることは未来永劫ないだろう。
彼女の絶賛のコメントに思わず顔がにやけてしまった。
「え、そ、そうかな……」
「やっぱり、将来はカメラマンになるのかしら?」
アヤの言葉に思わず腕を組んで頭を捻る。
「いや、まだ考えてないなあ…カメラマンも魅力的だけど、高校の教師もいいし、科学者だって捨てがたい……」
まだ、将来のことは真剣に考えていないが今言った職業なら本気で興味はあることは嘘ではない。だが、スパイダーマンの活動を考えると、安定した生活リズムの職には就けないだろうし悩ましい問題だ。
そういえば、彼女の進路について聞くことは今までなかった。将来どんな風に考えているのか、少し気になった。成績優秀で器量のいい彼女ならどんな職に就こうとも難なくこなせると思う。学校では科学部に在籍していることから科学の道に行くのだろうか。そうなれば、もしかしたら僕と同じ進路になるかもしれない。そんな将来のことを思い描いて思わず心の中で笑った。
「そういうアヤはどうなの?将来は何の職業につくの?」
「わたし?私は……」
アヤは一瞬、思い悩んだ表情で俯いたが、すぐに凛とした表情になると真剣な面持ちで僕のことを見つめ、口を開いた。
「刑事になるわ」
「それは……」
思いがけない答えに思わず言い淀んでしまった。たしかに正義感の強いアヤだが、今の現状を考えると心配してしまう。マナさんを殺害し、彼女を撃った犯人が未だに捕まっていないことから復讐心に駆られているのではないかと勘繰ってしまうのも仕方ないと思う。だけど、僕の心の中を見透かしたようにアヤはゆっくりと頭を振った。
「復讐のためじゃないわ、たしかに母さんを殺した犯人は憎い。だけど、それ以上に私は無実の人に危害を加える人を許せないの…そのことが、今回ではっきりと分かったわ」
毅然と言い放った彼女の瞳から復讐心に囚われた色が見えなかった。ならば、純粋に応援しよう。それにもし、彼女が警官になれば少しは警察と協力して事件に解決できるかもしれない。警察に追われる日々はもう懲り懲りだし、なにより二人だけで難事件を解決する不純な将来のイメージが浮かんでしまった。悪くない、いや最高だ。
「そっか、アヤが考えて決断したのならぼくは応援するよ」
「ありがとう、ピーター」
そう言った彼女は再び優しく微笑んだ。今更ながら彼女に頼まれていた新聞を渡していないことに気がついて、近くの購買で買ってきた今日のデイリー・ビューグルの新聞を一部差し出す。元々はメイ叔母さんが頼まれたそうだが、生憎今日は仕事の都合で面会に来れなくなったらしいので代わりに僕が届けに来たわけだ。
「ああ、それと頼まれてた新聞」
「態々、持ってきてくれてありがとう、ピーター。新聞は後で読まさせて貰うわ。今はピーターのくれた写真集が気になるから…」
新聞を受け取ったアヤはベットの脇に置くと、再び僕がプレゼントした写真集に目を向けた。計三十枚程の短い写真集ではあるが、彼女は一枚一枚じっくりと満足のいくまで眺めているためにまだ半分も写真を見れていない。
この調子であれば写真集を見終わるのもかなり時間がかかるだろう、ずっとこのまま二人っきりでいたいがそうもいかない。僕にはまだやるべきことが残っている。彼女を銃で撃った犯人を捕まえることと、この街の何処かで困っている市民を助けなくてはいけないのだ、そうスパイダーマンとしてその正体を隠して……
チラリと病室に飾ってある時計を見た。まだ、時間は大丈夫だと思う、あと、5分したら別れを告げて街へ繰り出そう。あ、そういえば、一つ気になってたことがあった。
「でも、意外だったな、アヤってデイリー・ビューグル読んでたんだね」
彼女がジェイムソンの被害妄想とこじつけ満載のデイリー・ビューグル社の新聞を読んでいるとは露とも思わなかったのだ。僕の言葉にアヤは一瞬、目の動きを止めて写真から目線を外すと不思議そうな表情で僕を見つめた。
「はじめて読むわよ?」
「え?なら、どうして?」
「前々から興味はあったのよ、でも機会がなくて…それにピーターがどんな写真撮っているのか気になったから……ね?」
そういって、照れ臭いのか誤魔化すように可愛らしく小首を傾げ、鼻歌を歌いながら写真集に目線を戻す。ずるいと思う、好きな人にそんなことを言われてときめかない男なんていない。やっぱり、僕はアヤ・ブレア、彼女のことが異性として好きらしい…
この作品のピーター・パーカーはどの原作コミック、どの映像作品のピーター・パーカーよりもリア充として描こうと思います。彼の人生、苦労の連続で幸福に満ちた人生とは程遠いものなので二次創作くらいは幸せな人生を送ってほしいと思いました。
それと主人公ですが妖艶な雰囲気を持つミステリアスなお姉さんキャラをイメージして書いてます。でも、魅力的な人物に見えるか主観では分かんないですね…
一歩間違えればウザイ、あざとい、気持ち悪いの三拍子揃った感じになりかねないので塩梅が難しいです…
因みに憑依させる前の本来のアヤならスパイダーマンの写真集に戸惑ったと思います。というのも、好意的なコメントをしたとはいえ、熱狂するほどのスパイダーマンファンではなかったからです。あくまで、世の中はまだ捨てたもんじゃないな、くらいの考えだったと思います。
そのため、前世がスパイダーマンオタクの男が憑依しているためにあそこまで喜びました。彼からしてみれば、長年の憧れの主人公から自分のためにスパイダーマンの自撮り写真をもらったのでその喜びは計り知れないものでしょう。うらやまけしからん。
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