寄生虫美女で蜘蛛の世界   作:坂本祐

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 お気に入り登録が凄い勢いで増えててめっちゃ驚いてます。
 下手な文章でまだ物語の展開も亀並みですが、読者の皆様に満足してもらえるような作品になるようにこれからも頑張ります!

 あと、宜しければ作品の評価もして頂ければめっちゃ喜びます。
 高評価がこんなに嬉しいものだと知りませんでした…笑
 また、この場をお借りして高評価をして下さった方々本当にありがとうございます!本当に励みになります!毎日、高評価を見てはにやにやが止まりません…笑
 
 感想の方もどしどしお待ちしてます!

 さて、今回は最初のプロットではMJとグウェンがアヤの病室に訪れる話でしたが、流石に物語の展開を進めないと不味いと思って断腸の思いで省いて今回の話が出来ました。なので、今回はようやく物語に進展あり、過去一の長さになりました笑

 あと、MJとグウェンのお見舞いの話はいずれ間話として投稿しようと思います。

 では、第六話どうぞ!


第6話:不安と不吉で不穏な鼓動

 10時を迎える時計の鐘が鳴った。ピーターはそれを合図に立ち上がり、下ろしていたリックサックを背負う。どうやら、帰るらしい。幾ら休日とはいえ、彼はスパイダーマンなのだ。やはり、ヒーローに休日などないようだ。

 

 これから帰ってマスクを被り、正体を隠して市民の平和を守るためこの広大なNY中を駆け巡るのだろう。記憶だとまだスパイダーマンになってから日が浅いようで、一部の人からは依然として否定的なコメントが多いのに、そんな世論の声にめげずに日々、困っている人を助けている。それも、おそらく亡くなった叔父のベンさんの教えを大切に守りながら、まだ16歳の少年が、だ。なんて健気で愛おしいのだろうか。

 

 大いなる力には、大いなる責任が伴う。たしかに、その通りだ。だが、だとしても誠に実践できることなど容易ではない。増してや、16歳なんてまだ子供だ。青春もしたいだろうに、それらを投げ捨てて叔父の教えを守りながらスパイダーマンとして市民の平和を守っている。

 

 並の覚悟では続かないだろうし、ジェイムソンのような罵詈雑言を浴びせる人もいるやもしれない、市民を助けているとはいえ自警団気取りの危険人物として警察に追われている現実。

 

 果たして、彼の心の安寧は有るのだろうか。今は大丈夫でも、いつかは心が折れてしまうかもしれない。なら、少しでも彼の疲れや苦悩を取り除くことが出来れば、と祈りながら私だけはどんな事があっても彼の味方でいようと思う。それが、いまの私に出来る数少ない彼への恩返し、だ。

 

 そんな私の決意を露とも知らぬであろうピーターは、爽やかにニコッと笑う。

 

「それじゃあ、僕はもういくよ。また、何か欲しいものがあれば遠慮しないで言ってね?」

 

「本当にありがとう、ピーター。おかげで随分と元気が出たわ」

 

 これはお世辞ではなく本心であった。母を亡くし、自身も銃で撃たれて重体に陥った私を気遣って忙しい身なのに態々、スパイダーマンの自撮り写真集を作ってくれたのだ。嬉しくないわけがない。

 

 私は年長者らしく何処か余裕を持った微笑みを浮かべてお礼を述べ、ピーターは嬉しそうに笑った。

 

「そう言ってくれるなら嬉しいよ。また、いい写真が撮れたらアヤにあげるね?」

 

「ありがとう、楽しみに待っているわね」

 

 手を振ってピーターを見送ると、暫く病室のドアを眺めていたが、不意に口元に手を当てた。

 

「大丈夫だったかな、わたし……別人だって疑われないよね?大丈夫だよね?」

 

 ピーターに別人だとバレてしまえば、彼だけでなく他の人たちにも心配をかけてしまう。不安になる気持ちをどうにか抑えて、記憶の中にあるアヤ・ブレアをちゃんと実践したつもりだが他の人によっては違和感を覚えるかも知れない。不安になるのは当然のことであった。

 

 それになんと言っても、長年憧れていたスパイダーマンに出会えたのだ。私の頬は無意識に緩んでいなかったか気になった。変な顔をしていたら、どうしよう。

 

 あと、改めて認識したが現実で見るピーター・パーカーはめちゃくちゃカッコ良かった。まだ幼い顔つきではあるが黒髪碧眼の端正な顔立ちで、さわやかな好青年を感じさせる人柄。

 

 スパイダーマンになってから身体を鍛えているのか、肩幅も広いしよく見るとガッチリとした体型で、髪型や服装にも気を遣っている事が伺える。気配りが出来て顔も良くファッションにも気を遣っている、この世界のピーターはさぞ女の子にモテるだろう。やはり、好きな女の子がいるのだろうか。

 

 もしかしたら、アヤなのかもしれない。そうなると、ピーターには本当に申し訳ない。彼女のことが好きであるなら、彼女の肉体を借りている私という異物はあまりにも邪魔である。真実を知れば気味が悪いと思ってしまうのは無理もない話だろう。

 

「どうすればいいのかな……」

 

 悄然とした独り言にだれも答えてくれるはずもなく、答えの出ない自問自答が少しだけ続いた。

 

 

 

 月日は流れ、私が目覚めてから一週間が経った。体を貫通した銃弾の傷は無事塞がり、日常生活を送っても支障がないため少し早めに退院することとなった。お医者さんは驚いていたな。普通の人よりも自然治癒能力が高いせいか普通よりも傷の治りが早いって。

 

 そんなわけで無事に退院した私だが、目下とある問題に直面した。

 

 それは、学校の卒業に関する問題だ。あまり長期的に学校を休んでしまうのはやはり卒業の問題にも関わってくる。常にトップの成績を維持してきたが、だからといって次のテストに出席してなければ最悪留年ということもありうる。まあ、ことがことだったので交渉次第では学校側も配慮してくれるかも知れないが、もし通らなかったらピーターたちと同じ学年になるわけで、だとしてもやはり留年は嫌だ。

 

 そして、現在。昨日に続き今週二度目のミッドタウン高校に訪れた。久しぶりの学校に登校した昨日は凄まじかった。学校一のマドンナなだけあって道ゆく人全員に声をかけられた気がする。教師から生徒、果ては清掃のおばちゃんまで。やはり、皆んな優しい人だ。どれだけアヤが慕われていたか、記憶を見て分かっていたがそれでも凄まじいと戦慄したけど。

 

 だが、今日は昨日よりも随分と落ち着いたようで幾分か楽だ。道ゆく人に挨拶されるだけでお祝いのパーティーを開こうとかデートの誘いとかは全くない。断る時、かなり勇気がいるとは知らなかった。

 

 すると、学校のロータリーで見るからに高級そうな車から一人の男性が降りるのが見え、私はそちらの方に足を運ぶ。昨日はどうやら休みだったらしく彼だけはまだ挨拶していなかったのだ。その男の子は運転手の初老の男性と何やら一言二言話した後、車を見送ってこちらに歩き出そうと振り返った。

 

 黒髪の天然パーマに世の女性を虜にするであろうハンサムな顔立ち、シンプルではあるが高校生とは思えないほどの見るからに金額のかかったおしゃれをしたオズコープ社の御曹司、ハリー・オズボーンである。

 

 向こうも私に気づくと、少しばかり驚いたようだが流石はプレイボーイ、すぐに魅力的な甘い笑顔を浮かべた。色気があるな、本当に15、6歳かと疑いたくなるほど魅力的な男の子だ。こうして、目の前に立っていると風に乗って微かに彼の甘いコロンの匂いが鼻腔をくすぐる、不快な香りではない、どちらかと言えば好きな匂いかな。やはり、センスもいい。

 

「おはよう、ハリー。一週間ぶりかしら?」

 

「やあアヤ、無事で何よりだよ。それと、お見舞いに行かなくてごめん。少し立て込んでたんだ。それで、体の調子のほうは大丈夫なのかい?」

 

 挨拶も程々に私達は肩を並べて学校の方へと歩き出す。ちらりとシンプルな意匠をした腕時計をみやれば、予鈴が鳴る10分前になる頃だった。なので周囲にいる生徒たちは慌ただしい。学校の昇降口を潜り、そのままクラスの方へと向かう。

 

 私のクラスは昇降口からすぐ目の前だが、ハリーのクラスは少し歩かなければならない。まあ、この分なら余裕で二人とも時間内には着くだろう。

 

「ええ、もう大丈夫よ。それに、あんまり休んでると卒業できないから」

 

「君の成績なら大丈夫だと思うけど」

 

「油断してると足元掬われちゃうから。だから、常に全力を心掛けてるのよ」

 

「そういえば、今日の帰り時間あるかな?」

 

「大丈夫だけど、急にどうしたの?」

 

「昨日、オズコープ社内にいる異種間遺伝子交配で有名なカート・コナーズ博士とアポイント取れてね、今日はラボの方に見学行くことになってるんだ。アヤも良ければどうかな?」

 

 ハリーの言葉に私は目を見開いた。

 

「カート・コナーズ博士」 

 

 呟くようにその名前を口にする。カート・コナーズ博士、その名前はとあるヴィランの本名ではないか。そのヴィランの名もリザード。人型をした爬虫類の怪物でその特徴は再生能力もさることながら、スパイダーマンに勝るとも劣らない怪力の持ち主のヴィラン。ヴィランになる原因はどれも彼が望んだものではなく、とある薬品のせいでトカゲ人間となってしまい人々を襲うほど凶暴化する、というものが大半を占める。

 

 どちらかと言えばまだヴィランになることを阻止できる一人だと思う。いま、彼の研究がどれくらい進んでいるのか、確認のために一度彼のラボに訪れるのも良いかも知れない。

 

 そんな考えをしていることを知ってか知らずか、ハリーは腕組みをして黙りこくってしまった私に思ってたより食いつきがないと困惑しているのか、彼がどんな人物か語り出す。

 

「そうそう、爬虫類研究で世界的権威な人なんだ、アヤも聞いたことあると思うんだけど…」

 

「ええ、勿論知ってるわ。お邪魔じゃなければ是非行きたいわね」

 

「じゃあ放課後迎えに来るよ」

 

「ええ、また連絡してちょうだい」

 

 そういって、クールに去ってゆくハリーを見送る。さて、私もクラスの方へと行きますか。

 

「アヤ……」

 

「わっ、んんっ、おはよう、ピーター?なんだが、元気がないわね…」

 

 背後から元気のないピーターの声が聞こえて、びっくりする余り素っ頓狂な声を上げてしまった。聞こえただろうか、咳払いをして年上のお姉さん風に取り繕うももう遅い気がするがこの際仕方ない。暗い表情で佇むピーターに心配な声をかける、が、依然としてピーターの顔色は晴れない。

 

「うん、おはよう。盗み聞きする気はなかったんだけど、今日、ハリーと二人でカート・コナーズ博士のところに行くの?」

 

「ええ、そうよ。刑事になるとはいえ、科学の知的好奇心は捨てた訳じゃないから」

 

「ぼくも行きたい、前々からカート・コナーズ博士には興味があったんだ」

 

 まあ、確かにピーターならコナーズ博士のに興味を持つのも無理はないか。彼は放射性を浴びた蜘蛛に噛まれて超人的な力を得たのだ、ある種コナーズ博士の研究する異種間遺伝子交配の成功例とも言えよう。コナーズ博士は人間とトカゲを夢見たが、対するピーターは人間と蜘蛛と違いがある、が。まあ、何にせよ自分の力について知りたがるのも頷ける。

 

 でも、ピーターに同行を許可する決定権を有しているのは私じゃない、ハリーだ。彼の許可がなく私が判断するのはあまりにも勝手だと思う。

 

「私はいいけど、ハリーに聞いてみたら?」

 

「そうだね、そうするよ」

 

 そう言ってピーターは自分の教室の方へと歩き出した。心なしか恐ろしい邪気を感じたが気の所為だろうか、と頭を捻るも予鈴が鳴り私も教室へと向かった。

 

 

 

 放課後、私はハリーと待ち合わせてをして彼の車でオズコープ社へと赴いた。道中、車内でスパイダーマンが大急ぎでどこかに向かっている姿をチラリと見たが、果たしてピーターはハリーにコナーズ博士のラボ見学の件を話したのだろうか。いや、ここに居ないということは断られたか、はたまたスパイダーマンの活動のために諦めたのかどちらかだろう。なら、今ハリーに口にする話題ではない。

 

 目的地にたどり着くと、私はハリーの運転手さんにお礼を言ってから降りた。そして、眼前に聳える巨大なビルを見上げる。オズコープのロゴが入ったそのビルはNY一の高さを誇るだけあって天辺はどれだけ見上げても確認することはできない。これだけで如何にオズコープ社が世界的巨大な企業であるか窺い知れるだろう。

 

「久しぶりに近くまで来たけど、やっぱり大きいわね」

 

「大きいだけだよ、僕はあんまり好きじゃないんだ。さて、それじゃあ…なんで、ピーターがいるんだ?」

 

 オズコープ社へと歩き出そうとした、その時、近くにある木の影からにゅっと出てきたピーターに気づいたらしく目を丸くして驚いていた。ピーターは不気味な笑みを浮かべてハリーに歩み寄る。というか、ハリーの言葉から察するにピーターはラボの見学を同行する件について話してなかったのか。

 

「やあ、ハリー。水臭いじゃないか、僕も誘ってくれたら良かったのに。アヤ、ちょっとだけハリーを借りるね?」

 

 そう言って有無を言わさずピーターはハリーの肩を組むと、少し離れたところへ歩いて行った。なにか私に聞かれて不味いことでもあるのだろうか。一人になって手持ち無沙汰になってしまったが、思わぬ二人の人物が一人佇む私に気づいてオズコープ社の出入り口付近から歩いてきたのをみて少しだけ笑った。

 

 一人は金髪碧眼で少しだけ小柄な体格をしており、肩にかかるくらいのミディアムロングヘア、もう一人は赤毛でスタイルがいい女性で長い髪の毛をナチュラルに流している。どちらも思わず見惚れてしまうほどの美少女だ。

 

「おはようございます、アヤ先輩。ようこそ、私のオズコープ社へ!」

 

「全く、グウェン。貴方の会社じゃないでしょ」

 

「別に良いでしょ、MJ。前々から言ってみたかったの」

 

 言わずもがな、金髪碧眼の美少女はグウェン・ステイシーで赤毛の美人はメリージェーン・ワトソンだ。どちらも、各作品においてスパイダーマンひいてはピーター・パーカーの恋人となる女性でこの世界でもやはりというべきか魅力的な女性であった。

 

 アヤの記憶ではこの世界のグウェンはその見た目から想像できないくらいの茶目っ気のある人物でノリが良く少し小悪魔な嫌いがある今時の女子高校生、MJは女優志望で大人の女性を目指しているすこしだけ背伸びをした女性っていうイメージだ。

 

 どちらも見た目に気を遣っているのが伺えるほどすごいおしゃれだ。私がピーターでもし二人のうちどちらかを選べと言われたら、思慮に思慮を重ねても結局はどちらかを選べないほどに二人とも魅力的な女性だ。この世界線のピーターは果たしてどちらを選ぶか気になるが、当人たちの問題なので温かく見守ろう。

 

「あら、MJにグウェン。こんなところで奇遇ね。貴方たちもハリーに誘われたのかしら?」

 

「いえ、私は一週間前からコナーズ博士のラボにインターンで参加してるんです。研究生としてですけどね、だから、博士には二人をラボまで案内するように頼まれてたんですよ」

 

「私はどうせならってグウェンに誘われたんです。一人や二人増えたところで変わらないって」

 

「へぇ、そうだったの」

 

 私は二人の言葉に納得しながら頷くと、少し離れたところでこちらを見ていた二人に声をかける。まったく、いつまで二人で話しているのだろうか。

 

「ちょっと、お二人さん。いつまで二人でコソコソしている気?」

 

「アヤ先輩、二人は放っておいていきましょう」

 

「そうよ、ピーターとハリーったらいっつもナイショ話」   

 

 私を含めて三人が呆れた様子で二人を見ていることに気が付いたのだろう。すこし、慌てている。幸い、コナーズ博士の研究生であるグウェンがいるのだ。ハリーも以前、コナーズ博士のラボに行ったことあるみたいだし道順は覚えているだろう。なら、私達だけ先に行ってても大丈夫なはず。

 

「それもそうね、行きましょうか。二人も用事を済ませたら早めに来るのよ」

 

 二人にそう声をかけると、私たちは先にオズコープ社の方へと歩いて行った。

 

「OK、ここは一時休戦だ」

 

「わかった、その案乗るよ」

 

 少し離れた場所で内緒話をしていた2人の男たちは、先程までの言い争いを一旦止めて顔を見合わせると、同時に手を差し伸べて握手をしたのだった。

 

 

 

 一階にあるフロントの受付を済ませて名札を受け取ると、私達はVIP専用のエレベーターに乗り込み、コナーズ博士のラボへと向かう。本当なら一般社員が使用するエレベーターに乗るはずだが、其処はオズコープ社の御曹司であるハリーがVIP専用のエレベーターに案内してくれた。一面ガラス張りのエレベーターで少しだけ恐いが、オズコープ社の内部を上から余すところなく見渡せるため圧巻の一言だ。

 

 一体、どれだけの金額がかかったのだろうか、小市民な私では想像もつかない。博士のラボは七十階にあるらしくまだ着くのに時間がかかりそうだ。

 

 ふと、隣に佇む白衣姿に着替え、髪の毛をポニーテールにしたグウェンに話しかける。

 

「それで?カート・コナーズ博士の異種間遺伝子交配は何処まで進んでいるのかしら?博士の助手筆頭のグウェン・ステイシー教授?」

 

「それは見てのお楽しみです、アヤ研修生」

 

 私のおふざけにノリのいいグウェンは偉ぶった態度で茶目っ気のある返しをして、思わず二人して顔を見合わせて笑った。やはり、彼女と話していると楽しい。同性でなければ惚れていただろう。なんというか、漫画によくある異性の親友でありながらいつの間にか惚れてた幼馴染みたいな、そんな感じの気安い性格をしているのだ。

 

「ふふふ、でも意外ね。MJも来るなんて」

 

 ふと、気になっていたことがあって外を眺めていたMJに話しかける。彼女は女優志望であり、私たちのように科学にさして興味を持っていない。だから、今回のラボ見学には少し驚いたのだ。

 

「私は二人みたいに科学に詳しくないけど、博士の研究内容には興味あるの」

 

 仲間外れが嫌だから着いてきたと思ったが、どうやら違うらしい。それに、博士の研究内容にMJが食いつくところなんてあっただろうか。

 

「どうして?」

 

「だって、それが可能ならユニコーンが出来るってことじゃない!?わたし、子供の頃から夢だったのよ、ユニコーンに乗ること!」

 

 MJは目を輝かせてそう言い放った。なんというか、子供みたいだ。いや、子供か。いくら日頃から女優を目指して大人の女性に近づけるように日々努力しているMJといえど、内実こころは乙女のようで、もう16歳になるであろうに、まさかユニコーンに乗ることを夢見ているとは梅雨も思わず少しだけ言葉に詰まった。

  

 どうやら、困惑しているのは私だけではないらしく、MJの言葉に思わずピーターが堪え切れず少しだけ吐き出す。おい、失礼だぞ。できる男は顔には出さないのだ、いやハリーも若干呆れた様子だ。ダメだこりゃ。

 

「MJ、結構な少女趣味なんだね…」 

 

 声を振るわせながら、ピーターはそう呟く。

 

 流石のグウェンも呆れた様子でMJを見つめており、今の状況に気づいたMJは顔を真っ赤にしてあたふたとしていたが、どう頑張っても取り繕うことが不可能で諦めたらしく、八つ当たり気味に矛先を噴き出したピーターに向けた。

 

「なによ、ピーターったらそんなに笑わなくてもいいじゃない!」

 

「いや、そんなには笑ってないよ!」

 

 怒り心頭と行った様子で詰め寄るMJにピーターは必死に弁明しながら私に助けを求めるような視線を送るが、敢えて無視をした。流石に吹き出して笑うのは頂けない。こってり絞られるといい。

 

「全く、ピーターは女心がわかってないな」  

 

「その通りね…」

 

 ハリーがそう呟くと、頷いて同意した。私に見捨てられたことにショックだったのか、ピーターは目に見えてしょんぼりした。や、あとでちょっとフォローにしておくか。なんだか捨てられた子犬みたいだ、少し可哀想だな。

  

 漸く気が済んだのか、MJはピーターから離れると先程までとは打って変わって明らかに不機嫌です、と言わんばかりに腕組みをして早く着けとエレベーターのモニターを睨め付けていたが、そんな彼女にグウェンはいたずらっ子のような笑みを浮かべて近づいた。なんだか、嫌な予感がする。

 

「ユニコーンは乙女の夢だもんね〜、ね、MJちゃん?」  

 

 にやにやとしながらグウェンはMJの顔を覗き込むようにして揶揄い、流石の温厚なMJも臍を曲げたのかそっぽを向いた。

 

「グウェン、嫌い……」

 

「ごめんごめん、謝るから……」

 

 仲のいい二人だが、記憶では時たまこうして喧嘩というか仲違いもする。まあ、今のは100%グウェンが悪いが。何度も真摯に謝るグウェンにどうやらMJも許したらしい。器の広い女の子だ。

 

 すると、目的地を告げる鐘が鳴り、エレベーターの扉が開いた。其処は世界有数の研究施設と謳われるだけあって今まで見たこともないくらいに綺麗な廊下で、何処かSFちっくな見た目をしている。廊下でこんな感じなら、ラボの方は一体どれほどのものだろうかとワクワクが抑え切れない。

 

 エレベーターから降りると、先頭にいたグウェンが先程とは違い真面目くさった顔で咳払いをして、全員の顔を見渡すと再び偉ぶった態度で口を開いた。

 

「んんっ……では、研究生諸君。ここからは真面目に行きましょう、分かりましたか?」

 

「はい、ステイシー教授」

 

 そこは流石、長年の付き合いである私たち。打ち合わせもしてないのに、全員が寸分のズレもなく異口同音に同じ言葉を口した。先程まで臍を曲げていた、MJもだ。彼女のいいところは後に引き摺らないことだろう。今もこうしてノリよく私たちに付き合ってくれている。

 

 私たちの言葉に満足したのか、グウェンは芝居ががった様子で鷹揚に満足そうに頷く。

 

「よろしい、では私に着いてきなさい」

 

 グウェンは、ばっと白衣を靡かせて踵を返すと歩き始めた。彼女の背中をカルガモの子供のように着いていく。全員口を開かないが、今のやり取りに誰もがにやにやとしている。かくいう私も、面白くてクスクスと笑っていた。ああ、なんて楽しいのだろうか。

 

 そして、勝手知ったる道と言わんばかりにすいすいと奥へと進んでいく。道中、幾度も立ち塞がるように近未来的な扉があり、そのたびに私たちはカードをスキャンをして扉を潜っていく。そして、遂に博士のラボに辿り着いたらしく、ラボの入り口付近でグウェンは足を止めた。

 

 入り口には、カート・コナーズ博士、第3ラボと書かれている。

 

 今度は本当に真面目な真剣な表情をしたグウェンが私達の顔を順繰りに見やり、確認するように頷いた。全員が真剣な表情だ。

 

 すると、コナーズ博士のラボから一人の男性が出てきた。そのとき突如として、どくん、と激しく、不吉に脈打った。体が熱く、燃えたぎる。まるで、強烈な磁場に引き寄せられるかのように、私はコナーズ博士のラボから出てきた男から目が離せない。

 

 研究員ではないだろう。白衣ではなく、ハリーに負けず劣らず随分と金のかかった仕立ての良い群青色のスーツを着ていたのだ。どちらかと言えば、できるビジネスマンのような雰囲気だ。

 

 見た目は中年で随分とダンディでイケメン、白髪の髪の毛をオールバックにしており、若い女性を虜にする甘いフェロモンが漂っているような人である。

 

 すると、彼はハリーと面識があるのか驚いた様子で目を丸くしたが、次の瞬間には人の良さそうな笑顔を浮かべて彼に歩み寄った。

 

「おや、これは、ハリー様。今日はどのような御用で?」

 

「見ての通り、友人を連れてカート・コナーズ博士のラボに社会見学だ」

 

「それはそれは、ではご学友の皆様もどうか楽しんで……」

 

 そういって、彼は私たちに軽く会釈すると入れ違いになるように男は去っていく。私の真横をすれ違う際、一際大きく鼓動が高鳴った。依然として、去りゆく彼の背中から目が離れない。

 

 すると、黙り込んでいる私に只ならぬ雰囲気を感じ取ったのか、全員がどうしたのかと私の顔を不思議そうに見つめていた。

 

「どうかしたのかい?アヤ?」

 

 不審に思ったのか、ハリーが全員を代表してそう尋ねてきた。あの謎の男の背中から目を離さぬまま隣で不思議そうな顔をしているハリーに、彼の正体を問いかける。

 

「ね、ハリー。今の人は?」

 

「ああ、オズコープの理事会の一人だ。名前は、グスタフ・フィアーズ」

 

「ふーん、グスタフ・フィアーズ、ね……」

 

 オウム返しをするように男の名前を口にした。何処かで聞いたことある名前だが、思い出せない。だが、聞いたことあるとなれば気に留めておいた方がいいだろう。この世界で私が知る人物はヒーローであれ、ヴィランであれ、はたまた一般人であれ重要なキャラクターには違いないのだ。

 

 そうして、遂にはグスタフの姿が見えなくなった。

 

 依然として激しく心臓は鼓動している。何故ここまで胸が高鳴るのか、何故男が気になるかは分からない。でも、どうしてだろうか。この胸の高鳴りは何か不吉で不穏な音のように私は感じた。





 原作のあとがき?みたいなところでMJが小悪魔な女性、グウェンが普通で退屈なヒロインみたいなことを書かれてましたが、この作品では二人の性格が入れ替わってます。というか、グウェンは普通で退屈なヒロインってすごい言われようですよね。

 以下ピーターとハリーの内緒話です。
「抜け駆けはだめって約束したじゃないか」
「抜け駆けじゃない、これは社会見学だ」
「なら、僕だって呼んでくれたら良かったじゃないか」
「あんまり大所帯だと申し訳ないだろ」
「一人二人増えるくらい別に変わりないよ」
「一人二人?」
 MJ、グウェン登場。ハリー唖然。

 今日の更新はここまで。過去一、長い話になったので。
 実写映画のアメスパ見ながら推敲したので、誤字脱字があるかもしれません。
 ごめんなさい、でも面白すぎて止まりもはん!(薩摩弁)
 明日の更新は今日の筆のノリ具合だと思います!

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