ナザリックのアトリエ! 〜プロローグ〜   作:水風浪漫

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誤字報告ありがとうございます。
登場人物:ヒカねぇ
     シズ・デルタ
     シャルティア・ブラッドフォールン

前書き:長くなってしまったので前後編に分けました。また、本作ではモンスター名は可能な限りオーバーロード原作またはアトリエシリーズに登場するモンスターを使用していきたいと考えております。(設定面では独自部分が多くを占めるかもしれません)
一言:シャルティアを喋らせるのは楽しいですが、シャルティア語は難しい……。逆にシズは凄い簡単。


8.夜空の下でお話しを!(前編)

 

「おっ〈虹の欠片〉だ」

 

 夕暮れ時、私はナザリックの地上一階(地表部分)にて一人で土を弄っていた。……いや、正確に言うなら離れた所で数体の〈石の動像(ストーンゴーレム)〉が同じく土いじりをしているし、霊廟入口の屋根の上では手伝いとして付いてきたシズがカーテンウォール*1の向こう側に目を光らせている。

 

 モモンガさんと私、それぞれが得た情報の共有とノートへの書き出しを行った後、魔法の検証作業に取り掛かると言うモモンガさんを見習って、私も自分の能力の検証作業に取り掛かった。

 魔法詠唱者(マジックキャスター)なので実際に魔法を発動させて効果や仕様を確認するモモンガさんとは違い、錬金術士の私はあまり魔法を使用しない。

 ユグドラシル由来の〈錬金術師〉は魔力系魔法職と生産職の二つの側面を有しているが、アトリエ由来の〈錬金術士〉はほぼ純粋な生産職。作ったアイテムさえあれば様々な役割をこなせるものの、その成果の是非は前準備に大きく左右される。なればこそ、まず検証するべきなのは『ナザリックで採取出来る素材の変化』だと結論づけたのだ。

 

 元々ダンジョンだったナザリックにはギルド拠点と化した後でもそこかしこに採取ポイントが設置されていたが、そんな如何にも"ゲーム感"のある仕様が今はどうなっているのか。その確認のために封鎖されている第八階層の次、灼熱地獄の第七階層から上へ上へと調査を行ってきた。

 以前は採取ポイントが光って見え、そこでのみ素材を採取可能だったが、現実となった今はそこに存在するあらゆる素材を自由に採取出来るようになっていた。ただの背景グラフィックに過ぎなかった物がちゃんとした素材に置き換わっており、品質はまちまちながらもそれぞれしっかり特性を有している。

 

 今回は検証ということで、とりあえず階層全体から広く浅く素材を集めてみたが、採取行為がギルド資産にどんな影響を及ぼすのかも確認する必要があるだろう。基本的にナザリックの損傷した設備の修復や機能維持にはギルド資産が消費されている。これまでは自動湧き(POP)モンスターと同じ扱いで資産消費がなかった素材も、もしかすると仕様が変わっているかもしれない。一日経過で元通り! だと嬉しいのだが、植物系はともかく鉱石系は最悪一度採取したらそれっきり……と言うのも考えられなくもない。

 今の所、採取の仕様が変化して、加えて一日に採れる量の制限がなくなった点を除けば大きな変化はない。素材もそれぞれの階層に応じた物が採れるし、レア素材の確率も体感では変わっていないように思う。

 

 遭遇したアクシデントと言えば、採取を手伝ってくれようとしたユリが何故か素材を片っ端から握り潰してしまったことくらいだろうか。どうやら採取スキル持ち以外には素材採取が出来ないようで、残念ながらユリには待機中だったシズと交代してもらった。

 各階層はそれなり……いや、非常に広いので、たった一人で黙々と作業するのは大事な仕事とは言えちょっと退屈だっただろう、シズが採取スキルを習得してくれていたのは嬉しい誤算だった。ガーネットさんに感謝だ。

 

「……ヒカねぇ様、変な物が採れました」

「それは〈何かのタマゴ〉だよ」

「何の卵なんですか?」

「さぁ? 私も分かんない」

「……よろしければ、一つ貰っても良いですか?」

「良いけど何かに使うの?」

「温めます」

「へ?」

「……可愛いのが、生まれるかも」

 

「……これは」

「あ、それはねぇ」

「〈ゴーレムのコア〉です」

「おっ、知ってたんだ」

「……博士がよく持ってました」

「博士と言うと、ガーネットさんが? ゴーレム作ったりしなさそうだけどなぁ」

「……ジューシーで、味も濃厚でとても美味しいです」

「食べるの!?」

 

「……ふわふわです」

「〈綿毛草〉だね。糸の原料になるから色々便利な素材だよ」

「布にしたら、もっとふわふわになりますか?」

「うーん〈エルドロコード〉って布になるけど、布だからふわふわはしてないかもなぁ」

「…………そうですか」

「あっ、で、でもぬいぐるみ作りとかにはピッタリかも! シズは何の動物が好き?」

「……スピアニードル、です」*2

「ふわふわもこもこが好きなんだねぇ」

 

「……真っ暗です」

「急に暗くなるってことは〈常夜の花〉だね」

「花……?」

「周囲の光を吸収する不思議な花なんだよ。いっぱい光を吸収すれば止まるんだけど、紫色の綺麗な花でね〜……あ、止まった」 

「確かにとても綺麗(じーっ)」

「……一ついる?」

「ありがとう、ございます。……エントマにあげます。姉として」

 

 そんなやり取りをしながら二人でえっちらおっちら階層を上がって、漸く地上にたどり着いたのがおよそ一時間程前のこと。シズは「この世界にどんな存在がいるのか不明な今、気を抜く訳にはいきません」と周囲の警戒に当たってしまったので、仕方なくゴーレムに採取を手伝わせていた。ゴーレムは製作者のスキルを一部継承するので、もしかすると役に立つかもと思ったけど大正解だった。

 

「ふぅ……んああ〜!」

 

 一通りの採取を終えて体を伸ばすと、背筋からパキペキと小気味よい音が鳴る。長時間屈み込んで固まった凝りが解けていくのは何とも気持ちが良い。このまま中に戻るのも勿体ない、と私は足まで伸ばせるロッキングチェアを取り出して腰掛けた。

 

 空を見上げればそこには、現実世界(リアル)では私が生まれる遠く昔に失われて久しい透き通った空気、清々しい風、白い雲と()ける様な黄昏の空が見える。

 この世界には空を覆い隠して陽射しを遮る黒い雲も、アーコロジー外の世界を覆っていた重化学スモッグもないし、清浄な空気の下でならガスマスクを着ける必要もない───。

 前世では当たり前だったのに、胸一杯に思い切り空気を吸い込めることがこんなにも嬉しいなんて、当時は思ってもみなかった。

 

 ぐぐぐっ、と空に向かって腕を伸ばす。目に入った染み一つない玉の様に滑らかな肌は、本来の私のそれとはまるで違う。あちら側では珍しくないので気にしてはいなかったが、長期間スモッグに晒されて染み付いた薄黒い肌汚れも無く、日光が乏しいが故の生白い肌でもない。適度に日に焼けた、肉付きの良い健康的で瑞々しい身体───身長はちょっと低めだけど。

 

 ……あの優しい両親の間に生まれて、アニメ制作会社で働いていた『柊薫』と仲間達と一緒にアインズ・ウール・ゴウンを創り上げた錬金術士の『ヒカねぇ』。どちらも間違いなく本当の私だが、仮想が現実になった今、もう私は柊薫の体と世界には戻れなくなった。

 あちら側に想い残すことは殆ど無かった。職場での人間関係も積み重ねて来た実績も、移住の為に貯めたかなりの額の貯金だってこちらの世界へ来れたことを思えば名残惜しくない。……ただ唯一心残りがあるとすれば、久々に会った友達がくれた「またね!」という別れの約束をもう果たせないということだけだ。

 きっと口にしないだけで、モモンガさんとヘロヘロさんにも近い想いはあるだろう。ユグドラシルを引退してからは一度も顔を合わせることのなかった仲間達ではあるが、最終日には何人も顔を出してくれたのだ。むしろ、誰も来なかったまま別れるよりもその想いは強いかもしれない。

 

 茶釜ちゃん、今どうしてるだろうなあ。それに元の世界の私ってどうなったんだろう、と思いを馳せる。

 部屋で静かに息を引き取っているのか。それとももしかしたらこっちの私と分離して、今も柊薫としてあの世界でせっせと生きているのかもしれない。もしそうだとしたら、きっとモモンガさんを誘って新しいゲームで一緒に遊び始めていることだろう。……いや、流石にまだ移住先のタイトルを検討している最中だろうか。

 

 ……どちらにせよ、その生死については今の私には窺い知れぬこと。でもどうせなら、どうか二人の血を継いだ柊薫として、モモンガさんこと鈴木悟さんの友達として、茶釜ちゃんとの約束を果たして生き続けてくれ。そしてどうか幸せになってくれと、私は目を瞑り、深く……深く願った。

 

 

 

 

 

「……失礼いたします、ヒカねぇ様」

「んぇ……?」

 

 ───風が空を切り、草木が揺れるさざめきに耳を澄ませている内に、私はいつしか眠りに落ちていた。

 ぼんやりと目を開くと、辺りは真っ暗闇に包まれている。空は雲に覆われていて、雲の隙間から差込む月明かりだけが闇夜を照らしている。そんな私の傍らで膝をついたシズが私の体を小さく揺すっていた。

 

「シズ……」

「……おはようございます、ヒカねぇ様」

「おはよう……いま何時?」

「二十四時三分です」

「……日付変わっちゃったんだ。……起こしてくれてありがと」

 

 椅子から立ち上がり、くるりと周りを見回してみると、いつの間にやら辺りには何体ものモンスターとNPCが立っていた。……たぶんだけど、私を守る護衛ということだろう。

 目立つ者だと背後にニ匹、ヘラクレスオオカブトを擬人化したような白銀の騎士*3が。傍らに立つシズと少し離れた所に複数人の〈吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)〉。そして完全装備ではないが普段のドレスに脈打つ紅血の槍を構える第一階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールンが立っていた。

 

 顔合わせの後では初めて会うLv.100のNPCだ。

 ……それにしてもシャルティアか。ペロロンチーノさんが趣味(性癖)の限りを設定に詰め込んだらしい、とは知っているものの、女性陣には頑なに設定を見せてくれなかったので内容については想像することしかできない。

 しかし、顔合わせでモモンガさんを「美の結晶」やら「白磁の(かんばせ)」と大絶賛していた姿から何となく、触り程度の性格だけは分かっている。朧げな原作知識ではエロ担当だった覚えもあるのだが、顔合わせで見た言動と創造主を考えればたぶん間違っていないだろう。

 

 シャルティアは夜闇の中でも鮮明に浮かび上がる赤い瞳でじっとこちらを見つめていたが、小さく手を振ってみるとおもむろにこちらへ歩み寄ってきた。そして二メートル程の位置で立ち止まると槍は地面に突き刺し、美しいカーテシーを披露した。

 

「こんばんは、シャルティア」

「ご機嫌麗しゅうございんす、ヒカねぇ様。安らかにお休みいただけましたでありんしょうか?」

「あっ、うん。たぶんだけど、護衛してくれてたんでしょ? 悪いね……じゃなくって、ありがとうね」

「勿体なきお言葉でありんす。至高の御身に尽くすのは当然のことでありんすが、お役に立てたのであればこの上ない光栄でありんす」

 

 そう言って、また優雅なお辞儀を披露するシャルティアの姿からは事前知識にあったエロ担当要素の欠片も感じ取れない。喋り方は非常に独特だが、流暢に喋っているので余り奇妙な感じもしない。

 

「シャルティアはどうしてここにいたの?」

「どうして、と仰いんすと……?」

「あぁいや、第一から第三階層(シャルティアの階層)で待機してるものとばかり思ってたからさ。なんで地上に出て来たのかなって思って」

「あぁ、そう言うことでありんしたか」

 

 ぽん、と合点がいったとシャルティアが手を叩く。

 

「第一階層に上がりんした際にヒカねぇ様の気配(オーラ)を感じ取りんしたので、ご挨拶に伺ったのでありんす。ですが丁度お休み中でありんしたので、シズ一人では少々防備が手薄かと思いんして護衛に加えていただきんした」

「……なるほど?」

 

 第一階層から感じ取れる私のオーラ……? 何言ってんだこの子、と湧き上がる疑問をぶつけたい衝動を抑えながら、シャルティアの言葉を噛み砕く。

 つまり第二階層から第一階層に上がって来たときに地上にいた私の気配を感じ取って、挨拶に来たが寝ていたので警護に参加した……と。いや、やっぱり意味が分からない。勝手に人の気配を感じ取らないでくれ、と漏れそうになる言葉を飲み込んだ。

 

 「何時(なんじ)頃から参加してたの?」と尋ねるとシャルティアは「ええっと、そうでありんすね……たしか……うーん……」と腕を組みながら、口をもにょもにょさせて口籠る。それを見かねてか代わりにシズが答えた。

 

「……二十時前頃からです」

「えっ、じゃあ私が寝てたせいで四時間も待ちぼうけくらったってこと!?」

「……そうとも言えます」

「い、言わないでありんす!」

 

 シズの発言にシャルティアが慌てた様子で異議を唱える。

 

「ヒカねぇ様の寝顔と寝息、それに加えて寝言まで全部同時に味わえる! それだけで涎が止まらないくらい凄く価値のある時間でありんした!!」

「え゙っ……あ……そ、そうなんだ」

「……シャルティア様、色々と凄い」

「ふふん、そうでありんしょう? 時間を有意義に過ごせることも実力の内でありんすからねぇ。シズもわらわを見習うと良いでありんすぇ? お礼は次に会う時、一緒にユリを連れてきてくれるだけでいいでありんす」*4

 

 容易に手折れてしまいそうな細い腰に白魚の様な細腕を当てて胸を張るシャルティアだが、対するシズの反応は冷ややかだった。

 

「うわぁ……」

 

 そのドン引きするのをやめたげなさい。ぴぴっと〈伝言(メッセージ)〉を送ると、シズはすぐさまパッと両手で口元を隠した。……今日一日一緒に過ごして気が付いたことだが、シズは時々細かい動きが小さな子供みたいになってとても可愛い。

 

 そして、シャルティアはその後も盛んに喋り続けてくれた。私としてはまだ彼女の性格を掴み切れていないから沢山喋ってくれるのはありがたいし、シズはそもそも余り口数が多くない。私達は相槌を打ちながらシャルティアの話に聴き入った。

 

「確かにわたしといたしましては死んでいる方が好みではありんすが……」

「ヒカねぇ様の華奢な骨格を美しく包み隠しておられる繊細なお身体も、ふわりと仄かに膨らんだお胸も、ヒカねぇ様の淑やかな美しさを象徴しているようでとても魅力的に思いんす!」

「シズは自動人形(オートマトン)でありんすから、生者と死者のどっちに振り分けるか悩ましい所でありんすけど……お腹にキュンと来ないから生者でありんしょう」

「食事、でありんすか? せずとも支障はないでありんすけれど、しようと思えば可能でありんすぇ?」

「実はわたし、紅茶には一家言ありんすので、もしお茶会を開くことがあれば是非とも呼んでほしいでありんす」

「アウラでありんすかぁ? あのおチビを招くくらいならマーレを招待する方がよっぽど華やかになると思うでありんすぇ?」

「えっ!? ほ、本当に仲が悪い訳ではない……と思います。ペロロンチーノ様がそうお決めになったので、偶にからかって遊んでいるだけなので……い、従姉妹(いとこ)でありんすか? まぁ、そう言えなくもないでありんすが……」*5

「デミウルゴスやパンドラズ・アクターとの関係……デミウルゴスとは普通に良好な関係と思っておりんすけれど……パンドラズ・アクターなる名は初めて耳にするでありんす」

 

 単純な容姿の好みの話に始まり、食事の好き嫌いから他の守護者との関係性まで、シャルティアの口からは途絶えることなく次々と話題が湧き出てくる。しかも一つ質問をしてみると、二つ三つと返事が返ってくるので会話のネタが尽きる心配もない。私からだと何を話すかで悩んでしまうから正直とても助かった。

 地味にまだ会ったことのないNPCや他の守護者についての情報も出てくるので途中から〈生きてる羽ペン〉にメモを取らせていたら、あっという間に三十分ほど経っていた。

 もう少しだけ引き留めたいな、という考えが頭を過ぎった時、不意にぐぎゅるるうぅぅぅ……と唸り声にも似た音が私たちの会話を遮った。

 

 ───出処は私のお腹、腹の音である。

 そういえば、寝過ごして夕食を食べ損ねてしまったから、お昼にシズの特性ドリンクを分けて貰って以降何も口にしていない……。

 

「ッ! なんの音でありんすか……!?」

「あ、あはは……」

 

 シャルティアは即座に警戒態勢に入り、私を背に守りながらランスを構えた。楽しげにお喋りをしていた姿から一変して、鋭い視線で辺りを探る姿は非常に頼り甲斐がありそうに見える。シャルティアの号令で即座に駆け寄ってきた〈吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)〉に対して「死ぬ時はヒカねぇ様の盾になって死ね」と指示を飛ばし始めた辺りで、私は慌ててシャルティアを止めに入った。

 

 ごめん、私のお腹の音です……。

 

 顔の熱さを自覚しながらそう告げると、暫く目を点にしていたが、次第にシャルティアの頬もかぁ……と紅く染まっていく。

 

「も、申し訳ありんせん……お恥ずかしい姿をお見せしたでありんす……」

「や、私のほうこそ。何かごめん」

「いえ、わらわが勝手に早とちりしてしまいんしたからでありんすので……」

「……」

「……」

「……ヒカねぇ様。もうチョコ味しかないですが、お飲みになりますか?」

「今はいいかな……それよりも」

 

 すっ、とチョコレート色の液体が詰まったドリンクカップを差し出してきたシズに断りを入れつつ、私は未だ頬を染めたまま視線が合わないシャルティアの手を取った。

 

「シャルティア、お夕飯はもう食べた?」

「へ? いえ、食べてないでありんすけれど……」

「よし、じゃあ変な時間だけど、これから夕飯にしよう!」

「えぇっ」

「……護衛はお任せ下さい」

「シズも一緒だよ?」

「……? ですが、それだと護りが疎かに……」

「そこはほら、一時的にこの子達に任せれば良い───〈中位イミテーション創造〉」

 

 杖を取り出してスキルを発動すると、地面に小さな亀裂が走った。そして亀裂から泡立つ銀色の液体が湧き上がってきて、十体の鈍い銀の狼の形をとる。Lv.40の狼系モンスター〈エルダーファング〉を模したまがい物の生命体(イミテーション)だ。

 自分の〈百科事典(エンサイクロペディア)〉に記録されている討伐数千以上のモンスターのみが対象だが、種族の垣根を越えてモンスターを召喚できる便利スキルである。このスキルで生み出したイミテーションはHPが低めで共通して雷・火・氷属性弱点を持ち、一部のモンスターの固有スキルが使えず、銀一色の見た目が特徴的すぎてほぼ確実に弱点攻撃が飛んでくる点を除けば非常に優秀である。

 

 本来の〈エルダーファング〉は臙脂色の毛皮を持つ、そこそこの戦闘能力と高い探知能力を有する正統派の狼系モンスターだが、大きな特徴として『吠えた対象に一秒間の硬直を与える』という害悪スキルを持っている。これがあるせいで弱ると吠えて逃げ出し、追いつかれたら再び吠えるを繰り返して延々と時間稼ぎを行う害悪モンスターとして扱われていたが、召喚モンスターという視点で見ると敵プレイヤー発見時に高確率で生還するので、ギルド戦では斥候(せっこう)役として重宝していた。

 

「ナザリックに近づこうとしている存在や、隠れてこちらを窺っている存在がいないか探しなさい」

 

 命令を下すとすぐに幕壁外へ駆け出して行くイミテーション達を見送って、私は続いてアイテムボックスから〈魔法の絨毯〉を取り出す。

 五人程度なら余裕を持って乗れるそれにシズとシャルティアの手を引いて乗り込むと、私は一路、幕壁の上を歩き回って仕事をしているマーレ目掛けて飛び出した。

 

 

to be continued...

*1
幕壁。城や砦における堡塁等に囲まれた部分の城壁。今回はナザリック地上部分の霊廟などを囲んでいる円形の壁のこと。

*2
スピアニードル:ハムスケ並の大きさのアンゴラウサギに似たモンスター。

*3
王騎士(ロードナイト)〉:防御面が極めて優秀。

*4
死体愛好家・両刀使いのシャルティアにとって、アンデッドで巨乳美女のユリはストライクゾーンど真ん中。

*5
シャルティアの廓言葉は動揺したり、感情が昂ぶると外れることがある。




ヒカねぇ:元の世界がどうなっているのか知る術はない。マーレ、アウラやシャルティア、他のNPC達は友達の子供と思って一緒にやっていく所存。なんか沢山食べている割にはお腹が減るなと思っている。
 現実側のその後については、個人の好きなように考えて良いのだと思います。個人的にはリアル側と異世界側両方に同一人物が存在する「同位体転移説」を推しています。リアルでヒカねぇ(柊薫)は社畜を続けているでしょうし、モモンガ(鈴木悟)さんは朝四時に起きて出社していることでしょう。

シズ:創造主はガーネットさん。サバイバル(隠密)系スキルの一部に採取技能が含まれていたことで、待機組から外れて仕事を得られた。代わりに待機に回ったユリはエントマとボードゲームでもしているかもしれない。お昼ごはんは特性ドリンク・ストロベリー味、ヒカねぇにはバナナ味をあげた。
シャルティア:アホの子兼ピンク担当の守護者。一人称には「わらわ」「わたし」が混在する。吸血鬼特有の高い身体性能でヒカねぇの息遣い等諸々を堪能していたが、自分では誰でもする当たり前の行動だと思っている節がある。アニメ視聴者にアホの子と思われがちだが、原作では特に頭が悪いような描写はなく、単に猪突猛進な事が多いだけ。なので純粋な戦闘時にはとても頼りになると思われる。アンデッドでお腹が鳴ることが無いので勘違いした……という裏設定。

オリジナルのアイテムまたはスキル:
〈生きてる羽ペン〉アトリエ名物「生きてるシリーズ」。ハリポタの自動筆記羽ペンみたいなもの。大百科事典(エンサイクロペディア)には書き込めない。
〈魔法の絨毯〉空を飛べるマジックカーペット。ゆらゆら揺れたりせず、お茶を置いても溢れたりしない。サイズのバリエーションが豊富。
〈中位イミテーション創造〉自分の百科事典(エンサイクロペディア)に記録されている討伐数千以上のモンスターを対象に、その姿を模したイミテーションを召喚する錬金術系統の職業スキル。Lv.25〜40までのイミテーションを一日12体まで召喚できる。
〈イミテーション〉『まがい物の生命体』を当て字で使いたかったが、ごちゃつくと思い断念した。総じてHPが低めで、雷・火・氷属性弱点を持ち、一部のモンスターについては固有スキルが使用不可。全身鈍い銀色の姿をしており一目見ただけで知っている者にはイミテーションとバレるため、対プレイヤー戦では戦力として使うのは難しかった。
〈脈打つ紅血の槍〉(仮名)シャルティアのサブ武器として想像した真紅の槍。伝説級。

アトリエシリーズから拝借したアイテム・モンスター(一部に独自設定を含む):
〈虹の欠片〉虹色の綿みたいな素材。ファンシーな見た目に反して毒物の一種。
〈何かのタマゴ〉山や森に偶に落ちているタマゴ。作品によって「何も生まれない」と明言されていたり「殆ど(・・)無精卵」と何か生まれることがあるような文面だったりと様々。本作では……。味が抜群に美味らしい。
〈綿毛草〉花が咲いた後に綿毛のような物が残る草。集めて紡ぐと糸になる。これを元に何度か調合するとエルドロコードになる。
〈エルドロコード〉希少素材から作った高級布。高級なドレスに使われたりするし、布とは思えない耐久性がある。
〈ゴーレムのコア〉宝石とも鉱石ともとれる塊で、ゴーレムの心臓部かもしれない。……本来ドロップ限定だが、ナザリックでは第七階層で採取できる。ガルガンチュアが設置された影響かもしれない。
〈常夜の花〉周囲の光を吸収する特性を持つ紫色の花。闇を呼ぶ魔性の花と忌み嫌われている……らしい。ロロナのアトリエでは紅色のドンケルハイトと色違いで、彼岸花にも似た見た目は個人的にとても美しいと思います。
〈エルダーファング〉首元にふさふさの毛を携えた臙脂色の狼の魔物。見た目と名前以外は独自設定です。勝手ながら強制硬直を付与する害悪スキル持ちにさせていただきました。

後書き:台詞が沢山書けて楽しかったです。
評価、感想お待ちしております。
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