ナザリックのアトリエ! 〜プロローグ〜   作:水風浪漫

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誤字報告ありがとうございます。
登場人物:モモンガ、ヘロヘロ、ヒカねぇ
     アウラ、マーレ
     その他階層守護者たち

前言:オバロの二次小説を読んでいると、守護者達との初邂逅シーンを書く難易度の高さを感じます。二次創作でのオリ主が異物であることは疑いの余地がありませんが、特にあの場面はオリ主の入り込む余地がなく、無理に書いてしまうと読み手は悪い意味での「オリ主ヨイショ」に感じられて不愉快になってしまうのではと考えています。その為、せっかくの守護者初登場シーンではありますが彼らとの会話描写を極端に削っています。ご理解頂けると幸いです。


3.お茶を飲もう〜守護者との顔合わせ完了

 嗅覚の次は味覚も確かめようという話になり、ゲーム内アイテムはどう変化しているのかの確認のために私が持つ〈無限の緑茶瓶(ポット・オブ・エンドレス・グリーンティー)〉で一息入れることになった。

 その前にモモンガさんが〈無限の水差し(ピッチャー・オブ・エンドレス・ウォーター)〉を取り出したのだが「水に味はないでしょう」というヘロヘロさんの突っ込みを経て、効果説明に「最高級の玉露と抹茶を使用した豊潤な香りの緑茶」と記載があったこちらを試すことになったのだ。

 ここまでの検証で衝撃的だった要素の一つである虚空と化したアイテムボックスから取り出した薄緑の急須。その表面は温かく、中には緑茶がなみなみ(そそ)がれていた。前世の母に教えてもらった記憶を手繰り寄せながら、濃さが均等になる様に三人分を数回に分けて()いだお茶は抹茶由来の鮮やかな緑色が美しい。

 ……漂ってくる香りに思わず唾を飲み込んだ。

 

 一般人である私達が普段口にしていたお茶との違いに躊躇しているのだろうか、二人が中々口をつけようとしない。私から言わせれば、この世界における一般的なお茶は緑色に染めた苦い色水に過ぎない。私の目の前にあるこれこそ、本来の緑茶……!

 

「いただきます!」

 

 待ちきれない! と私は恐々と匂いを嗅いだりしている二人を尻目にお茶を啜る。熱々だぁ!

 溶けて染み渡るような優しい苦味の後に、そよ風が吹き抜けるように豊かな茶葉の香りが口いっぱいに広がっていく。

 この味、この苦味、香り……本当になんて懐かしい……。

 生まれてから今まで見たことはあれど、ついぞ口にすることはなかった茶葉を使ったお茶。こうして口にするまですっかり忘れていたけれど、今ハッキリと思い出した! これだ、これこそ私の知る"お茶"の味だ!

 

「んぐんぐんぐ……っぷは〜! めっちゃ熱い! でも美味っしい!!」

 

 たまらない! どう言ったら伝わるかな。長年離ればなれになっていた友人と久しぶりに再会したら、子供の頃一緒にバカやってたあいつのままだったみたいな、そんな凄い安心感!

 そのままの勢いで二杯目をお代わりする辺りで、ガブガブ飲む私の姿を見て決意が固まったのか、ようやくヘロヘロさんがお茶に口を付けた。

 

「む……店とかのより飲みやすいですね。なんだろう、あんまり苦くないからかな? 匂いも薄いし、薄味って感じですね。水とお茶の中間みたいな……う〜ん、不味くはないですけど」

「こっちが本来の味なんだけど……」

 

 ヘロヘロさんにとっては普段飲んでるのが「お茶」でこれはまた別物ということか……? きっとモモンガさんも近い感想になるんだろうな……くっ、仕方ないとはいえ何か悔しい。

 一般的なアレが偽物でこれが本物な所以を声高々に説明したいけど、同じアーコロジー外住民の私が言ったところで説得力に欠ける。彼らのことだから黙って聞いてくれるだろうけど、それは別にしても「私はいいモノ食べてたんですよ」とアピールしてるみたいになる。

 この世界で唯一の友達に仲間外れにされたりしたら私の心はおしまいだ……! 涙を飲んでこの溢れ出すパッションは胸に仕舞おう。

 

「えっ、本物飲んだことがあるんですか? もっとしっかり匂いがある方が良くないです?」

「この強すぎず柔らかさのある味が良いんじゃん。繊細な味は伝統的な和食の特徴って雑誌に書いてありましたし」

「んー……そう言われると、これはこれで美味しい気がしてきた」

「そうでしょうそうでしょう」

「何でヒカねぇさんが自慢げなんですか」

「だって私の出したお茶だし」

 

 と、ヘロヘロさんにこの美味しさについて力説する。そしてもう一人の方、モモンガさんはというと───

 

「予想はしてました。してましたけどね……」

 

 そこにはお茶でローブをビショビショに濡らして意気消沈するモモンガさんがいた。尖った顎をつたってポタポタと垂れる水滴がより一層、もの哀しさを際立たせている。

 

「口も喉もないのに飲食なんか出来るわけないですよね……」

「あぁ〜そういうことか……」

「き、気を落とさないで下さいね」

「はははは……お二人ともそんなに気を使わなくて大丈夫ですよ。お茶が飲めなかったくらい、どうってことないです」

「そ、そうですか?」

「ええ、大したことじゃありません」

 

 「それよりも、お二人の様子から察するに味覚も存在しているんですね」とモモンガさんが言う。元気に振る舞ってるけど、さっきは明らかに落ち込んでたし取り繕ってるだけだろうなぁ……。

 

 だが、そう。そうなのだ。やはり嗅覚だけでなく味覚も在る。制限されていた触覚も、未実装だった嗅覚と味覚もあるということは五感全て現実と差異がないということ。

 五感の中でも仮想現実で特に厳格に禁止されていた嗅覚と味覚が当たり前の様に存在し、しかも「緑茶の中の仄かな甘み」が分かるほど複雑な味を感じ取れる。

 ちびちびお茶を飲みながら繰り返し確かめているが……やはり現実になったのだ。きっと私達だけでなく、NPCとナザリック自体もそうなのだろう。

 そんな私の話を聞いて二人も同意してくれた。そして、濡れた服をどこからか取り出した〈バスタオル〉で乾かしていたモモンガさんが次の提案をした。

 

「それじゃあスキルも試してみましょう」

 

 

 

 

 

「ヒカねぇ様は我が創造主ぶくぶく茶釜様のご親友であらせられ、遙か古に失われたとされる〈いにしえの錬金術〉の深淵を極めるに留まらず、その御業(みわざ)で創り出した数々のアイテムで至高の方々の旅路を支え続けた陰の立役者。

 その美貌は天空の星々さえ足下にも及ばない至上の輝きを湛え、まさに"黄昏の緋煌星姫(トワイライトプリンセスピュアスカーレット)"の異名に相応しいお方です!」

(ほぎゃああああぁぁぁぁぁぁ!!??)

 

 突然だが、私は今まさに強烈な精神攻撃を受けていた……ッ!

 

 

 戦闘系スキルの確認のために第六階層"大森林"の闘技場に移動した私達を迎えてくれたのは二人の階層守護者、アウラとその弟のマーレだった。ぶくぶく茶釜さんが作成したナザリックのLv.100 NPCの二人が文字通り土煙を上げながら私達に突撃してきた時は流石に緊張したが、「警戒している姿は隠しましょう」という事前確認もあって、中々上手く友好的に接触出来たと思う。

 

「アルベドやプレアデスを見るに、現時点でNPCは私達に友好的な様子でした。警戒を解くつもりはありませんけど、あからさまな臨戦態勢を取ったりはしない方がいいんじゃないかと思います」

「いざとなれば指輪の力で逃げ回ることは難しくなさそうですしね。俺はモモンガさんの意見に賛成です」

「私もそれで良いと思う。でも回復ポーションや行動妨害系ポーションは何時でも投げられるようにはしておきますね」

「ぜひお願いします。サポートに特化してない私ではいざという時、戦闘特化のレベル100を止めるのは難しいので頼りにしています」

「戦闘になったら俺も装備破壊を頑張りますよー」

 

 と、まあこんな感じだった。

 幸いなことに三人いるので、相手がいて初めて成り立つ〈伝言(メッセージ)〉や肉体変化を伴って聴力が強化される〈兎の耳(ラビッツ・イヤー)〉、シンプルに光を放つだけの〈閃光(フラッシュ)〉などの攻撃性能皆無の魔法スキル。種族スキルの〈魔法的視力強化・透明看破〉、〈液体加速(リキッド・アクセル)〉、そして職業スキルの〈技巧投手(コントロール・ピッチャー)〉等の効果確認は円卓の間で事足りたのだが、攻撃スキルを試すには更に広いスペースが必要だったのだ。

 

 そうして無事に戦闘系スキルの検証も終えてマーレ、アウラとの交流に励んでいた辺りで、事前に連絡を入れていた通りに各階層守護者たちが続々と闘技場に集まってきた。呼び出した目的としてはただ一つ、彼らから私達への認識を確認するためだった。

 

 第一〜三階層"墳墓"の美しくも幼さを残す真祖の吸血鬼シャルティア・ブラッドフォールン。

 第五階層"氷河"、二足歩行する巨大な青白銀の昆虫武者コキュートス。

 第六階層"大森林"は幼いダークエルフの姉弟。男装少女のアウラ・ベラ・フィオーラ、女装少年のマーレ・ベロ・フィオーレ。

 第七階層"溶岩"担当のデミウルゴスはストライプが入った赤色のスーツを着用した悪魔。

 第九階層"ロイヤルスイート"からは守護者ではないものの、守護者達と同格のLv.100 NPC、竜人の執事長セバス・チャンが外部調査の報告を兼ねて同席している。

 そして、第十階層"玉座"の守護者は全NPCの頂点に位置する守護者統括の女悪魔、アルベドである。

 

 ───私たちのことをどう思っているのか、忌憚のない意見を聞かせてくれ。

 

 傅く守護者たちに命じると、彼らはそれはもう喜々として私たちのことを褒め称え始めた。

 初っ端からシャルティアがモモンガさんの骨の体を「美の結晶」と称賛した段階で「おっふ」と笑ってしまいそうになったが、それに続いてコキュートス、デミウルゴスと更に持ち上げまくる。アルベドが「モモンガ様は私の愛するお方です!」と宣言した時には「設定は書き換えてないのに!?」と困惑したが、当のモモンガさんが私なんか目じゃないくらい激しく狼狽していたのが私の混乱に拍車をかけた。

 

 モモンガさんの次はヘロヘロさんだ。モモンガさんが放心してしまい、私も動けずにいたら、さっと前に出て守護者たちとの会話を繋いでくれたのだ。

 

 幸いにもシャルティアとアルベドの酷く恥ずかしい台詞はモモンガさん限定だったようで、ヘロヘロさんは普通に(とは言っても過剰すぎる位)に褒め称えられるだけにとどまっていた。

 逆にコキュートスは同じ近接戦闘系ということで思う所があったのか、モモンガさんの時より言葉に力が籠もっていたが、彼の言葉は無骨な武士のイメージ通り、恥ずかしくなる様な美辞麗句を殆ど並べないので私達としてはとても助かる。これはセバスについても同様だ。

 やりやすさ、ということであれば特にアウラとマーレは他の守護者と異なり、私たちをあまり持ち上げることなく、用いる言葉も端的で体がむず痒くならないから素晴らしい。それに一時間程度だったが事前の交流で多少なりとも人となりを知れているお陰もあって、この中では貴重な癒やし枠だった。

 

 美辞麗句を並べて私たちの美しさを語るシャルティア。難解な言葉を駆使してモモンガさんを神算鬼謀の持ち主と讃えたデミウルゴス。とにかく愛を全面に押し出してきたアルベドに対して、この姉弟が言ったのは表現は変えつつも「慈悲深い」「すごく優しい」「とても強い」の三つだけ。流石は茶釜ちゃんの子供たち、こちらが求めるものをよく分かってくれている!

 

「アウラは私のことどう思ってる?」

 

 ───まっ、アウラなら大丈夫だよね!

 

 そうやって安心して油断していた所に先のアレである。しかも先に聞いたマーレが「とっても優しくて、暖かい方ですっ!」と可愛らしく答えてくれた後なので、不意打ちも良いところだ。

 

 そもそもどうして、私以外誰も知らない筈の黒歴史、その中でも一等恥ずかしい特級呪物がアウラの口から語られるんだ……。私は顔から火が出そうな程の羞恥心に苛まれていた。

 つーか何なんだよ"トワイライトプリンセス・ピュアスカーレット"って、考えた人は恥ずかしくなかったのかな? 私なんだけどさぁ!! そもそもコレはたしか、茶釜ちゃん達に勧められたニチアサ女児向けアニメにはまっていた時に妄想したオリジナル設定だ……! 私以外、誰も知らないはずなのに……!

 今すぐに情報源を問い詰めたくなったが、私に対しての思いを語るアウラの表情はまるで、大好きな正義のヒーローについて話している時の子供のようで……そんな顔を見てしまうと、この子を落ち込ませてしまうかもしれない事なんて出来る訳がない。

 情報源はめちゃくちゃ気になるけど、それは呑み込んで、今はとにかく穴があったら入りたかった。

 

(あうあうぁぁぁ……)

「……どうかされましたか?」

「あっ。なんでもないよ。ありがとうね、アウラ!」

「はいっ!」

 

 天真爛漫って言葉がよく似合うニコニコ笑顔が可愛いね。でも絶対に口止めしておかないと。あちこちで吹聴して周られたら私の精神が大変なことになる。

 結局この後、この一撃が尾を引いてデミウルゴスとアルベドには何を言われたのかまるで覚えていない。

 思考の渦が落ち着いて我に帰った時には、仰々しく両手を広げながらモモンガさんが逆に守護者達を褒めている場面だった。

 

「お前たちの私達に対する思いはよく分かった。うむ……そんなお前たちを信頼して、仲間たちが担っていた執務を一部、お前たちに任せることとする。ナザリックの防衛及び隠蔽工作に関しても、今伝えた通り。マーレには負担をかけるが、人手や助力が必要になった場合はいくらでも言ってくれ。可能な限り手配する」

 

 いつの間にそんなに話が進んだのかと驚くのも束の間、モモンガさんが私達にチラチラと視線を送っていることに気が付いた。……あっ、これは締めに入るつもりか。

 

「では、お前たちの働きに期待しているぞ。更なる忠義に励め───〈転移門(ゲート)〉」

 

 何でわざわざ移動魔法を使ったのかな……? 疑問に思いつつモモンガさんを追って、私とヘロヘロさんも禍々しい魔法の門をくぐる。

 そして門の先、再び戻ってきた円卓の間で、モモンガさんはまたしても肩を落として俯いていた。暫くその様子を眺めていると、ぐぐぐとゆっくり背を起こしたモモンガさんは大きく息を吸い込んで───

 

「……何なんだあの高評価ぁぁぁ!!」

「それなー!!!」

「ほんっと意味分かんないですよね!!」

 

 私たちは仲良く絶叫した。

 

 

to be continued...




ヒカねぇ:ダサい二つ名を与えたかったのです。
 『夜空に煌めく緋色の星からやって来た! 黄昏の国のお姫様! ピュアスカーレット!(キラン☆ミ)』……故に"黄昏の緋煌星姫"。緋煌星姫に日本語ルビを振るなら「ひこうせいき」となる。今回はお茶を注いだこと以外、三人の中で一番何もしていないし、アウラとマーレを早くも茶釜さんの子供と見なしている。
 第九階層の自室で鍵を締めず鏡の前でポーズを考えていた姿を茶釜さんに目撃されていた。
モモンガさん:ヨイショ祭りで精神抑制が連続発動していたのだが、容姿どストライクのアルベドから意味不明なタイミングで告白されてとうとう頭が爆発した。転移門は見栄えのため。
ヘロヘロさん:描写されてないが他二名が機能不全に陥っていた間、守護者たち相手に必死に会話を繋げて立ち回っていた。モモンガさんと違って精神抑制がなく、強制的に冷静になったりしないので完全に自力での頑張りである。他二人に比べると死ぬほど過大評価されただけで謎のダメージは負ってない。

アウラ:ぶくぶく茶釜様のご親友様! ゲーム時代からずーっと茶釜、餡ころ、やまいこ、ヒカねぇの姿を見続けていたのでアウラ→ヒカねぇの親密度はめっちゃ高い。なお三人が去った後、ヒカねぇの異名について説明を求める守護者達に全てを伝えてしまっている。
マーレ:実はピュアスカーレット云々についてはマーレがぶくぶく茶釜から聞いていたものが、転移後の僅かな間にアウラに伝わった。アウラ同様にヒカねぇへの親密度がとても高い。
シャルティア:絶望のオーラを浴びていないが、そんなの関係なく濡れている。
アルベド:その愛と忠誠心に一切の陰りなし。モモンガさんの文句も受け付けない「愛している」設定の持ち主である。「設定変更を加えた人物」の違いによる変化について理屈は考えてあるが長文になるので省略する。
デミウルゴス:ヒカねぇの異名を親切に全NPCに通達してあげている。善意100%である。
※なお、全NPC忠誠度はMAXである。

オリジナルのアイテム及びスキル:
無限の緑茶瓶(ポット・オブ・エンドレス・グリーンティー)〉限界はあるがほぼ無限に最高級緑茶が出せる。無限の水差しの亜種。
液体加速(リキッド・アクセル)〉スライム系統の種族スキル。一定時間だけ敏捷値を上昇させる。
技巧投手(コントロール・ピッチャー)〉投擲系の職業スキル。投擲速度より正確性を優先した投擲スキル。
〈バスタオル〉バスタオルである。白くて吸水性が高い。

評価・感想お待ちしております。

アイテムやスキルのルビ振りはどうする方が良いと思いますか?

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  • ルビを振ってある方が良い
  • 一度だけルビを振り以降は省略するのが良い
  • 括弧表記で読み仮名を書く方が良い
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