登場人物:ヒカねぇ、モモンガさん
ユリ・アルファ
ルプスレギナ・ベータ
ちょっとだけ ソリュシャン
本人不在 ヘロヘロさん
一言:長くなったのにカルネ村にたどり着けなくてごめんなさい。最近になって聖王国編を読みましてビックリしたことがあったのですが、それについては後書きで触れさせていただきます。
お知らせ:もう取って良いかなあ、と思いタイトルから"プロローグ"を外させていただきました。
幸せな時間だった朝食を終えた後、私たちはメイドの抵抗を押し切り後片付けを少し手伝ってから、情報共有兼食休みへ入った。
そのままモモンガさんの部屋で休憩できれば良かったのだが、執務室奥の寝室を含めどの部屋も机と椅子が一組しか置いておらず、他人が訪れることを全く考慮していないのだ。
「誰かと会う時は指輪があれば事足りましたし……それに集まるなら談話室でいいでしょう?」とはモモンガさんの談。十年以上プレイしてきて最低限度の家具しか置いていないなんて信じ難いが、残念ながらこれが現実だ。
あまりにも空間を持て余しているのでいつか部屋を一緒にコーディネートしようと勝手に決めて、私とモモンガさんはそれぞれ背後にユリとナーベラルを引き連れて第九階層へと繰り出した。付いて来なくていいと言うのが本音だけど、それを言うとかなり強めに異議を唱えてくるとモモンガさんから教えてもらった。うんざりした感情が透けて見えたので、私が眠りこけていた間に大分苦労したのだろう……。
「とりあえず、ヘロヘロさんの様子を見に行ってみましょう」
「いいですけど、朝食前にも確認したばかりなんでまだ起きてないと思いますよ?」
「あ、そうなんですか? んー……まぁ、もしかしたら起きてるかもしれませんし」
口ではそう言いながらも、ヘロヘロさんが睡眠無効の首飾りを外した瞬間、文字通り体ごと床に崩れ落ちていた事を思い出す。眠気を覚えてはいたものの誰かと一緒にいたら普通に活動出来ていた私ですら、丸一日以上眠り続けてしまったのだ。油断したら意識を失うような状態だったヘロヘロさんが起きているとは到底思えない。
私も久々に十分な睡眠が取れて気分爽快、抜群に調子が良いですと話したら、モモンガさんが羨ましそうに呟いた。
「いいなぁ。さっきも言いましたけど私、睡眠欲もなくなっちゃったんですよね。でも気分が落ち着かなくて……。残業している時の感覚がずーっと続いていると言いますか、心では眠りたいのに体は全然眠ってくれない……」
「なんか、その話だけ聞いてると不眠症の患者みたいですね……えーっと、睡眠不足の感覚が抜けきらないみたいな感じなんですか?」
「いや、実際には眠くはないんですよ。ただ、こんなに長時間起きてたら、普通なら凄い疲れるでしょう? 感覚的には『もう寝ないとヤバい』って思っているのに、実際には体は疲れ知らずだし、目を閉じても寝れないしで……うーん、言葉にするのが難しい」
暫くうんうんと唸りながら首を捻り、モモンガさんは言葉を続ける。
「まぁ、頭は冴えてますから、そのうち慣れたらそれでいいのかな。出社しなくて良いんだから、寝れるなら寝たいんですけどね〜」
当の本人は大した事ではなさそうに話すが、睡眠は心の安定や感情のコントロールの為にとても大切なはず。眠れない、眠らない状態で朝も夜も起き続けているなんて、とても健全とは思えない……。眠る必要がなければそれでもいいだろう。ただ、眠
「アンデッドの睡眠無効なら、デバフ与えればなんとかなりそうな気がしますけどね」
「状態異常デバフというと、ポーションですか?」
「実はポーションでは無効化の無効って出来ないんですよ。なので、やるならデバフ装備です」
「デバフ、装備ですか? うーん……〈
「よーく……? すみません、分からないです」
「日本語だと〈犠牲の
「あぁ! そうですそうです。あんな感じのです」
「でも種族特性をどうにかできるなんて聞いたこと無いですけど……」
メリットとそれに釣り合うデメリット、はユグドラシルの基本原則だ。かなり丁寧に調整されており、例えば神聖属性と炎属性が弱点のアンデッドはどう足掻いても両属性への耐性を"○○属性無効"まで上げることは出来ない。
この様に属性耐性を上下させるアイテムは珍しくないのだが、一方で状態異常耐性を低下させるアイテムは殆ど無い。そもそも需要が薄いというのもあったのだが、ユグドラシルの状態異常は攻撃と言うよりは妨害ギミックの類という扱いで、属性耐性とは異なり全状態異常耐性を"無効化"まで強化することが可能だったのだ。
それどころか最上位帯なら全てとは言わないまでも、殆ど無効化していて当たり前、もし時間停止対策をしていないプレイヤーがいたら地雷扱いであった。逆にそんな環境を逆手に取って、耐性を初期値のままにして別のステータスを強化している人もいたくらいだ。
「生産系には詳しくないんですけど、睡眠付与はともかく、睡眠耐性を消す効果があるアイテムなんてありましたっけ?」
「ありませんよ? データクリスタルでも最高クラスの状態異常耐性を無効化するクリスタルなんてドロップしません」
「えぇ……」
「そもそも別プレイヤーに"無効化"を無効化されたら、ゲームバランス崩壊待ったなしですからね」
「毒有効化ポーションばらまいて〈ブラッド・オブ・ヨルムンガンド〉使えば中規模ギルドなら簡単に滅ぼせそう」
「すーぐ物騒な使い方考える」
「これが戦歴十年以上の廃人のなれの果てですか! 嘆かわしや……」とからかったらノータイムで「ブーメラン乙」と反撃が飛んで来た。判断が早い。
「つまるところ、未知のアーティファクトを探すか、運営にお願いするかしか手は無いのです───そう、私達を除いてはね!」
「! …………あ、そっか。錬金術士ですもんね」
「そう、錬金術士ならそれが出来るのです!
錬金術士! 錬金術
「原作は未プレイなんですけど〈アトリエシリーズ〉の仕様だとかで結構複雑でしたよね。ポイント稼ぎで〈中和剤〉作りまくったなぁ……もう十年以上前ですか」
「時間に言及するのはタブーですよ?」
「ははは。懐かしい……初の他社作品とのコラボってことで、すっごい盛り上がりましたよね〜」
「そりゃあ、アトリエシリーズ百作目の発売記念コラボでもありましたからね! 専用
モモンガさんに向かって熱く語りながら、私は十一年前の記憶を振り返る。
───ユグドラシルのサービス開始一周年の頃に行われた〈アトリエシリーズ〉とのコラボ。
シリーズ百三十周年と記念すべき百作目の発売に合わせて、開発元の全面協力を得た超大規模なコラボイベントがユグドラシルにて開催されたのだ。
近年の人気タイトルのメインキャラクターや新作の主人公を始め、数多くのアトリエキャラクターが〈ユグドラシル〉の世界に迷い込んでしまい、あちこちでトラブルに巻き込まれる───という、イベントを完走するにはワールドを股にかけて移動する必要もある非常に大掛かりなイベントだった。
マリーやロロナ、エスカ、ソフィーにライザ等々。私が前世で遊んだことのあったアトリエシリーズのキャラクター達は、現代では既プレイ者が少ない初期ナンバリング作品の扱いだったのでストーリーには名前が登場する程度だったけどね……。初プレイ作品がロロナだった身としては、等身大のロロナ先生に会いたかった……。
黎明期に実現した超老舗との大型コラボだったので、大々的に宣伝したいという思惑があったのかも知れないが、とにかくユグドラシル運営の気合の入れ方は凄まじかった。その熱の入れ様と言ったら原作の〈調合〉システムの再現の為に、〈錬金術士〉の
長すぎるイベントクエストや原作知識ありきのストーリーには賛否両論あったものの、結果だけ見ればコラボとしては大成功。『今始めれば、自分だけのアトリエが持てる!』という宣伝文句に釣られたアトリエユーザーも多数流入し、タイトルの知名度も上がったおかげでユグドラシルのユーザー数はここから爆発的に増加していった。
「私がベル・スカーレットからヒカねぇになったのもあの時でしたね」
「あぁ〈
「一時とは言え、三ヶ月の努力が消し飛んだ時の絶望感は忘れられませんけどねぇ! 今思い出しても運営ムカつく!」
「そして事件に端を発する〈
「やまちゃん一人でモモンガさん達の無課金同盟を止めれたの、今考えてもヤバ過ぎじゃないですか?」
「一人だけ文字通り時代を先取りしてましたもん……やまいこさんは悪くないですけど、あれはズルいでしょ。ノーカンですノーカン!」
私以外のプレイヤーも含めて没収されたデータも無事に戻ってきたし、あれ以降対策されたけど十分に元は取れたと言って良いはずだ。
そして、あの時ばかりは心の底からクソ運営と罵ったユグドラシル運営だったが、翻って〈調合〉システムに関しては神運営と崇めたいくらいに感謝している。
コラボ中は当然、錬金術士プレイヤーが大量発生していたけれど、残念なことにコラボ終了後には殆どのプレイヤーが元通りのビルド構成に戻してしまった。イベント外では大した使い所もなかったし、コラボ職業故に他から完全に独立しているスキルツリーだった〈錬金術士〉に発展性など無かったのだから、貴重なレベル枠を占拠する邪魔なそれを捨てるのは当然の判断である。
一方、完全にエンジョイ勢だった私は当時拠点にしていた町で空き店舗をレンタルして、自分だけの
なんとコラボイベント終了後にも、ユグドラシルでアップデートが入る度に新レシピや新特性が追加される丁寧なアフターフォローがなされたのだ。恐らく〈錬金術士〉を保持しているプレイヤーは全体で見ればごく一部だったと思うのだが、「未知を楽しむこと」をスローガンに掲げる運営は私たち錬金術士プレイヤーにもちゃんと未知を提供し続けてくれたという訳だ。
イベント終了から一年経ち、二年経ち、五年経ち、十年が経っても運営はその間に生まれたコラボ職を見捨てることは一度としてなかった。
数冊しか実装されていなかったレシピ本は百冊に迫り、思いもよらなかった上位職の実装、恐るべきシナジーを生んだ〈道具使い〉系
「元々あった〈錬金術師〉に対して、こっちは『いにしえの錬金術を使う』って設定も今となっては本当にその通りになっちゃいましたよ。今まともに〈調合〉を使えるのは、コラボの〈錬金術士〉を当時からずーっと使い続けてる人だけですから」
「引退者も含めると全体の1%未満でも不思議じゃないですよね。私はヒカねぇさん以外のプレイヤーは知りませんし」
「昔は専用コミュニティだってあったんですよ! 過疎ってしまって、書き込んでも誰も反応しなくなってからもう何年経つことやら……」
「どこもかしこも諸行無常の響きあり、ですね」
しみじみと界隈の隆盛と衰退に思いを馳せていたら、いつの間にやらヘロヘロさんの部屋が近付いてきていた。扉の脇には戦闘用メイド服に身を包んだ赤髪ウルフな戦闘メイドのルプスレギナが立っている。
楽しいけど、雑談は一旦ここまでにしよう。
「これはモモンガ様、ヒカねぇ様」
「む、ルプスレギナか。ヘロヘロさんの様子を見に来たのだが……元々居たソリュシャンはどうした?」
「ソリュシャンは部屋の中におります。ヘロヘロ様が未だお眠りになられている為、不測の事態に備えて私が部屋の外を、ソリュシャンが部屋の内部の防備を固めています」
「なるほどな……。ならば、ヘロヘロさんの様子を聞きたいのでソリュシャンを呼んで来てくれ」
「畏まりました」
ぺこり、とお辞儀をして部屋の中へ消えていったルプスレギナだったが、すぐにソリュシャンを連れて戻ってきた。
柔らかそうな金髪を縦ロールにしているソリュシャン。見慣れてなかったらめちゃくちゃ見てしまうであろう、深いスリットの入った超ミニスカメイド服は男性諸君には───いや同性であったとしても、余りにも目の毒だ。前世の私なら余りに扇情的すぎて、逆に目を逸らしていたかもしれない……。
そんなソリュシャンは今現在、聖母を思わせるような、とても柔らかな微笑みを湛えていた。優しさと心の暖かさが滲み出ているような笑み……にも拘らず
私は雰囲気に気圧されて思わず一歩後ろに引いてしまいそうになったが、いつの間にか真後ろに立っていたユリが盾となって押し返してくれて事なきを得た。しかし、後頭部に感じたふんわりとした感触はもしや……。
「ありがと、ユリ」
「いえ」
ぶんぶんと首を振って邪念を追い払う。
「ヘロヘロさんの様子はどうだ。いつ頃目覚めそうか分かるならば教えて欲しいのだが」
「申し訳ありません、未だ深く眠られておりまして、何時お目覚めになるかハッキリとした事は申し上げられません」
「そうか……いや気にすることはない。ただ、長時間食事や水分を摂っていないのが気がかりでな」
「その点につきましてはご心配いりません。僭越ながら私の手で適宜、食事と水分の補給をさせて頂いております」
「寝ながらでも食べられるものなのか?」
「はい。一度
「ふむ、ならば安心か……」
一緒に話を聞いていたルプスレギナが「えっ……」と信じ難い物を見るような目でソリュシャンを凝視しているが、どうしたのだろうか……いや、えっ、あれ? 今「噛み砕いて」って言ってた?
ソリュシャンと目が合ったので思わず、ゆっくり自分の口元を指差してしまったが、ニコッ! と満面の笑みを見せてくれただけで特に返事はなかった。……き、きっと聞き間違いだろう。
ヤバい者を見てしまった、とソリュシャンから目を逸らしていたら、すすす……と自然な動きで少しずつソリュシャンから離れて行くルプスレギナと視線が重なった。私に気が付いたルプスレギナは何かを訴え掛けるように、視線だけを私とソリュシャンの間で往復させている。
どうしよう。ルプスレギナのサインを見て見ぬ振り出来ない訳でもないが、放っておくのもなんだか申し訳ない。
と、そうこう考えていた時、「つきましては、ヘロヘロ様がお目覚めになった際の対応について、いくつかご相談させて頂きたい事があるのですが───」とソリュシャンが長くなりそうな話題を持ち出した。これ幸いとソリュシャンの相手をモモンガさんに任せ、私は手招きしてルプスレギナを逆側の壁際まで呼び寄せた。
壁を背にするルプスレギナをユリと二人で囲むようにして、私は小声で口火を切った。
「思い込みかもしれないから確認したいんだけどさぁ……。もしかしてソリュシャン……口移ししてる?」
「ソリュシャン本来の姿は不定形の
「───いや、可能性は捨てきれないっす」
「る、ルプー! ヒカねぇ様の前なのよ? 口調を正しなさい!」
「るぷう? あっ、あだ名か。可愛いね」
「! ……申し訳ありませんでした、ヒカねぇ様!」
「へっ? いや全然全然、気にしなくていいよ?」
大丈夫、大丈夫! むしろ気楽に話してくれて良いから! と深々と頭を下げる二人に手を振って気軽な気持ちで
「いえ、シモベたる者、至高の存在に対しては礼の限りを尽くすのは当然のこと。プレアデスの長姉として、御方のお慈悲に甘える様な真似は認められません」
「いやいや、良いんだって」
「いえ、ヒカねぇ様が良いと仰ったとしても、余りにも無礼が過ぎます」
「……だとしても、それで良いんだよ! 少なくとも私の前ではね」
「で、ですが……」
「私としてはむしろ、そうやって素の姿で接してくれる方が
自分から忠誠がどうこう言うの本当、めちゃくちゃ恥ずかしいから、正直に言うとあまり口に出したくない。今の一言だって、途中までスムーズだったのに言葉は途切れ途切れになってしまい、語尾なんて完全に声が裏返ってしまった。脳内では「もっと上手く喋れるつもりだったのに〜!」という後悔が猛烈にリフレインしている。
うぅぅ……と私が忸怩たる思いに苛まれていると、ユリとルプスレギナが酷く焦った様子で上擦った声を上げた。
「そのようなことは決して、決してありえません!」
「そっ、その通りです! 我らの忠誠は永久に至高の御方に捧げられるもの……たとえ無限の責苦を受けようとも、我らの忠誠が霞むことは断じてありません!」
「……そっ、そうでしょ? うん、今のは言葉の綾だからね? 二人を疑ったりなんて全く、これっぽっちもしてないからね? だから───」
「二人とも私の前では、ありのままの姿を見せて欲しい」そう続けようとした私の言葉を、はっと驚愕の表情を浮かべたユリが遮った。
「まさか、そのようなことを宣ったシモベがいるのですか……?」
「へ?」
急に何を言い出すんだ、とユリを見るが本人は真面目な表情を浮かべ、わなわなと体を震わせている。時折「まさか」「そんなことが」「許されない」と聞こえる辺り、自分で想像した事に怒りを燃やしているのか……? 嘘でしょ、そんなことある……?
「んなっ……ヒカねぇ様、もしそうなのであれば、その者の名をお教え下さい。そのような裏切り者には生き地獄ですら生温い……発狂も許さない
「事実であれば許しがたい大罪です……!」
二人とも怖いくらい真剣な顔と語気で語りかけて来る。ユリは勝手に想像を膨らませて不穏なこと言い出すし、ルプスレギナは血走った目と言葉の中身が恐ろしすぎる。彼女のチャームポイントなはずの八重歯も、こう剥き出しにされると凶器にしか見えない。
……素の感じで接して欲しいって頼んだだけなのに、どうしてこう変な話に転がるんだ。
もう何度目になるかも分からない辟易した思いを感じつつ、私はわざわざ取り出した紙の棒*2でヒートアップする二人の頭を強めに叩き、大きなため息を吐いた。
「はぁ……二人とも落ち着いて、勝手に盛り上がらないで。そんな奴どこにもいないから」
ぽかん、とした顔を浮かべる二人だが、このまま放っておけば今度は謝罪合戦を始めることは想像に難くない。それをまた宥めなきゃいけないと考えると一気に肩が重くなるような気がした。
どうしたものかと思案して、ふと堂々と命令を下すモモンガさんの姿が思い浮かんだ。
……あぁ、そうか。"お願い"するから面倒なことになるんだな。
モモンガさんもこんなことを延々と繰り返したのだろうと同情を覚えつつ、私は今まさに口を開こうとした二人の眼前に、ビシッと指を突きつけた。今から"命令"をする、と自分にも言い聞かせるための分かりやすいポーズだ。
「私の前では出来る限り素の貴女達を見せなさい。これはお願いではなく……命令です」
「……畏まりました、ヒカねぇ様」
「畏まりまし……じゃなくって、了解っす〜!」
「それはやりすぎよ!」
「ぐふうっ!?」
数瞬の躊躇いもなく、ルプスレギナの腹に向かってユリが右拳を叩き込む。
素の姿を見せた結果の鉄拳制裁……そのあまりに素直な対応にさっきまでの押し問答は何だったのかと頭痛を覚え、私は再び深く、大きなため息を吐いたのだった。
……あれ? 元々は何の話してたんだっけ?
to be continued...
ヒカねぇ:いちいち大げさな反応になるNPCとの会話に面倒臭さを感じ始めていたが、なんとか持ち直せそう。しかしそこはモモンガさんが既に通り過ぎた場所。追いつくにはもっと精進が必要だ。
モモンガさん:NPCの扱いが上手いけど、まだ慣れきってはいない。NPCに対しては低音ボイスで支配者っぽく振る舞う癖が付き始めている。ヒカねぇが何に置いても全く発言に気をつけたりしないので、NPCの前でも友達が相手なら素を出せるようになっている辺りは原作より救われている。(NPCが素モモンガさんを知っているという点で。)
ナチュラルにソリュシャンの相手を押し付けられ「えっ!?」となっていたが、後に謝罪を受け入れた。
ユリ:至高の存在に対する最低限度の振る舞いというものがある、という考えの持ち主。他のNPCも大なり小なり同じ考えは持っているが、彼女はそのラインがかなり高い位置にある。命令ということで素直に受け入れ、ヒカねぇの前で鉄拳制裁を敢行した。怒ると怖い。
ルプスレギナ:妹(ソリュシャン)が「口移し」しているという爆弾級の可能性に思い至り、真偽不明なうちから勝手にドン引きして距離を開けていた。ヒカねぇの命令を忠実に遂行しただけなのに容赦のない腹パンをくらった。怒るとヤバい。
ソリュシャン:口移しはしていない。口、移しは。ヤンデレ感のある見た目通り、創造主への愛が重い。
オリジナルまたは一部独自要素を含むスキルやアイテム:
〈
〈錬金術士〉アトリエシリーズ✕ユグドラシルのコラボイベントで実装された限定職業。この職業を取ることでアトリエシリーズの錬金術士と殆ど同じことが出来るようになる。当初は原作システム再現の為の職業という側面が強かったものの、十一年のアップデートを経た結果、真にユグドラシルに適応した。当時イベントに参加していた人しか転職アイテムを持っていないので、数あるコラボ職業の中でも使用者は貴重な部類に入る。
〈調合〉錬金術士の基本スキル。アトリエシリーズの調合システムをそのまま想像して貰えればいい。このスキルを使うことで、ユグドラシルでは唯一「効果を足し算して上位効果に進化させる」ことが可能となる。唯一無二のスキル。最上位層が求めるような稀少な効果を持つデータクリスタルを除いて、下級のクリスタルから上級の効果を生み出せる為、定期的に露天を出すだけでかなり高効率な金策になった。
〈特性〉調合で最も重要となる要素。素材にランダムに様々な効果のある"特性"が設定されており、調合で作成したアイテムには素材の特性が融合し、引き継がれていく。例えば「破壊力増加Lv.1」と「破壊力増加Lv.2」で「とても痛い」となり、「Lv.2」と「Lv.3」を組み合わせると「破壊者の祝福」となる。(※この例はロロナのアトリエに準拠)
〈中和剤〉異なる属性の素材を調和させる時に使う錬金用の錬金アイテム。全ての錬金術士が最初に作るアイテムであり、調合難易度も最低値だが、最後の最後まで重要でありつづける物。錬金術士としての成長と中和剤への理解度は一致すると言っても過言ではない。
〈
〈いにしえの錬金術〉ユグドラシルで錬金術
この世界でのアトリエシリーズ:ユグドラシルのサービス終了の11年前、西暦2127年に130周年を迎えた長寿タイトル。記念すべき100作目(A100)「フレデリカとマリーのアトリエ」を発売し、その後もいくつも新作を発売している。
後書き:
聖王国編で「アインズ様はルプスレギナの本来の口調を知らない」という驚愕の事実を知りました。まさかそこまでプレアデスがアインズ様の前で"メイド"に徹しているとは思ってもおらず衝撃的でした。特に『不死者のOh!』だと一緒に遊ぶ場面も沢山あったので、原作のプレアデスとの距離感は結構ショックが大きいのなんの……。
とまぁ、このことがあったので今回、わざわざ後半の話を書いたのです……(書き分けも楽になって一石二鳥)。
それと、今回のソリュシャンに関する過激な描写について。気に入らない方もいるのではないか、と書きながら思っておりましたが、個人的にソリュシャンのヤンデレ概念が好きなのでどうか広い心でお許し頂きたい。
感想、評価お待ちしております。