かなりマイルドに済ませたから大丈夫かと思いますが一応。
あれは今から1ヶ月ほど前の事だった。
私達はその日、いつものように三人で依頼表を見ていた。
「なぁミラ、いつもの魔物討伐の依頼で良いんじゃないか?」
「だめだよロス、常備型の魔物討伐依頼ばかりやってるとすぐにお金がなくなっちゃうし、それに魔物が狩れる量が少ないとサイフに響くんだよ。」
「つってもなぁミラ、俺たちのパーティーだと薬草探しとか無理じゃねぇか?」
「それは…そう、だけど」
私たちの冒険者パーティーは
そのせいもあってか、ほとんどの依頼は魔物討伐系、おかげで未だにシルバーよりも上に行けない始末だ。
まだ共有資金は余裕はあるが早めに対策を考えなければ。
「なぁヒラ、やっぱりもう一人盗賊とか、経験豊富な冒険者を募集したほうが良いんじゃないか?」
「それ私も賛成」
「……はぁ、分かったよ。じゃあ、募集するか。」
このパーティーが始まった時、決めたルールとして多数決で物事を決めるというものだ。
少し前のブロンズのままだった時似たような採決があったがその時は、依頼が安定しないし良くヒラとロスがケガをしたりと、お金が集まりにくい状況だった事もあって私とヒラが反対して否決になった。
だけど私達は既にシルバーだ。
あと一人くらい仲間を増やしても余裕はある。
そんな他愛もない話をしている時である、彼女との出会いは
「ねぇ君たちパーティー募集するの?」
後ろから声に反応して私達は振り返るとそこには耳が長い種族、エルフがいた。
その瞬間、私達の顔は不機嫌なものになり睨みつけるかの様にその女性を見る。
「俺達は確かにパーティーに人を募集しようと思ったが
少し酷いように見えるがヒラが言っている事はもっともな話である。
冒険者界隈で有名な格言として「
昔いた冒険者がエルフとパーティーを組み、魔物討伐中に危機に陥った時に後ろにいたエルフから攻撃され囮にされたと言う話がある。
実際本当かどうかまでかは分からないが、エルフならやりそうな話だ。
だからなのか、冒険者ギルドに行くと周りでたむろしている先輩冒険者に新米冒険者が絡まれ「
この話はかなり昔からあるらしくそれなのに未だに語り継がれ、その認識が消えていない時点でお察しである。
ちなみに耳長族と言う呼び名はエルフ達へと送られた蔑称である。
「あはは、ごめんね。私、ハーフエルフなんだ。」
「っえ⁉っあ!す、すいませんでした!!」
ハーフエルフと言う言葉を聞いたヒラが即座に頭を下げる。
エルフとハーフエルフを見間違えてしまった…
「いやいや、大丈夫だよ。ハーフエルフとエルフの外見的違いなんて分からないもんね。」
「あははは…、そう言って貰えると助かります…」
見分ける事は出来ないとは言え、見間違えで敵意を向けてしまったのだ。
彼らの顔は若干青くなっているだろう。
だがそれも仕方ないのかもしれない。
なにせ、ハーフエルフはかなり珍しい存在だ。
エルフと人間が子供を作ることによって生まれるのがハーフエルフだ。
私達もハーフエルフなんて存在最初の頃は夢物語の一つだろうと思っていたが、アナレイト王国の王家がハーフエルフを雇っているという話を聞いた時は、ものすごい衝撃を受けたしハーフエルフという種族について散々情報収集したもんだ。
なぜこんなに簡単に彼女がハーフエルフである事を信用できるのかと言うと、エルフ以外を見下す自尊心の塊のエルフは絶対に「自分はハーフエルフだ」なんて拷問にかけても言わないからだ。
「とりあえず、席に座って話さない?」
「そうですね、ミラもロスもそれで良いか?」
「私は良いよ」
「俺もそれで構わない」
そうして私達は、冒険者ギルドの二階にある酒場へと行き全員が席につく。
改めて目の前のハーフエルフを見る。
顔はエルフ達のように美形で長い耳が見える。
髪の毛は金髪で、だけど動きやすいようにかポニーテールになっている。
服装は、防具は自作品なのか少し荒い作りのレザーアーマーと腕当てを装備している。
下は膝当てを装備しているだけの様だ。
そして、最も特徴的なのが剣を装備していて杖などの装備は持っていない事だ。
エルフやハーフエルフなどの寿命が長い種族は魔法に固執しがちで剣を持たない物がほとんどだ。
どうやら彼女は近接戦闘ができるらしい。
みんなが座ったのを確認した後、ハーフエルフが喋りだす。
「それじゃあ改めて!初めまして、私はハーフエルフのサルンって言います。
冒険者のランクはゴールドです」
「初めまして、俺はヒラで、魔法使いの方はミラ、背がデカい男はロスだ。
冒険者ランクは全員シルバーだ」
「初めまして」
「よろしく」
ヒラが私達の紹介をして、私、ロスと言う順番に挨拶をする。
ちなみにこの挨拶の仕方はみんなで決めたものだ。
どうも私とロスは口下手らしいので、こういう交渉事などはこの中では話し上手のヒラに全部任せようと言うのが、私達の中にある暗黙の了解だ。
「それで、サルンさんはどのくらい強いんだ?」
「んー?どのくらいかぁ、じゃあ冒険者カード見る?」
そう言うとサルンさんは、腰の後ろにある小袋入れから冒険者カードを取り出した。
冒険者カードはいわゆる身分証明書の様なもので街の門を通る時とかに見せると半額になったり、宿で見せると食事が半額になったりする物だ。
なら皆冒険者になれば良いじゃないかと考えるだろうが、それは無理な話だ。
理由は冒険者にはノルマが設定されているのだ。
ブロンズなら一週間に10体、シルバーなら一週間に20体と言った感じにノルマが設定されている。
このノルマが曲者で、ブロンズとシルバーは街から出られなくなっているのだ。
なにせ、隣街の冒険者ギルドまでどれだけ急いでも一週間は掛かり、一回でもノルマを過ぎた時点で冒険者カードは没収され二度と作ることはできなくなってしまうからだ。
ただし、ゴールドからは別だ。
ゴールドになれば、街から出て隣街まで行くことができるようになるからだ。
ある意味で、ブロンズとシルバーの冒険者からは羨望の対象だ。
それに偽造ができないように冒険者ギルド専用の魔道具が使われており、一定時間がたつと色が変わるようになっている。
そして、冒険者カードには依頼達成回数や、魔物討伐回数などが記載されている。
その回数を見れば、相手のある程度の強さや知識の多さなどが分かるようになっているため、冒険者は自慢話をする時に相手に見せたりするのだ。
「おぉ!……え゛?」
ヒラの驚愕の反応が気になり、私達も冒険者カードを覗き見る。
サルンさんの冒険者カードの依頼達成回数や魔物討伐回数は明らかにゴールドのものではなくプラチナを一つ越え、ミスリルにも引けを取らない物だった。
怪しく感じてしまいついつい冒険者カードをじっと眺め、色が変わったのを確認し驚愕で目を見開いてしまう。
「ど、どうしてゴールドのままなんですか?」
自分たちの目の前にいるのが思ってた以上の強者だったせいか、ヒラの声が若干震えているように感じるがそれもしょうがない。
「ほら、私ってこんな見た目だからさ、貴族サマからの冒険者の評価が下がるからってゴールド止まりなんだよね」
「あ…あぁなるほど…」
ゴールドから上のランク、ミスリルは貴族からの依頼が入ったりするからどうしてもエルフに見えてしまうハーフエルフはミスリルには上げられないとギルド側が制限をかけているのか…
「私はこれでも30年間冒険者として生活してるからね、薬草の知識も魔物の弱点の知識もその辺のプラチナよりも豊富だよ」
ちらりと、冒険者カードの発行日の日付を見ると確かに今から30年前、王国歴810年となっている。
「なるほど……少し仲間と相談するから待ってて貰っていいですか?」
「分かった」
その言葉を聞き私達は席から離れ、エルフの耳にも聞こえない所まで移動し相談を始める。
「なぁ、お前らはどう思う?」
「どうって、仲間にすれば良いじゃないか。冒険者として経験豊富で薬草の知識を持っている俺たちに必要な人材じゃないか」
「ロス、そんな単純な話じゃない。私達は彼女がハーフエルフだって知っているけど、他の人が見たらエルフを仲間にしていると思われる。きっと冒険者の評判は悪くなる。今後の生活にも影響があるだろうし、昇格にも影響が出るかもしれない」
「むぅ……」
きっと、ロスとセラはサロンさんの知識に目が向いているんだろうが、サルンさんはかなりの実績を持っておりきっとギルドからも睨みが利いている。
つまりサルンさんを味方にすれば私達も注目される。
少しでも違法行為をすれば、通報されるかもしれない。
冒険者は多かれ少なかれ依頼によっては違法行為を犯す時もある。それで、弱みを知られてしまえばシルバーの私達は今後の活動がきつくなる。
その可能性が高いから私は懇切丁寧に説明したのだが…
「それでも俺は彼女を仲間にするのは賛成だな。デメリットよりもメリットの方が大きいように見えるし」
「俺も賛成」
「…はぁ、分かった」
ヒラとロスが賛成して、私だけが反対だったため彼女が仲間になるのが決定してしまった。
「まぁ、難しい所は俺にはよく分からないが、ギルドから目を付けられても違法行為をしないように気を付けてれば大丈夫だろ!」
「…楽観的過ぎ…」
「あははは、俺達の頭脳担当は現実的過ぎるなロス!」
「それは言えてるな、俺達は冒険者なんだからもっと気楽に生きればいいのにな」
「私は、そんなにロマンチストにはなれないから…」
「まぁ、もしかしたらサルンさんと友達になって楽しく冒険できるかもしれないぞ?」
「……あまり期待しないでおいとく」
自分でも分かってはいるのだ、私に冒険者が向いていない事くらい。
周りの冒険者達はみんな、夢を見ながら冒険者をやっている。
誰も見た事がない未知を探し、既知にしようとしている。
だけど私にはそんな夢がない。
親に売られそうになり大急ぎで逃げ出しこの地に落ち着いた。
ただそれだけだ。
別に体を売るのが嫌だという訳じゃない。
実際私は体を売り、情報収集をすることも多々あるからだ。
ただ一度堕ちると這い上がるのに時間が掛かり、効率が悪かった。
だから私は逃げた。
……………………妹を親の元に見捨てて…………………
妹は今頃、親達に売られ売春婦として働いてる事だろう。
もしかしたら奴隷にまで堕ちてるかもしれない。
いや、もしかしたらもう死んでるかもしれない。
別に私は自分が悪いとは1mも思っちゃいない。
妹は情報収集を怠った。
情報を得るための
妹は私との情報戦で負けた。ただそれだけだ。
私は、自分が売られる五日前に親の様子が余所余所しくなったのを感じ情報収集のためにご近所に住むおじさんの所に深夜会いに行って、親達が何をしようとしているのかを知った。
そのおかげで親達のお金の隠し場所を探す時間ができ、妹に
「ねぇ、お姉ちゃん。お母さん達最近様子おかしいよね?」
「…あぁ、もうすぐ領主様が来るからじゃない?」
と、嘘の情報を流し妹の逃げる可能性を潰すことに成功したのだ。
……いや。嘘という訳ではなかったな。
実際、私達を売れる場所は親達のコネだと精々領主様が限界だろうから。
……別に妹を見捨てた事には後悔はないのだ。
ただ、周りにいる冒険者を見るとふと思う時がある。
……私は本当に人間なんだろうか、っと。
周りにいる冒険者達は仲間とお酒を飲みふざけあい、笑っている。
私が最後に笑ったのは何時だろうか?
私には笑った記憶がない。
私達の相談も終わり、席に待っているサルンさんに承諾を伝えるために戻る事にした。
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サルンが仲間になってから一週間、私達はようやくゴールドに上がることができた。
「いやぁ、サルンさんのおかげでゴールドまで上がることが出来たよ!」
「あははは、皆の呑み込みが早くて教えがいがあったよ」
「そう言って貰うとおんぶにだっこの俺らは助かるな」
「…ありがとう」
彼らが調子の良い声を上げ彼女を持ち上げるのを私は白けた目で見つめながら、感謝を口に出す。
それはそうだろう彼らがこんな短時間で覚えられたのは、私が書いたメモのおかげだからだ。
彼らはサロンさんに薬草探しの知識を右耳で聞き左耳から出した後、宿で私の部屋に来て必死になって私のメモの内容を丸暗記しているからだ。
実際にこの中で本気で彼女に感謝しているのは私だけだろう。
彼女の知識は相当なものだった。
薬草の知識、魔物の足跡の見つけ方、魔物の皮の綺麗な剥ぎ方、色々な知識をタダで披露してくれた。
ただそんな彼女にも欠点があった。
教え方が下手すぎるのだ。
魔物の剥ぎ方は「ここがこうでぇ」とか「この足跡はカエルだね」とか魔物の名前を正確に伝わらずミスを犯しそうになった事もあったし、魔物の皮の剥ぎ取り方は直感的な言い回しで彼女の手の動きをよく見なくては理解が難しかった。
そんな状態だったから私が質問をしながら彼らに理解できるようにメモを取り、彼らがメモを見ながら必死に自分の技術にしようと丸暗記をしたりと一週間は大忙しだった。
もちろん、彼女を持ち上げるのには理由がある。
さらなる情報を得ようという考えからだ。
サルンが男なら話は簡単だった。
私がただ夜に彼女が泊まっている宿に行けば良い話だからだ。
だが、彼女は女だ。
そのために彼らに協力をしてもらった。
出来る限り持ち上げて上機嫌にしてほしいと。
……まぁ、多分彼らは素で彼女の事を持ち上げているようだが。
この一週間一緒に行動をしているがどうもセラは、サルンに惚れているように見える。
ロスは少し頭が弱い所があるから普通に、彼女の事を尊敬しているようだ。
「よし!これでようやく俺達もこの街から出る事ができるな!」
「そうだな!ようやくこの街ともおさらばできる!」
ロスとヒラはこの街にずっと閉じこめられる事を不満そうにしていたからか、テンションがだいぶ高くなっている。
「じゃあ、前々から予定してたエルロー大迷宮に行く準備をしよっか」
「おっ!ミラよく覚えてたな!」
「まぁ、チームを立ち上げた時の約束だしね」
「ここまで長かったな!」
「え?何の話?エルロー大迷宮に行くの?」
……そう言えば彼女には話していなかったな。
「そう言えば話忘れてましたね。私達ゴールドになったらエルロー大迷宮に行くって予定なんです。」
「へぇ~そうなんだ。ねぇ!私もついて行っていい?」
「おう!仲間なんだから一緒に行くに決まってんだろ!」
「‼うん!」
……セラは調子良い事言ってるが、夜な夜な私の部屋に勉強するために来た時、早く誘え早く誘えと何度も言ってるのに一切動かず、ようやく今私に便乗するという方法でいう事が出来たのだ。
ようするに、彼は物凄いヘタレなのだ。
「じゃあ私達女性陣は一緒に、買い出しとかしようかな‼」
「そうですね、オウツ国までは結構離れてますから多めに買い集めなきゃですし。」
「じゃあ、俺とロスはオウツ国までの護衛依頼とかないか探してくる」
「では行くか」
そうして私達はエルロー大迷宮の入り口、オウツ国へと向けた準備を完了し出発するのだった。
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旅の途中夜の見張りがサルンと同じになった時の事だ。
彼女はどうも私の事を妹の様に思ってるらしく、そのように扱う事が多々ある。
そのおかげで彼女が持っているコネを使って集めた、珍しい情報なんかを面白おかしく話してくれる。
だから私も情報を得るという意味で、甘んじて妹という茶番の役者に付き合うことにしている
「今日は何の話をしようかぁ?あ、あの話が良いかな?」
「今夜は何の話を聞かせてくれるんですか?」
「ふっふっふっ!じゃあ今日は連続殺人事件の話をしようか。
あれは今から10年程前の出来事。
レグサンド帝国で突如として起こった出来事で、一夜にして70人もの人間が殺された話だよ」
「あ、その話は噂で聞いた事があります。」
「えぇ…。…ちなみにどういう風に聞いたの?」
「確か…犯人は『隠密』スキル持ちの冒険者って聞きました。」
私がそう答えると意地の悪そうな、
……その顔をセラが見れば一気に恋心が覚めそうだな……
「チッチッチ。それは帝国が出した欺瞞情報だよ。」
「え?そうなんですか?」
「もちろんだよ。当時私は帝国にいて、緊急依頼として私も動いたからね!」
ほとんどない胸を張りながら彼女は自信満々でドヤ顔をする。
きっと、今から彼女が喋ろうとしているのは箝口令が敷かれてるような情報だ。
こういった話を簡単に話すからこそ彼女には利用価値があるのだ。
「じゃあ、なんで帝国が欺瞞情報なんて出したんですか?」
「それはね、犯人が魔物だったからさ」
「……つまり、帝国のメンツに関わる情報だから冒険者のせいにしたんですか?」
「まぁ、そういうのもあるんだろうけど、今回暴れた魔物っていうのが市民に
バレると不味いらしくて欺瞞情報を流したんだよ」
「どんな魔物だったんですか?」
「人に化ける魔物だったんだ!」
「?????人に化ける魔物、ですか?」
「そうさ!いや、私も聞いた時には驚いたね。
なにせそいつは何食わぬ顔で事件発生前日に街中で買い物してたって話だからね。」
「……つまり今も市民の中にそういった魔物がいるかもしれないから欺瞞情報ですか」
「いや、私は確実にいると思うね。
どんな生き物でも、それが魔物でも子供を作らなくちゃ増えやしない。
つまりあの魔物にも親がいるはずだ。
ま、帝国もその事に気づいてるから探そうとしてたんだろうけど見つからなかったんだろうねぇ」
「ちなみにその魔物はどういった見た目だったんですか?」
「どうもその魔物の見た目は、首から下が普通の人間で首から上は二本の触手のような物が生えていてその先端を刃物に変えて人を切りつけていたらしい。」
らしい?
「……ん?見てなかったんですか?」
「…っぷ…アハハハハハ!一介の冒険者がこんなに細かい情報知ってると思ってたの?
一部は当時現場にいた同業者から聞いた話さ。
ミラはどうも計算とか考える事とかは上手いが、情報を簡単に鵜吞みにしすぎだね!」
これだ。たまに彼女は私の事を子ども扱いして揶揄う時があるのだ。
…まぁ、彼女と比べればほとんどの人間は子供だが。
「むぅぅぅ。」
「アハハハハハ!!そんなに拗ねないで。
だけど人に化ける魔物の情報は本当だよ?
もしかしたらミラの近くにいる人も魔物かもしれないよ?」
「………気をつけておきます。」
「…そこはミラの良い所だね。
年長者からの注意にはちゃんと敬意を払う。
大人でも簡単にできる事じゃないよ。」
そう言って彼女は、私の頭を撫でる。
……いつぶりだろうか。他者に性欲がなく、慈愛で頭を撫でられるのは。
すべてを委ねたくなるような不思議な感覚にされる…
だけどサルン、きっとその人に化ける魔物の可能性が高いのは……
「……ミラ」
「何ですか?」
急に名前を呼ばれ思考を中断される。
サルンは急に真面目な、どこか深刻そうな顔をし始める。
「もう体を売って情報収集なんて止めな。」
「⁉………………気づいてたんですか。」
「……そりゃあね。
深夜に宿を出ていく所を見かけてね。」
私はゴールドになってからも変わらない。
情報を手に入れるために街や村にに着く度に
「………それは無理ですよ。
私みたいな冒険者は、情報は命の次に重要なんです。
生き残るためには必要な行為なんです。」
「情報が必要なら私を頼りな。
私のコネを使えば情報屋なんかにも顔合わせさせる事もできる」
「……分かりました。サルンさんのお世話になります。」
ミラがワザと気づかれるよう『隠密』スキルを切っていた事実に。
その優しさで彼女自身の利用価値が消える事実に。
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………私は、常々考えていた。自分が何者でどこから来たのか。
私は、本当に人間なのかを。
サルン、彼女には感謝しかない。
彼女の教えてくれた情報屋のおかげで私は、自分の事を知ることが出来た。
今まで体で集めていた情報がゴミであるかのように、大量の情報を仕入れることに成功した。
その中に最も欲しかった情報があった。
「ついに手に入れた……『鑑定石VL2』。」
「情報が大切」と常々言う割にその情報が簡単に手に入る『鑑定』というスキルを蔑ろにする。
この鑑定石は今まで情報収集とは別に夜を売って稼いだ金で、オウツ国の裏市場に売られていた物を買い取った物だ。
「………鑑定」
≪パラサイト LV20 名前 ミラ》
「あぁ………そうか」
ようやく納得が出来た。
やっぱり私は人間ではなかったらしい。
では私が欲しいスキルを手に入るか調べてみよう。
どういった名前のスキルかまでは把握できていないが、何とかする手段は思いついてる。
繁殖スキルが欲しい。
違うか。
増殖スキルが欲しい。
これも違う。
分裂スキルが欲しい。
これも違う。
分身スキルが欲しい。
これも違う。
《現在所持スキルポイントは2120です。
スキル『産卵』をスキルポイント2000使用して取得可能です。
取得しますか?》
よし!
スキルを知らないならそれっぽい名前を適当に思い続ければ良い。
真言教はこの声を神だとか言っているが私から言わせて貰えば、決められた事を言い続ける道具でしかない。
はい。
《『産卵』を取得しました。残りスキルポイント120です》
これで私も子が産めるようになったわけだ。
今まで私は数多の男を相手に夜を売ったががすべて、避妊具なんてものは付けなかった。
なのに何故か子は宿らなかった。
もちろん、危険日を避けたとかそんな事はしていない。
それなのに子を宿さないのはおかしい。
多分だがそれは私が魔物だったからだ。
異種族の間では子が宿せないらしい。
だが同族を探すなんて効率が悪いことをしている暇はない。
だから、産卵スキルだ。
きっとこのスキルは、神話級の魔物『クイーンタラテクト』も持っているんだろう。
あんなにデカいのにどうやって繁殖行為をしているのかは謎だったがスキルの力のおかげか。
では早速、『産卵』
お?おぉ??
身体から生まれるのかと思ったが、どうやら私の頭からだった。
頭から触手が伸び触手の先端が蜂の針のように細くなる。
そこから卵のような物が出てきた。
「ちっさ」
ついつい言葉が漏れてしまうほど小さい卵が床にある。
…これが、私に?
色々と
これは、そのまま産むのではなく針を対象の首筋に差しそこに産み付けるみたいだ。
後は成長を待つだけだな。
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それは、エルロー大迷宮へ入り4日目になって引き返そうとしている時に起こった。
エルローランダネルという三匹いつもまとまって動いてる魔物がいる。
普段の私達ならそこまで苦戦はしない。
だが、初めての迷宮で連戦続きのセラとロスの疲労。
セラの右足の脱臼。
さらに私の魔力不足。
色々な偶然が折り重なり、私達の中で動けるのはサルンと迷宮案内人だけになってしまった。
「ここは私が引き受ける!先に行ってて!!」
「だっだけどサルン!無茶だ!」
「私の事心配するなら早く行って!!」
サルンとセラの掛け合いを横目に私はロスに目で合図を送る。
ロスはそれだけで把握したのか、セラを無理やり抱き上げ迷宮の出口へ向かう方向へと走り出す。
「は、離せロス!!サルンが‼」
「静かにして!!心配なのは分かるけど他の魔物を呼び寄せて、彼女の危険をさらに上げる気⁉」
「だ、だけどサルあがっ……」
彼は最後まで話さず、ロスによる頭突きにより気を失いった。
「ありがとうロス。」
「これぐらい良いさ。この中で一番心配してるのはミラだろ?」
「いや私は別に」
「ミラ隠さなくても良い。サルンとは本当の姉妹のように仲良くしてたもんな。」
…どうやらロスからはそのように見えていたらしい。
私が彼女の近くにいたのは卵の成長具合が気になったからだ。
なにせ初めて生んだ卵だ。
一体どうやって誕生するのか気になってしまう。
まぁ、結局無駄に終わりそうだと暗雲たる気持ちにされる。
それから、4時間ほど進んだ所の開けた所でセラを寝かせ彼女が来るまで待つ事にした。
「なぁミラ。彼女は無事だと思うか?」
「何?ロス彼女が死んだと言いたいの?」
「いや別にそういう訳じゃない。
彼女の強さならきっと大丈夫だろう。
だがどのくらいここで待てばいいんだ?」
「…すまないが、残り食料から見て一日ここで待つのは無理だぞ」
案内人が横から口を出し始める。
「……つまり」
「まぁ、待てても後3時間程か」
「分かりました。
ロス、サルンを信じて待ちましょう。」
「…分かった。」
ロスは何か言いたそうな顔をしたが、大迷宮に潜る前に念押ししたことが利いてるようだ。
案内人に逆らい、迷宮の中に放置されてるなんて私はごめんだ。
それから、二時間ほどでセラの意識が回復し残り一時間となり全員が意気消沈していると
「そこにいるのは誰だ⁉」
急に案内人が叫び私達の体が迅速に反応し、案内人が見ている方向に武器を向ける。
すると影の中から顔を出したのはエルローランダネルの右足を脇に持ったサルンだった。
彼女だ。確かに見た目は彼女だ。
だが私の勘が言っている。本当に彼女か?
セラが喜びのあまり痛めている右足を引きずりながらサルンに抱き着く。
すると彼女は一瞬戸惑ったが、そのままセラを抱きしめ返す。
………おかしい。
彼女は私達の事をどこか子ども扱いをしてる節がある。
いつもの彼女なら抱きしめた彼を引きはがし、場の空気を和らげるために頭を撫でるくらいはやる。
私と同じ心境なのか、ロスも若干眉間に皺が寄っている。
セラは気づいてないようで、体を話した後目線を合わせながら話始める。
「ケガはないか?体の調子は?」
すると彼女は、笑顔で頷く。
…………なぜ喋らない?
……もしかして言葉が通じてないのか?
その様子に不審に思ったのかロスが話始める。
「どうして喋らないんだ?喉の調子が悪いのか?」
今度は彼女は笑顔で首を横に振る。
…私は、その怪しさから鑑定を使う事にした。
最近、スキルにまでなった鑑定を使う事にする。
「…鑑定します」
《パラサイト LV1 (名前なし)》
その瞬間、ニヤけそうなのを隠し悲壮感あふれる声で叫ぶ。
「魔物!パラサイト!案内人弱点は⁉」
「パラサイト!弱点は心臓と頭!!」
私が鑑定を使ったのを感じたのか、突然
ごめんね?だけど大迷宮内で生き残れば強くなれるでしょう?
声を聴いた瞬間、ロスが憤怒の表情で盾を片手に走り出す。
ほら、早く逃げないと死んじゃうよ?
私も
私の前には案内人が来てセラの武器を持ち
……
だがナイフは私達の上を通り、剣に至っては投げれておらず地面に突き刺さってる。
……まぁ、魔法が危険な物と分かったご褒美をやるぐらいは良いか。
私はいかにも動揺で魔法を霧散させた風を装う。
そして、即座に頭を切り替える。
「風魔法を撃ちます!!ロスはミラを守ってて‼」
そして風魔法の魔法を構築し始める。
ロスは自分の足では追いつけないのを分かったのか、ミラの前に立ち守りの姿勢を見せる。
そして
かなり頭が良いな。流石我が子だ!!
別に当てる必要はない。
ただ魔法が怖く恐ろしい物だと教え込み自分の武器にしようと頑張って欲しい、いわば母の愛の鞭なのだ。
魔法をワザと
何発か外していると、急に
……っあ
……ふむ、エルローランダネルの右足で防いだか。
我が子は悪運が強いらしい。
頭の中では、狂喜乱舞しながらも悔しそうな顔をしながらロスの方に歩み寄る。
「……すいませんでした。彼女の仇を取れませんでした。」
「…………ミラ。パラサイトという魔物は初めて聞いた。どういう魔物なんだ?」
……チラリと案内人を見て説明を促す。
「パラサイトはいわば寄生する魔物だな。
個体差がデカくて人間に寄生したならば弱いが竜種に寄生したならば、神話級にも届きうる個体になる。
今回は人間種だったからランクDだ。
何、この迷宮内なら三日もすれば勝手に死ぬはずだ。」
「……いや、その前に俺が見つけて必ず殺す。」
「サルンさんの仇、俺達が必ず取ってやる!!」
……とりあえず迷宮から出たら、ロスとセラには
我が子を傷つけるのは許しません。それをして良いのは私だけです。
目を瞑り胸の前に手を当てる。
…………あぁ、感じる。あの子の魂の絆が。
……大丈夫。魂の繋がりを使えば洗脳なんて簡単ですが
大丈夫。
あなたの事は迷宮の外で待っています。
だってほら、子は
だから私は、強くなります。
《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL1』を獲得しました》
だから私は、強くなりたい。
《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL1』が『欲求VL2』を獲得しました》
強くなって、あの子と殺し愛たい!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL2』が『欲求VL3』を獲得しました》
……………あぁ、これが夢を持つというものですか…………
存外、私もロマンチストだったという事ですか。
あぁ、欲望が止まらない………
強くなりたい
《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL3』が『欲求VL4』を獲得しました》
もっと、強く!
《熟練度が一定に達しました。スキル『欲求VL9』が『渇望VL1』を獲得しました》
もっと、もっとぉ強くぅぅぅぅぅうぅぅぅうっぅぅぅぅ!!!!!!!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『渇望VL8』が『渇望VL9』を獲得しました》
私は強くなって我が子に殺されたい………………!!!!!!!!!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『渇望LV9』が『強欲』になりました》
《条件を満たしました。称号『強欲の支配者』を獲得しました》
《称号『強欲の支配者』により、スキル『征服』を獲得されました。》
《熟練度が一定に達しました。スキル『禁忌VL1』を獲得しました》
………………あぁ、分かるこのスキルは私のこの体中が滾る様な思いに答えてるれる!!!
私は、ちらりと我が子が走り抜けた洞窟の方を見る。
大丈夫。
お母さんはあなたよりも強くなって、あなたを食い殺して永遠に私の中で飼ってあげる。
あぁ、考えただけでもゾクゾクする。
顔が知らずに火照ってくる。
…………精々私の前に来るまで我が子を守ってよ。サルン。
そう、心の中で呟き、セラとロンそれから迷宮案内人がいるほうに歩いていく。
その日、私は初めて心の底から笑うことが出来た。
めちゃくちゃに話が長くなってもうた……
しょうがないんや!主人公誕生の前後の話が書きたかったんや!!
この手が悪いんや!!
ちなみに冒険者のランクはオバロをリスペクトしています