元パソコンの美少女と300年後の不思議な世界で生きるだけ   作:囚人番号虚数番

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お犬の世話は難しい

「グルルルル……」

 

 

 

「警戒、解けませんね」

 

「差し詰め獣、見た目は小動物なのにどうしてだろうな」

 

時刻は夜、首輪を付け寝室のベッドに繋げ槍の彼女を観察する。彼女はひ弱で村長とリナと俺の3人がかりで襲い掛かると簡単に拘束できた。運動神経も悪いらしく危険な槍を振り回しても速度が遅く簡単に避けられる。腕を掴んだら簡単に動きを抑制できた。腕を縛り首にロープを括りつけてついでに口に布を噛ませた。

 

共通する結論として彼女は狩人として即戦力にできない、そう3人で結論づけた。だから狩場で拾ったライフルを受肉させた。今度こそはしっかりとマトモなツクモイドが生成されてくれた。彼はこの村を支えるのに必要な為一時的に教会で村長が預かるそう。しかし槍の彼女に関しては危険性敵に俺達に任せるそう。

 

彼女を連れて帰った後は前述の通り拘束している。手だけは拘束を変えてロープの代わりに布を詰めた袋で手を覆い簡単に外せない様にした。俺達はそれを遠目で観察して彼女の機嫌を伺っている。しかし彼女の槍は諸事情により取り上げられていない。相変わらず俺達を警戒したままで全裸のまま服も着せてあげられない。

 

試しにそっと近づいてみる。するとまた暴れだして俺の腕を叩いた。あまり痛くはないけれど拒絶の意思は痛い程伝わってくる。

 

ここでツクモイドについての新情報だ。ツクモイドにはその個体ごとにあらかじめ初期装備とされる元から身に着けている物がある。多くは服や武器が相当し、リナの浮遊する機械(本人曰く「浮遊パーツ」)も含まれる。肝心なのはどういうわけかそれらは本人の意思で出し入れが可能だ。つまり彼女は槍を召喚し俺達に切りかかろうとする。が、腕を拘束されている為上手く掴めず柄を自身の頭にぶつけた。

 

「中々打ち解けませんね、マスタ―。私も早急な問題解決を思考しています」

 

リナもどうにもならない彼女に難色を示している。解決策はどうしたものか。思えば月はもう高い。お腹もちょうどいい具合に空いてきた。一度彼女の問題は後回しだ。監視は彼女に任せて一旦夕食にしよう。

 

「マスター、夕食であれば私がします。ですので……」

 

「いいや、いつまでも頼りっぱなしじゃ恥ずかしい。俺にも家事を手伝わせてさせてくれ」

 

ー--

 

この世界はやはり色々な部分が現実と比べて歪んでいる。それはキッチンも例に漏れず所々技術の進化が垣間見える。食材は主に村の野菜で動物性たんぱく質は少ない。ここはよくある中世ファンタジーである。だが工業技術が不思議な道具を設置した。一見それは電気鋸の円盤の刃に似ていた。足踏みする場所があり、踏むと中の円盤が高速で回転し勢いよく火花が散る。希少な型の着火装置で高速高火力だが危険性故あまり普及しなかったそうだ。事故の理由は言わずもがな、あくまで噂らしいが。誰だこんな変態装置作ったやつ。前日彼女が使用した際は正直ドン引きした。

 

彼女が選んだ食材を適当に切り鍋に入れる。トマト、ニンニク、玉ねぎ、米生米。これらを炒めてから煮立て、適当に調味料を入れて味付けする。調理中何故ここに胡椒が……?と頭に疑問を抱いた。しかしここは見た目は中世ファンタジーだが一応ここは日本だ。気候的に香辛料なら手に入る。

 

彼女の腕は中々にいい。手際はテキパキとして文明レベルを加味しても調理時間は短く出来上がった物も食欲をそそるいい匂いがする。昨日も彼女に食事を頼んだがその時も料理は大変美味であった。試しに消費の為に食べた非常用キットの保存食とは比べ物にならない。因みに彼女は今度再現してみよう、と言っていた。

 

作り終えたリゾットをふたりで食べる。味は、おいしい。

 

「どうですか、マスター?」

 

「ああ、すごくうまいよ。でもどうして料理を覚えたんだ?」

 

「マスターのお世話をする為に決まっています。これから先何が起こるか分かりません」

 

「そういうことか。ありがとうな」

 

「いえいえ、これくらい当然ですよ」

 

彼女はニコニコして嬉しそうにしている。俺としてはそんなに嬉しいのか、と思うところはあるが。まあ、今は彼女の厚意をありがたく受け取る事にした。暫くして食事を終えると食器を片付けようと席を立つ。そこでふと気づく。槍の彼女にも食事を与えなければ。鍋にまだ残るあまりを適当にさらに乗せ彼女の元に持って行った。

 

「おーい、ご飯の時間だぞ」

 

「…………?……!!」

 

飯の匂いに誘われてか彼女の一瞬警戒が緩んだ。また警戒態勢に戻り唸りだしたもの反応の差は明らかだ。餌付け、これは有効打になるかもしれない。彼女を取り押さえながら口物の拘束を外す。暴れて何度か叩かれてもやはり非力な彼女だ、あまり痛くはない。

 

「ほら、食べろって」

 

スプーンですくった粥を差し出す。彼女は少し躊躇ったが結局は食いついた。恐る恐ると口に含んで咀噛し飲み込む。

 

「……」

 

もう一回差し出してみるが今度は手を払われてしまった。しかし気にせずもう一度。するとまた一口。顔は相変わらず警戒が見て取れるが耳と尻尾が先程とは違う挙動を始めた。どうやら気に入ったようだ。

 

「マスター、私も彼女への給仕をしてもいいですか?」

 

リナがそう言って俺に許可を求める。別に断る理由も無いので了承した。するとリナは俺の隣で同じ様にスプーンで掬い彼女の口元に持っていった。するとまた彼女はそれをパクッと食べた。

 

「うわぁ!かわいい!」

 

リナはそう言うと彼女の頭を撫で始めた。が、流石にやり過ぎたのか彼女は腕を叩かれた。しかし何だかんだで槍の彼女は最終的に皿に用意した全部を平らげてくれた。

 

「おいしかったか?」

 

「……グゥ」

 

無言のまま小さく唸る。食前から食後まで彼女の表情には変化がない。しかし食べ終わる頃には俺に対して多少の信頼を得た気がした。

 

ーーー

 

腹が満たされた槍の彼女はそうしない内にうとうとし始め丸まって寝始めた。あの後も警戒はされつつも多少のコミュニケーションは取れたから今は喜んでおこう。

 

それにしても今日はかなり疲れたただの採取かと思えば戦闘になり、おまけに動物も引き取ることになった。ツクモイドについても色々と知れたしここがただの異世界チックな場所ではない事も良くしれた。

 

槍の彼女は今は屋外に輸送した。寝室は俺たちが使うから家の裏にロープで繋いで寝かせている。かなり辛辣な事をしているのは承知の上だ。

 

「お疲れのようですね、マスター。後日のためにも早急に眠りましょう」

 

「ああ、じゃあ俺そのへんで適当に寝るからまた明日な」

 

「いいえ、マスターもちゃんとベッドで寝るべきです」

 

……この家にはベッドはリナの使う一つしかない。つまり俺が彼女のベッドを使う、ということだろうか。流石にそれでは悪いだろう。俺はリビングの椅子を並べて適当に寝れればそれでいい。木製の椅子は硬いが社畜時代にも何度もやったことだ。

 

「っいいえ、駄目ですよマスター」

 

しかし彼女の押しが妙に強いので面倒くさくなる前に認めた。寝室に向かいベッドに寝る。成程、少し落ち着かないが確かに寝れなくはない。

 

「じゃあ遠慮なく使わせてもらうか。リナはどこで寝るんだ?」

 

「? このベッドです」

 

「え?」「え?」

 

沈黙が部屋を包む。お互い相手の発言の意図の理解に思考停止、両者共に静止している。

 

 

「このベッドで私とマスターの二人で寝ることになりますね」「やっぱりリビングで寝るよ。君こそ疲れてるだろうしゆっくりしな」

 

そして喋りだすのもまた同時である。しかし内容は正反対だった。

 

「いやいやいやいや、倫理的にアウトだよ!」

 

「マスター、私だってマスターの起床を予期できれば用意していました。だからそれまではベッドを共用してください」

 

「共用って、駄目でしょ!年齢差もあるし仮にも異性でしょ!」

 

「うっさい!知ってますよそんな事ぉ!!!私だって恥ずかしいけどこうでもしないと寝れないじゃないですか!」

 

リナは顔を真っ赤にして叫ぶ。またオーバーヒートしかけている。しかし彼女も恥ずかしいのなら提案しなければいいのに。だがお互いに躊躇しているのなら別々に寝てしまったほうがいいだろう。だが部屋を出ようとすると扉の前で俺を塞ぐようにリナが立ち塞がった。

 

「駄目ですからね!マスターは人間としてこの世界で長生きしなければなりません。だからしっかりと休息して下さい!」

 

「じゃあ、どうする?」

 

5分ほどお互いの恥と外聞の妥協点を模索し彼女がオーバーヒートする寸前で結論がつき、一応は二人で納得できる状態に落ち着いた。シングルベッドに二人が背中合わせに寝る。面積が足りずどうしてもどこかしらが密着する。高い体温と金属質な服の質感が肌に伝わる。しかし精神的に意外とどうにかなるものでちゃんと眠くなってきた。

 

 

「……マスター、まだ起きていますか?」

 

しかし、眠る間際にリナが話しかけてきた。

 

「眠いのならそのままで構いません」

 

「……何だ?」

 

「今日作成したツクモイドの名称の候補をいくつか考えていました。本人が名乗る知能がないとはいえ名前がないのはいくらか不便ですから」

 

村長とリナの会話の中では彼女を鉄槍のツクモイドや犬のツクモイド等と便宜上表していた。しかし長期的に面倒を見るとなると名前は合ったほうがいい。命名は今後の人生の決定に関わる重要な要素だ。真剣に決めなければならない。

 

「(名前、ポチとかソラとかが似合うんだけど槍となると……ゲイボルグ?流石に無しか)」

 

少しずつ落ち行く意識の中で少し案を考える。彼女と言えば犬の部位と依り代の槍だ。犬の名前か槍の名前か、そのどちらかが適しているだろう。

 

「(チョコ……いや、グング……ニル……)」

 

ふと、思い出した。確かツクモイドは造物主だけでなく使用者にも影響を受ける。ここでの使用者は俺の事である。俺は獣と対峙した時、死の恐怖に怯えて衝動的に捨て身で獣達を狩った。だから彼女はあらゆる者に怯え文字通りの槍一本での捨て身となったのだろうか。真実はきっとツクモイドを作り続ければきっと分かるはずだ。

 

「(…………槍の名前、いいけど何があるか…………あ、スピアなんて…………)」

 

丁度睡魔も現れた。今日はもう寝よう。

 

 

 

「zzz…………」

 

「だからマスターには造物主として彼女を名付けてあげてください。マスターならどんな名前を付けますか?」

 

「zzz…………ス…………ピカ…………」

 

 

「スピカ、いい名前ですね。私も異論ありません。彼女が起きたその時より、槍のツクモイドはスピカとなります」

 

「zzz……zzz……」

 

「…………マスター?」

 

こうして俺もよく知らない内に槍のツクモイドはスピカと名付けられた。これを俺が知るのは明日の朝であった。

 

ーーー

 

おまけ

 

 

先日にて

 

「そういえば風呂ってあるのかな」

 

この世界の文化水準は中世ファンタジー、それも近世ヨーロッパ辺りのようだ。それ故に現代日本人には少々不便な事が多い。衛生面でも同じ事が言える。しかし彼女は大丈夫だと答える。

 

「この家にはお湯が出る道具が設置されています。マスター、入りますか?」

 

「えっ、お湯出るの!?入る入る!超技術様々だな」

 

「はい。では準備してきますね」

 

そう言うと彼女は台所から出ていった。まさか本当に出るとは思わなかった。という事はトイレも行けるんじゃないだろうか。俺は彼女の後を追いかけた。

 

「待ってくれ、リナ!トイレはどうすればいいんだ!」

 

「マスター、お待たせしました。こちらへ」

 

案内された場所は洗面台の隣にある個室だ。中には洋式便器が置かれており使い方は同じであった。

 

「すごい、水が普通に出てる……」

 

 

「マスター、私は隣で待機していますので用を済ませてください」

 




おまけはAIのべ廃材アートです
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