ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~ 作:榛野 春音
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死の際の奇跡
1
「や・・・・やめろ。やめてくれ!」
暗い部屋の中、恐怖に怯える声が響く。デスゲーム開始から一時間。無理なチート展開を期待して、単身裏ダンジョンへ出かけたのが運のつきだった。
狭く暗いトラップエリア内は、10体近くもの植物型モンスターによって埋め尽くされている。 そしてそれらに囲まれるようにして少年は立っていた。その体のあちこちに赤いラインが入り、既にHPゲージは黄色ゾーンにたっしている。
まだレベル2ちょっとの実力しかない少年にこの状況は、絶望的だった。
隙をついてポーションを飲み続けるがその所持数も残り3。急いで次のポーションを取り出し口を付ける。
しかし、
バシュッ!
背後にいたモンスターが触手で俺を突き飛ばした。その瞬間、手からポーションの小瓶が滑り落ちた。
「しまった!」
その声は余りに弱よわしく、すぐにモンスターの呻き声にもみ消された。
視界の隅でHPゲージが赤色に染まるのが見える。
ここまでか。
そこでふと、先ほどとは比べものにならないほどの恐怖感を覚える。死の恐怖だ。
ソードアートオンラインの父、茅場晶彦の言葉を思い出す。そしてその言葉には、敗北はリアルな死をもたらすというおおよそ娯楽用ゲームには有り得ない意味が込められていた。始めは、単なる冗談だと思った。ログアウトボタンももうじき復活するのでは?とすら考える。しかし、いざ死を間近にすると、茅場氏の言葉がもし真実なら・・・・と恐怖する自分がいた。
「やだ。死にたくない。やめろ。やめてくれ!」
少年は、錯乱したように喚き散らしながら、苦し紛れに背にある大剣を握った。
視界の隅に触手を振り上げるモンスターが映る。最早死を直前にし、いつしか恐怖は怒りへと変わっていた。
「やめろっつてんだろうがあああ!」
少年は、怒号と共に大剣を片手で無造作に横振りする。
そして、奇跡は起こる。
突然に横振りした大剣から、斬撃の青いエフェクトが飛び出した。
刹那
爆散音と共にモンスターが次々と消えていく。全てその斬撃の餌食となったのだ。
ソードアートオンラインにおいて、これだけ高威力の投擲スキルは有り得ない。いや、そもそもソードアートオンラインには、武器を用いた投擲スキルは存在しない。
全てのモンスターが居なくなり、少年はその場にぼんやり立ち尽くす。
ガラン。
大剣が音を立てて手から滑り落ちた。
なぜ両手剣専用の大剣を片手で扱えたのか、そして何故こんなスキルが発動したのか。考えたくても、まだ思考が安定しない。
その時、視界にある通知が表示された。
それを見た少年は、気の抜けたようにその場に大の字に寝転がった。そして、唐突に笑い声を上げた。その声は、喜びよりも悲しみの強いもので不気味なものだった。
そして、例の表示にはこう記されていた。
取得通知
ユニークスキル《アブソリュート・セイバー》
2
デスゲーム開始から、既に1ヶ月が立ち、散って行った物達の数は2000を超えた。
あの夜の奇跡が無ければ、自分もその数に数えられていたと思うと思わず身震いする。
少年の名は、エリウ。これは本名ではなく、プレーヤーネームだ。年齢は、16。男子の割に大きな瞳にサラサラとした少し長めの黒髪、背中には一本の両手剣専用大剣が背負われている。黒のフード付きのロングケープに七分のカーゴ系レザーパンツと、シルバーのギアチックなブーツ。灰色の半袖インナーと指ぬきグローブ。
その格好は、周りの者達の中でも極めて軽装だった。むしろ少し浮くぐらいに。
今、エリウがいるのは第一層ボス部屋前。今日は、第一層ボス攻略日。周りには、40人前後のプレーヤーがひしめいている。
緊張感なく欠伸をしていると、不意に背後から声を掛けられる。
「そんな軽装じゃ、あぶねぇぞ?なんなら俺のお古だが、装備貸すぜ?」
エリウが振り返ると、そこには一人の巨漢が立っていた。掘りの深い顔立ちにスキンヘッド。チョコレート色の肌が筋肉質な肉体を際立たせている。
「あんたは?」
エリウの率直な問いに巨漢は笑って答える。
「おぅ。わりーわりー。俺の名はエギル。よろしく」
「あぁ。よろしく」
気のない返事を返して、エリウはその場から離れようとする。極力、知り合いは作らない。何故なら、ユニークスキルの情報が流出しかねないからだ。そのために今回もわざわざ、レイドパーティーを組まなかったのだ。
何気なく、エギルから離れるべく一歩踏み出したが・・・・。
「装備大丈夫か?」
エギルは、心配そうに声を掛けてくる。
面倒くさいのでエリウは、一言で終わらせる。
「心配ありがとうさん。でも、見た目じゃわからない強さってのもあるんだぜ。」
それは、事実である。
エリウの持つユニークスキル《アブソリュート・セイバー》は、スキル取得時から、素早さ、筋力のパラメーターがカンストする。そして極めつけは、装備する剣系統の武器の攻撃力が三倍になることだ。更にちょくちょくSAOでは有り得ない珍スキルがスロットできる。正に絶対剣。名前負けどころか名前に勝る最強のスキルだろう。
古人の言葉に
『攻撃は最大の防御』たるものがある。
エリウは、今正にそれを実感している。圧倒的攻撃力の前に敵の防御など皆無。故に相手からの攻撃など見るよしもない。
エリウは、このスキル故に奢っているわけではない。ただこの力を持つことで無駄を省いたのだ。 更に意志に反して、省いたのが仲間だ。
エリウ自身、正直このスキルは隠し通したいと思っている。ゲーマーの嫉妬の対象となるのは御免だからだ。仲間を作れば必然的に情報が漏洩する。これは、仲間のミスでも悪意でもない。世の常である。だから、エリウは仲間を切り捨てる。
まだ何か言おうとしているエギルから逃げるようにしてエリウは、隅の方に歩いて行く。
こうやって見回して見ると、この攻略隊はまとまっているようで全くまとまっていない。
先日の攻略会議にエリウは参加して居なかった。しかし、噂などで大体どんな会議だったかは予想できる。
やれβテスターでごちゃごちゃ揉めたのだろう。正直興味ない。
別にβテスターが優秀で必ずしも良い状況にあるとは限らない。それに一説によれば、この1ヶ月の死亡者2000のうちテスターの死亡者は、200から300に登ると言われる。βテストは1000人を対象に行われたわけでそのうちの二割三割が死んだということは、かすかにだが通常プレーヤーよりβテスターの死亡者が多いと言える。自己過信故の絶命とは、鼻で笑える話だ。
そんなことを考えながら、今回の攻略隊のリーダーに目を向ける。
一人は、ディアベル。青髪に爽やかな雰囲気の青年だ。イメージ的には、学級委員か学園祭の実行委員長が似合っている。彼は、噂に聞く『良きリーダー』らしい。
もう一人のリーダーは、キバオウ。今にも噛みつかん勢いの関西人で文句が酷いとの噂だ。恐らく 今回の揉め事も発端はアイツだろうな。
その時ふと、二人の人物が目に留まる。
ひとりは、片手剣使いの少年。年はエリウと同じくらいだろうか?一見対して特徴のない一般プレーヤーに見えるが、エリウにはその少年の纏う空気に違和感を感じていた。
自分は別にしても、周りにいるあらゆるプレーヤーがボス攻略を前にただならぬ緊張感を漂わせるなか、その少年は妙なくらい落ち着いているように見える。
そしてもう一人は・・・・女か?背まであるケープを着ているせいでよく分からないがこの雰囲気は女だろう。
妙な組み合わせだ。
その時、
「・・・・行くぞ!!!」
ディアベルが剣を掲げて声を上げた。
気が付けばディアベルを先頭に7つ程のパーティーが整列している。目に付いた二人は、その後ろにオマケのようにくっついていた。
ボス部屋の門がゆっくりと開く。
攻略隊が一気にボス部屋に雪崩れ込む。エリウもそれに合わせてダラダラと続く。
真っ暗な部屋に次々に大松が灯る。
前方に目線を向けると、縦に長いフロアの先に赤い巨体が見えた。今回のボス《イルファング・ザ・コボルトロード》だ。コボルドと言われる猪と犬を掛け合わせた獣人型モンスターの親玉だけにその顔面は、猪と犬に似ている。でもどちらかと言えば、毛が無い分豚に近いとも言える。
グオォォォ!!!!
コボルドロードが吠えるとフロア内にその取り巻きたる兵獣《ルインコボルド・センチネル》が次々に出現する。
「来るぞ!!」
ディアベルの声でボス戦は幕をあけた。
エリウは、小さくため息をつく。
今回は雑魚の掃除に徹するつもりなだけに気は楽だ。しかし、気を抜けばスキルの露見という危険性がある。気にすべきものは、敵の攻撃よりも仲間の目か・・・・。
エリウは、愛用の両手剣専用大剣[ブレイブレード]を背から抜き、片手で構える。そして小さく呟いた。
「さぁ。はじめようか」
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初めての二次作品難しかったです。
暇を見つけてこれからも、ちょいちょい投稿できたらな。なんて考えてます
次回は、バトルなので描写がんばります!!!