ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~ 作:榛野 春音
次回辺りにソルモとルリカも公開したいと思っています。(可能であれば)(笑)
それでは、最新話をお楽しみください!!!
1
「お前が茅場晶彦だ!!!」
エリウは、ヒースクリフに言った。
ヒースクリフは、黙っている。
アルトラウス達がスタンドから降りてきた。
「エリウ!ど・・・・どういうことだい?」
ソルモが明らかに動揺した様子で言った。他も各々、それなりに動揺した様子を見せる。
エリウは、説明を始めた。
「俺は、ヒースクリフに会う前に下調べをしておいたんだ。ヒースクリフについてのあらゆる情報をな。そしたら、ある人物がヒースを茅場じゃないかと疑ってたって情報を手にしたわけ。そこで、俺は今度は茅場についての情報をあるだけ集めた。その情報を整理していた時、ある仮説が浮かんだんだよ」
そう言って、エリウはウィンドウを開いて、ある記事を取り出した。
「これは、リアルのある情報誌に茅場がコメントした時の記事だ。ここには、茅場本人からユニークスキルについてのことがほんの少し語られていた。ユニークスキルは全てで十存在すること。そして、その概要は自分しか知らないこと。これを読んだ時点でかなり確信に近づいたよ」
そう言ってから、エリウは少し間を取ってから続けた。
「この記事を読む前、俺はあるプレーヤーがヒースを茅場と考える理由に不確定な要素があることに気づいた。ちなみにそいつがヒースを茅場と考える理由は、三つ。一つ目は、ゲージが半分より削れないこと。二つ目は、ユニークスキル使い同士の戦いで不自然な勝ち方をしたこと。三つ目は、ゲームについて知りすぎていること。俺がまず、不確定と思ったのは三つ目だ。ゲームについて知りすぎていること。確かに怪しいがβテスターなら納得行く。最悪、事件に巻き込まれた元制作スタッフと言う線も有り得る。だから、今回さっきの記事を使って検証したのさ」
すると、ルリカがハッとしたような顔をする。
エリウは、ルリカに頷く。
「ちなみに俺がさっき最後に使ったスキル。あれは、初公開のスキルだ。なのにヒース。あんたは、あれの回避の方法を知っていた。なんで?」
ヒースクリフは、黙っている。
エリウは、ため息をついた後に再び話し出した。
「これは仮説なんだがよ。本来のあんたならこんなミスしなかったハズだ。でも、今回ある例外が故にあんたは取り乱したんじゃね?」
すると、ヒースクリフの顔が苦虫を潰したような表情をとる。
「ゲージの話だろ?」
エリウは、そう言って薄く笑う。
そして、一瞬にしてヒースクリフの前に移動し大剣でその胸を貫いた。
ヒースクリフが驚愕する。
ゲージは、みるみる削られて行くが突如としてゲージの半分で停止する。それ以上は何をしてもゲージは削れない。
エリウは、剣をヒースクリフから抜くと飛び退いて距離をとる。
「仮説は立証された。奴は、普段から自分のゲージが半分より削れないよう細工してたんだ。だから、俺に半分決着モードでのデュエルを申し込まれて微かに動揺を見せたんだ。それが分かった時点で俺は、ゲージをネタにした会話でヒースにプレッシャーをかけつつ、未公開のスキルを使った。もし、あんたが技を受けたとしても、事はバレてたぜ?だってあのスキル、対人用で当たれば相手ゲージの八割が飛ぶのが必須効果なんだ。だから、受けたら削れないゲージの秘密がバレる。・・・・・・どうよ?ヒースクリフ?ここまで来たら言い逃れ出来ないぜ?」
すると、
ヒースクリフがパチパチと拍手をした。
「いや。見事だエリウくん。そうだ。私が茅場晶彦だ」
「「「「「「っ!!!?」」」」」」
アルトラウス達が息をのむ。
ヒースクリフは、静かに笑う。
「しかし、驚いたね。こんな落とし穴があるとは・・・・いや、正しくはこんな落とし穴を仕掛けられるとは・・・・だな。 エリウくん。君は本当に優秀な人材だ。 そこでだ。私の正体を見破った報酬として・・・・私との本気のデュエルに勝てば、全プレーヤーをクリア扱いとし全プレーヤーをログアウトさせよう。というのはどうかな?」
それを聞いて、エリウは吹き出した。
「はっ!いいね!・・・・でも、お断りだ。あんたとのデュエルはもうしたくない。こんな落とし穴に詰まれるような奴と本気のデュエルをしたとこで結果は見えてる。もちろん俺が勝つ。それに俺はゲームをクリアして 英雄になるつもりはない。だから、報酬は別のことにしてもらう」
「参考までに聞こう」
ヒースクリフの返事を聞いて、エリウは言った。
「間違いなく、数日以内にある男がお前の正体を暴きに来る。その時、お前はそいつにさっき言った報酬を与えろ。そして、そいつがお前に勝ってゲームがクリアされた暁には、俺にこの世界を創ったその心を語れ!それが俺の望む報酬だ」
暫しの沈黙があった。
最初に口を開いたのは、もちろんヒースクリフだ。
「いいだろう。その報酬必ずや君に与えると約束しよう」
その言葉は、どこか切なく、とても温かく感じられた。
おそらくこれが、茅場晶彦の人としての言葉なのだろう。
×××
血盟騎士団の拠点を後にする際、エリウは会議室で待っていたアスナのところに寄り、協定を結ぶ際のこちら側の要求を記したメモを手渡して来た。
今回の闘技訓練場での一件を知らないアスナは、明るい様子でメモを受け取ってくれた。
その後、帰り道は全員ひたすらに無言だった。
ようやく、隠れ家についた途端。
ヒシッと何かがエリウにしがみついてきた。その数、三。
ストレアにアール、ルリカだ。
「心配したよ゛~」
「えーん!えーん!良かった!良かったよエリウ~」
「グスッ。ん~!グスン!」
三人が泣きじゃくるのをエリウは、どうしていいのか分からずオロオロする。
そして、助けを求めるべくエルの方を見ると・・・・
「スンッ・・・・」
顔を背けたエルから、鼻を啜るような音が聞こえる。みるとその方が弱々しく震えている。
参ったな・・・・。
エリウは、レックス達の方を見る。
三人は、泣いてこそいなかったがなんだか湿っぽい雰囲気を纏っている。
「お・・・・お前ら?」
次の瞬間。
「エリウ!かっこつけ過ぎなんじゃ貴様!」
「しかも、カッコいいことした後のそのハーレムっぷり。どこの主人公だ!」
「本当に心配したんだよ?もう、無茶しないでおくれよ!」
アルトラウス、レックス、ソルモの順に次々と文句を垂れる。
そんな仲間達に囲まれながら、エリウはホッとため息をついた。
しかし、まだ終わってはいない。
エリウは、空を見上げた。
そこには、人工的な空が広がっていた。
蒼き無垢な天を睨み、エリウは呟いた。
「さぁ。最後の戦いだ」
2
深夜の血盟騎士団。
月明かりの差し込む会議室。
ヒースクリフは、椅子に背もたれした姿勢で目を閉じていた。
そして、不意に言った。
「フェリアラ。聞いてるか」
すると、何もない空間が歪み、数字の羅列が流れる。数字の羅列が消えた時、そこには、青い髪の少女が立っていた。太もも辺りまである長い髪を揺らし、少女は近づいてくる。
「何?」
少女の無機質な声にヒースクリフは、目を閉じたまま言った。
「あと、数日以内にこの世界は滅びる。君も早くパートナーを選びたまえ」
その言葉にフェリアラと呼ばれた少女は、首を振る。
「私は、ストレア姉さんとは違う。私は、人間に価値を感じない。あんな不完全な生き物のどこに魅力があるの?」
「ストレアは、人間に魅力を見いだしたのではない。エリウという個人の魅力に惹かれたのだ。それに不完全だからこそ栄える魅力というものもある。エリウという人間は、欠けている部分故の魅力と才能を持っている。だからこそ、ストレアは彼を選んだ」
「不完全だからこそ栄える魅力・・・・。でも、私には人間を選べない。自分以上に不完全なものに自分を委ねるなんて・・・・・・」
フェリアラが下を向く。
ヒースクリフは、諭すような口調になる。
「ならば、見方を変えたまえ。不完全だからこそ見えないものがある。それは時に完全を凌ぐ力を示すものだ。君には、その力をそのすぐ側で見ることの出来るチャンスがあるのだと」
「不完全が完全を破る?」
「そうだとも。君は、まだ見たことがないかもな。でも、君が運命を共にできる者を定めた暁には、その者が君に不完全が完全を破る瞬間を見せてくれるだろう」
ヒースクリフの言葉を聞いたフェリアラは俯いて黙ってしまう。
ヒースクリフは、目を開けた。そして、フェリアラの横に立ち優しい口調で言った。
「この世界が滅びる時、私も滅びる。しかし、君とストレアはこれから先も生き続ける。・・・・私は、君達に世界に生ける君達のモデルとなった生き物を知って貰いたい。完璧をモットーに作られるAIに取って、それは無理難題かもしれん。それでも、人間には君達に学んで欲しいだけの可能性があるんだ。・・・・・・ストレアはもう、次の未来をパートナーと共に歩み始めている。君はどうなんだい?私は、君にこそ人間の可能性を信じられるAIになって欲しいと願っている」
「・・・・私は・・」
「行きたまえ」
そう言って、ヒースクリフはフェリアラから離れ窓の外に目を向けた。
フェリアラは、少し考えるように立ち尽くしていたが、ふと顔を上げると一言。
「私には、分からない。・・・・でも、私も一歩踏み出したいと思う」
そして、フェリアラは再び出現した数字の羅列に紛れ消えて行った。
誰もいなくなった会議室でヒースクリフは、天を眺め呟いた。
「君になら出来る。インビジブル・セイバーは、その為にあるのだから」
×××
珍しく目が覚めた。
時刻は、深夜二時をまわったところだ。
エリウは、そっと起き上がると隠れ家を出て表の大通りに向かった。
特に用は無いが、ただ何となく星が見たくなったのだ。
大通りは、流石深夜ということもあってほとんど人がいなかった。しかし、ちらほらと二十四時間営業の店から出てきたプレーヤーやNPCの姿が見える。
エリウは、通りの中心に立って空を眺めた。
今日のアインクラッド第三層の夜空は、雲一つない快晴だった。星の輝きが強く、月もよく見える。
よく考えたら、階層状の建築物の中にいるのに夜空が見えるのはおかしい。
でも、この世界に来て二年。そんな現実的な思考は、どこか隅へと追いやられていた。何故かは、分からないが悪い気はしない。
エリウはふと思う。
こんなにゆったりと空を見たのは、いつぶりだろうかと。
いや、むしろ空なんてキチンと眺めたことがあったかすらアヤシい。
変わったな。少年兵も・・・・
そう思った時、
「エリウ」
振り返ると、ルリカがいた。
「お前も起きてたのか?」
「まぁね」
そう言うと、ルリカはエリウの横に並んで空を見上げた。
「あのさエリウ」
「あ?」
「私、エリウの昔の事ストレアから聞いたんだ」
エリウは思わず、ルリカの方を見てしまう。
ルリカは、続けた。
「全部聞いたよ。私だけじゃない。アルトラウス、レックス、ソルモ、エルにアールもみんな聞いてた。・・・・みんなが何を感じたかなんて分かんないけど、私はね・・・・嬉しかったんだ」
よく分からないルリカの話にエリウは首を傾げる。
「私ね。小さい時に両親を強盗に殺されてるの。・・・・だから私、お父さんお母さんの分まで生きなきゃって思って、なんか無理してたの。柄でもないのに強がったりしたりしてさ。でも、エリウの話聞いて思ったの。自分より酷い境遇に立たされて生きてきた来た人は、何故か自分よりも無理なく生きてるなって。そう思ったら私も無理しなくていいかなって思って・・・・そしたらなんか元気が出て嬉しくなったの」
そう言ったルリカは、涙の溜まった瞳で笑顔を見せる。
エリウは、そんなルリカから視線をそらす。
「そう思われて、お前が元気でるならそれでいい。でも・・・・俺は、無理しないんじゃなくて。無理に慣れたのかも知れない。・・・・無理する自分を肯定する余りにそれが本来の自分に上書きされたんだろうな」
すると、エリウはルリカに手を握られた。
「じゃぁ。アナタは自分が嫌い?」
!
「私ね思うの。私みたいに無理する自分が嫌いなうちは無理してるんだって。でも、エリウみたいにそれが慣れだとしても無理する自分を肯定出来るのは、自分を愛せてるからだと思うの。だからアナタにはアナタを慕う仲間が出来た。他人にも自分にも愛される自分って、本物でしょ?」
そこまで聞いて、エリウは微かに頷いた。
「お前は、詩人だな。・・・・でも、その通りだ。確かに俺はこんな自分を愛せている。そして、結果的に大切なものができた。それは、確かに本物だ」
そう言ったエリウは、一呼吸おいて続けた。
「そして、その大切なものに、ルリカお前も含まれる。だから、もう迷うな。無理しなくていいかな?じゃない。無理しなくていいんだ」
エリウは言った後、ルリカを真っ直ぐ見た。
ルリカは、頬を伝う涙を指で払う。そして、消えそうな声で答えた。
「うん。ありがと」
隠れ家に帰る道、ルリカは申し訳なさそうに言った。
「なんか、ゴメン。湿っぽくなった」
しかし、エリウは笑って返した。
「はっ。よく言うぜ。湿っぽいキャラのクセに」
「うるさい!」
ルリカが赤面し、エリウの足を踏みつけた。
「っ!」
エリウが声をあげると、ルリカはこっち向かって、ベーっと舌を出して隠れ家に入って行った。
やれやれ・・・・
エリウは、足をさすりつつ再び空を見上げた。
そして、改めて思う。
今日のアインクラッドの夜空は、憎らしいくらいの快晴だと。