ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~ 作:榛野 春音
ついにALO篇スタートです!!
今回のラスボスは、オリジナルかつなかなか厄介です!!
それでは、ALO篇最新話をお楽しみください!!
悪夢の再来
1
ソードアートオンラインから、リアルへ帰還して2ヶ月。
正直暇だった。
エリウは、日本の自宅でのんびりと窓の外に目をやった。
今日も千葉はいい天気だ。
エリウの住む千葉県成田市の成田ニュータウンは、新東京国際空港(成田国際空港)やJR成田線も近いこともあり、たびたび海外や東京の方に出るエリウに取っては非常に都合のいい地域である。
リハビリの必要がなかったエリウに取って、バイトや内職、トレーニングを省けば、かなり暇な二ヶ月を過ごした。
学校に通いたかったが、春辺りにSAOサバイバーを対象にした特別学校が開かれるとか何とかなので今は学校に通えない。
エリウは、そんなことを思いながら欠伸をする。
その時、不意にスマホにメールが入ってきた。
差出人は、菊岡誠二郎。
エリウの目が鋭くなる。
菊岡誠二郎。
自衛隊二等陸佐にして、元総務省SAO対策科の一員。
とは、言うがエリウはその肩書きを真に受けてはいない。
何故なら、SAOにダイブする以前からエリウは菊岡と顔見知りだったからだ。
保護者で有り、自身の雇い主だったカミラー・オーランドを護衛する日常の中、たびたび商談などの席で菊岡とは顔を合わせていたのだ。
陸軍の二等佐がそこまで外交的な商談に介入してくるとは思い難い。カミラーも菊岡がただ者ではないと踏んでいた。
しかし、エリウは菊岡に対して喰えない相手ではあっても悪人ではないと考えていた。
エリウは溜め息混じりにメールを開いた。
×××
「で?なんでここに?俺は金払えんぞ」
メールを受けた日の夜、エリウは東京都渋谷区の高級料亭に来ていた。
料亭の一室で、菊岡は待っていた。
座敷の客間は、高級料亭を語るに相応しいほどに美しい。襖を開けた向こうには、ガラス窓があり更にその向こうには東京都の美しい夜景が広がっていた。
エリウは、座布団に腰を下ろすと向かいに座っている菊岡を見てもう一度言った。
「金は払えんぞ」
すると、菊岡は笑う。
「大丈夫さ。今回は僕が持つよ。でも、エリウくんの財産ならこの店を買い取ったところで、ビクともしないんじゃないのかい?」
エリウは、苦笑いする。
「まぁそうだな。でも、普段から大金なんざ持ち歩く19歳がいるか?」
「いないね」
そう言って、菊岡は再び笑う。
すると、襖が開き着物を来た女性達が料理を運んで来た。
女性達が料理を運び終わり丁寧な礼と共に部屋を去る。
エリウは、言った。
「まぁいいや。で。何の用だ?」
すると、菊岡の目の色が変わる。
「そうだね。そろそろ本題に入ろうか。・・・・でも、もう少し待ってくれ。もう来る頃なんだ」
そう言って、菊岡が腕時計を見た時。
襖が再び開き、今度は知った顔が部屋に入って来た。
「よう!エリウ」
入って来たのは、アルトラウスとレックスだった。
「お前ら・・・・」
しかし、それだけではなかった。
「ヤッホー!エリウ!」
元気な声と共にアールが入って来る。その後ろから緊張した様子のエルとルリカが現れる。そして、最後に落ち着いた様子のソルモが入って来る。
なるほど。どうりで座布団が沢山あると思った。
エリウは、納得しつつ久々に出会う仲間達の顔をそれぞれ見る。
一応、生還して直ぐにエリウは仲間達のいるそれぞれの病院にお見舞いに行ってはいるが、こうやってプライベートなみんなに会えるのは初めてだった。
「まぁ。皆さんひとまず、座ってください」
菊岡が言うと皆が座布団に腰掛けようとする。
何故か、エリウの両サイドを女子群が取り合っているが気にしない気にしない。
ひとまず全員が席につくと、菊岡は真剣な顔で言った。
「まずは、ここまでお越しいただいた皆さんにはお礼を述べるよ。ありがとう。ここは僕が持つから遠慮しないで欲しい」
そう言った後、菊岡はとあるゲーム店のビニール袋を取り出した。
「今回君達に来て貰ったのは、とある依頼があったからなんだ」
そして、菊岡はビニールからとあるゲームソフトを取り出しエリウ達に配った。
妖精のような格好の男女が夜空を飛んでいる表紙に英語でタイトルが書かれている。
エリウは、つい声に出して読んでしまう。
「アルヴヘイムオンライン・・・・」
すると、菊岡が頷く。
「嫌ならば断ってくれて構わない。何を隠そう今回の依頼は君達に再び仮想世界にダイブして貰わなければならないからね」
それを聞いて全員が黙る。
確かにそうだ。
エリウ達は、仮想世界にダイブしたことで悲劇にみまわれた。一般的に考えればもう二度と仮想世界に行きたくないと考えるのが普通だ。
しかし、エリウは言った。
「まず、内容を聞かせろよ。それによるな」
そう言って、エリウは仲間達の顔を見る。意外なことに全員エリウに賛成なようだった。
それを確認して、菊岡はゆっくりと話始めた。
2
菊岡から聞いた内容は、それなりに恐ろしい内容だった。
ゲーム終了から2ヶ月現在。
未だ三百近くのプレーヤーが帰還していないようなのだ。そして、その中にアスナが含まれること。
そして、ブラックボックスなSAOサーバーは起動し続けている。
茅場がそんなことを?
一瞬そんな疑問がよぎったが、すぐにもみ消す。
あいつは、そんなことはしない。やるなら、堂々と世間に公表してやる。
それに・・・・茅場は死んだ。
生還し仲間達の見舞いを終えたエリウは、キリトとの面会で茅場の死を知らされた。アスナのことも聞いてはいたが、まさか他に三百近くのプレーヤーがいたとは・・・・。
その時、菊岡が再び口を開いた。
「私達は、その後いろいろと秘密裏な調査もしたんだ。するとだ」
そう言って、アルヴヘイムオンラインのソフトを指差した。
「ここの製作に行きついたんだよ。そう、レクトプログレスに」
そして、菊岡は何枚かの写真を取り出した。
その中の一枚にアスナと覚しき少女が写っていた。その場にいた全員が息をのむ。
「これは、先日アルヴヘイムオンライン内で撮影されたものだ。間違いなくアスナくんだろうね」
エリウは言った。
「こいつは・・・・黒だろ?レクトのフルダイブ担当は、どういうつもりだ」
すると、菊岡はもう一枚の写真を指差した。
そこには、爽やかな表情のメガネをかけた男が写っている。
「須郷伸之。彼がそこの主任だ。彼にはまだ接触していない。けれど、彼の周りを調べたところいろいろと怪しげなものが出てきてね。今詳しく調査中だ」
すると、レックスが言った。
「なら、俺達はアスナを含むプレーヤー達を連れ戻すべくゲームに潜入しろと?」
しかし、菊岡は首を振った。
「これは、あくまで前置きだ。この件は、実は既にキリトくんが解決すべく動いてるそうだとエギル氏が言っていた。君達に依頼したいのは別件だ」
そう言うと、菊岡は三枚目の写真を指差した。そこには数十人の男女が写っていた。しかし、この面々どこかで見たことが・・・・・・。
「彼らは、もとオレンジプレーヤーの諸君だ。ラフィン・コフィン、グール・ローズ、アルカトラズ、ヴァーミリオン・ソウルなどなどのメンバーだった人達だ」
それを聞いて、エル達がゲームソフトを手から落としてしまう。
エリウも目を見開いた。
「彼らは、今カウンセリングを含む治療経過観察対象となっている。しかし、だね。先ほど言った件でアルヴヘイムオンラインについて調べていたら、妙な情報が手には入ったんだ。・・・・ここ1ヶ月に彼らが一斉にアルヴヘイムオンラインを買い出したんだよ。しかも全員がね」
アルトラウスが呻く。
「奇妙だな・・・・」
菊岡は頷く。
「先ほどの件と何か関連が無いか調べているんだが、イマイチヒットしない。そこで君達にその調査をお願いしたいんだ。単なる遊びならいいんだが、彼らは元オレンジプレーヤーだけに何か大きいことをしでかしそうで不安なんだ。それも問題で済めばいいんだが・・・・」
暫しの間、部屋に沈黙が流れた。
「菊岡。その言い方なんか他に言いたいことあるんだろ?そこが一番重要と見た。隠さず言えよ」
すると、菊岡が苦笑いする。
「さすがだなエリウくん。君には隠し事は無理だな。・・・・・・・・そうだね。はっきり言おうか」
そう言って、菊岡はとある封筒から一枚の紙を取り出した。
「これは、あくまで噂の域故に信じたくはない。でも、今回君達に依頼するに至ったのはこの噂があったからが大きい。・・・・・・君達は、アインクラッドのアンダーバランスを知っているかな?」
そう言われて、アルトラウス達は首を捻る。
しかし、エリウは違った。
「アインクラッドの地下にある未開拓エリアにして、旧アーガス最高機密ザ・スティールの保管場所だ」
すると、菊岡が目を見開いた。
「そ・・・・それをどこで?」
「カミラーから聞いた。以前ウチが買い取ろうとしたもんだからな」
そこでルリカが口を挟んだ。
「ザ・スティール?」
エリウは答えた。
「簡単に言うと、あらゆるサイバーを乗っ取れる世界最強の完全なるコードだよ」
それを聞いて、菊岡が額に手を当てる。
「エリウくん。そろそろ君が恐ろしくなってきたよ。さすが世界一優秀な少年兵と言われた男だよ。そこまでいろんな情報に詳しいとは・・・・」
「んなことは、どうでもいい。その噂ってのは何なんだ?」
少年兵の話を出されて苛立ちをみせたエリウを見て、菊岡は咳払いする。
「そうだね。その噂なんだが、彼ら元オレンジがそれを狙っているそうなんだよ」
そこでエルが口を挟んだ。
「消えたアインクラッドにあるものをどうやって狙うのよ」
すると、菊岡は静かに言った。
「アルヴヘイムオンラインは、ソードアートオンラインに直接上書きしたゲームなんだ。だから、アルヴヘイムオンラインのどこかにザ・スティールは隠されているんだ」
「でもよ。菊岡。たかがゲーマーにそんなことできんのか?」
エリウの言葉に菊岡は頷いた。
「彼らは、使い魔に過ぎないんだ。問題はそれのヘッドだ。彼なら簡単に出来る」
そして、菊岡は最後の写真を指差した。
「本名不明。ガソールと言われる男だ。国籍も年齢もあらゆることが不明だ。ただ、彼がソードアートオンラインプレーヤー中で唯一、自由にログアウトできる人間だったんだ」
「「「「「「「は?」」」」」」」
思わず声が漏れる。
菊岡は続けた。
「彼は、ゲーム内に捕らわれている身でゲーム内で何らかの方法でゲームデータへの干渉を成功させたんだ。そんなことが出来る技術があれば、アルヴヘイムオンライン内でザ・スティールを見つけ出すことは簡単な筈だ」
「そんなことが・・・・・・」
ソルモが呟く。
「噂では、彼を中心にオレンジプレーヤーが集結しザ・スティール強奪作戦を練っていると言われている。もし、先ほどの件と関連するなら、ザ・スティールを奪われれば世界中サイバーがコントロールされ、全てのフルダイブプレーヤーが仮想世界に捕らわれ人質となる可能性もある。そうならない為に君達には、ザ・スティール強奪作戦の調査および阻止を依頼したい。というのが本当の依頼だ」
再び暫しの沈黙の後。
エリウは言った。
「厄介な話だな。いいだろう。・・・・その依頼受けてやる!」
すると、仲間達はやれやれというように笑う。
「なるほどな。そいつは元ユニーク使いの俺達には適任の依頼だぜ」
アルトラウスが言うと、その横でレックスがギヒャっと笑い声を漏らす。
エルもアールも同意すべく頷いた。
「僕は、エリウが行くならついて行くさ。それに世界を操られるなんて許されないからね」
ソルモの言葉にルリカも強く頷いた。
全員の同意を確認した菊岡は、満足そうに頷いた。