ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~   作:榛野 春音

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猛炎と暗黒

 

 

「エリウ。まだ遠いけど、もの凄い数のプレーヤーが編隊を組んで飛んでる」

不意にストレアが声を漏らした。

「種族は?」

「サラマンダーね」

「へぇ。なんか狩りにでも行くのかな?面白そうだ。どうせそこ通るなら見て行こうぜ?」

そう言って、エリウは飛行速度を限界まで上げた。

仲間達も同意して、それに続く。

 

そして、暫く飛ぶと円形の小さな大地が見えて来た。そこには、シルフとケットシーがそれぞれ七人ずつ長机を挟んで座っていた。何かの会議中と言った有り様だ。

「ストレア。サラマンダーじゃないじゃん」

「違う違う。私が言ったのはアッチよ」

ストレアの指差す方を見てエリウは納得した。

エリウ達が飛んで来た方角とは逆から、真っ赤な鎧に身を包んだ騎士の集団がくさび型の陣形を取り低空飛行でシルフとケットシーに接近していた。

「なるほど・・・・プレーヤー狩りか」

レックスがピュウと口笛を吹く。

 

エリウ達が見ていると、シルフとケットシー達はようやくサラマンダーに気が付いたようで、慌てて椅子を蹴り飛ばし抜剣抜刀する。

しかし、数も武装もサラマンダーが圧倒的に有利と見えた。

 

その時、突然として黒い人影が一つ、両軍の間に飛び込んで来た。

「双方、剣を引け!!!!!」

その勢いにサラマンダー達が少し後退する。

現れたのは、髪を逆立てた一人の少年スプリガンだった。

スプリガンはサラマンダーに視線を向けて叫んだ。

「指揮官に話がある!」

すると、サラマンダー軍の中から二人の人物が出てくる。

二人とも大柄な体躯に一目で超レアアイテムと分かるアーマーを身につけている。片方は、自然な感じに流したオレンジ髪で、もう一人は真っ赤な短髪をツンツンに立てている。両方ともなかなかの迫力がある。

暫く二人はスプリガンを凝視していたが、不意にツンツン髪の方が口を開いた。

「・・・・スプリガンがこんなところで何をしている。どちらにせよ殺すには変わりないが、その度胸に免じて話だけは聞いてやろう」

それをきいてスプリガンは、大声で答えた。

「俺の名はキリト。スプリガン、ウンディーネ同盟の大使だ。この場を襲うからには、我々四種族との全面戦争を望むと解釈していいんだな?」

そこまで聞いて、エリウ達は苦笑い。

アルトラウスが呟く。

「キリトのヤツ。何してんだよ・・・・アスナ助けに行けよ」

アルトラウスの言葉にエリウもやれやれと首を振る。

そして、ふとシルフとケットシー側に目をやる。

そこには、スプリガンについて来たのだろうか、もう一人シルフが加わっていた。

その金髪のシルフは、シルフとケットシーの指揮官らしき人物に必死にコンタクトを送っている。

 

なんだ。・・・・ハッタリか。

 

エリウは気が付いたが、サラマンダーの指揮官二人は驚いた様子を見せる。

「ウンディーネにスプリガンの同盟だと?」

オレンジ髪の方が探るような口調で言うと、すぐさまツンツン髪が続ける。

「護衛の一人もいない貴様が大使だと言うのか?」

すると、キリトは表情一つ変えずに言った。

「ああ、そうだ。この場にはシルフ、ケットシーとの貿易交渉に来ただけだからな。だが会談が襲われたとなればだだじゃすまないぞ。四種族で同盟を結びサラマンダーに対抗することになるだろう」

暫しの沈黙の後、

「たった一人、大した装備も持たない貴様を信じるというのは、どうも解せぬな」

オレンジ髪は、そう言って腰から一本の太刀を引き抜いた。それに習いツンツン髪も背から刀身に竜が描かれた両手剣を抜きはなった。

「我々二人の攻撃を二十秒耐えたら、貴様の言葉を誠であると認めよう」

オレンジ髪の言葉にキリトは、飄々と返す。

「二対一で二十秒か・・・・ずいぶん気前がいいね」

そして、キリトが背から大剣を抜いた時、

 

「ちょっと待ちな」

 

消して大声と言うほどでもなかったが、その声はその場に沈黙を呼んだ。

声の主は、エリウだ。

全プレーヤーが一斉にエリウ達を見る。

キリトだけが、驚愕の形相でこちらを見ている。

 

エリウはキリトの隣に飛んでいくと、二人のサラマンダーに言った。

「何がなんでも、指揮官級二人が同時にってのは卑怯だ。片方俺が相手するぜ?」

そう言って、キリトの方を見る。

すると、キリトが小さな声で言った。

「エリウなのか?・・・・そっそのアバターは一体?というより、なんで?」

「内緒内緒。まっ何にせよ、助太刀するぜ」

そして、エリウは再び二人のサラマンダーに向き合った。

ツンツン髪が言った。

「インプか・・・・珍しいな。別に構わんが、貴様は何者だ?」

「何者って程でもないぜ。単にこのスプリガンのフレンドだよ。フレンド」

すると、オレンジ髪が言った。

「たかがフレンド如きがでしゃばったな。後悔するなよ?」

「ははっ。その言葉こそ、後で後悔するぜ?」

そして、エリウは少し離れたところにいるストレアに手を差し出す。

「ストレア!」

「はーい!!」

言うが早いか、ストレアは紫の光になってエリウの手元に飛び込んでいく。そして、エリウの手の中で大剣[デッド・オブ・グレートセイバー]に変身した。

 

その光景に周りのプレーヤー達が驚いている。

 

エリウは、グルグルと大剣を回して目の前で払うと、片方でそれを構えた。

「そう言えば、名乗ってなかったな。俺はエリウだ。アンタらは?」

「・・・・サラマンダー領主モーティマー」

「サラマンダー領主が弟、ユージーン」

オレンジ髪、ツンツン髪の順でサラマンダーの二人は名乗る。

「へぇ。領主にその弟か・・・・」

エリウはニヤリと笑った。

 

それから、空中で対峙する四戦士は、互いの力量を計るが如く睨み合う。

 

そして、次の瞬間。

 

予備動作無しにモーティマーとユージーンが同時に動いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ケットシー領主アリシャ・ルーが呟く。

「あのユージーンの持つ剣、あれは魔剣グラムだョ」

すると、シルフ領主サクヤも呟いた。

「まずいな。魔剣グラムと言えばたしか、あの盾や剣をすり抜ける[エセリアルシフト]と呼ばれるエクストラ効果があるはず・・・・」

「それにあの二人アルヴヘイムトップ2のプレーヤーじゃない?」

二人の言葉を聞いて、キリトについて来たシルフの少女リーファが言った。

それをきいて、シルフ領主とケットシー領主は頷いた。

 

内心三人とも、ハラハラした気持ちでいっぱいだった。

しかし、その不安は次の一瞬で綺麗にかき消されたのだった。

 

 

ギンッ!

ギンッ!

 

空中で金属質な音が響く。キリトは、モーティマーの太刀を、エリウはユージーンの魔剣を簡単に受け止めたのだ。

「なっ!?」

モーティマーより、先にユージーンが驚愕する。

エリウは笑う。

「早急さ。下の方から聞こえたんだけど、エセリアルシフトっけ?あれさ。武具にのみ適応されるんだろ?残念、ウチの剣はもともと武器じゃありませんからっ!!」

そう言って、エリウはユージーンを軽く弾き飛ばした。

 

ドガーン!

 

ユージーンが地面に激突し、轟音が響く。そして、土煙が上がる。

「ユージーン!?」

モーティマーが驚いてキリトから目を離した。

すると、その隙をついてモーティマーを斬り飛ばした。

 

ドガーン!

 

またしても、轟音。

モーティマーはユージーンが落下した直ぐ近くの大地に激突した。

が、直ぐに土煙の中からモーティマーとユージーンが飛び出して来る。

キリトが言った。

「そろそろ二十秒たつんじゃないのか?」

すると、モーティマーが言った。

「このまま引き下がれん!首をとるまでに変更だ!!」

エリウは笑う。

「領主様が御乱心か!いいぜぇ?今度は俺が相手だ!!」

そして、エリウはキリトに言った。

「ユージーンの武器、普通の剣ならすり抜けて来るから気をつけろ」

「ああ、任せろ」

キリトは頷くとユージーン目掛けて飛び出して行った。

キリトがユージーンと打ち合い始めたのを確認し、エリウはモーティマーを見る。

モーティマーは目を閉じて精神統一していた。

そしてゆっくりと目を開けた。

「行くぞ!」

言うなり、目にも止まらぬ速さでつっこんで来た。

モーティマーの太刀がエリウに迫る。

が次の瞬間、エリウが消えた。

モーティマーが慌てて左右を見回す。

と、突然背後からモーティマーはど突かれた。

「!?」

のけぞったモーティマーが振り返るとそこにはエリウがいる。

しかもニヤニヤと笑いながら。

モーティマーは、再び斬りかかったがまたしてもエリウはよける。

そんなことを繰り返しているうちに突然辺りが黒い煙幕に包まれた。

ユージーンの声が響く。

「時間稼ぎのつもりかァ!!!」

そして、スペル詠唱と共に黒い煙幕がスパッと斬りさかれて消えていく。

 

空中に残っていたのは、エリウ、モーティマー、ユージーンの三人だった。

 

キリトの姿が見当たらない。

「まさか、あいつ逃げ・・・・」

とあるケットシーがそう呟きかけた時、

「そんなわけない!」

「んなこと、あるか!!」

「キリトは逃げないよ!!!」

リーファ、アルトラウス、アールが同時に声を上げる。

 

声こそあげなかったが、エリウもキリトが逃げるとは思っていない。

 

すると、

 

ヒュオー

 

不意にどこからか飛翔音が、近づいてくる。

その音はどんどん大きくなり・・・・

「キリトくん!!」

シルフの少女が叫ぶ。

キリトは、真上から太陽の光に紛れて一直線に降下して来ていた。

ユージーンは、それを見て怒声をあげながらキリト目掛けて急上昇した。

 

ユージーンの剣がキリトの剣をすり抜けて首に迫るその時、キリトは反対の手に握るもう一本のでそれを受け止めた。

 

二刀流。

 

ユージーンが驚愕し目を見開く。

「うおああああ!!!!」

キリトは叫び、二刀流で次々にユージーンに攻撃を打ち出した。

ユージーンのゲージがどんどん削れていく。

 

「こっちも行くぞ!暗黒点飛ばすぜ!!!!!」

エリウは叫ぶと、一瞬でモーティマーに近寄ると、ストレアの大剣ではなく拳で連続パンチをかました。

怒涛の勢いの連続パンチにモーティマーは為すすべもなく、ただゲージを削らる。

キリトが突きでユージーンを吹き飛ばすと、エリウはそこ目掛けて、モーティマーを投げ飛ばした。

 

空中でユージーンとモーティマーがぶつかり合う。

 

そこにキリトとエリウが両方から同時に渾身の斬撃を加えた。

 

直後、巨大なエンドフレイムを巻き上げ、二人のサラマンダーが燃え崩れた。

 

誰一人として身動きしない中、エリウとキリトは拳を突き合わせた。

 

完全勝利だ。

 

 

 

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