ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~   作:榛野 春音

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悪魔と妖精

1、

 

レックスは、目を疑った。

それほどに目の前の光景は信じられないものだった。

アンノウン達の鎧が消滅したのだ。

そして、中から現れたものに戦闘中の全ての妖精が目を見開いた。

 

悪魔だ。

 

出現したのは、全身を黒い煙に巻かれた醜い化物。

辛うじて人間のシルエットを保っているものの、手が増える者や顔が狼のように変形している者もいる。

そして、全てに共通して言えるのは赤い瞳と骨組だけの漆黒の翼。

ジョニーが雄叫びをあげた。

その雄叫びは、空気を振動させ、レックスを後退させる。

「なんだこれは!?」

その言葉に異形と化したジョニーが答える。

「デモンズ・フォーム。……アンノウンだけが持つ超強化形態だ」

レックスは、その言葉に苦笑いする。

「なるほどなぁ。どうりで全員鎧でガチガチに固めてるわけだ」

すると、サイスをクルクルと回転させながら、ジョニーが言った。

「コイツはな。発動時にあらゆるステータスが極度に上昇し、HPも回復する。でも、代償として数分しか持たないんだよ。詳しい時間を教えるつもりは無いけど、まぁ時間無いのは一緒。だから、あんたらにはさっさと死んでもらうわぁ!!!!」

 

直後、

 

「ぐおっ!?」

レックスは、斬撃を受け吹き飛ばされる。

 

深いし、速い!

 

そう感じた時、目の前にジョニーのサイスが迫る。

紙一重でそれを交わし、レックスは素早く横振りを放つ。

ジョニーは、それを難なく交わすと、距離を取ること無く次の攻撃を繰り出す。

「ちぃっ!!」

レックスが苦しげな声を漏らす。

刀とサイスがぶつかり合い、激しく火花を散らす。

ジョニーの連撃にスキルを放つ間も無い。レックスは、考える。如何にして勝機を掴むかを……。

 

その時、レックスの脳裏にある姿がよぎる。

 

「っ!!」

 

次の瞬間、レックスの動きが変わった。

それはまるで、西洋の騎士が如く落ち着き、リズムをとるかのように淡々と冷静に敵の攻撃を裁く。

「……なんだ?」

突如として、焦りが消え攻撃を見切り始めたレックスにジョニーは怪訝な声を漏らす。

すると、その一瞬の隙を突きレックスが突き技を放つ。

「グゥッ!?」

ジョニーが後退し、ダメージエフェクトを押さえた。

ダメージエフェクトは、《怨血刀》の効果で広がって行く。

「どうやって見切った?」

ジョニーの言葉にレックスが冷めた表情でこたえた。

「昔、ある聖騎士がいたんだわ。そいつ別に強いには強いが、さほど攻撃は得意じゃなかったんだがよぅ、防御だけは一流でな。ちょっとソイツの真似してみただけだよ」

そう言って、レックスはニヤリと笑う。

その笑みの裏側にある聖騎士の名、ジョニーはそれに気がつくとギチリと歯軋りする。

「あんな犯罪者のことを未だ覚えているのか?」

「はぁ?お前ら言うな」

「なら、貴様はアイツを犯罪者では無いと?」

「さぁな。でも少なくとも、犯罪者であっても悪じゃぁねぇな」

レックスの答えに、ジョニーは尚も歯軋りする。

そして、

「いいだろう。その真似事がいつまで持つか試してやる。喰らいついて来い!レックスゥウウ!!!」

 

すると、その一言を聞いたレックスがハッと喜びに満ちた笑いを漏らした。

 

「喰らいつく?なめんな。逆に喰い殺してやるから、覚悟しろっ!!!!」

 

 

 

×××

 

 

 

「洒落なんねーな」

アルトラウスは目の前の悪魔を見て、そう感想を漏らす。

「周りも大変だよ!!」

「アール!よそ見しないで!!」

「ごめんエルっ!!」

巨竜に乗る、エルとアールも周囲に群がる悪魔にそんな一言を口にする。

悪魔化したPohが笑い声を上げる。

「ははははははは!!!どうだユニーカー共!!!貴様らとて、これを相手するのは難しいんじゃないかぁ?」

その言葉に三人は、暫し無言となる。

Pohは、尚も声を上げる。

「これで終わりだユニーカー!!!!!」

そう叫び、Pohが飛び出した。

すると、アルトラウスが呟いた。

「そうだな……。普通のユニーカーならな」

 

 

Pohが一瞬の躊躇いを感じた瞬間、その体が両断されていた。

そして、周囲もまた巨竜のレーザーブレスによって一蹴されている。

アルトラウスが静かに告げる。

「《記憶剣》記憶、《アブソリュート・セイバー》固有二連撃技[デスクロスブレード]」

その言葉に目を剥くと同時にPohの体がエンドフレイムに包まれる。

 

Pohは、覚えている。この技を。

忘れもしない。はじめてエリウと出会ったあのデュエル時に使われた決勝の一撃。

 

「また、お前なのか!また――」

Pohは、炎に包まれる視界の隅にアルトラウスを見た。

そして、絶叫する。

「くそがあああああああああああああ!!!!!!!!」

その声は黒い炎に巻かれて消え、Pohの魂は眼下に広がるアルンの街へと落下して行った。

それを尻目にアルトラウスは、言った。

「生憎、俺達は最強クラスのユニーク使いでな」

 

 

 

 

 

 

 

 

2、

 

 

「はぁああああ!!!!!」

エリウは全速力でガソールに向かい、剣を斬り上げる。

そして、同じくして槍を振りおろすガソールとぶつかり合った。

 

デッド・オブ・グレートセイバーとガイボルグが接触し、衝撃波が周囲を襲う。

 

右斬り、反転斬り上げ、斬り下げ、突き、と次々にエリウは攻撃を繰り出す。

対するガソールも影の化物を使い攻防自在な技を見せる。

「ふはははは!!いいぞ!これでこそ頂上決戦に相応しい!!」

ガソールが歓喜の声を上げる。

「うぅぉおおおお!!!」

エリウはガイボルグを押し切り、スキルを発動。

剣がエフェクトを帯び、唸りを上げる。

《アブソリュート・セイバー》固有突撃技[ペンタグラム・ドライブ]。

赤いエフェクトを纏う剣を突き出し、エリウは高速でガソールに突進技を繰り出した。

宙にエフェクトが残り、技の終了と共に星形となり四散する。

ガソールがその場で爆発した。

しかし、まだ終わらない。

爆煙から現れたガソールを見たエリウは、舌打ちする。

「残りゲージ数割のわりには、ずいぶんとタフだな」

すると、ガソールは首を振る。

「数割だからこそ、タフに行くものだろう?」

「そりゃそうだわなっ!」

直後、両者は再びぶつかり合う。

しかし、今度はガソールがエリウを押し切る。

 

そして、

「デモンズ・フォーム。解放!!!」

 

ガソールの鎧が吹き飛び、エリウは飛んでくる破片を斬り捨てる。

鎧の下から現れた、黒い悪魔を見たエリウは、さほど驚いた様子も無く小さくため息を付く。

「……最終形態か?」

「そうなところだ。時間制限があるんでな。早々にカタをつけるっ!!」

ガソールは、言うなり槍を天に掲げた。

すると、槍から黒いオーラが吹き出し上空に巨大な黒龍を生み出した。

「マジかよ……」

その現象に流石のエリウも苦笑いする中、ガソールはその黒龍の額に体を沈め融合する。

黒龍が砲口をあげ、大気が震える。

ガソールが笑い、黒龍がその右腕を振り抜いた。

 

激しい衝撃。

 

エリウは、一瞬で壁に叩きつけられた。

「がっ……はっ!」

エリウは、HPバーを確認する。

とりあえず、まだ大丈夫だ。

「エリウ無事!?」

ストレアの声が剣から聞こえる。

エリウは、無理に笑いを浮かべ「大丈夫」と答える。

黒龍が更なる一撃をと、拳を握る。

慌てて飛び退いた直後、壁に龍の拳がめり込んだ。

轟音が上がる。

エリウは、素早く接近しその腹部に[トライデント]を叩き込む。

しかし、効いている様子は無い。

「クソッ!アブソリュート・セイバーでも効かねーのかよ!」

「ははははは!!!残念だな暗黒点!!」

ガソールが笑い、エリウを拳で捉えた。

「ぐあぁっ!!」

壁に叩きつけられたエリウに黒龍は容赦なく二撃三撃四撃と次々に拳を叩き込んで行く。

エリウは、どんどん減少していく自らのHPバーを見る。

 

ここまでか……。

そう思うといつしか、攻撃を受ける自身から意識が遠のいて行く気がする。

 

ガソールの笑い声が遠くで聞こえた。

 

エリウは、目を閉じ呟いた。

 

「みんな……すまん」

 

 

 

 

その時だった。

『諦めるのか?』

「っ!?」

どこかで聞いたことのある声にエリウは、目を見開いた。

 

気がつけばそこは、真っ暗な世界。

声がした。

『諦めるのか?エリウくん』

「……諦めたくは、……無い。でも、無理じゃないか?」

すると、声は答える。

『あの世界では再現不能の奇跡を起こした君が言うのか?』

「っ!」

エリウは、その言葉に言葉を失った。

声は、続ける。

『私はね。君の可能性に賭けているんだ。いつか君がこの世界の常識すらねじ曲げる偉大な奇跡を起こせしてくれると。そして、その奇跡の光でこの世界の闇を照らしてくれるとね』

エリウは、かすれるような声で問う。

「……できるのか?救えるのか?俺に?」

『できるさ。君だからこそ。だから、諦めるな。こんな逆境乗り越えてこその君だろう』

 

 

すると、突然闇の世界に光が差した。

エリウは、フッと息を吐き、ゆっくりと光を見据える。

 

本当、情けねぇ。こんなことで挫けちまうとは、少年兵が聞いて呆れる。…………そうさ。俺はエリウ。世界最強の少年兵にして、バーチャル最強の剣士。

暗黒点は、こんなとこで終わらないっ!!!!

 

エリウは、静かに言った。

「わかった。……やってやるよ」

『……行きたまえ』

その言葉を最後に、世界が霞んだ。

 

 

 

そして、エリウは目を開ける。

「う゛う゛う゛ぅぅぉおおおおおお!!!!!!!」

物凄いを声を上げ、踏ん張るエリウ。

その直後、エリウの全身が白銀のエフェクトを纏い、輝きだす。

「なっ!?なんだああ!?」

ガソールが声を上げる。

 

刹那。

 

黒龍の両腕が肘の辺りを境に消し飛んだ。

 

!!?

 

ガソールが息をのむ。

目の前には、一人の白銀の妖精。

 

エリウが呟いた。

 

 

「オーバーロード・ドライブ。……この力でお前を倒すっ!!!!」

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 




そろそろALO篇が終わります。次GGO篇にするかマザーズ・ロザリオ先にやるか迷ってますw
これからもよろしくお願いします!
挿絵遅くなってすみません!!
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