ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~   作:榛野 春音

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今回がALO篇ラストバトルです!


剣界で得た力

1、

 

 アナザーは困惑した。

 

 何故効かない。

 

 いや、正確にはダメージは与えられている筈だ。なのに何故、こうも不安が募る。

 悪魔と化したことで圧倒的な力を得た。間違いなくこちらが優勢な筈、なのに…………どうして、こいつら三人からは絶望感を感じない!?

「ふざけるなっ!!!!」

 アナザー叫び、サイスを目の前の女シルフに振り下ろした。

 

 しかし、

 

 女を両断すると思われたアナザーのサイスは、クロスに構えた女の腕に防がれる。

 見れば、その腕には水色のエフェクトが纏われている。

「バカなっ!?」

 アナザーの驚きをよそに女が腕に力を込めた。

「はぁあああっ!!!!」

 ルリカは、気合いの籠もる声を上げ受け止めたサイスを押し返す。

 後退したアナザーの背後から、ルクシーナがソードスキルでその背を斬りつけた。

 《インビジブル・セイバー》固有二連撃技[クルーヴァイス]。

 見えない剣がアナザーを襲う。

「ぐあぁっ!」

 吹き飛ばされたアナザー。

 その先には、ソルモがいた。

 ソルモが低い声で言った。

「君達の好きにはさせない。ソードアートオンラインは、もう終わった。これ以上仲間達を苦しませはしない。その為に僕は、この力を得たんだ!!」

「っ!」

 直後、アナザーをソルモがスキルを放つ。

 《削魂守》固有特殊技[ガウディー・ロー]。

 黄金の光がソルモの剣から放たれ、世界が光に包まれた。

 

 

×××

 

 

「何故だ!」

 ジョニーは、怒鳴った。

「何故だ!何故だ!何故だ!何故、一撃も通らない!何故倒せない!我々の方が優勢だろう!我々の方が能力補正が高いだろう!なのに何故、こうも太刀筋が読まれるのだ!!!!」

 その時、ジョニーのサイスがレックスに弾かれ、その刃にひびが入る。

 慌てて距離を取ったジョニーにレックスは言った。

「違うんだよ。賭ける思いが」

「何?」

 レックスは、ふぅと息をつくと静かに続けた。

「別に廃人とかオタクってことじゃぁねぇんだ。ただ、あの二年間で多くのことを得て強く生きた人間と、二年間で如何に沢山の殺しを働いたかの違いだ。……殺しだけに二年を生きたお前らと俺達では、このヴァーチャルという世界に賭ける思いが違う。それがこの力の差だ!!」

 レックスの一言にジョニーは言葉を失う。己の内でどこか納得してしまったことに更なる苛立ちが募る。

「知ったような口をっっ――」

 

 刹那

 

 世界が光に包まれた。

 光が止み、ジョニーは顔を上げた。

 そして、異変に気がついた。

 

 体が動かないっ

 

 レックスがニヤリと笑う。

「ソルモのスキルだな……《削魂守》固有特殊技[ガウディー・ロー]。発動時に目視範囲内全域の敵の行動の自由を一定時間奪い、そのステータス値を大幅に減少させる。…………とんでも無いスキルだよなぁ?」

 そう言って、レックスは険しい顔になり刀を振り上げた。

「でも、殺人プレーヤーのお前らにはお誂え向きのスキルだっ!」

 

 激しい恐怖。

 

 ジョニーは、悪寒に怯えた。

「やっ…………やめろ………………やめろぉおおお!!!!!!」

 ジョニーの叫びを無視し、レックスはソードスキルを放った。

 

 《怨血刀》独自型固有単発技[封魔紅蓮ノ太刀]。

 

 紅に染まった刀身が煌めき、天高く伸びる。それは、まるで天を貫く火柱の如く激しく唸る。

 レックスは、一切の躊躇無くその一閃をジョニーに振り下ろした。

 

 

×××

 

 

「今だあああああ!!!!!!」

 ソルモの一声にアンノウンと対峙する全てのプレーヤーが動く。

 ルリカが素早く詠唱に入ると同時にルクシーナがスキルモーションに入った。

 そして、二人の魔法と技が同時にアナザーをとらえる。

 

 風属性超魔法[ゼルフルース・アドルフレイサー]。

 《インビジブル・セイバー》固有単発奥義技[ファイブラスト・レイ]。

 

「「いっけぇええ!!!!!」」

 ルリカの構えた両手から、凄まじい勢いで巨大なトルネードが放たれ、ルクシーナの剣からは虹色の閃光が飛び出す。

 2つの力は、左右からアナザーを飲み込むと激しい轟音を立てて爆発した。

「があああああああ!!」

 アナザーの叫びが轟音に紛れ、だんだんと小さくなりやがて消える。

 爆煙の中から、炎に包まれたアナザーの魂がアルンの街へと落ちて行き、やがて見えなくなった。

 

 周囲でも、次々にアンノウン達が敗北し眼下に広がるアルンの街へと消えて行く。

 

 

 

 全ての戦いが終息したのを確認し、ルリカはホッと胸をなで下ろした。

「やっと終わったぁ」

 深い息を吐くルリカにソルモが近づいて来る。

「お疲れ様」

「ソルモこそ。お疲れ様」

 すると、向こうからレックス、アルトラウスがフラフラと飛んで来る。

 どちらも敵を片付けたようだ。

 巨竜に乗ったエルとアールも無事な様子でこちらに手を振っている。

 そこでルリカは、先ほど共闘したルクシーナを探す。

 しかし、どこを見渡しても彼女の姿は見当たらない。

「……なんか事情があるのかもね」

 何を察したような表情でそう呟いたルリカは、今度は世界樹の根元を見る。

 そして、願うように言った。

 

 

「信じてるよ。……エリウ」

 

 

 

 

 

 

 

2、

 

 

 黒龍の再生した腕が迫る。

 エリウは飛び出し、白銀に輝く剣でそれを両断する。

 黒龍が吼え、反対の腕を振るがエリウはそれを回避し旋回、一気に龍の懐に潜り込み腹部を突き抜けた。

 すぐさま傷の修復される龍にエリウは、何度も何度も攻撃を加える。

 それはまるで、夜空を駆ける流星の如く。

 最初は余裕綽々のガソールも見る見るうちに削られて行く自身のHPに必死な形相となる。

 黒龍が吼え、その背から黒い槍が無数に射出された。

 それは追尾ミサイルのように一斉にエリウに向かって飛んで行く。

 エリウは宙を縫うように飛び、槍を交わし、壊し、次々に捌き反撃を狙う。

 突き出したエリウの剣から、白銀の閃光が飛びガソール本体の右腕を撃ち抜いた。

「おのれっ!」

 ガソールが怒鳴ると同時に黒龍が黒炎のブレスを吐く。

 炎にのまれるエリウだが、剣を一振りすると白銀の衝撃波が炎を押し返し、龍を直撃した。

 

 ガァアアアアア!!

 

 黒龍の砲口が響く。

 

 正直な話、これ以上オーバーロード・ドライブを持続させるのは厳しい。

 本来オーバーロード・ドライブは、SAOには存在しない。エリウが生み出したオリジナルのスキルだ。エリウの思い描く[最強の力]のイメージが《アブソリュート・セイバー》という媒介を介して己のアバターへと反映したもの。つまり本来有り得ない力なのだ。故に使用し続けるには、それなりのイメージを創り維持する精神力がいる。

 長時間の闘いで体力も集中力も消費したエリウにとって、限界は近い。

 

「でも、なら尚更最強をぶち込むのが俺だろうが!!!」

 

 そう叫んだエリウは、黒龍に接近し立て続けにソードスキルを放つ。

[トライデント]、[デスクロスブレード]、[ヴァンヴォルグ]、[ペンタグラム・ドライブ]、[アージェンティア・ストリーム]、[リジェルデート・ヘイン]、[レイボルティア・アルカイヴ]と次々に繰り出すスキルの嵐に黒龍が遂に形を保てなくなり始め、各所から黒煙を吹き出し始めた。

 

「終わりだガソール!!!」

 

 エリウは、今が好機とばかりにガソールに向けて突っ込んで行く。

 しかし、ガソールは迫るエリウに手をかざし叫んだ。

 

「ガイボルグ!呑み込め!!!」

 

 直後、黒龍が宙に溶け周囲に蔓延する黒煙がガソールの正面に収束し、エリウに向かって触手のような者を飛ばした。

 エリウは、とっさに危険を感じ避けるが右腕で右足を触手に絡めとられてしまう。

「くそっ!」

 エリウはそのままグイグイと闇へと引きずり込まれて行く。

 ガソールが今度こそ勝ったとばかりに笑い出す。

「ははははは!!後少しだったのに残念だったなぁ!!もう、無駄だ!諦めろぉおおお!!!!!!」

 

 その言葉にエリウは、歯噛みする。

 そして、左手に握る剣に力を込めた。

 その瞬間ストレアは、何かを予感する。

「エリウ何を――」

 直後、エリウが叫んだ。

 

 

「そんなら、こんなものっ!こうすればっいいだろぉおお!!!!!!」

 

 

 刹那

 

 エリウが自らの右腕と右足を切断し、触手の呪縛から逃れた。

「そんなっ!?」

 驚愕するガソールにエリウは、怒涛の勢いで次から次へと斬撃を加える。

「うおおおおお!!!!!」

「ぐあああああ!!!!」

 ガソールが吹き飛び、エリウが追撃する。

 ガソールは素早く、黒煙の壁を作り出そうとするが、間に合わずエリウの突進を受け壁に激突する。

 

 顔を上げたガソールの前にエリウが迫る。

 ガソールは、苦し紛れに元にもどしたガイボルグを突き出した。

 エリウも全力を込めて剣を突き出す。

 

 両者が接触した瞬間、大爆発が起こりアンダーバランスが爆煙に包まれた。

 

 暫しの間があり、ゆっくりと煙が晴れる。

 

 

 エリウの剣は、深々とガソールの胸を貫いていた。対するガソールの槍は、エリウの脇下を掠め空を刺している。

 

 エリウが呟いた。

「あばよ」

 

 すると、ガソールの体がエンドフレイムに包まれていく。

 ガソールは悔しげに呟く。

 

「これで終わると思うなよ?いつかあの人が必ず貴様を――――」

 

 それを最後にガソールは炎に呑まれ、アンダーバランスの地下へ落下し消えて行った。

 

 

 ようやく終わった。

 

 

 残されたエリウは、剣を払うと背に戻す。

 すると、すぐさま剣が姿を変えストレアになる。

 ストレアは、痛々しい姿のエリウを抱きしめ、涙を流す。

「お疲れ様…………エリウ」

「あぁ。流石に疲れたよ」

 そう言って、エリウはストレアと共にザ・スティールのある台座に着地する。

 

 ザ・スティールは、キラキラと青白く輝いている球体で、サイズはソフトボールくらいに見える。

 

 どうしたものかと、迷うエリウに今度は直ぐ近くから声がした。

 

『これは、壊してほしい』

 

 顔を上げると宙に一人の白衣の男が立っていた。

「茅場……晶彦」

 エリウの言葉に茅場はフッと笑みを漏らした。

『久しいな。エリウ君。ストレア。もっとも私にとっては――あの日のこともつい昨日のようだが』

 先ほど聞こえたのとは、また少し違う調子の口調にエリウは問う。

「――生きてた……ってわけじゃ、なさそうだな」

 薄い笑いを浮かべるエリウに茅場は答える。

『そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。私は――茅場晶彦とヒースクリフという意識のエコー、残像だ』

「……脳みそスキャンでもしたのか?…………まっ別にどうでもいいけどよ。その――さっきは助かった。ありがとう」

『本当ならもっと早く――いや、むしろ見ているだけだったかも知れない。まぁ何にせよ礼は不要だ』

 そう言って、ニヤリと笑う茅場にエリウはため息をついた。

「……なんで?とは、聞かない。だって、俺たちはそういう間柄じゃぁねぇもんな」

『そういうことさ。なら、話は早い。先ほどの件、君達に頼んでもいいかな?』

 茅場はエリウを見て、ストレアを見る。

 エリウは言った。

「構わねぇけど、なんでだ?理由なんざ今回の事件見てりゃわかるが、俺はお前の理由が知りたい」

 すると、茅場はフッフッと笑いを漏らした。

『……そうだね。何故か――。表向きは、今回のようなことを防ぐ為であって、本当は――――私のケジメなのかも知れないな』

 そう言って、言葉を切る茅場は、それ以上は何も言わずただザ・スティールを見つめていた。

 そんな様子にやれやれとエリウは、アイテムストレージから一本のナイフを取り出す。

 そして、ストレアに支えられながら、ザ・スティールにその刃を突き立てた。

 

 パリィン!

 

 ガラス玉の割れるような音が響き、ザ・スティールが砕け消滅した。

 それを見届けた茅場は少し悲しげな表情になるも、いつものような無表情に戻る。

『――では、私は行くよ』

 

「待って!」

 

 声を上げたのは、ストレアだった。

『なんだい?ストレア』

 茅場が不思議そうに聞く中、ストレアは涙を溜めた瞳を真っ直ぐに茅場に向ける。

 

「私は……あなたの望んだ働きができたか分からない。……でも、あなたが私に込めた以上の進化をしたと思ってる。エリウに会えて皆に会えて、そしてあなたに創られて、この世界に生まれて本当に良かったと思ってる。…………だからっ!――――ありがとう」

 

 その言葉に茅場の表情が驚きに変わる。

 

『…………本当、よくそこまで進化したな。君はもう立派に心を宿しているんだな。私は、嬉しいよ。…………これからいくつもの試練が君とエリウ君、その仲間達の前に立ちふさがるだろう。でも、君なら大丈夫だな。エリウをその仲間達を――しっかり支えてやってくれ』

 そう言うと、茅場はエリウとストレアに背を向けて歩き出した。

 その背中にストレアは涙ながらに強く返事をする。

「はい」

 すると、茅場の姿が遠ざかるにつれかすみ始めた。

『――また会おう。エリウ君、ストレア』

 

 そして、茅場は世界に消えた。

 

 エリウは、アンダーバランスの天を見上げる。

 

 

「じゃあな。茅場晶彦」

 

 

 その声は、幻想の世界に消えて行く。

 

 

 

 エリウは静かに微笑み、この虚ろで美しい世界に小さく何かを呟くのだった。

 

 

 

 




次回、ALO篇最終回です!!!

がんばってまとめるので、感想などお待ちしてます!!

そして、次はGGO篇! 気合!入れてっ!行きますっ!!

これからも、よろしくおねがいします!
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