ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~ 作:榛野 春音
次回は、その分いい作品にしたいとおもうので応援よろしくです!!!
それでは、四話をお楽しみください。
1
裏ダンジョンでは、裏だけにしばしばイベントでしか手に入らないようなレアアイテムが手に入る。
裏ダンジョンでのレベル上げを好むエリウに取ってそれは、しごく当たり前の出来事となっていた。
そして、今
アインクラッド第二十一層裏ダンジョンにて、エリウは妙なレアアイテムをドロップしていた。
[還魂の聖晶石]
それがアイテムの名称だった。
説明を見たエリウは無造作にそのアイテムのポケットに突っ込んだ。
時刻は、午前二時。
あと数時間もすれば、キリトがレベル上げの為にどこかのフィールドに出向くだろう。
ここ最近、キリトを密かにサポートすることはごく当たり前、そしてごく普通の日常と化してした。
しかし、毎度毎度、キリトにバレないよう尾行する自分は、もはやストーカーに値するのでは?とか言う思いから今日は、止めておこうかと思ったりもする。
ひとまず、帰ろうと踵を返した。
その時、
不意にどこからか視線を感じる。
「っ!」
慌てて周囲を見回す。が、気配はいつの間にか消えていた。
なんだ?
もう一度辺りを見回すがとくにこれといった気配もない。
気のせいか・・・・。
エリウは、すぅっと息を吸う。
疲れているのかもしれないな。
SAOにおいて、肉体的披露は存在しない。しかし、それでも疲労感を感じるということは、リアル側でナーブギアに覆われた頭部、すなわち脳の疲労を意味する。
《アブソリュート・セイバー》を持つエリウに取って疲労したところでさして戦闘に支障はでない。しかし、疲労による思考の鈍りは隠蔽スキル推奨の隠者系プレーヤーを目指す身としてはミスを犯しかねない危険な状態にあると言える。
「やっぱり2日くらい休もう。」
そして、それから2日間、エリウは死んだように睡眠を取り続けた。
キリトがギルド[月夜の黒猫団]に入ったのも、ちょうどその頃だった。
2
「キリ坊は、どうやら自分の素性を隠してギルド入りしたようだヨ。」
情報屋アルゴの話を聞きながら、エリウは欠伸をする。
「へぇ。で、他には?」
エリウの興味なさげな言葉にアルゴが少しムッとしたのが分かる。しかし、金を受けている以上その分は語る義務のある情報屋は、感情を抑えて言葉を続けた。
「黒猫団は、明日ギルドハウスを購入するらしいヨ。」
「他には?」
エリウは、それも興味ないと言ったように次の話を急かす。
「これ以上はないし、これ以上話させるなら、追加のお駄賃頂くヨ。」
さすがにムッとした感情を完全には抑え切れないのか、アルゴの声が微かに震えている。顔を見れば、おひげの書かれた頬が微かに引きつっている。
「あ~。わかった。今日はもういいや。ありがとう。また頼む。」
エリウが言った途端、アルゴは逃げるようにして部屋から出て行った。
宿の一室に残されたエリウは、ため息をつく。
何故、エリウがアルゴにあのような態度を取るのかにはいくつか理由がある。
そもそもアルゴとの出会いは、キリトが情報を買っているのを目撃した時だった。その時、キリトとアルゴの会話を聞いていくつか気づいたのだ。アルゴと話せば、常に買った分かそれ以上のネタを吸い取られること。そして、アルゴは売れるなら自分のステータスすらも売るという強欲さがあることに。
故にエリウは、アルゴには名前を教えていない。ということは必然的にフレンド登録もしていない。
極力自分の情報を与えないのだ。そして、会話する上でも簡易な返答のみで済ませることを意識する。情報を買うときは、対象に対するあらゆる情報を買い占め自分が何に興味を示しているかを明確にしないのだ。気のない返事も、例え興味を持った内容があってもそれを悟られないためだ。
アルゴとは、仲良くしたいのだが彼女の職が故にこうなってしまう。 正直申し訳ない。
そんなことを考えながら、エリウは立ち上がる。
今日のアルゴの話を聞いた限りでは、黒猫団は相当にお気楽な連中揃いと言うことが分かる。ならば、明日ギルドハウスを買いに行くという情報は案外にも鍵になる。間違いなくギルドハウスをリーダーが買いに行っている間にお調子者が何か仕出かす。
エリウは、そう踏んでいた。
ならば、明日やることは決まった。
☓☓☓
予想どうりというのかなんというのか・・・・・・。
エリウは、大きくため息をつく。
黒猫団は、リーダーがギルドハウスを買いに出掛けた後、前線より三層したの迷宮区へと出掛けた。
キリトが同行したのでエリウも密かにその後を追う。
迷宮区の入口でエリウは、隠蔽スキルから派生する最上級スキル[ファントム]を発動させた。直後、エリウの周囲に燃えるような黒煙が渦巻きエリウを包み込む。黒煙に包まれたエリウの体は陽炎のように歪み見えなくなる。
[ファントム]は、姿が見えなくなる視覚的効果以外にもモンスターを寄せ付けない特殊効果がエンチャントされている。
迷宮区内での尾行にこのスキルはモンスターを寄せ付けないことから、最適であると言える。
準備を整えたエリウは、黒猫団の後に続く。
キリトの加入で黒猫団は、聞いていたよりも幾分もマシなギルドになっていた。
聞いた当初のイメージでは、初心者の集まりで脳天気で楽観主義でオマケにレイドバランスの悪いクズギルドだと思っていた。
実際そうなのだろうが、キリト一人入ったことで彼らの実力はそれなりのものとなっていた。
これ全てがキリト一人の力だと言うのだから、やはりキリトは凄いプレーヤーだと思う。
彼らの目的はおそらく新しい家具やらなんやらを揃えるための金稼ぎだろう。
ここまでは、えらく順調に進みエリウ自身、帰ろうかとさえ思った。
しかし、
狩りが始まってから一時間。
事件は起きた。
彼らの中でシーフ役のメンバーが迷宮内にて隠し部屋を発見する。
どっからどうみてもトラップだ。
しかし、彼らは初心者ということもあって気づいていない様子だった。キリトは気づいているようだったが止めるタイミングを逃したようだ。
彼らは、その部屋へと入っていく。
「おいおい!マジか!?」
エリウも慌てて後を追ったが、
トラップ起動音が部屋から響き渡り扉が閉じていく。
あの馬鹿ギルドが!!!
全力で駆けるが間に合わない。
「うおおおおお!!!!」
エリウは、閉まる扉の隙間に無理矢理に愛剣を挟み込む。
ガキン!!
金属のぶつかり合う音があたりに響く。
「くそぉっ!!!!」
エリウが扉を叩き叫ぶ。
僅かな隙間の向こうでキリト達がモンスターに囲まれているのが見えた。
や・・・・やめろ。
エリウの脳内が真っ白になる。
そして、部屋からは黒猫団の悲鳴が聞こえる。
悔しさについ歯ぎしりする。
エリウは、部屋の中で響く悲鳴をただ聞き入ることしかできなかった。