ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~   作:榛野 春音

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今回は、前半に時間をさかのぼってある人物の話。後半には時間を戻してエリウ達の話。

どちらも意外な展開を見せます!

それでは、最新話をお楽しみください


紅蓮の願い

 

 

時を遡ること、SAO開始初日。

ソードアート・オンラインが開始された。そろそろプレーヤー達に死のルールが告げられる時刻だろう。

 

茅場晶彦は、とある森の奥で小さな小屋にこもっていた。

日の射す窓辺で茅場は、紅茶を啜っていた。

目の前には、無数の映像の流れるディスプレイがある。いづれの映像も現在SAOで起こっていることを映し出している。

その時、部屋に電子的な音声が響く。

『茅場様。ヒースクリフの作成が完了致しました。』

茅場は、机においてあるタッチスクリーン型の電子端末に目をやる。そこには、紫色を貴重としたアーマーを纏うセミロングヘアーの少女がいた。

「ストレアか。作業ご苦労だった。」

茅場は、そう言って席を立つ。

『茅場様。・・・・聞きたいことがあるのですが・・・・。よろしいですか?』

すると、茅場は動きを止める。

「AIが疑問を持つとはな。・・・・面白い。言ってみろ。」

それを聞いて、ストレアは話し始めた。

『何故、アブソリュート・セイバーだけが他のユニークスキルを卓越し、最強の力として設計されたのですか?』

「ならば、逆に問おう。何を持ってアブソリュート・セイバーを最強と定義する?」

茅場の即答にストレアは、一瞬考える。

『何と言われても・・・・それは、もちろんステータスのカンストや圧倒的攻撃に特殊なスキル。どれを取っても異例の力です。こんなゲームバランスの崩壊に繋がる力を最強と言わずして、なんと言うのです?』

ストレアの言葉には、多少の苛立ちが含まれていた。

すると、茅場はため息をつく。

「力の強さだけが、最強を意味する訳ではないのだよ。ましてや、それがソードアート・オンラインの中でなら尚更だ。不安定の精神状態の中、どれほどの人間が力の本領を発揮出来ると思う?もちろん大した力はふるえない。それに、ユニークスキルは、その威力もさることながら使い手の腕も高くなければ本領発揮には至らない。たとえ強力なユニークスキルが存在しても、それを使いこなすプレーヤーに引き当てられる確率は低い。これらの点から、SAO内に圧倒的なユニークスキルが存在すること自体はさして問題にならないことが分かる。」

茅場は、そう言ってその場を去ろうとする。しかし、ストレアは言った。

『茅場様。話を何気にそらさないで下さい。私は、アブソリュート・セイバーの存在を否定してるのではありません。私はアブソリュート・セイバーを存在させた理由を聞いているのです。』

すると、茅場はやれやれと首を振った。

「全く優秀なAIだ。しかし、このことは君が知るに値するものではない。・・・・仕事に戻りたまえ。」

『・・・・はい。』

ストレアは、しぶしぶ画面の奥に引っ込んだ。

静かになった部屋で、茅場は先ほどのストレアの問いを改めて考えた。

 

確かにアブソリュート・セイバーは、出現時期、出現条件的にも、その力自体も、他のユニークスキルを卓越している。一般的にこんなスキルがあればゲームバランスの崩壊は愚か、誰もが戦意を喪失する。

しかし、それはあくまで一般的なMMORPGでの話だ。

ソードアート・オンラインは、特殊なゲームなのだ。このゲームはもう一つの現実だ。

負ければ死ぬし、殺せば相手は死ぬ。死と隣り合わせることでもう一つのリアルを再現したのだ。そしてそれは力でも同じこと。人間には、努力しても届かないものがある。努力した分だけ確実に得られるのは、経験値だ。そんな世界だからこそ、誰にも手の届かない圧倒的な存在をおくことで現実を再現したのだ。リアルでは、孤高に立つものは届かない者達から敬意を表される。しかし、一方で嫉妬や恨みを買うこともある。

力が身を助ける世界でアブソリュート・セイバーを手にする者は孤高に立つ。それはすなわち、敬意や恨み、嫉妬を受けることで持つ者と持たぬ者のリアルを生み出すことを意味する。しかし、そこには多大なる苦しみを背負う使い手が存在する。だから、ストレアをアブソリュート・セイバーに組み込んだ。使い手の苦しみをストレアが少しでも和らげてくれることを願って。

結論。アブソリュート・セイバーは、リアルを生み出す為に作られたのだ。

もし、これでゲームバランスが崩壊したならそれでもかまわない。それもまた、一つの現実なのだから。

 

 

 

そして、茅場はそっとベットに横たわる。

今後の事については、ストレアにメッセージを飛ばして置いた。自分自身の肉体も、数日後に現れるだろう助手だった神代くんがどうにかしてくれるはずだ。

 

もう思い残すことはない。

 

あと私に残された使命は、このゲームを最後まで見届けることだ。

 

茅場晶彦はナーヴギアを被り目を閉じる。

 

そして、そっと呟いた。

「リンクスタート。」

 

 

 

 

 

 

 

 

七十二層裏ダンジョン。

 

「いよぅ!エリウじゃん!!」

 

この調子のいい声は・・・・

 

エリウは、不機嫌丸出しの表情で振り返る。

そこには、かのユニークスキル《記憶剣》使いのアルトラウスがいた。以前は無特徴の青年だったが、今は赤髪を逆立ていてかなり特徴のあるいでだちとなっていた。

「まだ生きてたのか。つか、さっさと死ねよ。」

エリウの言葉にアルトラウスはヘラヘラ笑う。

「ったくよ。連れねぇな。」

そう言いながら、アルトラウスはウィンドウを弄る。すぐさまエリウの目の前にデュエル申請[半減決着モード]が表示される。

アルトラウスは、剣抜き笑って言った。

「俺ら話すより、斬り合う方が語りあえる仲じゃねぇのか?」

「まっ そうかもな。」

そう返して、エリウは申請を受諾。

 

確かにコイツとは、斬り合う方が語りあえる。けっして嫌いな訳ではないが、話すとイマイチそりが合わない。クリスマスイベント以降は、時々こうして裏ダンジョンで顔を合わせるソロ仲間となった。

 

「ところでエリウ。後ろのお嬢さんはどなた?」

カウントダウンを見るアルトラウスが視線がストレアに向けられる。

 

そうか。こいつストレアに会うのは初めてか。丁度いい、完成したアブソリュート・セイバー見せてやる!!!

 

「あぁ。こいつはストレア。俺の愛剣だ。」

そう言ってエリウは、ストレアに目配せする。

すると、すぐにストレアは[デッド・オブ・グレートセイバー]に変身する。

アルトラウスは、目を見開いた。

「マジかよ。本当にチートだな。アブソリュート・セイバーってのはよ!!!」

「そりゃ、どうも!!!」

 

デュエル開始。

 

エリウは、高速で飛び出してすれ違い様にまず一撃。

「ちぃっ!」

体制を崩したアルトラウスに向かって、スキルモーションを取る。

《アブソリュート・セイバー》固有三連撃技[トライデント]。

しかし、トライデントを打ち出す瞬間、アルトラウスが体制の崩れた状態からスキルを放った。

《記憶剣》の模倣効果で《アブソリュート・セイバー》固有単発技[ヴァルヴォング]が発動する。

スキル同士がぶつかり合い、衝撃波と共に威力の中和が起こる。

「相変わらずの真似っこ野郎だな!」

「離れ技持ってんのがお前くらいだから、仕方ねーんだよ!!!」

そう言うと次は、アルトラウスが突っ込んでくる。

エリウは、剣の振り上げてアルトラウスをはじき上げた。

しかし、それをいいことにアルトラウスは空中でスキルモーションを取る。

あの動きは、《記憶剣》固有無数連撃技[メモリーブラスト]だ。

アルトラウスが五人に分身し、それぞれが別々のスキルを発動する。

両手斧固有回転単発技[ワールウインド]。

片手直剣固有二連撃技[バーチカル・アーク]。

片手曲刀固有旋回三連撃技[トレブル・サイズ]。

細剣固有八連撃技[スター・スプラッシュ]。

細剣固有突進単発技[レイジスパイク]。

「前みたい行くかよ!!!」

五つのスキルが向かう中心でエリウは叫び、スキルモーションを取る。

《アブソリュート・セイバー》固有十連撃技[デュアライズ・ペンタグラム]。

[ペンタグラムドライブ]を威力上げし、更に一周分追加した高位スキルだ。

五種のスキルを一周目でそれぞれ中和し、二周目で五人の分身を次々攻撃して本体をあぶり出した。

「マッジかよ!!!!!!!!」

アルトラウスが吹き飛びながら、呻く。

エリウは間髪いれず、飛び上がって叫ぶ。

「トドメだ!!!」

エリウの一撃がアルトラウスを捉える瞬間。

 

ガキン!

 

金属音が辺りに響き、エリウの一撃が止められる。

しかし、その一撃を止めたのはアルトラウスではなかった。

「んっ!?」

「なっ!?」

エリウとアルトラウスが驚きの声を上げる。

 

エリウの剣の止めたのは、一人の刀使いだった。しかも刀手で刀を握っている。銀髪を逆立てサイドに剃り込みを入れている。額当てが目ギリギリの位置につけられていて目の表情が読みづらい。しかし、口元を見るに笑っているようだ。

刀使いの男は、笑い声を上げた。

 

「ギャヒャヒャ!!!ユニーク使いによるユニーク使い狩りの始まりだぜぇ!!!!!!!」

 

ユニークスキル使いだと?

 

男の声が裏ダンジョン内に不気味に響く。

闇の時間が始まった。

 

 

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