手を鳴らして己に注目を集めたアインズ・ウール・ゴウンの副官、エルゼル・セフィロトスが作ったNPCの一人ガブリエルはモモンガの正面に移動すると慣れた仕草でその場に跪いた。
「至高なる御方が困惑し、異常事態と見受けられるなかで不謹慎だと理解しておりますが、まずはたっち・みー様。ウルベルト・アレイン・オードル様。タブラ・スマラグディナ様。武人建御雷様。弐式炎雷様。ペロロンチーノ様。ぶくぶく茶釜様。ぷにっと萌え様。ヘロヘロ様。やまいこ様。ナザリックへのご帰還私たち
ガブリエルの言葉にアルベドは、はっとした顔をすると急いでモモンガ達から一歩下がり、その場に跪いて創造主の帰還に賛辞を述べる。
「あ、あぁ……ありがとね」
何が何だかわからずモモンガたちが呆然としている中、速めに我に返ったペロロンチーノが返事をすると跪いていたガブリエルが創造主に与えられた任を実行しようと立ち上がる。
「我が至高の御方を纏め、アインズ・ウール・ゴウンの長であるモモンガ様」
「な、なんだ……?」
「現在起こっている異常事態についてなのですが、我が創造主であるエルゼル様がこの事態を予見されており、対策の指示を貰っておりますので、私が取り仕切らせてもらってもよろしいでしょうか?」
至高の御方や創造主などの聞いていて恥ずかしい言葉やユグドラシルが終了せず、NPCが自我を持って話し出すという緊急事態で何の行動が正解なのか頭を抱える事態で我らが副官エルゼルから指示を貰っている。しかもこの異常事態を予見して己のNPCに指示を与えている。
エルゼルがどうやってこの事態を予見したのか、NPCへの指示の出し方など疑問は沢山あるが、ひとまず彼とそのNPCの指示に従おうとモモンガがギルメンたちを見ると彼らもエルゼルを信頼しているからか頷き合っている。
「うむ、いいだろう。ではガブリエル、一時お前に指揮権を預ける。他の者達もガブリエルの指示に従うように」
「ありがとうございます」
深くモモンガたちに頭を下げたガブリエルは、まずはアルベドに指示を出した。
「アルベド様。ナザリックの警戒レベルを最大に引き上げてください。その後、ガルガンティアとヴィクティムを除いた階層守護者たちと宝物庫に居るパンドラズ・アクターを一時間後に第六階層の闘技場まで連れてきてください」
「(え!?)」
「わかったわ」
「次にユリ・アルファ様とソリュシャン・イプシロン様は、モモンガ様たちにお茶とお菓子の準備をして円卓に持って来てください。セバス様は第四階層のミカエルとラファエル、ウリエルを連れて周辺の調査及び探索に当たってください。範囲は一キロ、知的生命体が居れば交渉して連れてきてください。その際に要望があれば可能な限り聞き入れてください」
「わかりました」
「残りのプレアデスは第九階層に上がり警戒にあたってください」
『わかりました』
次々とエルゼルから与えられた指示を出していくガブリエルに、ギルメンの中でも頭の良い人物であるたっちやウルベルト、タブラにぷにっと萌えは副官の指示について議論を交わす。
「どう思います? エルゼルさんの指示」
「今のところ及第点じゃないですか? ナザリックの警戒レベルの引き上げに外の調査、俺だったら……」
「張り合わないでくださいよウルベルトさん。エルゼルさんと仲悪かったんですか?」
「そうじゃないが……でも、階層守護者の集合とお茶の準備に何の意味があるんだ?」
「それは今わかりませんけど、何か意味があるんじゃないんですかね。それにしても私が作ったNPCが人間と遜色無しに動く、あと私が書いた設定はしっかり反映されてるんですかね……」
頭脳班の三人が議論している中でペロロンチーノ、ヘロヘロ、弐式炎雷はモモンガと武人建御雷を巻き込んで別の方向性の話をしていた。
「見てください! 弐式さん! ソリュシャンがしっかりと動いて……!」
「それを言ったら俺のナーベラルだって……! でも俺の性癖を詰め込んだ美女が動くって何か恥ずかしいですね……」
「いやそれよりも、あのガブリエルが動くたびに揺れるおっぱいがヤバすぎでしょ! 何すかあの凶悪な果実は! モモンガさんや建御雷さんもそう思いますよね!」
「い、いや……それはちょっと、何て言うか」
「……ノーコメントだ」
「えぇ、ノリ悪いなぁ~。何だったらあのおっぱい揉んでみてR18行為に抵触するか試しましょうよ。本当にユグドラシル2なのかどうか試す「フン!」ぐぇ!!」
『ペロロンチーノさぁぁぁん!?』
「それはダメだよペロロンチーノさん。やったらエルゼルさんぶちキレ案件だよ。僕知ーらない」
自分の作ったNPCならともかく副官のNPCにセクハラを働こうとするペロロンチーノに姉の折檻が入り、吹き飛ぶ。男性陣は呆れ、女性陣は怒りを露わにエルゼルが帰還したらチクろうと決意する。
後日その事を告げられたエルゼルは案の定ぶちキレて魔法の的にされた後に
「それでは皆様……あの、ペロロンチーノ様は一体どうされたのですか?」
「あ、いや……何でもない。お前たちの働きに感動してな、気にしないでくれ」
「わ、わかりました。それでは皆様円卓へ、ユリ・アルファ様たちの淹れたお茶を飲みながらエルゼル様預かっている手紙を読ませていただきます」
ペロロンチーノの気絶にあまり納得のいっていないガブリエルだが、ギルド長のモモンガが言うのであればそうなのだろうと無理矢理納得させ、円卓へと至高の御方を連れて行く。
続々と玉座を出て行くギルメン達だが、気絶して中々起きないペロロンチーノを置いていく薄情な彼らの代わりにたっち・みーが連れて行くはめになったのはご愛敬だ。
円卓に戻り、各々の席についたモモンガたちアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバー。その前には、ユリたちが淹れた紅茶と料理長たちが至高の御方に食べてもらうために腕によりをかけて作った沢山のお菓子が置かれている。
ガブリエルは席に着いているモモンガに近づき、創造主から預かっていたアイテムを渡す。
「モモンガ様、こちらを」
「これは……人化の腕輪か?」
「はい。エルゼル様がモモンガ様はアンデッド故に飲食ができないだろうから渡しておいてくれと預かっておりました」
人化の腕輪。異形種を人間にするアイテムでユグドラシルでは人間種の街に赴き襲われないために使われているが、デメリットとしてレベルや能力が低くなる。
アインズ・ウール・ゴウンのギルメンたちは基本人間種の世界にはいかないので誰も持ってなかったりする。
「皆様の分も預かってますので、どうぞお使いください」
人化の腕輪を使い食事をする、ただのゲームであるユグドラシルでは有り得ない行為だ。だが、副官エルゼルがNPCに預け、食事を用意させたということは恐らく食事ができるということだろう。他のギルメンも同じことを考えているのか、人化の腕輪を眺めたあとすぐに装着する。
するとギルメンたちが光に包まれ、おぞましい異形種から人間種へとなる。
「ってたっちさんリアルの顔ですよ!?」
「それはヘロヘロさんもですよ! これは一体!?」
「てか姉ちゃん何か若返ってない!?」
「え? ちょっと! 誰か鏡持ってない!?」
リアルで兄弟であるペロロンチーノとぶくぶく茶釜はともかくオフ会でリアルの顔を知っているギルメン達は、自分たちの顔がそのまま反映されていることに驚く。
だが、顔で驚いて終わるわけにはいかない。ある程度落ち着いたモモンガたちは、目の前にある食べ物に目を向けると、恐る恐る紅茶やクッキーにケーキなどを口に放り込む。
食べ物を口に含んでからギルメンたちは無言となり、五秒、十秒……一分が経過する。
何もおっしゃらない創造主たちに何か失敗してしまったかとユリとソリュシャンは冷や汗が止まらず内心びくびくしていると……
「……まい!」
「え?」
『うまぁぁぁい!!?』
突然ギルメンたちが大声を上げながら紅茶やお菓子の味に感激し、紅茶を飲み干して目につくお菓子を次々と食べていく。
「何これ!? 美味しすぎる!?」
「茶釜ちゃん! このガトーショコラ? ってのも美味しいよ!」
「ホントやまちゃん!? おい愚弟! そこのケーキも取れ!」
「うぇ!? いいけど、姉ちゃんそっちのお菓子取って~」
「美味い、リアルで飲んだ紅茶もどきとは違いますね!」
「これがあれば十時間労働も苦じゃありませんよ!」
「いや、ヘロヘロさんそれはちょっと誇張し過ぎですよ。あ、ユリ! 紅茶のおかわり」
「こんな旨いものを妻や娘にも食べさせてあげたい……!」
「ちょっとたっちさん。ここに来てまで人生勝ち組言葉出すのやめてくれませんか? っておいその菓子は俺のだ!?」
「これがタルト。ゲームの掲示板を閲覧しているさいにネットサーフィンでチラッと見ましたけどここまで美味しいとは…!」
「建やん! これ時代劇で見た和菓子がこんなに!」
「本当だな弐式! これ抹茶とか用意できないのか? ん? 出来る!? なら頼む!」
「おぉ! エルゼルさん! 人化の腕輪ありがとうございますぅ!? アンデッドだったら絶対に食べれませんでしたよ!!」
リアルでは絶対に食べれなかったお茶やお菓子に感動し、食べまくる創造主たちにユリとソリュシャンだけでは手が回らず、四二人のNPCメイドも出てきてお菓子の補充や要望を聞いてキッチンに伝えに行ったりとバタバタする。
「あ、あの、皆様。そんなにお腹を空かせていたのでしたら食堂に移動し、お食事されてから手紙を―――――」
「食堂!? 行く!!」
「俺、昔聞いたハンバーグってのを食べてみたい!」
「俺は串焼き!」
ガブリエルの提案にギルメンは食いつき昔のドラマやアニメで見て食べてみたいと思った食べ物を片っ端から叫び急いで食堂へ移動する。
創造主たちにメイドたちも付いて行き、円卓にはガブリエルを除いて誰一人居なくなってしまう。
「エルゼル様ぁ……! 私、自信がありません……」
聖王国に入国してから一週間ほど経ち、聖王女の誕生祭が終わり民たちが日常を送っている頃。エルゼルは初心者の冒険者がお世話になっている格安の宿の一室に泊まっていた。
備え付けられているテーブルの上には文字の読み書きの練習で使った紙が散乱し、大量の金貨に銀貨、銅貨のお金とこの世界で手に入れたポーションにスクロールが所狭しと置かれている。
当のエルゼルは、首から下げている冒険者の証を撫でつつ翻訳モノクルを使って書店で買った本を読んでいた。
エルゼルが入国して一発目にやった行動が、聖王国で一番の薬品店に赴きユグドラシル産の低級ポーションを五本ほど売り飛ばしたことだ。
ユグドラシルでは重要視されないポーションだが、異世界では最上級のものだ。
見たことのない赤いポーションに店員は驚き、半信半疑ながらも鑑定の魔法を使うと自分たちが知り、作っているポーションとは別次元のものにお店は大騒ぎ。途中店の責任者まで出てきて低級ポーション五本に対して店の全財産金貨五百枚だして買取たいと願い出た。
この時点でエルゼルの大方の目的、資金の確保は完了。入手法を聞かれた際は、予め考えておいた作り話で乗り切り店を後にした。
次に行ったのが冒険者登録。資金確保で一生遊べそうな金を手に入れたがエルゼルの真の目的は悲惨な目に合ってしまう聖王女カルカの救済。
色々と救済方法を考えてはいたが、そのほとんどがナザリックありき作戦。ナザリック支援無しでの作戦も考えてないこともないが、原作には載っていない聖王国内の国内情勢やアベリオン丘陵の亜人たちの動向など情報収集をしなければならない。
その両方の情報を得るのに、冒険者となるのが打って付けなのだ。
受付や街の人と親しくなり些細な噂から市民の不満。ミスリルなどの冒険者の高い地位を獲得し利用すればギルド長などから城からの情報を獲得できるかもしれない。
亜人に関しては冒険者の仕事でアベリオン丘陵に赴き、調査すればいい。ついでに武技の習得や魔法研究や実験もできる。
いいこと尽くしの冒険者には、文字の読み書きはできないので受付に代筆してもらい。初心者の依頼を選んでもらい何個か仕事をこなし冒険者としての滑り出しは順調、雀の涙程度だが情報も手に入っている。
手に入れた情報の中で一番驚いたのは、原作にも載っていないカルカの聖王女即位の話だ。
カルカが女王になったのは今から五年前、前国王が不治の病で亡くなり兄とカルカどちらが王になるか揉めた。
南に住む貴族や国民たち保守派は兄を支持、北部に住む貴族と国民たちはカルカを支持していて拮抗状態だったが、カルカが十五歳の時に第四位階に到達した天才的な信仰系
あとは原作通り。外は亜人、中から南の保守派の板挟み状態でカルカの優しすぎる性格が政治にも影響して思い切った行動がとれずデミウルゴスの餌食に……
「情報収集に手間取り過ぎているな。やはり、ナザリックの有無はかなり目標の成功確率に影響する。スクロールでレベル八十近くのモンスターを召喚して討伐、一気に名をあげてケラルトたちに接触するのもありだが……マッチポンプは好まん」
それに、そんなもの出したらツアーやスレイン法国に目を付けられる。かと心の中で愚痴る。
かけていたモノクルと持っていた本を机の上に投げると、アイテムボックスを開き中からこの世界では珍しい赤いポーション、下級治癒薬を取りだして眺める。
「……聖王国で一番の薬品店は軍事部にポーションなどの薬品を大量に卸していると聞きいていたが、まさか誰も接触してこないとはな」
エルゼルが薬品店にポーションを売り飛ばしたのは資金調達も目的だったが、それとは別に政府の人間との接触があった。
聖王国の軍事部にポーションなどの薬品を卸す店ならば、ユグドラシルポーションの話も軍から上層部、政府、そしてケラルトへと話が耳に入る。亜人種との抗争で年々増加する出費と徴兵、税を破格の効果を持つポーションがあればある程度は抑えることができる。そしてそれを五本も持ち売り飛ばした人物、エルゼルに政府の関心が向かないわけがない。
ポーションをさらに手に入れようとするためにケラルトの息のかかった人間が接触してくると思っていたのだが……
結果は残念ながら未だに接触は一切ない。
別のアプローチを探してみるか、もっと効率の良い作戦はないかと頭を働かせるも情報が足りな過ぎて何も思い浮かばない。
「インターネットがないのは仕方ないとしても新聞ぐらいあって欲しいんだがな。あれは町の情報から国の政策や情勢、事件など情報の宝箱なのだが……いっそ俺が作るか? いや印刷技術がほぼ無いこの世界で国中に新鮮な情報を届けるなど不可能だ」
あらゆるものを好きなように印刷コピーできる都合のいいマジックアイテムなど存在しない。
一番地道で地味、だが確実に効果があると思えるのがギルドで自分が調査した情報をポスターにして張り出して情報の大切さを認知、再確認してもらい。そこから町の情勢や武器仕入れなど情報を盛り込んでいき新聞へと発展……
「めんどくさいが、一つの手だ。だが掲載するにしても張り出したのが俺で、俺なら信用できると信頼されるほどの実績と同業者へのコミュニケーションが大切……」
あまりにも長い道のり、だが時間はある。少し気長にやる方が目的達成の確率が上がる。
まずは情報収集及び新聞の普及、信頼獲得のためにエルゼルは壁に立てかけてある天使状態時での武装、三本の刀を腰に装備するとポーションをアイテムボックスの中へと放り投げ、代わりに顔全体を隠す何の能力もない仮面をつけ、真っ白なロングコートについているフードを目深く被る。
この明らかに不審者感半端ない格好だが、エルゼルだって好きでこんなことをしている訳ではない。
最初はこんなもの付けず行動していた。そのために異世界で街中を怪しまれないようにアバターを自分が一番好きなキャラであり、一番好きな天使でもあるグ〇ブルのルシファーことファーさんにしたのだ。しかも首の縫合部分だってしっかりと再現。
だが、これが裏目にでた。
ファーさんがあまりにも美しすぎたのだ。
光を反射して鈍く光る銀髪。病的までに白く透き通った肌。“ローブルの至宝”という二つ名で謳われる程の美しいカルカや幼くのその美貌から“黄金”の二つ名で知られるリ・エスティーゼ王国の第三王女ラナーをも凌駕した、まさしく神ですらその美しき容姿に嫉妬するほどの美貌と「人体の黄金比」と言っても過言ではない肉体、それに加え保護欲を搔き立てる今すぐにでも消えてしまいそうな儚く気怠い雰囲気。
街を歩くだけで老若男女問わず視線を釘付けにして、会話をしようにも見惚れ過ぎて話ができない。冒険者酒場に行けばやはり容姿に釘付けになるか悪態をつかれコミュニケーション所ではなく情報収集にも手間がかかるのだ。
一応、
しっかりと顔を隠したエルゼルは、冒険者組合に行くため宿屋を後にした。
今回はあんまり話が進んでないので次はしっかりと話を進めたいのと、エルゼル視点の話をもっと書きたいですね。
それはそうとオーバーロードの四期でモチベーションが上がってるのに、リコリスという最高アニメによってリコリス小説を書きたい衝動が抑えきれない……!
リコリス小説まで出したら絶対にオバロとダンまち小説の更新が止まる! でも書きたいんだよ!!
あとエンゲージキスにて出てきたシスター、シャロン最高かよ。露出の少ない修道服に遠慮のない足技でガーターベルトや下着が眩しい!
どっちが先に読みたい?
-
ナザリック視点
-
エルゼル視点
-
半分ずつでいいから両方