破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった… 作:ハンバーグ男爵
待って?法国モノ増えてる?
彼らに未来託して失踪していい?
オリ設定いっぱいあるよ?独自展開で好き放題してるよ?いいの?
◆とある帝国騎士の独白
朝
鏡の前で自分の顔を確かめるのはここ最近の日課である。
先日までは鏡に立つ事すら億劫だったが、今となっては毎日欠かさず確認し、これが現実だと噛み締めるのが楽しくて堪らないの。
「ふふふ…」
思わず声に出して笑ってしまうけれど許して欲しい。
あの日、法国から来た学士様が王城へ訪れた日。
陛下の御前で自身の魔法論について熱く語る彼女は嫉妬してしまうほど綺麗で、その堂々とした口振りは自らの自信に裏付けされたものだと嫌でも理解させられる。
私も、ああなりたかった。
私の呪い、忌むべき死に際の呪い。モンスターによって掛けられたこの呪縛によって私は居場所を失い、婚約者を失い、全てを失った。
呪いを解くために帝国騎士となり、解呪の方法を探し続ける日々は苦痛そのものだったわ。
帝国中の薬師、教会を渡り歩いてみたり、怪しい噂に一縷の望みを賭けて闇市の商品に手を出したりもした。けれどこの強力な呪いを解除できる薬も解呪できる神官も居らず、闇市の製品も全部偽物で、怒って商人ごと灰に変えてしまったこともあるけれど後悔はしていない。
そんな日々が続いたある日、帝国へとやってきたスレイン法国の魔法学者。
会談を終えたあと、見送りの際にダメ元で彼女にこの顔の事を話し、解呪方法が無いか問うて見る事にした。何か言いたそうにしていた
なにか、文句でも、ありますか?ありませんわね?
レイン教授はおもむろに私の前髪を上げた。
前髪で隠しているのは忌々しい呪いの跡、今も膿を出し続ける醜い痣が残っている。咄嗟に隠そうとした私の手を抑えながら彼女は…
「よく、今まで頑張りましたね。
辛かったでしょう、私に任せて。」
大抵の場合、この呪いを見たものは顔を顰めるか酷く狼狽えるか私から離れるか、どれにしろ疎ましい目で私を見てくる。
けれどレイン教授は優しい微笑みを崩さずに左手をそっと痣に押し付けた。呪いは掛かっていてもちゃんと感覚はある、呪われて以来自分ですら触れもせず放置していた顔に何の躊躇いもなく触れられ思わず心臓が跳ねた。
触れた衝撃で膿が弾けて袖にべっとりと掛かるのもお構い無しに、彼女は静かに何かを唱え始めたの。
〝私が殺す 私が生かす 私が傷付け私が癒す 我が手を逃れうる者は一人もいない 我が目の届かぬ者は一人もいない”
ぞわりと全身が粟立つのを感じる。
先程までの優しい彼女とはうって変わって、氷のような冷たい雰囲気に呑まれた。
清白と荘厳が入り交じったような感覚、教授が一言一句唱える度に、彼女に触れている頬から得体のしれない何かが流れ込んでくる。
それに対して呪いが過剰に反応しているような…
〝打ち砕かれよ 敗れたもの 老いた者を私が招く 私に委ね 私に学び 私に従え〟
呪われた痣が熱を帯び始め、慌ただしく鼓動が脈を打つ、ぶくぶくと沸騰するかのような熱さに悲鳴を上げそうになるのを理性で必死に抑えながら、思わず空いている教授の手をしっかりと握り締めた。潰さんばかりの力で手を握っていても、彼女は優しく握り返していてくれる。
〝休息を 唄を忘れず 祈りを忘れず 私を忘れず 私は軽く あらゆる重みを忘れさせる〟
途端、断末魔のような悲鳴が聞こえ、紫色の煙のようなものが痣から吹き上がり空に溶けていくのが見えた。
〝装うことなかれ 許しには報復を 信頼には…あらっ?
もう消滅してしまいましたか、三節までもつとはなかなか強力な呪いだったようですね。」
「学士様、今のは…」
「私の国に伝わる〝おまじない〟です。
六大神様も御愛用なされたという書物より抜粋した聖句を唱える事で悪しきものを浄化する魔法で、本来なら
膿で汚れた手を払いながらあっけらかんと笑う彼女から手鏡を手渡された。
……………ぁ
「痣と呪いは連動していたようですね、上手くいって本当に良かった。」
前髪をあげても
いつも疎ましく思っていた顔半分、膿に冒された疎ましい痣はきれいさっぱり無くなって、代わりに肌色が露出していた。
「うそ…」
彼女がそっとハンカチを手渡してくれる、気付けば鏡越しの私の瞳から涙が零れ落ちていた。膿で汚れてもいない透明な涙、あの呪いを受けてからてっきり枯れ果てたものと思っていたのに。
「こりゃあたまげたな、レイナースの呪いは帝国中の神官を掻き集めても治せなかったってのに。」
「私の聖句は解呪というより退魔の分類なので、おそらく解釈の問題かと。
呪いを痣に憑いた魔なる物と仮定して、それを浄化したと考えて頂ければ分かりやすいですか?」
「いや仮定て、呪い相手にそりゃ完全に押し付けじゃねえか。
ゴリ押しで解呪しちまう先生もやべえよ。」
「我が国では常識に囚われてはいけないのです。」
「アンタの国は魔境か何かか!?」
いけない、言葉が出ない。
何度触っても忌々しい膿のベタついた感触はなく、直に肌を触れていた。すべすべ…
「ほんとうに…戻ってる…」
「はい、もう前髪で隠さなくても大丈夫。」
「ありがとう…ございます…ッ!」
それからの私はどうしていただろう。膝から崩れ落ちて無様に泣いて、レイン教授に介抱して頂いたのは覚えているのだけど。
呪いを解いた以上帝国に用は無い、すぐにでも四騎士なんて辞めてやろうとしたのだけど「今まで養ってもらっておいてそれは不義理過ぎる」と彼女に止められて、仕方なく留まることに。
代わりにお暇を頂いたので、私は地力を底上げするためカッツェ平原付近の帝国領地へ赴いた。今日は到着して既に3日経過している。
レイン教授のアドバイスを思い出す。
『武技や鍛錬も大切ですが、〝カースドナイト〟を失ったレイナース様はアンデッドを倒して聖属性の加護を強めても良いのかもしれません。
遠国にある聖王国には〝
私には自分でも知らないうちに呪いによって自身の身体能力を高められるような加護が働くようになっていたらしい。それが解呪と共になくなって、今は大幅に弱体化してしまっているのだそう。
確かに呪いが解けてからいつもより少し身体が重い兆候はある、実際に武器を振ってみないとどれほどのものか分からないけれど。
それを補うために教授が考案したのが「びるど」と呼ばれる研鑽方法だそう、難しい言葉が多くて理解が追いつかなかったのだけど、要するに私の場合はアンデッドを沢山倒せば鍛錬の代わりになるそう。
恩人の言葉なので素直に従い今に至る。
此処はカッツェ平原と隣り合わせでほぼ毎日低級から中級とされるアンデッドが出現する領地、試すにはうってつけだ。
「レイナース様!
おはようございます、本日も城壁前にアンデッドが多数現れておりますのでご報告にあがりました。」
「ありがとう、今行きます。」
「っいえ!それでは失礼致します!」
伝令の騎士が去っていく。
私の呪いを知り、前まで目を合わせようともしなかった男どもが今となっては顔を赤くして我先にと私へ報告にやって来る。
ホント、男ってそういうところですわよ。
馴染みの槍を持つ手はいつもより若干重い、やっぱり教授の仰っていた仮説は正しいのでしょう。
なら彼女の考察の通り、アンデッドを殺し続ければ私はまた強くなれる。そう疑いはない。
だって、私を解放して下さった方なのだもの
呪いを解除し颯爽と馬車に乗り込むその後ろ姿、頭に輝く光輪と真っ白な6枚の羽を幻視した。
…いえ彼女こそきっと、私の天使様なのね。
◆
「おうグリンガム、久しぶりじゃねえか。
依頼帰りか?」
「ぬ?おう、これはヘッケラン殿。仕事でな、竜王国付近まで行ってきたのだ。
汝も壮健そうでなによ…り…」
「あ〜…やっぱそういう反応しちゃう?」
此処は謳う林檎亭、ワーカー達馴染みの溜まり場である一階の酒場にて、ワーカーチーム『ヘビーマッシャー』リーダーであるグリンガムは同業者であり気のいい友人でもあるヘッケランの変わり果てた姿に瞠目していた。
変わったのはヘッケランの左腕、二の腕の付け根より半分だ。
それは人の腕と呼ぶにはあまりにも機械然としていて、指先を曲げる度カチャカチャと鉄の擦れる音がする。所謂それは『義手』なのだが、素人目からでも分かるくらいに高価な代物だとグリンガムは即座に理解した。
「汝、それは一体…」
「コレな、前に依頼でヘマこいちまってよ。
傷は治ったが斬り飛ばされた腕がモンスターに食われて無くなっちまったんだ。
そんで依頼主の厚意で義手を贈ってもらったワケなんだが…どうにもなあ…」
気に入ってはいるんだけどよ、と半笑いのヘッケラン。
人の腕より少し太い程度の義手、その指が器用に折れ曲がり右手と同じポーズをとる。
普通ならありえない事だ。
グリンガムの知っている義手と言えば木を組み合わせて作られたものが精々で、例え鉄で作られていたとしても指の先まで器用に動かせるはずが無い。
「義手ん中にギッチリ魔法が仕込まれてて、俺の意思に従って動くんだとよ。」
「なんというか、凄いな。
どれほどの技術者が作り上げた逸品なのか…」
「ホントすげえよなコレ、俺も貰った手前言い辛いけどちょっと引いてるもん。」
精々出来のいい義手程度だろうと高を括っていたヘッケランはこれが送られて来た時に変な笑い声が出たという。
上等な木箱に入れられた、見るからに高価そうな義手、手紙も同封されていて、「漸く義手が完成致しましたのでお贈り致します。書面にてメンテナンス等の説明書を付与しておりますので後ほどご確認下さい、お問い合わせはスレイン法国ローグレンツ領〇ー〇〇ー〇番地まで」とご丁寧に領内を往来できるパスまで入っている。
「アフターケアまで万全か!」と同伴していたイミーナは叫んだ。
何を隠そうこの義手、内部にルーン文字がたらふく内蔵されていて、ヘッケラン専用に調整されたものらしい。最初に登録した者以外の操作を受け付けない代わりに義手の隅から隅まで木の根のように張り巡らされたルーンが装着部位から使用者の意思を読み取り、繊細な指の動きまで細かく再現出来るそう、実際使ってみたヘッケランも思い通りに動く義手に驚きながらその完成度の高さに若干引いた。
「なんでも負傷兵が戦線復帰する為に失った四肢の代わりになる事を想定して造られた義手なんだと。
腕があった時と殆ど変わらねえ動きができるから助かってるが、こんな高そうなモン着けて持ち歩くのは気が引けてなあ…」
高そう、違うな。間違いなく高価なのだ。
使用する部品はすべて1から打ち出し、エルフ達が数人がかりで組み上げた。ルーンひとつひとつはレイン自ら丹精込めて刻印し、その上から工房の親方達に頼んで文字が消えないよう加工を施して、その上に重ねる形で何度も鋼を打ち直した。これにより軽量化のルーンも相まってヘッケランはほとんど重さを感じていないにも関わらず硬度はオリハルコン並かそれ以上、外観も傍目から見れば完全に二の腕まで伸びる細めの手甲にしか見えない。技術も見た目もこの世界では至高と呼ぶべき逸品に仕上がっている。
代金は不要、とレインは言ったが実際掛かった手間と費用を合算すればフォーサイトが10年間休まず働き続けてやっと支払えるくらいの金額なので知らぬが仏と言うやつか。
もしルーン技術に聡い者、例えばフールーダなんかがこんなものを見てしまったら最後、真顔になって「ころしてでもうばいとる」と本気で言いかねない。
「…ッなぜだか無性に悪寒がした。
ヘッケラン殿、その腕普段は手袋か何かで隠した方が良いのではないか?」
「そうするわ…なんか俺も寒気したし…」
流石は日々危険と隣り合わせの
『ッッッッ!!今、天啓が降りたような気がするぞ!』
『ハイハイ、黙って仕事を終わらせてからにしろ。』
『最近
さて、ここでワーカーチーム『フォーサイト』のその後について補足しておこう。
リーダーのヘッケラン・ターマイトを筆頭に集まった4人組みのチーム、彼らの運命はレインに出会ったことにより大きく変わってしまった。
そもそも金策のために集っていた4人なのでレインの依頼を終えた時点で目標は殆ど達成しており、ヘッケランとイミーナが2人でこなせる簡単な依頼をたまにやる程度の頻度でしか活動しなくなった。
4人集まって活動するのは大口の依頼、もといレインの新作お披露目と稼働実験の時くらいのものである。
神官でありパーティの回復役、ロバーデイク・ゴルトロンは依頼報酬を少しずつ帝国内の孤児院に寄付し(一度に大量に送ってしまうと周囲から怪しまれてしまうため)恵まれない子供達への支援を惜しまない。時間の余裕もできたので孤児院の子供達に勉学を教えたり、神官の才能を見出した者にはその知識を惜しまず与えているそうだ。
リーダーのヘッケランは同チームのイミーナと共に細々とワーカー活動を続けるなか、交際関係に発展。報酬を元手に一軒家を購入する等、ワーカーという不安定な職業から脱却するための足場固めを着々とつづけている。
とある護衛依頼の際、商人を助けた際にちらりと見えた美しい銀色の義手からそれ以降『銀腕』の異名で腕の良いワーカーとして噂されるようになり一部商人の間で有名人になったそうな。
最後に、最も生活が変わったのがアルシェだ。
報酬で貰った金貨を使用人達の給料にあてがったはいいが、なおも虚勢を張りつづけ現実を見ようとしない愚かな父親を見限った彼女はある日手切れ金とばかりにお金を家に置いた後妹達を連れて家を出た。そして自身の師であるフールーダへ直談判し妹共々転がり込んだのだ。
アルシェの魔眼はフールーダと同質のもの、そしてルーン技術が齎された今、撃杖使用経験の豊富な魔法詠唱者を国が放っておくわけもなく、説明を受け魔法詠唱者としてではなく一人の人徳ある大人として父親の行いに激怒したフールーダ推薦の元ジルクニフの計らいによりアルシェは魔法省に新しく設置された『魔巧技術課』へと配属される。
フールーダ以上にレインと接点のある彼女はワーカー活動を国から容認されるという法外措置まで取られており、その裏ではレイン引き抜きを狙う皇帝の思惑が働いたのだとか。
ともかく給金も安定し、晴れて妹たちと一緒に暮らせるようになったアルシェ。代わりに魔法省の激務に晒される事になるが、偶に会いに行くフォーサイトのメンバー達との会話と家で待つ可愛い妹達が癒しになっているようだ。
ただ未だに感情を優先して親との縁を完全に切れていないことが彼女の心のしこりとなっている、それが未来にどんな影響を齎すかはまだ知る由もない。
◆
「……と、まあ。
こんな感じで帝国へルーン技術を無事布教、国力アップで人類大勝利!てなカンジですの!」
「へぇー帝国にねえ。」
ごきげんよう!私ですわ!
本日は法国神都最深部、番外ちゃん家からお送りします。家つってもただ広いだけでベッドと最低限の生活用品しかない殺風景な場所なんですが。番外席次あらためリーネちゃん、もしかして女子力クソザコなのでは?私は訝しんだ。
まあ生まれが生まれですし仕方ありませんわね。
数日前、帝国より帰還した私達は竜王国経由で一度法国へ戻り、報告書を纏めて中央政府へ提出致しました。
《無限魔力》ちゃんと別れた後すぐ自領に戻るのも面白くないのでせっかく神都へ来た事ですしお忍びでリーネちゃんの所へ遊びに来ちゃいましたー!借りてたマジックアイテムも返さないといけませんしね。
途中出くわした元老院の皆様に凄い顔されたんですけどなんなの、私を鬼か何かと勘違いしておられる?
「それよりさあ、帝国に私と釣り合いそうな強者はいなかったの?あの爺はともかく、噂じゃ帝国四騎士とか強いって話じゃない。」
「皇帝と話した時お会いしましたよ、例え束になっても素手の私にすら勝てませんわ。」
彼等はあくまで現地産の強者ですからね、プレイヤーの血を引いた
「なんだぁつまんない。
闘技場は?『武王』は見なかった?」
「生憎と私、見世物の殺し合いに興味ありませんので。」
あれが娯楽として成り立ってるのは刺激に飢えた一般人が安全な位置から非日常を味わう事ができるから。
亜人との命のやり取りを毎日やってる私からすれば只の野蛮な三流プロレスにしか見えないんですよね。オーガなのに人間と仲良くしてる『武王』ことゴ・ギンさんとか首狩りウサギさんには興味ありますけど。
「貴女と釣り合うような男性なんて、いたとしても大陸で数人程度でしょう。
隊長はどうなんです?一応私の知る限り一番の強者なのでは。」
「アイツじゃ無理無理、逆立ちしたって私には勝てないわ。種も弱そうだし。
はァ…何処かに居ないのかしら、私を倒せる男。」
「種て、貴女ねえ…」
頭ん中それしかないんですかねこの娘。
まあ私の知ってる限り人類圏に彼女以上の人間はほぼ存在しませんし仕方が…あ、いや人外でもイケるんでしたっけ?どっちにしろ
さて、私の考える人類救済計画(直喩)においてまず最初に強化せねばならないのが彼女、《絶死絶命》。
作中で唯一主人公達に対抗出来る可能性がある現地人、理由はプレイヤーの血が半分以上引き継がれその身に流れているからに他なりません。
たしか母親も元第1席次を張れるほど実力者=プレイヤーの混血で父親も……ッチ、あのヤリ〇ンド屑の事考えたら腹立ってきましたが人格は別として彼もプレイヤーの血を濃く受け継いだエルフでしたか、なので成長速度はかなり『ゲーム寄り』ということなのでしょう。私も身をもって感じていますからね。
お母様は純プレイヤー、お父様も半分かそれ以上は
装備できるユグドラシル武器が他人より多いのもその恩恵ですかね。
現地人の自力の限界が25~30Lvそこら、そこにプレイヤーの血が混じることで上限が解放されていく…なんかスマホゲーのキャラの上限突破みたいですわね。
この世界の人類は世界規模の親ガチャだった…!?
一言で言えばそう、理不尽極まりない。
現実にゲームの設定を持って来るとこんな感じになるんでしょうね、しかも下手に時間が経ちすぎて完全に混ざっちゃったから取り返しもつかねえという異常事態。マジ竜帝くんさあ…
そして今も100年ごとに現実は
…そのうちガイ○やらア○ヤから不要と判断されて切除されたりしません?大丈夫?
コレ原作知識持ってないと私もリーネちゃんと同じ感じに滅茶苦茶な育成構成がなされて取り返しのつかない事になってるんでしょうねえ。
ゲームと違って気軽に死んでレベルダウン、上げ直しもおちおちやってられませんし。つーか傍から見たら強くなっては自殺を繰り返す狂人ですわねソレ、お成仏なさって?
な、の、で。既にLvの上がり切っている彼女には取り敢えず自分の持つ力の把握、格上との戦闘を想定した訓練をこなしつつ、ゲームには存在しない未知の要素、武技の開発とかしちゃってるワケなんですが。《雷鳴疾駆》とか彼女の発案ですし。
私という
こういうの《バタフライエフェクト》って言うんでしたっけ?
クレマンティーヌとか良い例で、原作より強くなってて信仰心もそこそこあるから離反の疑いどころかズーラーノーンのズの字もないんですよね。
「そういえば前に言った事、覚えてますか?」
「ええ、やってるけど私の異能力は技は読み取れても詳細までは分からないから。いくら武器と見つめあったってスルシャーナ様の技の詳細なんて読めないわよ。」
リーネちゃんの異能力、『武器の所有者が持つ切り札を行使できる』という破格の力。
確かに強い技ではありますがその反面、技の詳細まで読み取る事ができないのがネックでした。
例えば彼女の所持している大鎌、〝カロンの導き〟はかつてスルシャーナ様がご愛用なされていた信者垂涎の御利益アイテムなのですが、それを持ったリーネちゃんはオーバーロードの最強スキルThe goal of all life is deathを発動可能になります。
私もアニメでアインズ様が対シャルティア戦で一度使ったの観て覚えてるだけなんですが、頭おかしいスキルですよね。なんですか耐性貫通の即死技って、ユグドラシルのバランスどうなってますの。
ただこのスキル、使えば勝ちが決まる訳ではなく発動してから色々と制約がある様子。まあゲームの技ですのでデメリットがあって当然ですわよね。
それに気付いて欲しくて時々リーネちゃんを
「最後にその異能力使ったのいつでしたっけ?」
「たしか…アゼルリシアの中腹に特大サイズのゴーレム系モンスターが現れた時だったかしら。その頃は漆黒聖典も数が少なくて…ほら、元第2席次の…《剣帝凄絶》が若い頃、死ぬ気で侵攻を食い止めてくれてたんだっけ。」
「え、お父様の若い頃って…相当昔じゃないですか。」
「他の聖典も出払っちゃっててさ、最高神官長が渋々私に出撃命令を出したの。
結果はまあ、お察しよ。」
「その時発動して何が起こったか覚えてます?」
「そうねえ…発動してから当たった感触はあったんだけど、効果が出るまで数秒ラグがあったかも。10秒ちょっとかな。
それ以外は覚えてないや、兎に角一度使えば確実に相手は〝死ぬ〟。耐性だろうが相手が既に死んでようが関係なく死の概念を押し付ける技よ。」
「でしたら発動から効果が適応されるまでの数秒間が勝負ですわね、回復や蘇生を使う暇も無いくらい苛烈に攻める事ができれば隙も埋まりますし。」
「そもそも異能力使うまで追い詰められる事の方が少ないんだけど。
最近だと貴女と戦った時位のものよ。」
「もしかして私、遠回しに死ねって言われてます!?」
リーネちゃん!?その怪しい笑い方はなんなんですの!?隙あらば私のこと殺そうとしてません!?
ですがリーネちゃんが己の能力を自覚して、分析してくれるに越したことはありません。ステータス画面の存在しない現実世界なので!
最悪私を餌にしてでも学んで貰わねば!踏み台ばっちこいでしてよ!
格上との戦い方を学ぶ事こそこの世界の強者に必要ですからね、窮地の時こそ人の本質が見えると言いますし実践戦闘に勝る経験はありません。
「ねえ、今日来たのはただお菓子をご馳走してくれる為じゃ、ないわよね?」
「あー…まあ、そうですわね。
神官長にバレないようにスキルと魔法はナシの方向でお願いします。」
「わーかったわかった、今回は壁も床も心配しなくていいわ。直すアテができたから。」
「はい?……ッ!?!?」
底冷えするような悪寒を感じ咄嗟に部屋の隅を凝視し、必死に表情を取り繕いながら暗闇の奥に潜む〝それ〟に微笑みかけます。
なーんでこのお方がアナタの部屋に来てるんですかねえ!最奥で眠ってらっしゃるハズでは!?
つーか動いてるとこ見るの初めてなんですが!入隊の時一回だけ謁見させて頂きましたけど明らかに〝僕封印されてます、起こさないでね!〟みたいな雰囲気出してじゃないですか!
「私も最初は驚いたわ。
最近起きてる事が多いから、暇潰しに私の部屋へ来たりするの。」
「…神官長はこの事ご存知でして?」
「こんな面白そうな事上層部に言うワケないじゃない、ここ100年間ずっと眠りっぱなしだったのについ最近何かに呼応するように起きちゃったんだから。
私以外の前に姿を表すのは珍しいけどね。」
「大問題なんですが!?
ああ色んなフラグ乱立しててもう気が狂いそうですわ〜…
まあなんですか、起きてしまったものは仕方ありませんわね。取り敢えずお菓子食べます?
暗くてよく分かりませんが影が頷くような仕草をして伸びた手がテーブルのビスケットを鷲掴みにして持っていきました。
…え?前の方が美味しかった?
「ちょっと前にレイラの家に行ったじゃない、その時お土産に貰ったやつを気に入ったみたいよ。」
「知らない間に私のお菓子献上されてるぅ!!」
今回は時間なくて市販のやつ買いましたからね。
ねえ、もしかしてこの世界線、私というイレギュラーのせいでどんどん原作から離れていってませんか?ホントにナザリック来るんですか?来ないなら来ないって言ってくださいません?
「龍帝は仕事しませんでしたてへぺろ♪」って誰か言ってえ!!
◆
「もしかしてこの前神官長に勘づかれず私の領地に来たのって…」
「あの御方に《転移》の上級魔法で飛ばして貰ったの、そんで対価に貴女のお菓子をあげたってワケ。」
「神々の遺した神聖存在をタクシー代わりにするんじゃありませんわよ!?」
「たくしーって何よそれ。」
◆とある最終兵器半森妖精の独白
私は強い、他に並ぶものが居ないくらいには。
私の仕事は挫折を与えること。
漆黒聖典に入った神人は大抵の場合、国最強の部隊に所属できたことに浮かれるあまり自身の力に酔っている。かつての隊長もそうだった。
それを矯正し、傲慢な新入りの鼻っ柱を叩き折る。上には上がいる事を思い知らせてやれば大体の奴は大人しくなるもの。
《無限魔力》の時はちょっとやり過ぎて卑屈な性格になっちゃったのは申し訳なく思ってるけど…
けどそれは私にも言える事、戦えば常勝不敗、他に並び立つ者が居ないせいで気付かないうちに自らの力に驕っていた。
彼女に出会うまでは
『貴女がレイモン様の仰っていた《絶死絶命》様ですか。
初めまして、漆黒聖典13席次《獄界絶凍》を拝命いたしましたレイラ・ドゥレム・ブラッドレイと申します。よしなに…え?本名名乗るのはNG?別にいいじゃないですか減るもんじゃなし、これから苦楽を共にする同僚ですのよ?ご挨拶くらいしておかないと。』
見るからに傲慢そうな貴族の女、そんなのが最初の印象だった。呼び付けたのは私だけど嫌な顔ひとつせずに高笑いしてるその姿は余程自分に自信があるのかアホなだけなのか…
けれどその力、特に魔法と槍術を組み合わせた氷特化の戦法には思わず感心してしまう。
「自作だ」と言う見たことも無い魔法を使い現れる氷のゴーレム達にはそれなりに苦戦させられた。多対一を前提にした広範囲戦術、立ち回りも上手くて足りない部分を魔法と武技でカバーし、仕留めどころが分からない。
しかも予め用意していた結界用の巫女が魔力不足で倒れたせいでその肩代わりもしながらの戦闘、消費も半端ない筈なのに彼女は最後まで私に食らいついてくる。
ほんと、何処からあんなアイデア湧いてくるのかしら。
結局魔力切れで気絶してしまい、私の勝利で終わったけれど万全の状態であのまま戦い続けていたらきっと私は…
それから私は自分の足りない部分に気付き、レイラの助言を受けながら武技の開発や格上との戦闘を想定した訓練なんかを定期的に行う事にしたの。
私より弱い奴が何を言おうと聞く耳持たないけど、レイラの言葉には不思議と説得力があった。
格上への対処法はまるで実際に見てきたみたいに具体性があって、気付けば私から彼女に教えを乞い、こうして相手になってもらってる。それから暇潰しの雑談相手にも。
彼女が話す魔法理論は素人の私にはよく分からないけれど、新しいマジックアイテムの話題はとても気になった。
なんでもルーンと位階魔法を応用させた通信系のマジックアイテムや簡易的に結界を張れるようなものまで開発中らしい、今度試作品を持ってきてくれるのだそう。
今まで訓練と言えばあの母親からのしごきしか知らなかったからこうやって手取り足取り一緒に訓練するのは初めてだ。
それはとても新鮮で、楽しい。まさか私が訓練を楽しいだなんて思う日がくるなんて思ってもみなかった。
戦闘中、時折見せる彼女の苛烈な一面は、かつての母を思い起こさせるけれどその瞳はナズルのように優しくて。
あと料理が美味しいのもナズルっぽいわね。
…あの人に重ねるなんて、ほんとうに私ってばレイラのこと気に入ってるんだ。
それにしても…
「えいっ」
「あっ!?ちょっ…こら!」
ルーファス様に動揺した数少ない彼女の隙を見て左の小指に嵌められた
焦るレイラ、隠蔽が解けて途端にその腰元から伸びる両手を広げて余りあるくらい大きな〝6枚の白い羽〟と頭上に輝く神々しい〝冠に似た
これがレイラの本性。
そう、本当の彼女は
誰も知らない彼女の秘密。私が知ったのは完全に偶然で、泊まりに行った時風呂場でたまたま目撃してしまった。彼女が白状するに母親は《
この事は義妹のクレマンティーヌや婚約者のクアイエッセすら知らない、知っているのは
「やっぱそっちの方がいいじゃない。
天使や奇跡が大好きな連中だもんね、皆掌返して貴女に従うと思うわよ?
「…私は〝人間〟です。
人類は己の力で立ち上がらなければ。
ただ助けられただけの人間がどんな末路を辿るか想像できない貴女じゃないでしょう。
今更この姿を見せたところで混乱を招くだけでしょうし、この秘密は墓まで持っていきます。」
そう不貞腐れないでよ。私達の仲じゃない。
私は表舞台に出られない存在、貴女は隠し通さないといけない種族、どっちも秘密を抱えてるのはお互いさま。
私達だけの秘密、ね。
「私は好きだけどね、このモフモフの羽は特に。」
「お止めなさない、くすぐったいですわ。」
「はぁ〜このふわふわ堪んないぃ…」
この包まれるような安心感、心地好い暖かさは本当癖になる。布団代わりにして昼寝したい。
……実際しようとして何度か逃げられたわ。
わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ…
「……満足したら指輪返して下さいね、この姿だと感情が無理やり抑制されておかしくなりそうです。」
「善処するわぁ〜…」
ほんと
人類最強の守護者名乗ってる2人が揃って純人間じゃないなんて、皮肉が利いてて面白いと思わない?
「ルーファス様も羽触りたいって」
「!?!?」
◆
神都中央部、大聖堂内に振り分けられた神官長達の私室にて。
節制と倹約を尊ぶ国是故か、国の上層部にしては質素な作りの執務室には漆黒聖典担当神官長のレイモンとその隊員《無限魔力》が向かい合っていた。
提出された報告書を一通り読み終え、レイモンは溜め息を一つ。
「やはりカッツェ平原の異常はズーラーノーンの手の者の仕業だったか。
ご苦労だったな《無限魔力》、それと休暇中にも関わらず協力してくれた《獄界絶凍》にも感謝せねば。」
「はい、ありがとうございます。
それと、レイラちゃ…《獄界絶凍》の同行に関してレイモン神官長のお耳に入れたい事が。」
「…それが報告書に残せない内容だと?」
「その通りです。」
魔女帽子の下から覗く、いつものだらけた態度とはうってかわって真面目な表情で《無限魔力》は語り出す。
「彼女は《占星千里》より先の未来を見越して行動しています。
新技術を餌に帝国のフールーダ翁を抱き込み、それを足掛かりに魔法詠唱者の地位向上の為の組織を設立しました。新種のマジックアイテムも自領で多数開発中。
試作品の図面は私も見ましたけど、どれも凄まじい完成度です。法国の魔法技術を何世代も先取りできるほどには。
レイモン様も彼女の突飛な才能はご存知でしょう?何処から思い付いたのか次々と未知の理論を書き上げて、教授達を困惑させてた。なのに学生時代に彼女が出した論文が見向きもされなかったのは貴方達が意図的に評価を下げて揉み消していたから、じゃなきゃ卒業論文で私が彼女に勝てるはずがない。」
「…謙遜を、あの年の卒論は同期の中で最も君が優れていたよ。」
「今更評価はどうだっていい。
きっとあの子は学生の頃…いえもっと前からこの危機が訪れる事を予期してた!今それを形にしようとしてるってことは、その危機が訪れるのは2年後にやってくる予定の〝揺り返し〟になる可能性が高い!」
「……」
「速やかに対策を講じるべきです。
具体的には国をあげて彼女が行っている事業を手助けする必要があります。
問題児がどうとか言ってる場合じゃない、彼女の才能を切り捨てて護りきれるほど今の人類は精強でないことくらいレイモン様もご存知でしょう。」
あくまでも冷静に、理詰めに攻める《無限魔力》にレイモンは再び深いため息を一つ。
この世界で100年ごとにやってくる〝揺り返し〟、時には万人を救う勇者を、時には国を滅ぼす魔物を生み出す歪みを法国の一部の人間は知っている。
中央政府ではその揺らぎから生まれた実体が人類にとって有益か有害かを判断し、可能なら自国へ取り込み戦力とする方針を取っている。
今までは揺らぎが生まれ、実際にその正体と相見えるまでは相手の判別ができなかった。が、レイラは次の揺らぎにやってくる『ぷれいやー』が人類にとっての危機になると判断したわけだ。
本来ならば隊員が上司に意見するなど以ての外だ。漆黒聖典は護国の為に任務を遂行する秘密組織、信仰を忘れず上からの決定を粛々と実行すればよい。
それを押してなお、彼女は上官への具申を選択した。頭は回る癖に普段だらけて軽い言動ばかりの娘がこうも真剣になってわざわざ言い詰めに来たのだ。無下に帰す訳にもいかないとレイモンは腹を括る。
そして彼は語り出す、レイラがかつてより法国上層部からマークされていた事を。
初めは幼少期、元席次の娘が産まれたという報を受け密偵を彼の領地へ飛ばしたのが全ての始まりだった。
その娘は5歳に満たないというのにハキハキと自分の意思を示し、神官団に対して「義妹との会話の邪魔だ」という理由で強力な魔法を行使したそうだ。
この時点でレイラは素質を見出され、魔法学院卒業と同時に聖典加入が内定していたという。
しかし彼女は説明に訪れた神官に全く構うこと無く自領へと舞い戻り亜人との攻防戦に明け暮れる毎日を過ごす道を選んだ。いや、そもそも入隊の話すら耳に入っていなかったのかもしれない。
亜人生存圏との国境線に位置する彼女の領は戦略的にも重要なポイントだ、疎かにすれば侵略を許してしまう。だからあえて泳がせておいて、機を見計らい勧誘する。そう神官長達は考えた。
が、そこでレイラのやりたい放題癖が暴走し始める。エルフを雇い、ドワーフを従え、霜の竜達と協力し領地の安定化を進める彼女に上層部は慌ててこれ以上の勝手を許してなるかと漆黒聖典加入へ向けて動き出した。
次々と新しい風を齎す彼女を閉鎖的な中央政府の神官達は危険視したのだ。
今でこそ「あの娘ならしょうがないか」くらいの風潮で神官長達の意見は固定されつつあるが、当初の判断ではレイラを隊長に並ぶ護国の勇将に仕立てあげる為、なんと国宝での洗脳も視野に入れていたらしい。
彼女の奔放ぶりを重く見た一部の神官長は本気でその計画を推し進めていたそうだ、幸運な事に実行に移す前にその神官長は任期を終え、今は元老院にて執行権を失っている為最悪の事態は免れた。
「そんな…国宝を使ってまで思い通りに動かそうとするなんて。」
「当時は私も反対した。
風の巫女が使う神器は知っているだろう?大魔法発動の為自我を失い、一生を道具のまま終える運命を背負った少女たち。今でこそ《獄界絶凍》の考案した魔法理論の応用で会話ができるほど後遺症無く魔法を行使しているが、そうでなければ彼女達は使い潰されて終わりだ。
国の為、人類の為と聞こえはいいが対価に1人の女性の人生を食い潰すのはどうなのかと常々思うよ。
そんな咎を友人の娘に背負わせたくはなかった。」
レイラの父であるゲバルトとレイモンは現役時代の同期である。
人付き合いの多い男では無かったが少なからず接点もあり、共に仕事をする事も多かったレイモンは彼の婚約を素直に喜び、レイラ出産の折には自身も妻と共に祝いに駆けつけるなどそれなりの友好関係を築いていた。
如何に人類至上主義とて守らねばならぬ一線はある。友人の娘が国の操り人形にされる未来を看過できるほどレイモンも人の心を捨ててはいない。
「〝揺り返し〟の件は了解した。
明日の議会で私から皆に発信しておこう、《占星千里》の予知夢のように確実性がない為説得力に欠けるだろうが…
彼女の設立しようとしている組織についても私の権限内でできる限りのサポートをすると約束する。」
「ありがとうございます。」
本当に、今期の漆黒聖典には苦労をかける。
揺り返しの時期が被っているのもあるがエルフとの戦争沙汰やビーストマン侵攻、更に頻発する亜人の襲撃など例年以上に出動案件が増えている現状。
「今代は運が悪かった」と笑って流すのは簡単だが、これらは先輩である自分達が過去にやり残した事の清算を次代に押し付けてしまったが故。
そう自分を戒め、せめて後輩達の手助けをしようと素直に思えるくらいにはレイモン・ザーグ・ローランサンは出来た男だった。
「今後も彼女の周りで何かあれば私に報を入れてくれ。上官である以上責任は取る、それが上に立つ者の責務だ。
…正直なところ、君が進言してくれて有難いと思っているよ。
《獄界絶凍》といい君といい、今期の漆黒聖典は粒揃いだ。その考えは必ずや人類に安寧を齎す一助となるだろう。期待している。」
「勿体ないお言葉です、レイモン神官長。
連絡の方は承知致しました。それでは私はこれで…」
「し、失礼致します!レイモン様!」
退室しようとする《無限魔力》が言いきらないうちに蹴破る勢いで扉が開かれる。
癖の強い金髪のショートヘアにトレードマークの眼鏡、更にこの国では珍しい学生服を着込んだ少女。
「お?《占星千里》ちゃん、うい〜。」
彼女も漆黒聖典所属の隊員であり、第7の席次に座る者。
超人戦闘集団である漆黒聖典には珍しくサポートに徹する隊員で、異能力は〝千里眼〟。
遠くの風景を見通し偵察を行えるのはもちろん、限定的ではあるが未来視も可能な希少能力の持ち主だ。
「む、《無限魔力》なんでここに…」
「レイモン様に報告書、例のアンデッドの件は私と《獄界絶凍》ちゃんで片付けといたから。
もうカッツェ平原は大丈夫だよ〜。」
喋り方ももとに戻し、いつもの調子で執務室のソファに寝転びながらだらけている《無限魔力》にレイモンは苦笑いし、視線を《占星千里》へと移す。
「そっか、良かった…
じゃなくて!レイモン様に至急報告しなきゃいけない事があるの!」
「何かな《占星千里》、君がそれ程急ぐ事とは。」
「…〝予言〟が来ました、場所はトブの大森林最奥部。おそらく…」
「〝破滅の竜王〟か…!!
馬鹿な、早すぎる!」
《占星千里》の報告に思わず叫ぶ。
はるか昔、スレイン法国が生まれるよりずっと前の事。ある時突然空を切り裂き現れた化け物の一体で、封印されし禁忌の存在。
彼等が〝破滅の竜王〟と呼ぶ存在である。
法国の伝承では世界を滅ぼす力を持つとされており、かつて世界が竜の全盛期だった頃殆どが討ち取られたが、一部の個体は生き残り大陸じゅうに散らばった。
トブの大森林に存在するという個体もそのうちの一つである。当時国が極秘に行った調査の結果、最後に接触したのは十三英雄で、何らかの方法を用いて封印され今に至ったようだ。
そして今代にて、未来視を有する《占星千里》の度々の警告をもって法国は〝破滅の竜王〟の復活を予期し、対策を取っていた。
「風の巫女に急ぎ通達を!至急議会を招集せねば!
〝破滅の竜王〟が動き出したとあれば最悪、国宝の使用も視野に入れる必要がある!」
「カイレ様をお呼び立てするんですか?
先日から体調が優れないと仰られて部屋に籠りっきりでしたが…」
「議会で採決されればの話だ。
十中八九そうなるだろうが…頑張って貰うしかなかろう。
法国に残っている漆黒聖典のメンバーの確認を急げ、議会で意見がまとまり次第直ぐに出立の準備を。
くっ、火急の際すみやかに判断を下せないのが議会制のままならんところだ。」
因みに、法国の隠し球である漆黒聖典が出動する為には神官長達の集まる会議で賛成票が半分を超えないと認可されないし、国宝の持ち出しに至っては八割が賛成しなければ使用を許可できない。
しかもそれは神官長による話し合いで、それはもう果てしない時間を要するのだ。民主主義の弊害がここに来て迅速に行われるべき判断に足枷を嵌めていた。
〝破滅の竜王〟復活に対する法国の対抗策として第一に挙げられたのが国宝を用いた無力化。
嘗ての神々が遺した偉大なる遺産の数々、その中に存在する『
国宝により管理下に置く事ができれば脅威の排除だけでなく亜人達への牽制にも利用でき一石二鳥、さらに成功すれば人的被害も皆無となればこの案が満場一致で可決されるのに時間は掛からなかった。
しかしこの法衣は選ばれし者のみが着用を許されし国宝、適性の無いものが使ってもただの際どいチャイナドレスだ。
有難いことに法国にはその適性を持つ者が1名だけ在籍している、だが彼女は高齢で現在も健康体とは言い難い。更に法衣を使用できるまで対象に近づける為には漆黒聖典のメンバーで周囲を固めて護衛するしか方法がない。超人集団の中に動けぬ老婆が一人入るだけで当然進軍速度は下がるし、リスクは多いが…
「漆黒の面子はたしか…《
当然ながら、番外の彼女は除外だ。
法国の最終兵器以前に《無限魔力》が名前を出したくないだけであるが。
「全て動員させる、総力をもって当たらなければ成功は無い相手だ。」
「という事はもしかして私も…」
「《占星千里》ちゃんも出動だよ、当たり前じゃん。」
「うえぇ、戦闘苦手なのに…」
「《
肩を落とす《占星千里》にニヤニヤしながらその背を叩く《無限魔力》。
漆黒聖典にだって当然向き不向きがある、彼女が得意とするのは千里眼による状況確認と戦況把握くらいのもので、直接的な戦闘力は殆ど皆無に等しい。そのために護身用のマジックアイテムを宝物庫から直々に下賜されているほどだ。普段から携帯することを義務付けられており、これは未来視という希少な異能力を保護する為に中央政府が下した措置である。
「レイモン様!レイモン様ぁ!」
通達の準備を整えていたところ、けたたましく廊下を蹴り歩く音と共に4人目の来訪者がレイモンの下に現れた。
やってきたのは風花聖典だろうか、緑を基調とした巫女服に身を包んだ少女が開いた扉から顔を出した。額には汗が浮かび顔は真っ赤、その頬には涙の跡を残し何やら随分と急いでいるようだ。
今日は何人来るんだ、と内心悪態を吐きながらレイモンは少女に応答した。
「どうした落ち着け、何があった?」
「はぁ…ッ!かい…レ…
カイレ…様が…!」
「カイレ様…?彼女がどうした。」
「カイレ様が先ほど…息を…引き取りまし…た…」
「「「は????」」」
空気が凍る、
思わず固まる3人、嗚咽を漏らし我慢出来なくなったのか幼い風の巫女は堰を切ったように溢れ出す涙と共に涙声でうったえる。
「カイレ様が…先ほど
いつもの時間にお昼ご飯を取られていないのを不自然に思って様子を伺いに行ったら…ベッドから倒れていらっしゃって、息…してなくて…何度も呼び掛けたんですけど全然反応なさらなくて…わたし…うわあああああああああああん!!」
カイレ様が死んだ
この国でたった1人
使えば滅びの魔王すら御することの出来る道具を唯一使える御方が
死んだ…?
泣きながらその場にへたりこんでしまった巫女をいち早く正気に戻った女性陣が介抱しようと駆け寄った横で、固まったままのレイモンの脳内に浮かぶのははただ一つ。
破滅の竜王どうしよう
手から滑り落ちた書類の束が散らばる音だけが虚しく響く
カナミ・ブラッドレイ
種族は《水星天の熾天使》、Lvは古参プレイヤーのため当然100
ユグドラシルにおける天使は異形種、造形も全体を通して機械的な印象が強いためリアルマネーを注ぎ込んでカナミは好みの姿を作り上げた。
種族自由奔放な性格でコミュ力が高かったので色々なギルド間を友人伝いで転々とし、基本的にはソロ活動を主とするプレイスタイル。
スキル構成が天使の癖に状態異常全振り、猛毒狂いの近接職で、乱戦時の撹乱や陽動を得意とし、キャラコンも古参らしく非常に上手い。
転移した時期は大体十三英雄が魔人を討伐する為旅をしていた頃、転移後困惑していたところ偶然リーダー一行と出会い流れで加入し、この時点でパーティに同行していた〝白銀〟にこの世界についての基礎知識と自らの立ち位置について教えてもらった。イビルアイとも多少面識があり、よく作りかけの料理をつまみ食いしようとして共に料理担当のリグリットに叱られた(イビルアイはアンデッドなのを承知で毎回誘っていく)
その後紆余曲折ありパーティを脱退、以後数十年大陸を彷徨い続け、たまたま立ち寄ったスレイン領にて後に夫となるゲバルトと出会う。
人の形をしていても天使は異形、人間との子など産めるはずがなく最終的に「彼との子供が欲しい」と願いを叶えるマジックアイテムに願い、大量のレベルを犠牲に子を孕める身体へと肉体を変化させた。代償として出産の負担に耐えきれず産後体調を徐々に崩し、レイラ5歳の時病で帰らぬ人となる。
その一生に悔いはなく、汚れ切った現実から抜け出して得た出会いと冒険は今でも彼女の宝物、最愛の夫と娘に看取られてその死に際は穏やかだった。
なお彼女の遺体はアイテムの効果で多少変わったものの腐食しない天使の身体であり、今でもその美しい形を保ったまま辺境ローグレンツ内の彼女が一番好きだった丘の上の鐘付き大聖堂地下にて永遠の眠りについている。もしその安寧を乱すものが現れれば…〝血濡れ〟とその娘、果ては領内全ての人間から地獄を見せられることになるだろう。
ユグドラシルにおける天使について
フレーバーテキストがべらぼうに長い事で有名な種族であり、要約すると「ユグドラシルでもっとも穢れなき存在」。
その一言一句は全てが聖句であり、魔力を込めれば邪なものはたちまち祓われる。また完全な肉体を持ち身体は朽ちることなく、高位天使であればその遺体だけでも強力な魔除けの力を発揮する。半天使であるレイラももちろんその血を引いている為適当な事を喋って魔力を流し込むだけで大概の呪いの類は蒸発するし、耐性を持たないアンデッドや悪魔は堪らず退散してしまう。それっぽい台詞と口調で言えば更に効果up!運営の粋な計らいで聖書に纏わる台詞を吐けば高位悪魔だって怖くないぞ!どっかの悪魔と相性最高だな!
ただ本人にユグドラシルのフレーバーテキストとか分からないので
「なんかそれっぽい事言ったらアンデッドが蒸発しましたわ!言峰神父はやっぱスゴい!」くらいのノリで洗礼詠唱を詠む。
次回魔樹戦書くけど現在絶賛仕事がデスマーチ中なのでいつ更新できるか正直分からん、オイオイ死ぬわ作者