破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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こういった見切り発車の作品を地道に続けるコツを教えてやろう
都合のいい感想しか見るな、都合の悪い感想はブロしろ
正論ニキは二次創作相手に何言ってんだこいつって考えろ
モチベーションを保つ為なら手段を選ぶな

天使の種族レベルが入ってると職業レベルが積めない?
主人公は母親から《水星の熾天使》Lv5のみ引き継いで産まれているので下積みの天使種族値は入ってないよ!半天使だからネ!人間の比率が高いから職業レベルを沢山取れてるんだ!ユグドラシル的にどうなのか?うるせえオバロの世界は半分現実だろうが例外だってあるかもしれんやろイビルアイとかヴァンパイアプリンセスの種族レベルだけで埋まってる訳じゃないし問題ない問題ない(自己暗示)
ルーン職についても原作だとスミス系三職くらい収めてないと取れないらしいけど本作のルーン職は原作と別物なので専門職でなくても取得できるよ!ヘジンマールの持って来た本の中にはゴンドの収めたルーン職とは違う種類のルーン職が記されてたんじゃないかなきっとそうだよ多分(自己暗示)
これでいいか?

原作尊主ニキ達には悪いが本作はニワカ作者の書いた便所の落書きだから気に入らなければブラウザバックしな、ここから先は地獄だぞ



あ、毎回のごとく誤字脱字直してくれるニキには本当に感謝してます
ありがとう




12 破滅フラグの塊みたいな奴と相見えてしまった…

 

 

スレイン法国、神都中央部に位置する大聖堂。

政を行う為に使用される場、円卓に並ぶ12の椅子に座るお歴々は誰一人として一言も喋らず、その空気はすこぶる重かった。

 

意を決して口を開いたのは漆黒聖典統括神官長レイモン、その表情はかつてないほどに固い。

 

「状況を整理しよう。」

 

各々頷く神官長達、目を背けたくなるような現実など腐るほど見てきた彼等の心は強い。でなければこの席に座る事すら叶わなかっただろう。

 

「カイレ様が、お亡くなりになられた。

享年87歳、脳内出血だそうだ。もともとご高齢ゆえに復活も叶わない。」

 

この世界には便利な蘇生魔法が存在する。

使える者は極わずかだが死者の魂を冥界より呼び戻し、現世の肉体に収める復活の儀式。当然スレイン法国にも存在するし、此度に亡くなられたのは国の重要人物だ。普段なら躊躇なく行使するべきなのだが、神官長達の表情は固い。

まず、レイモンの言う通りカイレは既に高齢者。死者の魂を呼び戻すのに必要な体力など残っていないし、失敗すれば肉体は灰となって消滅し二度と呼び戻す事が叶わない。

 

ユグドラシル的に言うと『Lvが足りない』。

死者復活(レイズデッド)》は肉体の強度が一定以上でないと蘇生が失敗する、更に高位の魔法である《真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)》であればカイレの復活も叶うだろうが、この場に集まった者たちの中にそんな奇跡のような魔法が存在するなど誰が知り得ようか。知っていたとしても手段がない。

 

「これにより国宝『ケイ・セケ・コゥク』は使用者を失い機能不全に陥った。

我ら風花聖典も協力し全力をもって次代の依り代を探す予定であるが…」

 

口を開いた風花聖典を治める神官長の言葉に覇気は無い。

神々の遺した偉大なる遺産、ユグドラシルアイテムを使用するにはそれに適応する人物が必要だ。

風花聖典の所持する様々なアイテム群ですら法国の総力をもって選び抜いた適合者達であり、招集するのに多大な時間を要する。

ましてや国宝クラスのアイテムの適合者などこの国に存在するかすら不明である。砂漠の中で砂金一粒を見つけ出そうとするようなものだ。

 

「そんな時間、無いのだろう。

《占星千里》より得た報が正しければ。」

 

そうレイモンが返す。

 

「つい先程、彼女より伝えられた予言。

〝破滅の竜王〟復活が事実なら当初の計画は破綻する、国宝の新しい依り代を見つけるより先に奴が大陸を蹂躙するだろう。」

 

場所がトブの大森林、というのが更に話を難しくする。仮に大陸の中央部に位置するかの森から動かれた場合、被害は聖王国を除く全ての人類国家に波及してしまうからだ。

竜王がどれほどの脅威となるか不明だが、法国と帝国はともかくビーストマンの侵攻に明け暮れる竜王国は背後を突かれる形になるし、王国の場合は論外だ、十中八九抵抗もできず踏み潰されて終わりだろう。

 

「奴が動き出す前に居場所を特定し包囲、封印なり捕縛なり何らかの手段で自由を奪い『ケイ・セケ・コゥク』の後継者を見つけるまでの時間稼ぎとする。」

 

「おのれ、エルフとの戦争さえなければ火滅も遠慮なく投入できるものを…」

 

円卓を砕く勢いで火滅の長が拳を叩き付ける。

本来ならば彼の部隊も投入しなければ収まらない程の事態なのだが、現在法国はエルフと戦争中、戦線を下げれば敵国の増長を許してしまう。

 

「神々の遺産に竜王を捕縛できる代物はあったのかい?それを使用できる人物も、国内に居なきゃ意味がない。」

 

「可能性があるものは幾つか確認しているが、問題は適合者が1人しか居ない点だ。

名はエドガール・ククフ・ボーマルシェ、神器『革の戒め』に適性があり近いうちに聖典入りが期待されていた男。元老院の推薦のあった彼を竜王の下まで護衛し、封印を遂行する。」

 

正直、この方法では時間稼ぎにしかならず根本的な解決にはならない。レイモンとしては竜王の完全な撃破を目標としているのだが、議会では依然として竜王を国宝で隷属させる案が有力だ。それだけ竜王の力は魅力的なのだ。

 

「何れにせよ竜王の現状を把握するのが最優先事項となる、此度に限っては手段を選んではいられない。

入ってくれ。」

 

入室を促すレイモン。

誰に?神官長達の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。

 

いやいや、この作品をここまで読んだ諸君ならもうお分かりだろう。

 

そう

 

 

ドバァンッ(会議室の大扉を蹴り開ける音)

 

 

 

「ごきげんよう神官長の皆様!」

 

 

 

 

 

私ですわ!!

 

 

 

 

 

レイモン以外の円卓に座る全員が白目を剥いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっこらせ…っと。」

 

レイラを初めとした、現在法国に残っている漆黒聖典の面々が集合(みんなレイラの後ろから気まずそうに入ってきた)し、運び込ませたのはなにやらゴテゴテした大小様々な四角い箱の様なもの。

それぞれにルーン文字が刻まれており、円卓の真ん中にそれは設置された。

 

「《獄界絶凍》、これは?」

 

「映像を投射する装置です。

探知魔法を使用する術者と同調させる事でその者が見ている視界をこちらのレンズから投射し、壁に写す機能を有しておりますの。」

 

「いつの間にこんなものを…」

 

「理論自体は学生の頃から考えてましたわ、実物にするのに材料が足りなかっただけでしたから。

何度か試運転もしましたので安全性は保証致します、では…『巫女ちゃん、お願いしますね。』」

 

『承知致しました。』

 

《伝言》の魔法で連絡をとったのだろう。風花の神殿にいる巫女が儀式を開始し、遠見の魔法が発動。箱の突起から照射された光が壁に投影され、上空からの俯瞰視点でトブの大森林の様子が映し出される。

突飛なマジックアイテムもさることながら、初めて見る技術と景色に驚きの声を上げる神官長も多い中、レイラは口を開いた。

 

「さて、と。

こちらが現在のトブ大森林の様子です、風の巫女ちゃん協力のもとオンラインでお送りしておりますわ。

我々に必要なのは迅速な連絡と明確な状況把握の為の手段、事件は会議室ではなく現場で起こっているのです。神官長の皆様にも是非現実を見て頂きたくて、こちら御用意致しました。」

 

にっこり、と微笑むレイラの言葉に若干の棘を感じる。何人かの神官長が気まずそうに視線を逸らした。

そういうとこやぞスレイン法国。

 

「《獄界絶凍》、あとは僕が。」

 

「ええ勿論、お願いしますね隊長。」

 

レイラの圧に戦く面々、それを諌め前に出た隊長が切り出す。

 

「レイモン様の招集により我ら漆黒聖典9名、参上致しました。

概要も既に全員へ通達済み。神器所有者を護衛し破滅の竜王を索敵、神器による封印又は捕縛致します。

後は議会の承認を頂くだけです。」

 

どうぞ御用命を。

 

跪く人類最強の守護者達を前にして意気高揚する神官長達。信心深い彼ら彼女らなら必ずやり遂げてくれるだろう、満場一致で可決され漆黒聖典はトブの森へ派遣されることとなった。

 

 

 

……一人聖堂の奥でルビクキュー2面揃えに奮闘しているアンティリーネを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごきげんよう皆様、仕事ですわ!!!

 

私レイラちゃん、今皆でトブの森を大捜索して魔樹(あなた)をさがしてるの!

 

というわけでね、カイレ様亡くなっちゃいました!

…いやどういう事ですか!?ついこないだまで元気に私の領まで遊びに来て一緒にお話したじゃないですか!その時もお元気そうでしたのに…

 

カイレ様が死ぬのは原作がスタートした後、独断専行したシャルティアを洗脳しようとして《巨盾万壁(セドラン様)》と一緒に貫かれ殺されてしまうはずだったんですが、なにをどうしたら自室で大往生なんて話になりますの!?

おかげで中央政府は大混乱、当初の計画だった破滅の竜王洗脳作戦は要を失い御破算になってしまったワケなのですけど…おのれバタフライエフェクトォ!半分くらい私のせいなんでしょうが!

 

「まーだ上は竜王を洗脳する気でいらっしゃいますのね、頭スレイン法国ですか老人共は。」

 

「ねーちゃん、流石にそれはどストレート過ぎ…」

 

隣で義妹にツッコまれてしまいましたがここに居る全員分かっているでしょうに、現時点で洗脳が不可能な今、神器で拘束なんて生易しい事言ってられるほど竜王が軟弱でない事くらいねえ!

皆聞かないふりしてても私分かってますからね!隊長とか溜め息吐いてるの誤魔化さないし、番外ちゃんも出撃不可とか舐めてるんですか?

 

ま、現実見てもらう意味も兼ねて今回リアルタイムで観戦してもらうよう取り計らったんですけど。

 

初めは招集され漆黒聖典の顔ぶれが揃った時、《無限魔力》ちゃんの言葉からでした。

 

「ちょっとさあ、今回の仕事納得出来ないんだよね〜。」

 

って。

竜王が復活するのは良いとして、当時レイモン様と一緒にいた彼女と《占星千里》ちゃんが「議会はまだ竜王洗脳計画を諦めておらず、今回の出撃は国宝の新しい所有者を探す〝時間稼ぎ〟」だと知ってしまったこと。

概算Lv80越えの準レイドボス相手になーに悠長なこと言ってんだこのお排泄物共がって話なんですが、彼らは竜王の強さなんて正確に分かんないんですものね。知ってりゃ即番外ちゃん出動案件なんですが!そもそも人類側の現存戦力で勝てるか不明ですけど…

 

「竜王相手に洗脳の下準備の下準備なんて悠長な事言ってられる暇なんてねーんですのよ。」

 

何故さっさと討伐に踏み切らないのか、コレガワカラナイ。

 

「まあ、それも兼ねて現実見てもらう為に《獄界絶凍》ちゃんに色々用意して貰ったワケだけど、よくあんな代物持ってたね。」

 

射影機の事ですか?

アレは学生時代お遊びで作った玩具みたいなものなので大した事ないのですけど。

ルーン文字知ってからより安定して通信ができるようになったのでこうしてお披露目した訳ですの。

 

「報告、連絡、相談は組織の基礎中の基礎です。いちいち伝令使って時間かけながら上の指示待ちなんて前時代過ぎて欠伸が出ましてよ!」

 

「それで出発前に我々に()()を?」

 

隊長が自身の(こめかみ)に指を当てながら聞いてきます。

彼等に渡したのは《伝言》を使えるようになるマジックアイテムで、片耳に掛ける通信機のような代物。本来は我が領地での情報伝達を素早く行う為に私とヘジンマールちゃんで考案したんですよね。

実際に領地で使ってます、いちいち伝令飛ばすのも手旗信号リレーするのも面倒ですし。

通信範囲がさほど広くないので領内各所に中継塔を設置して効果範囲も伸ばしてるのですが、今回は隊員同士さほど離れる事もないので大丈夫でしょう。最悪クアイエッセ様の使い魔で中継させて貰いますか。竜王国に行った時持ってきた小鳥ちゃんで。

 

聞いててお察しの通り、このマジックアイテムは前世知識から着想を得て、製作、実現致しました。

安定した量産は出来ないんですが作り置きはあるのでこうして隊員に配布しても大丈夫。

 

へ?なんでこんなモン作ったのかって?

学生時代、破滅フラグをへし折る為になんでもしていた時期がありまして。手当り次第色んな研究に首を突っ込んでは試し、前世の知識も持ち出して試行錯誤してたんです。射影機やこの通信機モドキもその中の1つですわ。

 

『口だけの賢者』が原作でも扇風機モドキや冷蔵庫モドキを開発して後世に遺したように、こちらの素材と技術だけでも頑張ればなんとか再現できちゃうみたいです。

 

この世界において情報の伝達速度向上は必須!

情報を制する者は異世界を征すのですわ!《伝言》の魔法はこの世界だとあんまり良いイメージ持たれてませんけど、そこは私努力しまして、使用する《伝言》同士の波長を合わせて信頼性を高めると共に秘匿性も増しました。ユグドラシルにも盗聴魔法とかあったりしましたからね、向こうの設定(データ)にどこまで通用するか分かりませんが盗聴対策しておくに越したことはないでしょう。

 

「これを使えば隊員同士迅速に情報伝達ができますし、連携も取りやすくなる筈です。

破滅の竜王の前だと何が起こるか分かりませんからね。

それに、誰も知らない秘密装備で特殊任務なんて私達今とっても特殊部隊してるってカンジですわ!

実際のとこ男性陣、渡された時ウキウキしてたでしょう。」

 

「くっ…否定できない…!」

 

身体は正直ですわね男子ぃ!

 

ふっふっふ、我ながら準備が良い!

魔樹の復活が早まってしまった以上漆黒聖典を失う訳にはいきません、バタフライエフェクトで何が起こるか分からない今慎重に行動せねば!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エドガール・ククフ・ボーマルシェ

 

法国でも随一の名家、いわゆる〝有名どころ〟の家系ボーマルシェ家に生を受け、かの神々の子孫の証である血を覚醒させた逸材である。

その軌跡は才気に溢れたもの、学生時代は常にトップをひた走り、実技も座学も負け無しの正に神童と呼称するに相応しい男だ。さらに人格者で信仰心も厚いとなればもはや聖典入りは秒読み段階、彼には法国民として輝かしい未来が待っている事だろう。

 

調査の結果、選ばれし者しか使用できない神々の遺産を扱う資格を得たと判断された時、彼は確信を得た。

 

俺は選ばれた存在なんだ!

 

 

他の凡百とは違う、自分が特別である自覚。

正にエリート中のエリートであり、これからの法国を引っ張っていくに相応しい人物であると自らの心に刻み、本日初めて巷で密かな噂になっている〝漆黒〟の名を冠する聖典の隊員達と行動を共にしている。

 

隊長は若く、細めの優男ながらその目付きは鋭く常に油断せず状況を把握している。先陣を切り皆を纏める統率力も高く、リーダーに相応しい人物なのだろう。

 

隊員は皆独特の雰囲気だ。

法国の遺産に身を包んでいるので他の聖典のような統一感はないが1人1人が纏う気配は歴戦のそれであり、例え自分が喧嘩を売ったら歯も立たずに負けるだろう。

あ、先程から後衛に徹している眼鏡女子は除く。彼女はサポート役だと予め説明を受けたので。

 

このような人達と共に働けるなんて望外の喜び、そして自分もいつかその中の一人に名を連ねるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

「このサラダサンドうめぇな…」

 

「ふ、そうでしょうそうでしょう。

僕が仕事の合間を縫って改良に改良を重ねた品種です、その完成度たるや、みずみずしさは正に神域に達しているといえる。

特に中に挟んでいるこのトマト!

至高の甘みを出すためどれほど《獄界絶凍》と試行錯誤を繰り返したか…自信作です。」

 

「《一人師団》、君だんだん老後の公務員みたいな生活になっていないか?少し心配なんだが。

野菜が美味しいのは認めるが。」

 

「おいコラ《疾風走破》、そのハムサンドは俺が抑えてただろうが!返せ!」

 

「えーこれは私のだけど?

証拠でもあんの?《巨盾万璧》ちょっと自意識過剰なんじゃなあい?」(ニヤニヤ)

 

「証拠も何もそれ俺の齧りかけなんだよ!」

 

「え、なんだぁ汚い。」

 

「人のモン盗っといてなんつー言い草だ!?」

 

「ちょっと、《無限魔力》がサンドイッチ喉につまらせてる!ナッちゃん先輩お水お水!」

 

「《神聖呪歌》とお呼びなさい、貴女最近《獄界絶凍》の悪い癖が移ってますね…」

 

「水とお茶とオレンジジュースありますけどどれにします?

《無限魔力》ちゃんはオレンジジュース好きでしたっけ。」

 

「……!(なんでもいいから早くくれ!という顔)」

 

 

 

 

(なんだろうか、これは…)

 

 

 

すごく、ほのぼのです…

 

 

トブの森侵入後、周囲の安全を確保した一行は〝破滅の竜王〟捜索のため《一人師団》ことクアイエッセの使役するモンスターに索敵を任せ、現在報告待ちで休憩中だ。

人類未開の地であるトブの大森林、その内部に我々は居る。普通なら警戒のひとつでもする所だが索敵を始めてしばらく、突然《獄界絶凍》と呼ばれる女性が手にした鞄からピクニックシートを広げ始めた所から始まる。

 

「そろそろお昼にしません?

軽くですが作ってきましたので、使い魔の報告が上がるまで休憩しましょう。」

 

何を言ってるんだこの女は

 

エドガールが思った正直な感想だった。

国宝使用不可のうえ竜王復活の報を受けて厳戒態勢の今、国の最重要部隊たる漆黒聖典が呑気に休憩などしていて許されるのだろうか。

しかし他の隊員たち、更には隊長まで同意しこうして休憩時間に浸っている。

 

「よ、よろしいのですか?作戦行動中では…」

 

「《一人師団》の使い魔に任せておりますので問題ありませんわよ。

一流の戦士たるもの常に余裕をもって優雅たれ。

使い魔が帰還するまで暇ですし。人間、食える時に食っておかないと肝心な時に力が出ませんからね。ボーマルシェ様もどうぞ。」

 

《獄界絶凍》、そう呼ばれる女性からサンドイッチを渡され困惑しながらもそれを頬張る。

 

めちゃうまだった、人類最強の特殊部隊は料理も一流なのだ!

 

 

 

そんな休憩タイムを挟んで少し、使い魔が帰還した《一人師団》の表情が険しくなる。

 

「見つかったか?」

 

「ええ、此処から3キロほど離れた森の奥。

周囲の木々が不自然に枯れ尽くしたエリアが広がっているようです。

周囲にモンスターや亜人の気配はなく中央部には葉も枝もない大樹が一本聳え立っていると。」

 

「わーお何それ、絶対アタリじゃん。」

 

ヘラヘラ笑うクレマンティーヌ、その目は全く笑っていないが。

《無限魔力》がやっと喉の詰まりを治したのを見た隊長は手元のオレンジジュースをぐいっと飲み干し息を整え、宣言した。

 

「漆黒聖典、行動を開始せよ。」

 

無言で頷き合う面々、その表情は真剣そのもの。

強者が放つ独特の気配、思わず冷や汗を流すエドガールは彼等の雰囲気に呑まれていた。

さっきまでのピクニック気分が嘘のようだ、このメリハリも彼等が一流たる所以なのだと改めて実感する。

 

 

 

 

 

《一人師団》の使い魔に導かれるまま進む一行はやがて開けた場所に出た。

森の奥だというのに周囲に木々は一切なく、赤茶けた平原が広がっているようだ。その中央、枯れた木々が墓標のように点々と立ち並ぶ真ん中に不自然なまでに幹だけ伸びた巨大な樹木がどっしりと地に根を張っている。

 

「明らかに怪しい〜…」

 

「こんな自己主張激しい竜王とかあります?」

 

「周囲にモンスターの気配はなし、恐らく本能的に竜王の存在を察知し殆どの個体が立ち退いたのでしょう。」

 

「そんで立ち向かったであろう一部の連中の成れ果てが、コレって訳か。」

 

《人間最強》が下を見やり、足で転がすのは山羊の頭のような形をした大きな頭蓋骨。

自分たちよりよほど大きなモンスターが此処でなにかと戦い、死亡したのだと判断できる。

 

「ふむ…」

 

レイラが(おもむろ)にその白骨死体を触ると握ったそばからボロボロと崩れ落ち、灰のように空中に溶けて消えていった。

 

「損傷具合を見るに腹を一撃で突き破られ絶命しているようですわね、骨も触れれば崩れる程極度に乾燥していて…一体何をされて死んだのかしら?」

 

 

 

 

「おーいキミ達!キミ達ぃ!」

 

 

『ッッ!!!』

 

 

隊員のものではない、聞き慣れぬ第三者の声に思わず全員が警戒態勢をとる。

煤けた平原の隅っこ、ポツンと佇む樹木から声の主は現れた。

 

ドライアード、名はピニスン・ポールペルリアというらしい。この辺りに産まれた木々に宿る妖精でこの辺りの情報を一番理解しているとして事情聴取をする事に。

漆黒聖典の面々に囲まれるさまは若干圧迫面接感があるが…

 

「なるほどぉ?つまりアンタはそこの魔樹ってのに怯えながら『英雄様』ってのを待ってると…それって何年前の話よ?」

 

「わ、わかんないよ。前に会ってから沢山太陽が登ってるから…」

 

妖精故に時間の感覚が曖昧な彼女に露骨に顔を顰める隊員たち、特にエドガールなどは亜人軽視の意識が強い神都育ち故に嫌悪感を顕にしている。

そんな中、ピニスンの言葉を頼りに情報を整理すると先ずこの魔樹が封印されたのは推定数百年も前の話、執り行った7人組の英雄達も姿と種族くらいしか参考に出来ることはない。そもそも生きているのかすら不明だ。

今までは時々根が暴れ周囲のモンスターを襲う程度だったのだが、ここ最近その頻度が増え周辺のモンスターは絶滅。更には地中で根が蠢き他の木々にまで被害を出す始末なのだそう。ピニスン自身も魔樹の《絞め殺す蔦(ギャロップ・アイビー)》により今もじわじわと養分を吸い取られている現状だ。

 

「ほら今も魔樹が蠢いてる!」

 

「いや俺たちには分からんし。

隊長、お偉方はこの状況を観てるんだろ?だったらさっさと拘束なり封印なりしちまおうぜ。いつまでもこんな辛気臭い所に居らんねえ。」

 

「そうだな。

ボーマルシェ殿、準備をお願いします。」

 

「承知しました。」

 

エドガールが国より託された神器『革の戒め』。

言い伝えによれば鈍色に輝くその鎖は万里の彼方まで届き、神すら縛る強い拘束力を誇るそのアイテムは法国中央政府の承認によって此度の持ち出しが可能になった。

 

 

 

 

突然だがスレイン法国は嘗て六柱の(プレイヤー)により建国された国家である。

竜帝の起こした異変により空想(ゲーム)の世界からやってきたプレイヤー達、彼等が遺した遺産もといユグドラシル産のアイテムは異世界(こちらの世界)で運用される際、法国内に神が直々に書き記した伝承書によってその効果を把握し適合者を捜索している。

 

(なーんか引っかかりますのよねぇ…)

 

600年という長い月日が経ち、劣化しないマジックアイテムとは違い人々の伝承は薄れ変化していくものだ。

 

(あの魔樹は原作でいうところのレイドボスクラスなのでしょう?

『革の戒め』が拘束系のアイテムだとして、ゲーム世界のアイテム一つで易々と封印なんてできるのでしょうか?それこそ原作のワールドアイテムくらいでないと…)

 

そして今代の神官長が『革の戒め』の効果を都合のいいように解釈した結果、元老院は誤った判断を下した。

 

(…ッ!)

 

「神器よ、その力でかの竜王を鎮めたまえ!」

 

振り掲げた鎖の束が光り大樹へと躍りかかるその刹那

 

 

 

ぞぶり、と

 

 

エドガールの背を何かが貫いた

 

 

 

 

確かに革の戒めは敵を拘束する。

が、拘束するだけだ。

封印するなんてどこにもテキストに記載されてないしそんな効果もない、もちろんボス相手に半永久的に拘束など以ての外。そしてゲームバランス的に考えて、そんな拘束系アイテムの使用者など真っ先に狙われる(ヘイト値を稼ぐ)システムになっている。

その結果がこれだ。

 

「ボーマルシェ殿ッ!!?」

 

叫ぶ隊長と同時に地面が不自然に蠢き出す、怯えるピニスンがそこらの地面を指さしながら絶叫した。

 

「わああああ嘘だ嘘だ!

もう完全に復活してるじゃないかあ!」

 

次々と地面から盛り上がる木の根、先は鋭利に尖っておりうねうねと蠢くそれはまるで生き物のように脈動し、隊員達へ殺到する。

 

 

「ジゼェェルッ!!!」

 

 

次の瞬間、レイラが叫ぶと地面に突き刺したハルバードから冷気が迸り、イガグリのように尖った無数の氷柱が的確に躍りかかる根を串刺しにして凍らせた。この時になってようやく全員が襲撃を察することが出来た。

 

「隊長、ボーマルシェ様を!」

 

「分かってる!ああクソッ…

ボーマルシェ殿!ボーマルシェ殿!」

 

間髪入れず撃杖を抜いたレイラの放つ氷の弾丸がエドガールを串刺しにしていた根をぶち抜いて、腹に穴を空けられた彼が力なく地に落ちる。

駆け寄った隊長が手元のポーションで回復を試みるが失った血は取り戻せず依然として意識が無いままだ。

 

(血を吸われている…!

いや根を使って水分を吸っているのか!?

さっき《獄界絶凍》が調べていた遺体が風化するほど乾燥していたのはこれが原因か!)

 

あのまま根に血を吸われ続けていればエドガールは間違いなく死んでいただろう、隊長は戦慄した。

 

気付けば周囲は蠢く木の根で覆い尽くされ、まるで地面が波打っているかのよう。

 

「全員ひと固まりになれ、絶対に死角を作るな!

《一人師団》と《占星千里》は状況の確認急げ!」

 

「了解…ッこれは不味いですね。」

 

「あぁ…うそ…やだやだやだやだ!」

 

青ざめる《占星千里》が示す先、震撼する大地に蠢く根の大元となるひときわ巨大な大樹の幹、その中程がビシビシと音を立てながら横に大きく裂け、更にその上二箇所がひび割れ内部に赤い光が灯る。

それはおぞましく、引き攣った笑みを浮かべた笑顔のように。

 

もはや探知など掛ける必要も無く全員が目撃した

 

射影機を通し、映像だけであるが神官長達も見ている事だろう

 

全長100メートル長、はるか昔に空想より零れ落ちた理不尽の塊、世界を滅ぼすとまで揶揄された恐ろしき魔樹の復活を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジか、この巨体が動くのかよ…」

 

思わず見上げる《人間最強》、普段なら見上げるほどある彼の巨漢でも巨人と小人くらいのサイズ感がある。他の隊員も一様に奴の一挙手一投足を伺い厳戒態勢を緩めない。

 

「わ、わ、わ…こっち来るぅ!」

 

また、ピニスンが叫ぶ。

蘇った魔樹は軋むような唸り声を上げると先程とは比べ物にならない量の根が地中から盛り上がり一直線へこちらへと襲いかかってくるではないか。

 

「「《獄界絶凍》(隊長)ッ!!」」

 

常人では到底反応できない速度で迫る根の槍をパーティきっての高レベル二人が次々と叩き斬っていく。

 

「総員戦闘態勢!此処で応戦するぞ!」

 

「なんでよ、今からでも撤退すればいいじゃない!」

 

「瀕死のエドガール様と使えない神器を担いで撤退できるほど状況は生易しくありませんのよ!」

 

焦り撤退を推奨する《占星千里》、だが今も根を斬り捨てるレイラの言う通りだ、撤退しようにも来た道は暴れ狂う根に阻まれて戻る事も出来ない。

隊長は先程助けたエドガールが血を吸われていた事を説明すると何かを察した《占星千里》は鞄から地図取り出し眺め、顔を更に青ざめながら呟いた。

 

「ちょっと待ってよ、あの竜王ってもしかして…」

 

「あー…私も気づいちゃいました。

これって対応誤ると絶対ダメなやつですわね。」

 

「オイなんだよ2人して、説明しろ!」

 

《占星千里》の示す地図、嘗て暇つぶしと千里眼の練習も兼ねてトブの森周辺を覗き見し大まかな地図を作った事がある。アゼルリシア山脈の(ふもと)に位置するこの大森林は豊かな自然が育む好立地だ、そしてアゼルリシアから流れ落ちた雪解け水は地下水を通じて大森林の自然に濾過され川へ流れる事で周辺国へと伝っていく。

言わばこの森は巨大な浄水施設だ、気付くものは少ないがこの森がなければ王国も帝国も竜王国も、法国だって安心して水を当たり前のものとして享受する事などできはしない。

 

「《人間最強》、貴方朝起きたら先ず何をします?」

 

「なんだよ急に、祈るに決まってんだろ。」

 

「なら次は?」

 

「顔を洗わねえと一日始まらねえ。」

 

「次。」

 

「ホントどうした?

そりゃ寝起きで口ん中カラッカラだから一杯の水で喉を………オイ、マジか。

竜王の目的はそれか!」

 

そう、竜王も寝起きだ

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「あいつ、この辺の水を吸い尽くす気だ!

急いで阻止しないと法国どころか他国までヤバい!」

 

仮にトブの森が竜王の手に堕ち、ここら一帯のように水も養分も全て吸い尽くされたとしよう。

アゼルリシアから流れる水は濾過されることなく諸国へ垂れ流される事になり、結果付近で水不足が多発する。綺麗な水を求めて人々は争い、やがて人類存続に影響を来すまでになるだろう。

 

 

「ナッちゃん!私に〝敵視誘導(ヘイト・インダクション)〟の(うた)を!」

 

「はあ!?何を言ってるの《獄界絶凍》!

あれはモンスターに付与する詩ですよ、そんな事したら貴女に竜王の攻撃が殺到します!」

 

「それが目的でしてよ!

私がデカブツを引き付けますわ、さもないと最悪此処で全滅して法国はおしまいです!」

 

「オイ待てよ、壁役は俺の仕事だろうが!?」

 

「じゃあ貴方、さっき根の動きが見えました?反応出来ました??」

 

そう言われ《巨盾万壁》は言い返せず俯いた。

この世界は残酷だ、レベル差が大きいと理不尽なまでに圧倒されてしまう。彼にはあのうねる根の一撃を目では追えても身体が反応できなかった。

《神聖呪歌》のバフや武技の重ねがけで漸く反応できる程度だろう。

 

「隊長は全体の指揮がありますし、単騎でも戦えて機動力のある私が囮に適任でしょう。

ピニスンちゃん、お願いがあります。」

 

「えっ僕かい…?な、なんだよぅ。」

 

「貴女、地面に根付いているから魔樹の根が何処から来るの察知出来るのでしょう?

さっきも竜王が動いたのを一番最初に気付いていましたし、なら伸ばす根が何処から来るのか彼等に教えて下さいな。」

 

少し、手伝って頂けませんか?

 

にっこりと笑うレイラ、裏表なく必要ならば種族問わず助けを求め、求められればそれに応えるのが彼女のモットーである。他の隊員達も何も言えない、その手段が現状一番生存率が高くなる方法だと気付いているから。そしてそれはピニスンにも言えること、その誠実っぷりに思わず頷くしかなかった。

 

「話は纏まりましたわね、隊長!」

 

「ああ、ドライアードを取り囲むよう死角を潰し陣形を組め。

《神聖呪歌》は言われた通り《獄界絶凍》へ〝敵視誘導〟を付与、《占星千里》は弱点の偵察を、《一人師団》はテイムモンスターを使い陽動の手助けを行い撹乱しそれ以外は後衛職を守護しつつ周囲の安全確保を優先しろ。決して背後は取らせないよう心がけ行動するように。

《無限魔力》はボーマルシェ殿を頼む!」

 

「りょーかい、コイツお荷物だなぁ…」

 

「おっと《無限魔力》ちゃんそれ以上いけない。」

 

「この状況を神官長様方も見ておられる筈だ、じき指示が下るだろう。

なら僕らは何がなんでも生き残る、正念場だ漆黒聖典!」

 

 






主人公(Lv85~90 前衛:魔法戦士職)
隊長(Lv70前後 前衛:戦士職)
《疾風走破》(Lv60前後 前衛:軽戦士)
《一人師団》(Lv45前後 後衛:ビーストテイマー)
《人間最強》(Lv50前後 前衛:斧特化戦士職)
《巨盾万壁》(Lv40前後 前衛:タンク)
《無限魔力》(Lv60代 後衛:魔力系魔法職)
《神聖呪歌》(Lv40代 後衛:吟遊詩人+神官職)
《占星千里》(Lv30代 後衛:情報特化型後衛専門職)
ピニスン(Lv5〜10:移動不可)

VS

封印の魔樹(Lv80+トブ大森林の栄養価の高い肥沃な土)×1
魔樹の根っこ(Lv45〜50)×無限湧き


ファイッ



次いつ投稿出来るんやろかワイ…誰か座ってるだけで手取り20万の仕事紹介してくれ
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