破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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※今回の話の特徴※

うん!オリジナル設定さ!

別サイドのお話なのに長い!

キャラ崩壊も甚だしいぞ!









20 SideOPS:聖王女でも○○がしたい!

 

 

 

さて

 

レイラ達スレイン法国の面々が王国へ潜入し、犯罪組織撲滅の為裏で色々と画策している頃と同時期に。

 

スレイン法国より、アベリオン丘陵を挟んで西側に位置する人類国家にも少なからず動きがあった。

 

名をローブル聖王国、国土の大半を海に囲まれ、丘陵に蔓延る亜人たちとの熾烈な生存戦略を今も繰り広げるかの地。

その首都、ホバンスに位置する王城に座するのは正装を纏ううら若き女王であった。

 

愛らしさと凛々しさを備えた花のように美しく整った顔。

長い金色の髪は艶やかで光沢を放ち、天使の輪を幻視させるその風貌はまさに国の至宝といっても差し支えないだろう。

 

名をカルカ・べサーレス

 

聖王国の歴史上初となる女性聖王にして10歳という若さで第4位階魔法までを習得した才女である。

因みに現在22歳、恋人絶賛募集中。

 

そんな彼女は現在、聖王の玉座に腰掛け、北部の貴族達が集うなか目の前に跪く部下の報告に耳を傾けていた。

 

 

「ーーーーーー以上がスレイン法国で我々が視察して来た内容でございます。

公文書に記されていた通り、かの国は永きに渡る宗教的対立関係を解消し我が国との融和を望んでおります。

つきましては文化交流をはじめ、両国による本格的な資材の取引、亜人の紛争に巻き込まれる我々への支援も行いたいと…」

 

 

事の発端はスレイン法国より届いた一通の公文書。

 

国と国のやり取りを公的に綴ったものゆえ、難しい事が長ったらしく記されていたが要約すればこうだ。

 

『我々は人類繁栄の為、過去の因縁や宗教的価値観を乗り越え手を取り合い、生き残るためお互いに協力し合うべきだ。

手始めに使節を送って、お互いの文化を視察して距離を縮めていこう。

そんでゆくゆくは物資の取引とかやらない?』

 

ローブル聖王国とスレイン法国、この二国間の関係には永い間空白が存在していた。

理由としては2つ。

 

先ず物理的に距離がある。

隣国に他人間国家の接する法国は兎も角、聖王国の周りは海に囲まれた半島だ。一番近い人間国家は海を越えた先にあるリ・エスティーゼ王国の沿岸都市である。

幸い陸路は繋がっているものの、間にあるアベリオン丘陵は亜人達のテリトリー。様々な種族の亜人が武力によって覇を競い、己の生存圏を主張し半ば紛争状態となっている彼の地を横断するのは自殺にも等しい。

 

そして信仰の違い。

法国には六柱の(プレイヤー)を元に作り上げた六大神信仰という宗教の形があるのに対し、聖王国にはそのうち光と闇を差し引いた四大神信仰が存在している。

おそらくは、嘗て法国を建国したプレイヤー達が別の場所で興した国のひとつが後の聖王国の基盤となり、そこに関わった者がたまたま4人だけだったからではないかとされているが、あくまで想像の域を出ない。

 

それでも聖王国民にとっては建国当初から伝わる由緒正しき教えであり、それ故に異なる宗教を持つ法国と(くつわ)を並べる事に些かの抵抗もあろうもの。

 

使節を務めた外交官により述べられる内容にはこちらにとって不平等になるような条約や、経済的不利を被る取り決めなども一切なかった。

それでもこの場に並ぶ貴族の面々の表情は渋い。

 

 

「ありがとう。

どう思う、ケラルト?」

 

 

そう女王は零し、隣の女性を見やる。

茶髪の長髪にカルカにも負けず劣らずの美貌を持つ彼女は聖王国神官団団長、女王を支えるカストディオの両翼とされるケラルト・カストディオだ。

 

 

「……ハッキリ申し上げるなら、異常ですね。

かの国とは建国以来殆ど接点もなく、お互い不干渉を貫いていました。

それが今になっていきなり国交を結びたいなど…裏があると捉えるのが当然かと」

 

 

女の身と侮るなかれ、ケラルトはカルカ即位後もその座を支え、反発する南部貴族達を押さえ込み続けた手腕は本物だ。

そんな彼女が警戒心を顕にしたのを見て、同席する貴族達はますます表情を固くした。

 

 

「私としては、仲良くできるのならそうしたいのだけどね」

 

「あくまで利益目的の外交であるなら問題ないでしょう。

土地柄ローブルは他国との国交が少ない。陸路は亜人で塞がれて、頼るのは海路のみです。それすらシードラゴン様の護衛付きという条件でしか安全を確保できていない。

そんななか法国は何が目的で取引がしたいのか、気になるところではありますが…」

 

 

ケラルトの言葉にカルカは少し考える仕草をとる。

彼女の掲げる政治は皆を慈しみ、苦を取り除く為の統治に重きをおいている。

「弱き民に幸せを、誰も泣かない国を」とは彼女が残した言葉だ。その言の通り善良な彼女は民からも愛されており、巷では「清廉の聖王女」の異名で親しまれている。

しかしその反面、非情になりきれないその甘さで強い態度が取れず一部の貴族との遺恨が燻り、特に南部の貴族達からは「甘い選択しかできない無能」と(そし)りを受けることもしばしば。

 

まあ、表立ってそんなことを言ったが最後、隣に控えるケラルトに苛烈な報復を受けること必然なのだが。

 

 

「聖騎士団団長殿はどう思いますか?」

 

「支援が貰えるなら貰っておけばいいんじゃないか?」

 

 

貴族の問いにカルカの隣、ケラルトとは反対側に立つ者。

カストディオ姉妹の姉の方、レメディオスが大きな声で言い放つ。

 

 

「ただでさえ前線は物資が不足しているのだ、腹が減っては戦ができん」

 

 

直情的な彼女は「貰えるものは貰っとけ」の精神だ。

事実アベリオン丘陵付近の防壁拠点は度重なる亜人の襲撃より年がら物資不足になやんでいる、国から出せる量にも限界がある以上この話は渡りに船。任務で前線へ出る事が多いため、現場の状況をよく知るレメディオスの一言は重い。

 

しかし困っているから助けてもらう、で片付かないのが国交の常である。

 

物資を支援する対価としてスレイン法国は一体何を求めてくるのか?これがわからない。

 

 

「姉さんの意見は兎も角、詳しい事情は明日いらっしゃる法国の外交官から聞かないとなんとも。

対話の中で彼らの目的も自ずと見えてくるでしょう」

 

「そうね、ではスレイン法国の件はひとまず置いておくとして…次の報告をお願いします」

 

「はっ!

以前より対立関係にある南部貴族の現状ですが………」

 

 

聖王国南部にはカルカの統治を嫌い、隙あらば追い落とそうとする連中がいる。そこから述べられる報告に対してケラルトの笑みが怖いほど深くなったのは言うまでもない。

 

聖王国において対法国についてのあれこれはかなりデリケートな問題だ。

 

別にカルカやケラルトがスレイン法国に対して憎んでいるだとか、特別な感情があるわけではない。

会ったこともない相手に「昔からそうだから」とこちらの価値観を勝手に押し付けるのは愚者以下の思考。聖王女は窮地に陥る国のため、その差し伸べられた手を取ろうとするだろう。

だが南部の貴族に今回の件が知られれば「聖王女は永年の仇敵に手を貸す愚王」だとか好き勝手なことを言いかねないし、ただでさえ徴兵で負担を強いている国民の反発も幾らか予想される。

善性ゆえ強い態度を取れずなあなあで国を治めていた反動だ。そこから一歩踏み出す事ができるかは聖王女カルカの政治手腕に掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

笑顔の怖いケラルトの視線に怯えながら続ける士官が全ての報告を終え、今日の会議は無事終了。

貴族たちは各々の領地へ戻り、大臣との打ち合わせを済ませ彼が出ていった後カルカは軽く溜め息を吐く。

 

此処にはもう馴染みの顔しかいない。

 

 

「スレイン法国、悩ましいわね」

 

「まったく、面倒な問題を持ち込んでくれたわ。

…いえ、上手く転がせば鬱陶しい南部貴族達への牽制に使えるかも。」

 

「言っておくけれど、あまり非情な手段は止めてね?」

 

「分かってます。

けど南部へ圧力をかけるにはもってこいの申し出だし、これを機に南北統一をさっさと済ませてしまいたいですね。

亜人達の動向も最近きな臭いので」

 

 

難しい顔をするケラルト。

周りを海に囲まれ、唯一の陸路は亜人の生息地と隣り合わせ。ローブル聖王国は国家として生まれ落ちた時からずっと侵略問題に悩まされている。

亜人は総じて凶暴な種族だ。

アベリオン丘陵にて、今も亜人同士の覇権争いは行われている。力が全ての彼等にとって弱き人間の領地は格好の的、捕えた人間は食料にするも良し、奴隷にするも良しの貴重な素材だった。

故に聖王国は国境付近に要塞線と長大な防壁を築き、多大な犠牲を払いながら必死に今日までその土地と尊厳を守り抜いている。

 

最近では歴代最強と名高い聖騎士団団長によってその勢力を押さえ込みつつあるものの、完全な解決には至っていない。

 

この世界において種族差とは即ち食物連鎖のカーストそのものだ。

一般に『亜人』と称される個体は生き物としての生命力、腕力、脚力、果ては特殊能力などが人類のそれを軽く上回っており、食物連鎖の中でも上位に位置している。

対してこの世界の人類には僅かばかりの知力と短命故の繁殖能力しかなく、ひと握りの強者しか彼らに対抗出来うるものはない。

事実、この世界の人類が大陸の端で細々と生きているのがその証左だろう。

大陸中央部に存命する人類は食用家畜同然の扱いを受けている事を知る者は多くない。

 

運良く残っている土地もはるか昔、竜帝の行った『世界の根幹を揺るがす程の大魔法』によって現れるようになった“プレイヤー”を名乗る者たちの気まぐれによって辛うじて得られた生存圏だ。

その事を国ぐるみで理解し、何とか人類を存続させ続けようとしているのは現状法国のみである。

 

聖王国だって現人類の今を理解しているつもりではあるが、戦力差を踏まえ場当たり的な対応しかできないのをカルカは歯痒く思っていた。

 

 

 

 

国内問題に関しては…南部のつまらない意地の張り合いに付き合わされているだけだ。

カルカが歴代初の女聖王である事が気に入らないだとか、強い政策が取れないことを無能扱いして悦に浸る本当の無能どもの相手など好んでしたくない。

ケラルトとしては、聖王を軽侮する連中を可能な限り屈辱的な方法で失脚させるくらいで許してやろうと思っている。

 

方や国内問題、方や亜人侵略、両方解決しないといけないのが最高位神官の辛いところだ。

 

 

「ケラルトも賛成しているなら問題ないな!

法国と仲良くすればいいじゃないか、支援も貰えて南部連中も黙るなら一石二鳥だ!」

 

「はぁ、この世全ての人間が姉さんくらい素直ならこんなに悩む必要もないのにね…」

 

 

良く言えば直情的、悪く言えば難しいことは考えない(られない)レメディオス・カストディオ。

根っから猪武者な姉に苦笑しつつもケラルトは考えを巡らせる。

 

本音を言えば欲しいのは物資だけではない。

度重なる亜人の襲撃は物だけでなく人だって消費する、現実問題として聖王国は深刻な人材不足に見舞われていた。

 

特に即戦力となる人的資源の不足は致命的だ、いくら歴代最強の聖騎士と誉高いレメディオスがいるとはいえ、彼女だけで全てが補えるはずもなく。何度も実戦を積み重ねて得られる戦の経験や知識、判断力などは訓練ではどうにもならない。

徴兵で教え込むのには限度があり、数は揃っても質が見合わない…なんてのはこの国ではザラだ。生半可な兵では壁にもならない、それほどまでに人と亜人の種族差は大きい。

個人の強さが所属する国の国力に直結するこの世界において、強者の数で劣るのは亜人に対抗する上で非常に心もとない。かといって育成しようにもひっきりなしに亜人は攻めてくるのでその場の対応で手一杯だ。

まだ表面化はしていないが、聡いケラルトなどはこの現状を危惧している。

 

なので本音を言えば欲しいのは即戦力となる人的資源、つまり法国の保有する軍事力の貸し出しを要求したい。

 

そして彼等が前線を護ってくれている間に兵の育成を行い、より精強な兵による防衛線を構築すれば一先ずは持ち直せる。

実際、こちらで掴んだ情報によればアベリオン丘陵の向こう側、竜王国ではビーストマン襲撃の折に法国から軍隊を派遣し戦況を覆すほどの戦果を上げたのだとか。その代わりとして竜王国は法国に多額の寄付を収めているようだが。

 

 

(南部貴族からの反発は確実、もし派遣要請が通ったとしても法国から王国の港を経由して要塞線までいちいち渡航させるなんて現実的ではないし、費用だって馬鹿にならない。

欲を言えば単騎で絶対な戦力を持ち、尚且つ聖王国へ常駐してくれる強者の投入なのだけど…そんな美味い話あるわけないわよね。噂になってる『戦女神』とやらも竜王国へかかりきりのようだし。

亜人に勝っても資金が尽きましたじゃ笑い話にもならないわ)

 

「大丈夫ですカルカ様!

御身の理想を邪魔する亜人共など全員この私めが剣の錆にしてご覧にいれましょう!」

 

「姉様…」

 

 

そうではない、そうではないのよ。と喉からでかかったケラルトだったが、実際彼女の武力依存になる点に関して、悔しいが異論を唱えることができないのが現状だ。

確かにレメディオスは強い。

歴代最強と謳われるほどの実力を持つ彼女だが、それでも守り切れるのは戦場の一部のみ。長い長い要塞線の全てを守り切ることなど土台無理な話だ。

「私があと10人居れば防壁周りは完璧なのにな!」

と雄弁に語る彼女を目撃した事だってある、事実その通りなのだけど、あの姉が10人も増えたら部下が心労と過労で全滅してしまうわ…と想像してしまうケラルトだった。

 

 

「そういえば、件の外交官の方はもう入国していらっしゃるのよね?」

 

「はい、謁見は明日ですがその前乗りとして。

一応護衛兼監視は付けていますが、特に怪しい動きはありませんでした」

 

「他国の来賓を監視だなんて心苦しいけれど、仕方ないわよね…」

 

「事態が事態ですから。

それに南部が彼に接触してくるかも知れませんので、そのためにバラハ殿とグスターボ殿にお願いしています」

 

 

ケラルトの出した2人の名は聖王国でも特に優秀な軍人であり、国に9人しか存在しない『九色』の称号を持つ人物たちだ。来賓の外交官殿に危害が及ぶ事は万に一つもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会議は終わり。ケラルトは自室に、レメディオスは王城の兵士たちに稽古を付けると言ってやる気満々で出て行った。

 

 

「…よし、と」

 

 

衣服を着替える。

 

清楚で華やかなドレスはしまい、黒や茶色の多い地味めで目立たない、村娘のような出で立ちの服装。

髪の毛も隠せるようにフード付きのローブを纏い、この時のためにカスポンド兄さんから貰った認識阻害の効果を持つモノクルを装着する。

聞けば元の持ち主である兄も煩わしい教育の合間を縫って、気分転換の為お忍びでこの装備を使って城下へ降りていたらしい。聖王女に就任した際、「お前もきっと俺と同じ道を辿るだろうから、これを譲ろう。だがくれぐれも危険な事はするなよ」とこっそり譲り受けたマジックアイテムだ。

 

彼と同じ道、即ち…

 

 

「久しぶりに街に出たい…!!」

 

 

息抜きがしたいのです!

 

 

私はこの国の王族、ひいては女王、歴代初の女性聖王。

覚悟していたとはいえ、当然降り掛かるストレスも相当なものでした。

国民からの期待、南部貴族のやっかみ、他国への印象、就任してから今までの全てがそれはもうストレスの塊なのです。

ケラルトやレメディオスの協力があるとはいえ依然として問題は山積みだし、ストレスのせいで最近お肌が…うぅ…

でも後悔は無い、私が望んだ事なのだから。

 

『弱き民に救いを、誰も泣かない国を』

 

この国の当主となる時誓ったのだ。

民のため、人のため、粉骨砕身し国内の弱き者たちを庇護し、亜人達との厳しい生存競争の中でも歴代聖王のようにその営みを後世に繋いでいくのだと。願わくば戦争に終止符を。

亜人から、他国の脅威から、全てを守り抜いてみせる。あの日、玉座で先代から冠を頂いた時から心に刻み付けた。

 

だからこれは弱音じゃない。そう、休憩だ。

 

私は時々変装し、王族にしか伝えられていない秘密の抜け道を通りこっそり城から抜け出して城下を散策している。

先代の聖王陛下は民の生の声に耳を傾けられる貴重な機会だと笑い混じりに教えて下さった。

………先代も大変だったのね。

 

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

 

鼻歌を歌いながら歩いても、誰も私が聖王だなんて気づかない。認識阻害さまさまだ。

この時だけは目の前の問題なんて忘れて、1人の「カルカ・べサーレス」として振る舞える。

だから市井の様子を見て回ったり、良さげなマジックアイテムが売りに出ていないかチェックするのも怠らない。

 

自慢じゃないけど独学の美容魔法には一家言あるのよね、王女って疲労とストレスで直ぐにお肌が荒れちゃうから…日々のケアは怠れないの。

 

だから道すがら美容関係のアイテムがないか目を凝らして露店を周り歩いている。

 

一口に美容品といっても種類は多岐に渡り、塗るタイプの薬品から魔法の込められた羊皮紙(スクロール)タイプのものまでさまざま。

顆粒タイプの飲み薬もあるけれど、大体のものは粗悪品で酷いものは禁製品なんかが混入していたりするから注意が必要だ。

…その手の薬品はだいたい南部から持ち込まれているのだけど、表立って公開する気はない。ケラルトが機を見計らって、最高のタイミングで発表してやるのだとあくどい笑みを浮かべながら言っていた。

 

 

手近な露店でサンドイッチを購入し小腹を満たす。

 

本日は少し雲があるけれどほとんど快晴といって差し支えない、ポカポカ陽気のホバンス城下は今日も平和だ。

けれど国境付近では今も亜人と兵士たちによる睨み合いが繰り広げられている。

 

この国は亜人と永きに渡り争っている。その為、国民達に徴兵制を敷いて毎年兵力を補っていた。

やりたい事もできず、自分の意思と関係なく戦争に駆り出される。国民の反発は間違いなくあるだろう。

 

…もしケラルトの言うように法国が軍事力を貸し出してくれるのなら、国民の負担も少しはましになるのかしら。

真に国の為を思うなら、南部貴族の方々から来るであろう反対なんて力づくで押し切って…

 

だめだ、どうしても心の中でストップがかかってしまう。

私の事を嫌いな南部の皆さんもいつか分かってくれるって心の何処かで思っていて、これ以上彼等に悪い印象を与えたくないから。

非情な判断を下せない、王として民を導くには不必要な気遣いだ。

 

やっぱり私は『甘い』

 

『優しい』んじゃなくて『甘い』だけ

 

恵まれた容姿と地位に甘えて、頼りになる親友二人に甘えて、皆に甘えきっている。

 

 

こんな私が……

 

 

 

 

だっ、駄目よ駄目!

今は息抜きにこうして変装までして城下へ降りているのに、嫌なことばかり考えちゃ!

 

うう…でも…改めて思い直すと尚更…

 

感情の浮き沈みで風邪を引きそうだわ…

 

 

 

そうだ!他の事を考えて気を紛らわすのよカルカ!

 

国王ではなくカルカとして、一番の悩みと言えばそう…

 

 

 

 

お婿さんが欲しい……!!(迫真)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖王国現聖王、カルカ・べサーレス。

 

由緒正しきべサーレス家長女にして、正当なる聖王国の王位継承者。

容姿端麗、頭脳明晰、慈悲深くその美しい容姿も相まって国民の間では彼女の事を『ローブルの至宝』とそう呼ぶ者も多い。

 

傍から見ればこれほど完璧な女性は2人といないだろう。

 

だが、それ故に

 

いや、だからこそ

 

彼女はその身に問題を抱えていた。

 

平均的な女性の結婚適齢期が15~18歳の異世界において、現在彼女は20歳を超えて暫く。

 

未だに彼女は未婚である

 

 

ぶっちゃけると高嶺の花過ぎて男が寄ってこない。

 

そりゃ王族の生まれで周りが霞むほどの美人な顔つき、しかも聖母のような慈悲の心を持つ聖女様だ。並の男でなんて釣り合うはずもないだろう。

 

政において皆の前で演説する際、そのプロポーションに魅了された男性は確かに多い。が、そんな邪な心すら浄化してしまうほど溢れんばかりに彼女から迸る聖母と見まごうオーラの前に男どもの息子たち(サン・オブザ・サン)も思わず頭を垂れ、聖女に欲情してしまった己が愚行を恥じるのだ。

 

「確かに美人だけど、聖王女様をそういう目で見るのはちょっと…」

 

「高嶺の花過ぎて隣に立つのも烏滸がましい」

 

「彼女は国と結婚した聖女様だから(過激派)」

 

などと

 

容姿が、立場が、風評からその立ち振る舞いに至るまで全ての要素が悪いように空回りして今の惨状に至る。

 

彼女としては常日頃から心身の疲労回復を怠らず、特に肌のケアに至ってはこの国で唯一の美肌魔法を開発するなど、鬼気迫る気合いの入れようであり、子を産む為の母体としては最高品質といっても差し支えないのだが。

 

 

そんな感じで世の男性達からは恋愛対象として見られず、貴族階級にも彼女に手を出すような剛の者はおらず、男っ気のない生活だった為出生から現在に至るまでで一番長く話したのは実の兄カスポンド、故に男性との付き合いなどほとんど無い。挙句の果てにカストディオ姉妹とよく行動している所を目撃されているため「実は同性愛者(レズビアン)なんじゃないか?」などと囁かれる始末。

 

 

(ちがうのおおおおおお!

確かにケラルトとレメディオスは仲のいい頼れる友人だから一緒に居ることは多いけど…あくまで友達なの!

私はノーマルよ!)

 

(最近、年下で顔見知りの貴族の娘達がどんどん結婚していって祝言を読む度に胸がきゅうっとなるのは気のせいに決まってるわ!)

 

(まだ…まだあわわわわ慌てる様な時期じゃない。

20歳を過ぎてからこれ以上ないくらいお肌に気を使っているし、王家に伝わる安産体操だってやってる、アンダーヘアのお手入れだって毎日欠かさないんだから!

ママになる準備は万全!そう万全なの!)

 

(我儘は言いません。

糸の一切付いていない、私という人間を愛してくれるお婿さんを…!)

 

聖王女カルカ・べサーレス、齢22歳にして己の身の振り方に焦る乙女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とんっ

 

 

「あいたっ」

 

 

不意に誰かにぶつかってしまう。

集中力の乱れから来る前方不注意、衝撃で我に返ったカルカが見上げるとそこに厳つい顔が目に入る。

 

 

「あぁん…?何だテメェ」

 

 

ガタイばかりが良く、顔つきも素行も悪い、まるで漫画かアニメにでも出てきそうなガラの悪い男性にうっかりカルカはぶつかってしまう。

 

 

「ご、ごめんなさい。前をよく見てなくて…」

 

「ゴメンで済んだら衛兵は要らねえんだよ!」

 

 

乱暴な手つきでフードが捲られる。

顕になった金髪と整った顔立ちに男は思わず息を呑んだ。

現在、カルカは認識阻害のマジックアイテムを装着しているため幸運にも正体はバレる事は無かったがそのかわり「とんでもなく美人な知らない女」が顔を出した事に男は下卑た笑みを隠せない。

 

 

「あーあ、この調子だと折れちまってるかもなァ。

どう責任取ってくれんだよお嬢ちゃん」

 

「え、少しぶつかっただけで折れはしないかと…」

 

「そういう事じゃねえんだ、俺を不快にさせた責任を取って欲しいのさ。

なぁに宿で一日ほど俺の相手をしてくれりゃ許してやるよ」

 

 

思わず「えぇ…?」と唸るカルカ。

確かに出会いは求めているが、こんな男との出会いじゃない。

望んでるのは素敵なお婿さんであって、下卑た視線を向けてくる暴漢を好意的に捉えられるほど彼女の倫理観は破綻していない。

 

さっさと謝って、慰謝料を求められるならそれを払って解決してしまいたいのだが彼はどうやらカルカの身体を求めているようだ。

もちろん異世界であるからこの要求が真っ当である…とかそんなことは無く、不当も良いところであり罪悪感に付け込んだ卑劣な愚行である。

 

 

「嫌です、慰謝料でしたらお支払いしますので」

 

「気の強え女だ、気に入った。

ベッドの上で屈服させるのがますます楽しみになったぜ」

 

「ちょっと…ッ離して下さい!」

 

 

逃げようとしても腕を捕まれているため身動きが取れない、なおも抵抗するカルカがいい加減魔法の1つでも使って撃退してやろうかと思案していたところ。

 

 

「失礼、お二人ともどうかなさいましたか?」

 

 

建物の角から別の男が声を掛けてきた。

 

 

「あぁん?邪魔するんじゃねえよ優男」

 

「ですが女性は嫌がっている様子ですよ?

彼女はそれ程の事を?」

 

 

彼のその態度はカルカを助けたい、というより純粋に疑問に思っているのだろう。

なぜ白昼堂々道のど真ん中で大の大人が若い女性に乱暴を働いているのか。

 

 

「そうさ、この女は不注意で俺の肩にぶつかりやがったのさ。あ〜痛え痛え、この様子じゃ折れちまってるかもなァ!

だからコイツには付きっきりで『看病』してもらわなきゃワリに合わねえ」

 

「ちょっとぶつかったくらいで折れてるわけないでしょう、大袈裟な事言わないで!」

 

 

理不尽な要求にカルカも思わず声を大にして反論した。

そんなそんな二人を優男は「ふむ…」と一考し、徐に男へと近寄っていく。

 

 

「な、なんだよ」

 

「いえ、本当にそうなのかなと。

彼女がぶつかった衝撃で…肩でしたよね?」

 

「そうだよ、だが触るんじゃねェ!

オグァッ!?力…強ッ!?」

 

 

ボグッ

 

 

「はぎゃあッ!?」

 

 

優男が近寄る素振りで肩を締め上げた直後、鈍い音がして悲鳴とともにダランと垂れて動かなくなった。

 

 

「ああ本当だ!

確かに肩、外れていますねえ。

ですが思ったより症状は酷いようだ、今すぐ医師の下へ走った方が良い」

 

「いやっ…今っお前がぁ……」

 

「代金は私が支払いましょう、ほら早く!

僕の気が変わらないうちに早く行きなさい

 

「ひぃっ!わ、分かりまひた…」

 

 

動く方の手に3枚ほど金貨を握らせ、這う這うの体で走り去っていく男を背に、尻餅を着き完全に置いてけぼりになったカルカはきょとんと目を丸くする。

 

 

「お嬢さん、大丈夫ですか?」

 

「は、はい。ありがとうございます…」

 

「平和そうな城下街でも一本道を外れればああいう輩は何処にでも居るのですね」

 

 

彼の言う事にカルカは俯き表情を暗くする。

徴兵制を敷き民に負担を掛けているのは他でもない王家自身、その不満がこうして暴漢などの治安の悪化に繋がっているからだ。

 

 

「すみません、私が至らないばかりに…」

 

「?どうして貴女が謝るのですか?」

 

 

不思議そうにする男に慌てて誤魔化す、今のカルカは聖王ではなく一人のカルカ。

身バレする訳にはいかなかった。

 

自然な仕草で手を差し伸べられ、それを取り起き上がる。

改めてまじまじと彼の姿を見た。

黒髪のロングヘアに整った顔立ちのイケメン君、歳は自分より少し下だろうか。服装はローブで隠しているが、時折見え隠れするコートの裾は真新しい新品の物、それなりの身分がある人物なのだろう。

 

 

彼の手を離した時、カルカの心は妙なざわめきに襲われた。

 

 

(なに?なんなのこの感覚は…?)

 

 

明らかに平時とは違う感情の揺らぎに彼女は戸惑いを隠せない。

 

『彼の手を離したくない』と思ってしまうなんて

 

 

「あ、あの…!」

 

「はい?」

 

 

その混乱の一時的な答えとしてカルカが選んだのは彼との継続的な対話だった。

 

 

「他の国も…城下は荒れているのですか?」

 

 

我ながら適当な質問をしたと後悔していたのだが、思いの外男は真剣な表情をして応対してくれるようだ。

 

「そうですね…僕は国とは王の心そのものだと思っています。

民は正直だ、善王であれ悪王であれ必ず何かしらの反応を示す。

作物の収穫量などの数字で表せるものだけではなく、村々や城下町の雰囲気でさえ見えないはずの顔を変える。宗教である程度の意思統率は可能ですが、一時的なものだ。

人の心は常に移ろいゆくものだから」

 

「そう考えると、帝国や竜王国は凄いですね。

優秀な皇帝に支えられ安定した帝国はまだしも、ビーストマンの侵攻に耐えながらも国を存続させ戦線を維持する竜王国は最前線の都市も活気に溢れていました。負ければ死が待っているにも関わらずね。

きっと街の者たちは諦めない竜女王の態度に後押しされて、侵略を耐え抜いているのでしょう」

 

 

竜王国、カルカも知っている。

人を食らう亜人種、ビーストマンの生息域と地続きで隣り合わせになっており、聖王国同様はるか昔から亜人との闘争を余儀なくされた国家。

立地の問題で聖王国からの救援は望めないが、幼い女王が懸命に国を回している姿はかの国から送られてくる声明文で容易に想像出来る。こちらも侵攻を受けている以上、表立って何もできないのが心苦しい。

 

 

「もちろんその逆、王国などは…

いえ、止めておきましょう。僕如きがとやかく言うのはお門違いですね。」

 

 

王国の言葉が出た途端彼は表情を暗くし話を中断してしまったが、カルカはどうしても聞いておきたかった。

 

 

「国は王の心そのもの」という彼の言が頭から離れない。

喉まで出かかっていた言葉をどうにか絞り出す。

 

 

「なら…聖王国は…如何でしょう。

民は…皆は満足しているのでしょうか、王の統治は間違っているのでしょうか」

 

 

ただの戯言だ、王の苦労も知らない一市民の言葉の重みなどたかが知れている筈なのに、死刑執行を待つ囚人のような気持ちでカルカは彼の言葉を待っていた。

 

 

「…難しいですね。

もとより国政に正誤などありません。

正誤二択で判断するには複雑すぎる程、政には人の思惑が絡むものですし。それは他国が客観的に見た結果ですから。

どの国も『それが正しい道』だと己自身に思い込ませるからこそ人が動き、国が動くのではないでしょうか」

 

「かの王…今代は王女でしたか。

彼女は恐らく『そうあって欲しい』という理想と『そうなってしまった』現実の差に苦悩しているのかもしれません。

民の幸福を心から望んでいはいても、その理想に現実が追いつかない。その結果国内の意思疎通が取れず南北を分かたれたままの歪な政治形態を保っています。

これは致命的でしょう、1つの(からだ)に2つの政治形態(こころ)があるようなものです。

それがどんなに綺麗なガラス玉でも僅かにヒビが入っていればいずれそこから真っ二つに割れてしまう」

 

 

理想と現実の差に苦悩する、彼の言葉がすんなりと胸に落ちる。

同時にそうなるまで国を導き、言われるまで気づかなかった自分自身への落胆がカルカを襲った。

 

 

(ガラス玉…

そうね、この国は割れかけのガラス玉。

どんなに一生懸命守ろうとしても、甘い私ではいずれ…)

 

「…けれど、個人的な意見を述べさせて頂くなら僕は陛下を支持します」

 

「……ぇ?」

 

「彼女は民の『今』を懸命に護ろうとしている。

全てを投げ出し自暴自棄になるのではなく、誰かの意見に迎合するでもなく。亜人の侵略、或いは国内の政治的攻防から徹底して民を遠ざけ護っています。

その強固な意志を傍目から見ても感じ取れるからこそ、民は徴兵制も殆ど反発なく受け入れ自ら戦地に赴く。

陛下はいつも御自身が仰っていた言葉を実直に行われ、理想と現実の差異に苦悩しながらも一歩ずつでも前に進もうとしておられる。そんなふうに感じました。」

 

「素晴らしい事です、誰もができることではないですから」

 

「意志を持つ者と持たざる者では放つ気質(オーラ)が違います。

民を導く目に見えないチカラ…俗っぽくなりますが“カリスマ”と呼ばれるもの。目には見えませんが、その言動ひとつひとつに魂が宿る。

かの王女も例に漏れず、ね」

 

「そんな陛下が心を砕き、国のために奔走しているのに民が何もしない、なんて不義理な事は決してないでしょう?

それに…」

 

「……?」

 

「頑張っている女の子がいたら応援してあげたくなるじゃないですか」

 

 

「おっと、王に対して不敬なもの言いでしたね。忘れて下さい」と半笑いで男がごちる。

決してからかっている訳ではなく、冗談めかして言う彼の向かいでカルカは…

 

 

(頑張ってる……)

 

(応援したい……)

 

(女の子っ…!!!!)

 

 

お顔真っ赤っかであった。

 

何を隠そう、男の前にいるのは聖王国王女カルカ・べサーレスその人である。

普段民とは身分を隔て王城の中で暮らし、民から…もとい一般男性からこうして身分を超え対面し素直な賛辞の言葉を受けるなど初めての経験だったのだ。

 

いつもの王女モードなら涼しい顔して「ありがとう、私も貴女の期待に応えられるよう頑張りますね(全力聖女スマイル)」くらいできようものを、素のカルカの状態で面と向かってこんな事言われたら嬉しいやら恥ずかしいやらで頭が茹で上がる。

 

それに彼、無駄に顔が良い。

更に物腰柔らかな仕草と悪漢を圧倒する力強さ、そして他国への広い知識を持つその博識ぶり、心·技·体全てが整っている(カルカ談)

 

決め手とばかりに彼は王としての自分だけでなく、一人の女性としてカルカを評価し、それでも「応援したい」と言ってくれた。

 

その言葉に再び心臓が跳ねる、具体的な音声で表すと「きゅんっ♡」って鳴った。

英才教育で培われた彼女の頭脳が高速回転を初める。状況を整理、今まで彼に言われた言葉全てを一言一句丁寧に思い起こし、過去、現在の状況全てをふまえ、導き出した結論は…

 

 

(なんて素敵な人なの!お婿さんにしたいっ!)

 

 

聖女らしからぬ我欲に塗れた恋愛感情だった。

 

 

(初対面なのに優しいし、物怖じもしないし、カルカ(わたし)を見て喋ってくれる…

一切糸の付いていない私を…

…ハッ!!もしかして彼、私の事が好きなのでは!?)

 

 

聖王女カルカ・べサーレス、度重なる結婚願望を拗らせクソ雑魚恋愛脳になってしまった女。

今回のシチュエーションはそう、言うなれば初めての新歓コンパで向かいの席に座った女の先輩から積極的に話しかけられ、「あれ?もしかしてこの娘俺の事好きなんじゃね?」と優しくされただけで勘違いする哀れな大学一年生のようなアレである。

 

「クッッッソチョロいですわ〜!」ってイマジナリーレイラが叫んでいるぞ聖王様。

 

 

「…どうかされましたか?

顔色が優れないようですが、どこか具合でも?」

 

「うぇあいっ!?

大丈夫、大丈夫ですご心配なくぅ!!(クソ早口)」

 

 

反射的に物凄い勢いで離れてしまった恋愛クソ雑魚聖王様はその気まずさから御礼を述べると凄まじい速度で彼と別れ…

 

 

「せめてお名前だけでも聞いておくべきだったわあああぁぁぁぁ……」

 

 

我に返って私室のベッドで布団ををおっかむり悶えておりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「外交官殿、探しましたぞ!」

 

「ああグズターボ殿。

申し訳ありません、面倒を掛けてしまったようで」

 

「いえいえ、ずっと宿の中も窮屈でしょうし市井を回るくらい上に言い訳は着きますが…

次からは我々をお連れ下され、万一の事があれば大変だ」

 

「ははは、大丈夫ですよ。

これでも祖国で……3番目くらいには強いので」

 

「(凄い自信だな…)そういう問題ではありません。

バラハ殿と合流致しましょう、城下の視察もその折に」

 

「承知致しました。

不躾なお願いではありますが、道すがら歴戦の軍人であるお二人の話も聞かせて頂きたい。

貴方方から見た聖王国や諸国、亜人達の事も」

 

「ええ、機密に関わるような事でなければ問題ありません」

 

「それはよかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、余談ではあるのだが。

 

翌日の法国外交官との謁見において、フードを脱いだ彼の顔を見た途端王女が吹き出し身悶えるという前代未聞の事件が起きてしまったのだが、幸いにもそれを目撃したのはごく一部の者のみであり、強く緘口令が敷かれた。

あわや外交の危機かと最高神官ケラルトは天を仰ぐが、後に「場を和ませる為の王女なりの気使いである」と外交官自らが納得し無事に交渉は続く。

 

結果、聖王国の鉱山資源と引き換えに糧食や武器等の補給物資を定期的に前線へ届ける為の条約が二国間に結ばれる事になった。

輸送コストの問題に関しては両国が平等な配分になるよう取り決め、負担する事になる。

前線への法国による部隊の派遣申請は残念ながら通る事は無かったが、代わりに召喚系魔法詠唱者の教官を派遣し天使召喚を行える兵士を増やして戦線の増強を計れないかとの意見が飛び、法国はそれを承諾。近々教官が数名派遣される事に。

 

召喚魔法は現地人にとって決して簡単な魔法ではないのだが、多くの聖騎士を排出する聖王国ならば素質を持つ者は多く存在するはずだと、訓練所とは別に帝国ほどの規模ではないが魔法教育施設も設立し法国もそれをサポートする構えをとった。

 

ここまで協力してもらった手前、南部による非難は免れないが、ケラルトによる予想は国益で上回って実績を叩き付けてやれば連中も黙らざるを得ないとの事。色々と工作も考えているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

謁見の終わり際。

外交官の語る「法国で開発される新しい魔法技術」を訝しむケラルトの前に彼から意味深な『招待状』を手渡されるのだった。

これがケラルト・カストディオが初めて“魔巧”に触れる機会となる。

 

後に彼女は語った。

 

「確かにあの集まりはこれ以上無いくらい有意義で楽しかったけど、同時に彼女が心底恐ろしく感じたわ…」

 

 

 

 

そんでその手紙を彼からの恋文と勘違いした聖王女陛下は情緒を壊された。

 

 

 

 

 

 

これが後に国家と宗教を越え、吟遊詩人の語り草になるほどの大事件を繰り広げる事になる聖王女カルカ・べサーレスの恋愛譚、その序章に過ぎない事など誰が予想できるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、リ・エスティーゼ王国

 

 

 

 

「兄上、私は……貴方を断罪するッ!!」

 

 

 

王城、玉座の間。

空はどんよりとした雲に覆われ、時折走る落雷の明滅激しいこの部屋に勇ましい怒声が響き渡る。

此処に集まった全ての者たちの総意を述べようか。

 

 

 

 

 

 

………………なんて??????????????????








聖王国
法国と同盟締結、物資と教官の派遣を受けながら亜人との戦闘を継続
将来的に戦力がちょっぴりup


カルカ・べサーレス
外交官との会談以降お婿さん候補を見つけてしょっちゅう雌の顔をするようになった。
執務中ににも関わらず物憂げに窓の外を見つめたり、不意に外交官の話題になると身体が跳ねるなどの症状が最高位神官の口から報告される。

歴代初の女性聖王の姿か?これが…


ケラルト・カストディオ
後のレイラによる被害者。
法国との同盟で鬱陶しい南部貴族に圧をかける事ができて御満悦。
進んで曇らせたいですね(ニチャア)


レメディオス・カストディオ
たぶん原作聖王国編で一番可哀想な人。
報われて…報われて…


法国の外交官
お気づきの方も多いだろう。
そう、我等が漆黒聖典隊長である。
若きエリート外交官が彼の表の顔、暫く親善大使として聖王国へ常駐する事になった。
メタい話、本名はまだ考え中



次回ラナーと話す予定
実は聖王国と王国の話を考えるに当たってバックストーリーを考えるために戦争モノ陰謀モノのSSを読み漁って勉強してる、面白いんだけどめっちゃ人死んでて鬱になりそう。
やっぱ賢いキャラ嫌いだ
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