破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった… 作:ハンバーグ男爵
※WARNING※WARNING※
キャラ改変!特に原作主要人物のキャラが著しく崩壊しています
「こんな姫様はオバロじゃないやい!」って解釈違いな人はブラウザバック推奨
君は完璧で究極の第三王女回
私にとって人類とは、道具でしかない
今日も世界は暗い鈍色で、くだらない権力闘争と内輪揉めを繰り返す王城内で毎日目を覚ます。
笑顔の仮面と演技の皮を被って、今日も『みんなが望むお姫様』を模倣し続ける。
昔の私はもう少し明るかったらしい。
けれど大きくなるにつれて他の人達と自分の違いに気付き始めた。
どうしてこんな簡単な事ができないの?
少し考えれば分かる事なのに
どれだけ説明しても、どれだけ微に砕いても、結局彼等には分からない。
言葉は通じているはず、難しい事なんて何も言っていないのに、知らない間に私と他の人間との間には大きな溝が生まれていた。
最初は分かってもらおうと努力したけれど、今となっては無駄なこと。
だから私は演じる。
天真爛漫で能天気なお姫様
権力闘争に興味はなく、継承権争いもしない
人畜無害なか弱いラナー
花を愛でて、友人との他愛ない会話を楽しみ、税に苦しむ国民を憂う籠の中の鳥
そんなもの、嘘なのに
うそ うそ うそ うそ うそ
ぜんぶぜんぶ、嘘
塗り固めた嘘に嘘を重ねて、そこへまた嘘を貼り、積み上げながら生きてきた
そうしているうちに、気付いた時には私の本当の気持ちはどこかへ消えてしまったの
けれどそんな私の世界に唯一光を齎してくれたのは1人の少年だった。
ああ、かわいいクライム
かわいい私の■■■
全ての色を失った灰色の世界で彼の無垢な笑顔だけが輝いていた。
彼の輝きは嘘だらけの人生でただ一つの真実(ほんとう)
渇ききった私を唯一満たすもの
この気持ちだけは嘘じゃない
■してる
彼を失わないように、閉じ込めて、拘束して、私に依存させて〇〇を〇〇〇〇して〇〇〇……
こほん。
とにかく。
彼だけは何があっても手元に置きたい、他の何者にも変えられない私だけのクライムだもの。
でも、彼と私が暮らすにはこの国は些か腐りすぎている。
覆しようのない国家の腐敗、蔓延る犯罪組織の手、私が王族なのを加味しても彼を護るのには限界があった。
甘ちゃんのお父様は貴族達を裁けず、愚鈍な長兄は早々に犯罪組織に尻尾を振った。次兄は少しだけマシなようだけど、立ち上がる気概も熱意も足りない彼に期待はしていない。
なので今まではなあなあで対抗策を練りつつ八本指の動きを把握して、こちらに火の粉が飛んでこないよう誘導だけしていたのだけど、バルブロお兄様を取り込んだ辺りから横暴がいっそう活発化している。
麻薬栽培所の増加や身寄りのない子供の誘拐が頻繁に起こり、奴隷を使った違法娼館が各地に乱立、調子に乗った貴族の内政干渉もかなり多くなった。ボロを出すほど表立ってはいないけど確実にその影響力を広げて、病魔のようにジワジワと国を蝕んでいる。
どうでも良いけれど、いえどうでも良かったのだけど、その過程で私が邪魔になったのかしら。
給仕のメイドがある日急に別の者に交代した、ある特定の従者だけが四六時中着いて回るようになった。
あからさまに警戒されている、世間では『苦しむ民を憂うお姫様』で通っている私にこれ以上余計な真似をさせないように八本指の指示で人を送ったのだろう。
このままでは私とクライムの身も危ない。
そんな時、竜王国へ行ったハズのラキュース達『蒼の薔薇』が持ってきた情報は価値あるものだった。
「スレイン法国が王国へ干渉しようとしている」
彼女は上手く誤魔化してしらを切ってるつもりでしょうが、私にはお見通し。直ぐに分かった。
…嘘を吐いてきた年季が違うのだから。
スレイン法国といえば周辺人類国最強の宗教国家、600年より昔から存在する謎多き国。
周りを人類国家に囲まれる王国には馴染みないものだけど、亜人種への牽制や抗戦を何百年も継続してきたそのキャリアは語るに及ばず、と言った感じ。
兵力、諜報能力、練度も圧倒的な戦争強国。彼等の奮闘が今の人類圏を形作っていると言っても過言ではない、そんな国が隣にあればこの国をどう思うか、正しく知る者は僅かしか…いえ王国には私以外居ないわね。
そんな物騒な国が我が国に干渉してくるとしたら理由は1つ、巷で悪行を振りまく八本指の撲滅だ。
特に麻薬の流通は他国にも広がりを見せ始め、王国だけの問題ではなくなってしまっている。
予想では帝国と繋がっている
予想では麻薬の浸透速度はもっと遅いはずだったのだけど、ある時あからさまに麻薬の流通量が増え始めた。大方、欲に目が眩んだ下っ端構成員が目先の金欲しさに栽培量の拡大を計ったのだろう。
目立つ行動は肥大化し過ぎた組織が身内を制御出来ていない証左であり、八本指という組織が如何に統率の行き届いていない無能集団か伺い知れる。
あ、王国貴族よりはマシかしら。
正直、八本指は大した組織ではない。
それよりも問題なのは。
唯一のイレギュラー、ラキュースの手引きにより法国より派遣されてきた諜報部隊の指揮官である……
「…そう、貴女はとっくに諦めてしまっているのね」
彼女はそう零し、頬杖をついたままじっとこちらを見つめている。その瞳には僅かばかりの懐疑心と憐れみの感情が込められていた。
マジックアイテムの登場は計算外だったけどこれで概ね私の目的は達成できた。
法国に私の立場を示し、あわよくば有事の際保護してもらう約束を取り付けること。
王族を、ではない。私の身の安全を確保してもらう。
私は賢いけれど、それ以外は年相応の女だ。腕力も体力も大の男と比べれば圧倒的不利ですもの。
万が一組み敷かれた場合、抵抗しても非力な私ではなすがままにされるのがオチ。勿論クライムも護衛として信頼しているけれど、信頼と実力は別問題だから。
いざと言う時物理的に私を守る壁が欲しい。
少し話した感じ、彼女は演技は上手だけど見た目ほど冷酷な人間じゃない。演技の腕は仕事で培ってきた経験による賜物で、私と違って沢山の人と接しながら育ってきた人情家なのだろう。
そしてかなり頭も切れる、二重に掛けた私の
たまたま知った本の著者を突然呼び出してお話する天真爛漫なお姫様
その裏で友人と共に犯罪組織撲滅の為健気にも暗躍する第三王女
それで目的は達成されるハズだったのだけど、彼女は許してくれないらしい。
だから最後の
いつも鏡の前で練習している笑顔も消して、あえて素の表情で。
母国の腐敗に辟易として、どうにもならないならいっそ全部壊してくれと懇願するラナー
という私。
今思えばこれが私の本心に1番近いのかもしれないわね、その本心すら嘘かもしれないけれど。
……私にはクライム以外要らない。クライムと一緒に暮らす為ならこの国の全ての人間を生贄にしたっていい。
第三王女ではなく一人の女として、誰にも邪魔されない場所でこの命尽きるまで彼と共にいたい。
彼の全てを管理したい
おはようからお休みまで、食事も入浴も排泄も床の世話も全て
彼を飼いたい
そうする事でしか私は彼を■せない
これが私の■のカタチなのだから
その為なら、法国だろうと魔王だろうと手玉にとってみせる。
「時に貴女、好きな人はいるかしら?」
「……へ?」
突然の質問に一瞬間抜けた声が漏れてしまった。
「想い人はいるかしら?
恋人は?恋愛とか、した事はある?」
「えっと…」
「それとも、もう心に決めた殿方がいらっしゃるの?
貴女ほどの立場の方なら許嫁とか居そうですが…」
「い、居ません。
恋人も許嫁も…」
「あらそう、てっきり隣の彼にお熱なのかと思いました」
そう止まったままのクライムに視線を移す彼女。
ぞわりと背筋に悪寒が走る。
彼に目が行ったことは不思議じゃない。私が孤児上がりのクライムを拾い上げ、個人的な感情で側近に選んだ事は王城内では周知の事実であり、わざわざ特別な鎧も与えマーキングしているのだから周囲の人間が私とクライムの関係を察するのも分かる。
身の丈に合わない地位と鎧を与えられたお姫様のお気に入り、そう思われるよう仕向けたのだから。
クライムに目を付けられた?
違う、この女が言いたいのはそんな生易しい事じゃない。
「……何を、仰りたいの?」
この、感覚は、なに?
その金色の瞳と目が合う度に感じたことの無い悪寒が走る、嘘で固めたハズの心の奥まで見透かされるよう。
酷く気持ちが乱れてくる。こんな事、今まで無かったのに。
「うふふ、そうねぇ…貴女の望み通りにしてあげましょう。
いざと言う時に備えて凄腕の護衛を極秘に侍らせ、王城から安全に逃走する手段も整えます。
最悪のケースを想定していつでも法国へ亡命できるようエスコートして差し上げましょう。
枠は…そこの騎士さんの分も必要かしら?」
「ッ宜しくお願い致します」
完全に話のペースを奪われ掠れた声で返事することしかできなかった。
金色が私を覗き込む
また、酷く心が乱れる
魔法、違う
異能力、そんなんじゃない
もっと本質的な何かが違う
なに、この違和感
彼女は ほんとうに
想定通り、彼女の口からは私の望む言質が取れているはずなのにどうしても拭えない不安に滅多に流れない汗が頬を伝う。
「国を壊すほど暴れる気はございませんが、勅命を頂いた以上八本指は徹底的に潰させて頂きます。
貴女が思う通り、王国は腐りかけの巨木と変わりありません。一人倒れるならまだしも疫病を他所にばら撒きながら朽ちるとなれば“人類の護り手”として黙っている訳にはまいりませんので」
……以前にも国を裏から潰した経歴がある、という事かしら。やはり法国は要注意だわ。
「よろしくお願い致します。
我々にはもう、どうにもできません」
「承りましたわ。
ああ、それと。これも個人的な質問なのですが…」
「私が答えられるならなんなりと」
「貴女、彼の子を産みたいのかしら」
…………は?
「こ、ども…?」
「あの小さな騎士様を■しているのでしょう?
だったら子供の1人や2人、もうけてみたいとは思いませんか」
その質問に私はハッキリと答えることができなかった。
初めての経験よ、口から言葉が出てこないだなんて。
どうして?私はクライムを■している
彼の無垢な笑顔を■してる
忠犬のように私に尽くしてくれる忠誠心をしてる
私と同じ彼を■してる
■してる、■してる、■してる
■してる■してる■してる■してる■して■して■して■して■してあい■■アイAI■ ■愛■■あい■ ■■ 愛■アイ?
こんなにも■してるはずなのに、不思議と私は「彼との子供を作りたいか」という問に対して答えを出す事ができなかった。
「貴女の人となりは知りません。
生まれ持った能力を活かせなかった周囲の環境、育ってきた経緯と立場を考えれば“そう”なるのも納得できますし、“そう”なってしまった貴女はもう戻る事はないのでしょう。
ラナー、貴女の抱く■の形がどうであれ、他人の恋路に口を出す気はありませんが…」
ああ、確信した。
この女は気付いている。
私がクライムに抱く感情の奥底、隠し通してきた真相に。
それは執着、あるいは潜在的な同族依存の延長で“普通の”人間が語る■じゃない。
普通の人間なら■した人の子供が欲しいとか思うのでしょう?
でも私は違った
彼を自分のものにしたい、自分色に染め上げたい、拘束して監禁して、誰の目にも止まらない所で一生涯添い遂げていたい。
でもこれは人の倫理に反してる、そう理解しているから私は■したクライムの理想とするお姫様を演じ続けながら生きてきた。
歪んでしまった私に普通なんて分からないんだもの。
「得体の知れない事を呟く少女」、「理解不能な事を述べる薄気味悪い女」、それが貴族達から受けた私の総評だ。騎士もメイドも兄2人も、父ですら同等の人間は居ない。
理解者なんて何処にも居なくて。
この国には。いえ、人の世に私の居場所は有り得ない。
そう、幼い時に結論づけた。
けど何が悪い?
私の世界は閉ざされている
「貴女は賢い。
なら私の真意も容易に読めるはず」
全てが想定されて、計算されて、推理されて、分かりきった未来しか訪れない
「例えどんなに聡明で優れていても、世界の全てが予測できる訳じゃない。
人の世はそれほど単純な作りをしていない」
だって、全部、つまらないもの
「そう断じれるほど生きていないでしょう。
たかが14にも届かない箱入り娘の分際でよくもまあ一丁前に吠えましたわね」
うるさい、うるさい
お前に私の何が分かる
「何も。
けれど、少なくとも貴女よりは永く生きていますし貴女より多くを経験していましてよ」
なら、わたしはどうすればいい?
とうに結論を出したはずなのに、今更問われて“わからない”だなんて。
動揺で思考が定まらぬまま、人生で初めて他人にものを問うた。
「…既に貴女の行動が物語ってますが」
?
頬を熱いものが伝う、ずっと汗だと思っていたのに。
それは涙だった。知らぬうちにぽろぽろと流れ落ちるそれは床を濡らし、顔の下に小さな水溜まりを形成してた。
「ぁ…れ?なんで、私…」
意識とは無関係にボロボロとこぼれ落ちるそれに困惑が隠せない。
演技の時以外に人前で泣くなんて普段なら有り得ないのに。
軋んだ感情がコントロールできない。
あの瞳を見たから?
「それがまだ貴女が彼の為に人であろうとする証拠です、大切になさいな。
その■が少しでも人に近付いたなら、近付きたいと願うなら、私に相談なさい。
後悔はさせませんわ」
まだ、やり直せる?
たぶん、このまま2年も経てば私の人としての良心は完全に嘘で塗り潰されて、消えてしまうだろう。
クライムへの■に縋るように生きて、それ以外の全てを容赦なく切り捨てる。彼との平穏の為なら悪魔とだって笑顔で契約するような。
そんな
そんな自分に変わってしまうのを、全て諦めてしまった
危険だ
この女は危険だ
離れなければ
あの曇りない金色の瞳に見つめられる度、身ごと焼かれるような気分になる
取り繕った演技が、塗り固めた嘘が全部剥がされて奥底に消えてなくなった筈の善性を無理やり引っ張りだそうとしてくる
きっと「いつものラナー」は壊されてしまう
そう自分の中で誰かが悲鳴をあげている
けれど
差し伸べられた手を取らないともう“戻ってこれない”?
また、気持ちが揺れる。
嘘で固めて何処に行ったかも分からなくなった本心が必死に彼女に縋ろうとして、それすら嘘ではないかと疑って、ぐちゃぐちゃになった思考が纏まらない。
こんな事人生で1度もなかった。
“初めて”を拒絶する私が、これ以上嘘を吐きたくないと懇願する私が、年相応の子供のように大人に頼りたい私が、自分以外全てを塵芥だと断じて未来を閉ざしてしまった私が、必死に考える。
けれど時間はそれを許してはくれなくて
「……そろそろアイテムの効果が切れますか。
内緒話もここまでですわね」
砂時計の残りの砂はもう僅かばかり、この空間は終わってしまう。
終わってしまえばまた、私は「みんなのラナー」にならないといけない。
「この件が片付くまで暫く王都に滞在する予定ですし、貴女にこれを渡しておきましょう。
《伝言》よりも機密性の高い《
通信可能範囲は狭く対になる子機同士でしかやり取りは交わせませんが、王都内であれば問題なく機能するでしょう。
何かあればこれで連絡を」
机上を滑ってこちらへ寄越したのは装飾の施された赤いブローチのようなマジックアイテム。
それと同じ装飾で色違いになるような青いブローチが私に見せつけるように彼女の懐から取り出された。
「貴女がこの国がどうなろうと構わないように、私も貴女にさほど興味はありません。けれど…
全てに失望して、全てを諦めて、心を閉ざしてしまうにはまだ若すぎると思いますけどね」
…やさしい、微笑みだった
子供の成長を見守る親のような微笑みだった
よく愚物共が浮かべる打算的でその場しのぎの作り笑いじゃない
吐き気がするほど甘く優しい■
私がとうに諦めてしまったもの
…羨ましい、なんて思っていないわ。
そう、まったく。
…………………………
内緒話を終えて、ラキュースと法国の訪問者は無事帰路に着いた。
別れ際、部屋から出てきたところを偶然通りかかったザナックお兄様とレエブン侯に目撃されてしまったが、あの様子なら変に怪しむ事も無いでしょう。
そもそも次兄は根性無しですし。
私との接触はリスクが大きい、今後は渡されたマジックアイテムでこっそりとやり取りするのが主な連絡手段になる。
けれど首尾は上々、法国との協力を取りつけたのなら話は早い。
あとはどんな幕引きにするか役者を決めるだけ。
全て頭の中で思い描いていた通りの展開だ。
何も問題はない。
「…………レイラ・ドゥレム・ブラッドレイ」
部屋の中で1人、反芻する。
例のアイテムの効果時間ギリギリで最後に彼女が語った自分の本名。
呪い避けだと徹底していたはずなのにどうして最後の最後に私に名前を教えてくれたのかしら。
短期間でそれほどの信頼を得た、と安易に納得できるほど私達は話してはいないのに。
…ああ、そうか
「貴女も私と同じなのね」
その言動から滲み出す異常なまでの他者への■、例え取り繕おうとも同類の私には分かる。
レイラ・ドゥレム・ブラッドレイは
稀代の
私が壊れんばかりにクライムを■するように、彼女ははちきれんばかりに人類を■している。
他者を出し抜く知恵と愚者を黙らせる力でもって、全力で人類■を執行してる。
私と彼女に相違点があるとするならば、時間と環境。
年齢の差はもちろんとして、閉じ込められた私とそうでなかった彼女、歪んでしまった私と歪まなかった貴女は同じ怪物でもまるで対照的で…
やめましょう、今更こんな下らない事を考えるのは。
過去はもう過ぎたこと、決して羨ましい訳じゃないわ。決して。
もう動揺はない、涙も引っ込んだ、安心して「いつものラナー」を徹底できる。
だからこれからの人類が歩む先を予測してみよう。
普段ならこんな事考える必要なんて全く無かったのだけど状況が変わった。無理やりにでも意識を変えなければいけないほど人類最強の護法国家様の与える周囲への影響は大きく、憂慮すべき対象だ。
法国の隠し通してきた実力者達を実際に目にした事で視野が少し広くなったのかしら。
大陸の端で亜人と異形に押さえつけられどん詰まりだった人類種は繁栄を迎えるでしょう、早ければ2〜3年後には成果が出始める。
理由は勿論法国の存在、そしてレイラ(レイン)が著書で残している魔法技術だ。
普段魔法詠唱者が使う位階魔法とは異なる、ルーンを始めとした世界に古くから存在する魔法体系の
型に嵌められた魔法をただ唱えるだけの形式ばったシステムではなく、むしろ型から作る事で魔法の自由度と汎用性を高めた全く新しい体系。
例えるならクッキー。
今までは決まった生地に決まった形の枠を押し込んで、決まった形状にしか焼けなかったけど、その枠を自分達が自由に変えてクッキーを作る。そんな感じ。
丸しかなった枠を星型に変えたり、文字型にしてみたり、はたまた生地の味付けを変えるだとか、とにかく自由な発想で魔法を行使できる。
そして位階魔法よりも優れた汎用性。
別文献で得た知識だが位階魔法は「世界への接続」なる鍛錬を行い、選ばれた者のみが行使できる魔法らしい。
故に魔力を有していても魔法詠唱者として大成できる人物はほんのひと握りで、ほとんどの者は最低位である第1位階の魔法習得すら困難なのだ。
厳密に言えば更にその下には0位階の生活魔法があり、そちらはもっと習得のハードルが低いそうだが。
そんな現状を打破する汎用性を新しい魔法は持つ。
魔法はより人々に身近な存在に変わり、生活向上にも大きく貢献するでしょう。
何よりこの魔法は“底が知れない”。
学べば学ぶだけ、深淵の奥深くまで潜ってしまえば、その自由度故に戻って来れなくなりそうな危うさがある。
それこそ、一発で世界の法則そのものを変えてしまいそうな魔法だって見つかってしまいそう。
踏み込めば戻って来られない危険性を孕んだ底知れぬ魔法…
『深淵を見つめるとき、深淵もまたこちらを見つめている』だなんてどこかの本で読んだのだけど、その通りね。
ただ、便利になれば良いという訳じゃない。
生まれる諍いや争い、果ては戦争の道具なんかにも起用されるはずだ。野心高い帝国の鮮血皇帝なんかは飛び付きそう…いえ、もう着手している頃でしょう。彼女は帝国にも
ああ、だから人類中に触れ回っているのね。
平等に知識を与え、技術を発展させる。
きっと彼女は各国から優秀な魔法詠唱者を集ってこの技術を供与するだろう、そして持ち帰った知識と技術は各々の国内で独自に発展を遂げる。
育つところまで育ってしまえば、次に生まれるのは強力すぎる戦略級の大量破壊兵器だ。
育った
互いが互いの力を警戒し合って抑止力になる
言うなれば『魔導抑止』
国同士が同じラインに立つことで平等が生まれ、対話が生まれ、仮初だろうと“恒久的な平和”が訪れる。
万が一暴走する国があったとしても法国にはそれを容易く鎮圧しうるだけの戦力があり、同時に力の弱い他国の支援にも惜しみなく力を注げるでしょう。そうして国家間のバランスを保ち続けるのが彼らの与えられた役目。
ビーストマンに押されていた竜王国への過剰な戦力投下や仲違いしていたはずの聖王国への物資輸送は法国の真の目的である“人類平等”、その裏付けだ。
魔導抑止によって人類はひとつになる
それに乗り遅れた王国は帝国に併呑されるか八本指に飲み込まれるかの瀬戸際で、今回の漆黒聖典派遣が文字通り国存亡の為の『最後の審判』って事だったのかしら。
法国の行うそれはまさに人類平等の体現
魔導による抑止と国のバックアップによって齎される完璧な人類圏の安定化、人類至上主義たる法国の企む真の安寧。
ここまで考え、溜息を吐く
「馬鹿馬鹿しい」
そんな事できるわけが無い。
その程度で人類はひとつにはならない。あの女の言葉を借りるなら、それほど世界は単純な作りじゃない。
ちょっとしたボタンのかけ違えで全て台無しになるような危うい博打だ。
「けれど、私を計画から省こうとした理由は何?」
その仮説が現実味を帯びたものだったとして、何故執拗に私に存在を気取らせないように務めたのか。
世間には地位しか持っていない無害なお姫様で通っている私を荒事に関わらせないようにした、と思えば納得出来る。
でも初対面の時点で既に彼女は私がひた隠しにしていた本性や能力、更には演技の裏の裏まで見抜いていた。
まるで最初から知っていたみたいに
なのに私を使おうとせず、私の意思に従って、あたかも私が自分から決めたかのように演出し事を進めた。
気に入らない
結局彼女は最初から私を王国から引き剥がすつもりだったわけだ。
私がクライムに抱く感情も、密かに隠していたはずの本性も見抜いたうえで私の好きにさせた。
気に入らない
あれだけ私の心を乱しておいて?
全て彼女の掌の上で踊らされただけ?
「…………ふっ、ふふふっ」
頭 に き ま し た
してやられた、完全にしてやられた。
手玉に取られて、誘導されて、彼女が望む答えを出すことしかできなかった!
あの短い時間で一番聞かれたくない
生まれて初めて卓上戦で完膚なきまでに敗北を味わった!!!
やられっぱなしで終わる訳にはいかない、だって…
悔しいじゃない!
我ながらクライム以外の人間に固執するなんて私らしくないと思ってはいる、が。
かつてないほどレイラという女に興味が沸いた
仮にあの女の目標が仮説の通りの人類平等を達成する事だとして、自分とクライム以外に一切興味がない私は将来確実に邪魔になる筈だ。それを分かっていてなお私を生かした。
憐れみ?情が移った?いいえ、実際に私と合間見えてこう思ったのでしょう。
警戒してたけど、まだ若く自分が相手取るには足りない小女だと
私を子供扱いして!(実際子供である)
悔しい、ええ認めましょう。
私、今とてもとても悔しいわ。
久方ぶりに訪れる人間らしい感情の昂りが胸を熱くする。
覚えていなさいレイラ・ドゥレム・ブラッドレイ。
私を甘く見たツケは大きいから。
先ずは王国をさっさと片付けて、貴女の懐に潜り込んであげる。勿論クライムも一緒にね。
それからじっくりたぁっぷり貴女の弱点を学んで、「諦めるにはまだ早い」なんて澄まし顔でほざくその鼻を明かしてやる。
「まだ人としてクライムを■せる可能性」なんかで期待させた貴女には私達を保護する義務がある筈よ。
私は人間に期待しない
他人なんて信用するに値しない
涙なんてとうの昔に枯れきって、残ったのは恵まれた容姿と無駄に高い地位だけ
■を知らないぬけがらの化け物だ
そんな私だと初めから見抜いておきながら、なおも私に手を差し伸べようとする
その思惑が分からない
分からないのは“怖い”から
擦り寄ってあげる
だからまずは彼女の懐に入るところから始めよう、当初の予定はキャンセルで。
より過激に、より丁寧に王国には反省して貰う。
そうしたら…そうしたら……
私にも人間らしい愛が理解できるのかしら
……………………
なんて決意を新たにしていた所、ノックの音で我に帰る。
2人の見送りをお願いしたクライムが帰ってきたのかしら。
どうぞ、と返事を帰すと入ってきたのは見覚えのある小太りのシルエットだった。
「やあ、腹違いの妹よ。
少し時間を貰って良いかい?」
「あら、ザナックお兄様。」
なんだ、次兄か。
クライムの為の声質で返答して損したわ。
いそいそと向かいの席へと座る彼に違和感を覚える。いつもその体付きに相応しくふてぶてしい態度のはずなのに、何処か挙動が不安定だ。
なんというか、動きが……
「?…どうかなさいましたかお兄様、体調が優れないのでしたらお話は後にでも…」
「あ、ぁあいや!
大丈夫だ、体調は問題ない…いや、ある意味問題は…ある……か」
妙にかしこまって神妙な面持ちでごちる次兄を訝しんでいると、ずいっと顔を寄せて、かつてないほど真剣な顔をしながら蚊の鳴くように小さな声音で問うてきた。
「妹よ、聞きたいことがあるのだが。
先程お前が話していた学者、レインと言ったか?
彼女…」
っまさか次兄が彼女に興味を示すとは思っておらず、さっきの醜態も相まって必死に飛び上がりそうな身体を演技で押さえつける。
バルブロお兄様よりはマシだけど所詮はザナック…とか侮っていたわ。
よりによって彼か。
根掘り葉掘り聞かれて計画が露呈してしまうのは非常によろしくない、誤魔化すのは簡単だけど、『興味を持たれる』事自体が危うい。
返答次第では漆黒聖典に処分してもらう必要がある。
これは極秘作戦なのだ、片脚をつっこんでしまった以上信頼を守る為不安要素は極力排除しなければ。
ああ、さようならお兄様。
深入りしすぎた貴方が悪いのです、せめて丁重に埋葬致しますので安らかにお眠り下さいな。
「その…恋人などはいらっしゃるのかな?」
「…………………………はぁ?」
何言ってんだこいつ(真顔)
グッドコミュニケーション!!
グッドコミュニケーションですわ!!
ひぇ〜〜しんどかったですわラナー、あの死んだ魚みたいな目に視線合わせながら話すの辛すぎません?SAN値がゴリゴリ削られるのですが!
途中からかなりテンパってしまいましたがなんとか目を逸らすことなくお話できましたし、これにて任務完了でしょう。
『いい?レイラちゃん。
対話の基本は目と目を合わせてお話する事、約束ね。
どんなに相手が嫌な奴だろうと絶対に逸らしちゃ駄目よ、「私はあなたの言葉をちゃんときいてます」「あなたと仲良くしたいです」っていう誠意の表れなんだから。
相手と仲良くなるには目を見て会話して、隠してる真意を探りなさい。「私は敵じゃないですよ〜」アピールを怠らないようにね!
うまーく使えば常連客も増えて指名もいっぱい貰えるしたくさん貢がれ…こっちの世界じゃ関係ないか、ごめん今のナシ!』
ありがとうお母様!
お母様のお言葉を胸にレイラは今日も頑張っております!
前世は接客業だったんですね!
ま、原作知識があろうとなかろうとやべー女はやべー、私今回それを実感致しました。悪い、やっぱつれぇや。
え?将来デミウルゴスとかアルベドと卓上で対面するかもしれない?やっだもぉーお家に引きこもってていいですか?しがない一般貴族令嬢(極秘部隊所属)は自領に引きこもって亜人退治してちゃダメ?ダメ?そう…
「ヤッ…イヤッ…ヤダー……」
「先輩!?!?」
おっと、思わず某名探偵電気ネズミみたいなしわくちゃ顔になりながらハ〇ワレ構文を披露してしまいました。まあ此処には私と《占星千里》ちゃんしか居ませんし問題ナッシングですわよね。
「失礼、取り乱しました。
それでは《占星千里》ちゃん、其方の報告をお願いしますね」
「り、了解…
これが密偵が今日までに特定した麻薬の栽培場の所在と取引場所の位置。
それにさっき《獄界絶凍》から貰った予測地図と照らし合わせたら、信じられないけど殆ど照合が一致したわ。
私達が発見できていない所は後日確かめるしかないけど、おそらくドンピシャでしょうね」
「それからこっちの資料…関与の怪しい貴族達の裏取りは《天上天下》が進めてる、人海戦術で明日の昼には調査が完了する予定」
「あらそう、沢山動員して正解でしたわね。
人類最高峰の頭脳が弾き出した資料の感想は如何でした?」
「気持ち悪いくらい正確な予測よ、実はラナー第三王女が八本指の黒幕だって言われても違和感ない」
「もしそうだったら我々はもっと苦戦させられていたでしょうね」
冷や汗を掻く《占星千里》ちゃん。
ラナー姫。人格はどうあれ、彼女は紛うことなき天才です。
いえ、天才という言葉すら陳腐ですわ。彼女はその気になれば今後百年…いえ千年先の未来すら見通せる英智を持つ女。別ベクトルで原作最強格の1人です。
敵に回すとかとんでもない!かといって危険視し過ぎて始末してしまうのも後味悪いですし…原作開始前で若干幼いからか本編ほどの狂気は感じ取れませんでしたが、案の定クライム狂いでした。
アレで八本指級の犯罪組織のボスだったら?誰も勝てんわ!
私やツアーのような『プレイヤー』レベルの
潜り込む隙とか絶対作ってくれませんわ。あったとしてもそれは罠、嵌ったら最後絡め取られてアウト〇イジも真っ青な泥沼の地獄が待っている事でしょう。彼女が味方で良かった!(迫真)
きっと彼女は今頃自分の目的が達成できてほくそ笑んでいることでしょう、自分の身とペットの安全も確保できたワケですし。
目的が一直線に決まっていたぶん話の
さて、媚びも売れたワケなのでいよいよ本格的に八本指を潰すため段取りを済ませてしまいましょう。
「必要な書類と衣装は?」
「今日届いた、確認済み。王城へのアポイントメントも取っておいたよ。
……はぁ、ホントに私がやらなきゃダメ?」
「私は既に『レイン』を演じておりますし、他の隊員は裏作業で手一杯ですもの。
貴女にしかできない役回りですわ。
『予言』も出ていないのでしょう?だったら未来がどうなるかなんて誰にも分かりません。
最良は自らの手で掴み取るのです」
「確かにそんなホイホイ来るものじゃないけど…
了解、やれるだけやってみる」
「それでこそ漆黒聖典の若きエースです。
荒事は私と《天上天下》に任せておきなさい」
「エースは止めて…恥ずかしいから…」
「え、でも非戦闘員なのに番外ちゃんの
番外ちゃん本人から聞きましたが?
凄い事じゃないですか、彼女の殺気とか浴びたら普通の人間は泡吹いて気絶するか身体中から色んな体液漏らしながら全力土下座で赦しを乞うのが定番なのに、お小水ちびっただけで意識も飛ばさなかったなんて。番外ちゃん感心してましわよ?」
「あれは!予言でそうなるって予め知ってたから本番でギリギリ我慢できた(できてない)のであって、予知夢の時は大変だったんだから!」
「主にお布団が?」
「そうよ悪夢で目覚めて布団が黄色と茶色でぐちゃぐちゃ…って言わせんな恥ずかしい!」
「語るに堕ちてますわよ〜」
この子ノリが良くて話してて楽しいですわ〜
おーっほっほっほっほ!
ラナーちゃん
原作開始前という事で少し幼い、でも王国の泥沼にどっぷり浸かって糞まみれなので性格は歪んだ。かわいそう。
これでも原作より人間味があるように書いたのだけど、解釈違いかもしれん。
知識チートは健在、ラキュースは使い勝手のいい駒。
クライムのあらゆる姿を網膜に焼き付けて犯したい系女子。
「周辺最強国の法国なら使い勝手の良い隠れ蓑になるでしょ」くらいのノリでレイラに接触、無事その身を焼かれた。
王国のクソ環境の中で得た悪性のためレイラの無自覚天使の微笑みがクリティカルヒット、根っこに残っていた善性を引きずり出され感情のコントロールが効かなくなり泣いちゃった。予想外の出来事に本人が思ってる以上にショックを受けている。
人生で感じたことの無い衝撃を受け、絆されるまではなくともレイラに興味を持った。クライム以外で異例の出来事すぎて本人も「ちょっと面白いかも」と興が乗ってしまっている。
レイラの事は「自分と同類でありながら人を救おうとする物好き」「力では及ばず、もしかしたら私に並ぶ知力の持ち主かもしれないから慎重に取り入っておこう」の精神で今後接してくる
まだ人の愛を知らない悲しいお姫様
レイラ(交渉時のすがた)
アイテムつかってからはフィーリングで話していた、最前は尽くしたと思い込んでる。
「ラナーはクライムと一緒に居たい、その為ならなんでもやる」という原作知識で話のゴールだけを知っていたのでそこへ向けてとにかく突っ走った、途中の式はぜんぶすっ飛ばした。数学なら0点だぞお前。
天使の微笑み(無自覚悪性特攻)に助けられながら交渉終了、以降は《占星千里》にバトンタッチしつつ裏方で武力制圧に加担するもよう。
《占星千里》
本名考え中。
苦労人ポジ、完全非戦闘員のはずなのに最近荒事に駆り出されては前線のサポートに酷使される。
実は手持ちのカバンの中に護衛用のぬいぐるみ型のゴーレム(召喚系モンスターかも)を持ち歩いているという公式設定持ち、原作でお披露目されることはあるのだろうか。それより先に法国が滅ぶ方が早いと思う。
本作においては最年少の漆黒聖典隊員であり、予知夢の異能力があっても現役学院生が所属するのは史上初、それだけ快挙なことでありとても優秀なはずなのだが当の本人は他の女性隊員(国内最大手の大聖堂傘下聖歌隊不動のエース、学院史上最高成績で卒業した神童、国土の北端で今も領土を守り続ける現役お嬢様領主、なお3人全員同じ学院の卒業生でお世話になった先輩である)を前に気後れしているので自己評価は低め。
ペット
わんわん!ラナー様はすごいですわん!
ラナーの親友()
彼女が漆黒聖典の手綱を握ってくれているのならひとまず安心かしら…
ザナ王子
妹の部屋の前でレインとすれ違った時思わず童貞みたいな反応をしてしまった
レエブン侯
巻き込まれ体質の可哀想な男、今後出番あるのか
八本指
今日も平和だな、ヨシっ!
全然本編と関係ないんですけど、どうして徐にヒロインを自殺させようとするの?ねえなんで?こっちは一話の傷がまだ癒えてないんですよ?
こんな事されたらさあ…もうあかねハピエンもの二次書くしか無くなっちゃったよ…なあ、真島ちゃん?