破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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※暴力的な描写有り

24話も続けて原作始まってすらないクソ投稿者いるらしいっすよ、一体誰なんだろうねえ…
書きたい話や場面の肉付けしてたらどんどん文字数かさばって話進まなくなる無限ループに陥るんや、やり過ぎるとテンポ悪くなって地獄なんや
王国編終わったら各陣営の状況ちょろっと()書いて原作始まる予定だからユルシテ…ユルシテ…






24 破滅フラグしかない国に衝撃が走ってしまった…

 

 

 

「まだ見つからんのか!!」

 

 

玉座の間に怒号が響き渡る。

 

王城は今や蜂の巣をつついたような騒ぎに陥っている。

ラナー第三王女が忽然と姿を消してから既に日は傾き、夜の帳が訪れようとしていた。

 

第三王女の失踪

 

初めは誤報か、タチの悪い悪戯かと嘯く者も居たが、巡回兵が城壁付近の庭に就寝時いつも姫が着用していたヘアピンと争った痕跡、そして彼女の毛髪数本を見つけ事態は急展開。

誘拐の線が色濃くなり、王は捜索隊を編成し王都中を大捜索させることになった。

ラキュースもこれを知るなり必死の形相で仲間と共に王都を駆け回り、今も姫探しに奔走している。

 

聞き取り調査の結果、最後にラナーと会ったのは護衛のクライム、就寝前の挨拶を交わした後攫われたとされる。

 

この時点で第一王子バルブロはクライムを犯人だと断定、投獄しようとしたが王や他貴族達によって制止され、以後むくれっ面で紛糾する会議を静観していた。

 

 

「そもそも何故今だ!

何故このタイミングでラナーを狙うのだ!」

 

「お、落ち着いてください父上…」

 

 

冷静になれるわけが無い。

溺愛していた娘を、よりによって一番安全だと確信していた王城内で攫うなど言語道断。

警備の不備然り、娘の恋路どころか身柄まで守れなかった己の不甲斐なさと憤りでどうにかなりそうだった。

 

しかし、これだけは。沸騰した頭でもこれだけは理解出来ることがある。

 

 

「………内通者がおる」

 

 

普段の彼が発するとは思えない程暗く、低い声。

怨恨と慙愧の念が入り交じった、闇より深い底から響く魂の叫びだ。

 

ラナーが居たのは国内でも最高峰の警備を誇るはずの王城内、例え夜中であろうと交代制で警備兵が巡回しているはずだ。

なのにその時間に勤務していたはずの兵からは取り調べの結果「異常なし」以外の報告はない。

そして攫うタイミングも彼女が法国への出立が決まったその日の夜であり、誘拐に至るまでの行動が早すぎる。

 

という事は、だ。

 

あの時のあの会話、法国の使者とランポッサ王のやりとりを聞いていた者のうち、誰かが政略結婚の情報と警備の配置や見回りの勤務時間を誘拐犯へ一緒に渡した事になる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()、法国と手を組まれて一番困るのは奴等だ。王は確信を持っていた。

 

 

「誰だ!娘を攫った裏切り者は!

見つけ次第地獄の苦痛をその身に味わわせ、磔刑に処してくれる!」

 

「父上…」

 

 

疑心暗鬼に陥った王の姿はもはや見ていられない。

無理もない、娘の身柄という特大の地雷を踏んだのだ。

温厚だの甘いだの散々な事を影で囁かれても涼しい顔をしていた彼からは想像出来ないほどの豹変ぶりに貴族達は慄き、激昂する度お付の給仕などは小さく悲鳴を上げて震えている。

ガゼフ、クライムもまた怒りと焦燥感で潰れんばかりに拳を握り締め、己の無力と不安に耐えていた。

 

 

「とにかくラナーを見つけない事にはどうにもならん。

使用人達にもう一度王城内をくまなく調べさせろ、今は捜索隊の報を待つしか…」

 

「し、失礼致します!」

 

 

ザナックの言葉を遮るように飛び込んでくる衛兵。その表情は焦りに染まり、この場の者全てに最悪の予感が脳裏を過ぎる。

 

 

「ラナー様の居場所を特定致しました!

場所は王都外れの再開発予定地にある職業安定所です!

ですが…」

 

 

『職業安定所』、とは王都内で不景気による失職で働きに困った者へ仕事を斡旋する国の事業所である。

が、それを額面通りに受け止めた者は少ない。

一部の者は知っている、その施設は汚職貴族によって歪められた職業安定所とは名ばかりの八本指の息のかかった違法施設だということに。

その中でも衛兵が示した再開発予定地に位置する館は最悪だった。

 

 

「その施設は…実際職業安定所とは名ばかりの違法娼館であり…」

 

「……………は?

 

「ヒィッ!?

げ、現在アインドラ様がた蒼の薔薇が先んじて該当施設を襲撃しております!

加勢の要求もされており予断を許さぬ状況との事!」

 

 

顔を青くし目の前で震える伝令などもはや視界には映らない。

ランポッサ王は頭が真っ白になりそうだった。

ラナーが行った数少ない政策のうち、犯罪組織の資金源になりそうな違法な施設の廃止などが挙げられる。

そのうち、国の許可が降りないまま奴隷を使い違法な環境で奉仕させ賃金を得ている娼館や風俗店は取り締まりの対象となり、かつて王都にて大規模なガサ入れが行われたのだ。その発起人は他ならぬラナー姫その人である。

 

その逆恨みなのか、そうではないのかなど今は関係ない。

 

大事な娘が攫われて?

 

身柄は違法娼館にある?

 

……………は?

 

 

今日一番の怒号と戦士長の出撃命令が玉座の間に木霊するのにさほど時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は戻り、日が傾く少し前

 

 

王都外れにあるレストランに迫る完全武装の2人組が居た。

なかば乱暴に扉を開き、呆気に取られる客の中を掻き分けて店の一番奥に座る目当ての人物へ向かって突き進む。

 

 

「あら、ごきげんよう。

随分と早い到着ですね、もっと我武者羅に探してからここへ辿り着くものと思っていました」

 

「ふざけないで」

 

 

王国アダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇。

その主要戦力である2名、ガガーランとラキュースだ。

鬼気迫る表情のラキュースは可笑しそうに笑う彼女の服を掴みあげ、肉薄する。

 

 

「ラナーを何処へやったの」

 

「さあ?私にも分かりかねます。

まさか夜のうちに居なくなるとは予想外ですわ。

只今探知に長けた者を散らして捜索中ですが、出来れば日が完全に落ちる前に見つけ出したいところですね」

 

「……」

 

「その顔、全く納得していませんね。

けれど〝こう〟なってしまった責任が我々だけにあるとでも?」

 

 

ラナーとレイラを引き合わせたのは他でもないラキュース自身。

彼女がラナーに勘づかれてしまったからこそレイラはわざわざ王城へ出向く羽目になり、連中の不信を買った。

もちろんそれだけが理由という訳ではないが、誘拐の原因となる一端になったのは間違いないだろう。

いくらレイラを睨み付けてもその事実だけは変わらない、変わらないからこそ八つ当たり気味になってしまう愚かな自分が嫌になる。

 

 

「……っそれでも、何か手がかりはないの!?」

 

 

焦るラキュースを優しく諭すように掴まれた手を振り払い、乱れた衣服を整えながらレイラは言った。

 

 

「王都の各関所には諜報員をばら蒔いてあります、八本指程度の隠密能力で我々の目を逃れお姫様を外へ連れ出す事は出来ません」

 

「じゃあラナーはまだ王都のどこかに?」

 

「報告が来ない以上そういう事でしょう。

王都内の何処かに監禁されている可能性が高い、尚且つ八本指の息のかかった施設となると…少々候補が多過ぎますわね。

此方も今王都に残った部隊を総動員しておりますのでもうしばらく辛抱なさい。

其方の双子忍者ちゃんとお転婆吸血鬼ちゃんも必死になって捜索しているのでしょう?」

 

「そうだけど…」

 

「《獄界絶凍》!《獄界絶凍》!!」

 

 

店の2階から焦った様子で降りてきた《占星千里》が息を切らしながらレイラへ駆け寄る。

 

 

「第三王女が攫われた場所、特定できた!

南東の職業安定所に連れていかれたっぽい、早く向かわないと…」

 

「職業安定所ですか、それはちょっとマズイですわね」

 

「職業安定所…?

確か日雇労働者を斡旋する国の施設なハズだけど、どうしてそこにラナーを?」

 

「マジかよ…急ぐぞリーダー!

おチビちゃんと双子にも連絡取って合流だ!」

 

「ちょっ、ちょっとガガーラン!?」

 

理由(ワケ)は後で話す!

……最悪の事態になってるかもしれねえ、覚悟しといた方がいい」

 

 

いつになく真剣な表情でそう呟くガガーラン、普段おおらかで快活な彼女が滅多にとらない態度にラキュースも顔が強ばる。

 

 

「行くぞ!邪魔したな漆黒聖典さんよ!」

 

 

引っ張られるように店を後にするラキュースを見送って、レイラは紅茶をひと口含む。

喉を潤したあと、「飲んどる場合か!」と焦る《占星千里》に向けて軽い指示を飛ばし再び席へと腰掛けた後、誰に言うでもなく独り呟く。

 

 

「良い友人ではないですか、もっと大事になさったら?」

 

 

独り言は喧騒を取り戻す店内にかき消され誰の耳にも届く事はない。

 

 

 

 

 

……………………………………………

 

 

 

 

レイラと別れレストランを飛び出したガガーランとラキュース。

 

息を切らし走りながらも、ラキュースは疑問を口に出す。

 

 

「どうゆうことなのガガーラン!?

職業安定所がなんなのよ!」

 

「表向きにはそうだろうよ、彼処は。

だが裏じゃ働きに困ってる奴等の弱みにつけ込んで、やべえ仕事を斡旋する場所だって有名なんだ。

噂じゃ八本指が取り仕切ってる悪行に加担させられるらしいってよ!」

 

「なんですって!?

そんなこと私は一度も……」

 

「そりゃそうさ、ずっと巧妙に隠してた。この情報はいわゆる〝知る人ぞ知る〟ってヤツだからな!

オレも噂を聞き齧ったのは最近よ。

しかしさっき出てきた法国の嬢ちゃんの焦りようだと、噂はマジかもしれねえ。

そんな所に姫さんが連れて行かれた、どうなると思う?」

 

「……ッ!!」

 

 

言うまでもない。

顔の整ったラナーだ、犯罪の片棒を担ぐような施設でどんな扱いを受けるか馬鹿でも想像できる。

 

 

「ごめん鬼リーダー、遅れた」

 

「先に報告に行こうと思ったけど、向かう先は一緒っぽい?」

 

 

走る2人に追いついたのは双子忍者のティアとティナ、どうやら彼女達もラナーの居場所に当たりをつけ向かっていたようだ。

 

 

「イビルアイがその辺の騎士を捕まえて国王に伝令させてる、私達は直に向かおう」

 

「ティナと2人で先行する」

 

「お願い、急いで!

ああラナー…どうか無事でいて……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぱちん、ぱちんと、肉と肉のぶつかり合う音

 

時折聞こえる少女の呻き声

 

野郎の荒い息遣い

 

 

王都南東部。

国の衰えとともに日銭を稼ぐにも困るようになった労働者たちを救うため設立された職業安定所。

 

弱者救済の為に設えられたこの場所は、今となっては形ばかりの違法施設となっている。

 

初めのうちはきちんとした施設としての体をなし、職を失い路頭に迷う国民と人手不足に悩む現場とを繋ぐ橋渡し役としての責務を全うしていたのだが、施設のトップが代替わりするたびに形態は劣化し今代で遂に八本指との癒着にまで関係を持ってしまう。

もはや健全な機能は失われ、男が斡旋されるのは八本指の息がかかった劣悪な仕事環境の中長時間労働させられ、雀の涙ほどの賃金しか貰えない職場ばかり。

女などはもっと悲惨で、実にその8割が風俗で慰み者にされる始末。残った2割は質の悪い貴族に身受けされ消息を絶った。

 

 

そして現在

職業安定所の体をなした裏側で、今日も今日とて汚い音が響き渡る。

 

 

「……ひっ、ひっひっひっ!ぐひひひひひ……!!」

 

「ぁ……ぐッ!?ぅあ……」

 

 

娼館内地下室、お得意様用の特別室。

俗に言う『VIPルーム』では一組の男女が設えられたベッドの上で身体を揺らす。

少女の上に馬乗りになった男が腰を振り、恍惚の表情を浮かべながら枝のような両腕を軽々と押さえつけ、空いた方の手で彼女の顔面を殴打した。

 

1発、2発と殴られる度少女の顔は苦痛に歪み、頬に痣が浮かぶ。それを眺めながら更に腰の動きを激しくする男。

 

 

「ぐひひっ……良いぞォもっと見せろ。

高い金で買った甲斐があった……」

 

 

そう言って娼婦の着ていた如何にも高そうなドレスの胸元を引っ掴み、思い切り外側へ破く。

びりびりと音を立てながらただの布切れと化すドレスの中から現れた娼婦の腹部に再び重い拳を食らわせながら、その脂ぎって贅肉だらけの顔から満足気に荒い息を吐いた。

 

男の名はスタッファン・へーウィッシュ。

 

この娼館に足蹴く通う常連客の1人であり、筋金入りに歪んだ加虐性癖の持ち主(リョナラー)であった。

 

 

「それにしても、こんなところでお目にかかれるとは思っていなかった。

ドレスだけでも金貨500枚を叩いたんだぞ?」

 

「ひゅー……ひゅー…」

 

「オイ何気絶してる、さっさと起きろ!」

 

「あっ……がッ!?

もうし…わけ……ございません…」

 

 

意識を失っていた娼婦の腹部を目覚まし代わりに数回蹴りつけ無理矢理覚醒させる。

娼婦として小綺麗に整えていたはずの彼女の顔は青痣と傷跡だらけでもはや見る影もない。

 

 

「あの姫君が着用していたドレスを着て俺の相手ができるんだ、光栄に思え。

お前を買った値段よりこのドレスの価値の方が圧倒的に高いんだからな!」

 

「は……い…」

 

「それにしても…

あ〜〜!本物をこうしてやりたかった!」

 

 

音の通らぬ地下室でスタッファンは魂の叫びを上げた。

再びその腰を上げ、先程より激しく、いっそう強く少女へと打ち付ける。

 

 

「ああラナー、ラナー、ラナー姫!

あの美しい顔をめちゃくちゃに犯してやりてえなあ!」

 

 

八本指とかなり前から癒着し、今の地位と金を手に入れたスタッファン。

巡回士という立場を手に入れた彼は歪んだ性癖の捌け口を違法娼館に求めていた。

以前までは八本指経由で娼館など探し放題で、欲望を満たす場所など山ほど存在したのだが、ラナーが行った政策により摘発が相次ぎ今では片手で数えられるほどしか残っていない。

 

逆恨み、拗らせた性癖、美しい顔への歪んだ肉欲が彼をこの店へと運ばせた。

 

日が落ちきらぬ早い時間に此処へ来たのは偶然だったが、いい買い物をした。やはり善行は積むものだなとスタッファンは思う。

来店し馴染みの店員と言葉を交わした際、あのラナー姫が着用していたドレスが出回っているという話を聞いた際は一も二もなく飛びついた。

精巧な偽物かとも訝しんだが、わざわざ店員がリークしてきた情報だった事と、実物を見て嘗て王城で姫が着用していたものと全く同じものだと確信を得て、金貨500枚で買い取ってから彼女と顔の似た金髪の娼婦を指名し、行為にふける。

 

 

「あの忌々しい姫君の小綺麗な顔を!」

 

「ぎっ…!?」

 

「ぐしゃぐしゃにしてやったら!」

 

「…ぁがっ!!」

 

「どれだけ気持ち良いかなぁ!!」

 

「や…やめ……」

 

「黙って股を開けェ!

わざわざ似た顔のお前を選んでやったんだ、丹精込めて奉仕しろ」

 

 

無理矢理身体を起こし、自分の股へ顔を埋めさせる。

汚い水音と一緒に恍惚の表情を浮かべながら、行為(コスプレプレイ)に勤しむスタッファン。

 

 

「ごほっ…ごぼっ!?…ぁ…ぁ……たすけ…て……」

 

「そうだ!

あのお優しい姫君なら泣いて許しを乞うだろうなあ!

もっと言ってみろ、その分だけ腹を殴ってやる。

回復薬(ポーション)も買っておいたから何度でもできるぞ!

それとも、こっちの方がイイ声で鳴けるか?」

 

「ぇ…」

 

おもむろに少女の指に手を回し、恋人繋ぎのように優しく握り込む。

そして次の瞬間両の手を使い彼女の左手小指を逆側にねじ曲げた。

 

「ひっ!?あっ……やっ…やめ…」

 

「そうだぁもっと見ろ、折れるぞ折れるぞ折れるぞォ〜………」

 

「ゆるして…ください…指は……ゆるしてぇ……」

 

「そうかそうか折れるのは嫌か!

そうだよな!痛いのは嫌だものな!」

 

痛みに身を捩りながら必死に懇願する少女に卑下た笑みを浮かべながらスタッファンは一瞬だけ力を緩め、祈りが届いたと彼女が安堵の表情を浮かべたその瞬間。

 

ぽきり

 

「へ…?

…ッ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''あ''ッ!?」

 

 

躊躇いもなくその華奢な小指をへし折った。

少女の絶叫が地下室に響き、暴れ回る身体を体重に任せて無理矢理押さえつけながらなおもスタッファンは腰の振りを激しくし、文字通り行為に精を出す。

 

「どうだ?どうだあ?指を折られる痛みは!?

まだあと9本も楽しめる、全部折れても治るからなあ!まだまだ楽しめるぞぉ!」

 

 

この国に奴隷は居ない。

嘗て黄金の姫君が規制し、その権威が最も強い王都では特に厳しい制限がかけられた。

しかし違法娼館に売り飛ばされた者には人権など存在しない、奴隷という身分は存在しないが〝奴隷と同じ価値の道具〟として扱われる。

スタッファンからすれば「壊れたら替えのきく玩具」くらいの気持ちで此処の娼婦たちを使っているのだろう。

 

 

 

夢中になって外で何が起きているのかも気付かないまま

 

 

「ひゅぐ…っやだ…もうやだぁ…こ……ろし…て…ぇ」

 

「楽しいなあ、楽しいなあ!

八本指がこの国を掌握すれば姫は俺の物だ、そうすりゃこんなニセモノじゃなく本物のラナー姫を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぺ?」

 

 

スタッファンの視界がぶれる。

 

べきべきと砕ける音がして、身体と頭が離れた。

 

飛んだ頭部はそのまま地下室の壁に叩き付けられ、気付いた時には真っ赤な染みになっていた。

 

恍惚の表情を浮かべたまま、唐突に彼は事切れた。

 

 

「……クソが」

 

 

返り血の着いた戦鎚(ウォーピック)を肩に担ぎ直し、巨漢の女性が毒づく。

 

脂ぎった図体を乱暴に横へのかすと、痣で全身腫れぼって見れたものでは無い少女と一部破かれた見覚えのあるドレス。

 

到着した蒼の薔薇は制止する職員を強引に突破し、建物内を捜索。

ガガーランは地下室を担当しており、一部屋ずつ虱潰しに家捜ししていた所、スタッファンの大声を聞きつけ乗り込んだわけだ。

 

ギガントバジリスクすら慄く巨鎚の一撃をただの人間が受けてしまえばどうなるか想像に難くない。

 

思ったよりも簡単に手が出てしまった、リーダーとは違い裏社会を見た事のある彼女だからこそ即断即決で殺害を選んだが、本来なら殺人もふまえ浅慮で許されない事だ。この時だけはアダマンタイト級冒険者(ワガママの効く立場)で良かったと心底思う。

目標達成の為に生じる致し方の無い犠牲(コラテラルダメージ)で大体の言い訳は通るのだから。

 

 

「アイツらと長いこと一緒にいたからかね、堪え性がなくなっちまった。

おい、お嬢ちゃん生きてるか?

ひでぇやられようだ…」

 

 

返事は無い、スタッファンによって見るも無惨な姿にされた歳若い娼婦へガガーランは戦闘用にいつも持ち歩いている《重傷治癒(ヘビーリカバー)》の込められたスクロールを取り出し、彼女へ使用した。

高価なスクロールを躊躇いなく使用するあたり、彼女の人の良さが伺える。

 

発動された魔法により放たれた光がみるみるうちに少女の傷を癒し、折れた骨も元通りに修復された。

まだ気を失っているようだが、呼吸が安定したのを確認するとガガーランは彼女を体液まみれのベッドから優しく抱き上げ傍にあったソファに寝かせ、クローゼットから漁った綺麗な毛布で裸体を隠す。

回復魔法で外傷は癒せても病気や心の傷までは治せない。意識が戻った時彼女が立ち直れるかは本人の気力次第だが…

 

 

「ガガーラン」

 

「おう」

 

 

背後からかけられる声、振り向けばそこには双子忍者の片割れ、ティナの姿が。

 

 

「地上階は制圧完了、スキルで探った感じ地下室のさらに先に隠し部屋を見つけた。

今鬼リーダーが向かってる。

…………そのドレスは」

 

「ああ、姫さんが着てたモンだ。

着せられてたのは別人だがな、横のコイツは気にすんな」

 

「私は何も見ていない」

 

 

ちらっと壁にぶちまけられた赤い染みと豚のような巨体を一瞥し、興味なさげに視界から外した。

 

破り捨てられたドレスはラナーのものであると確信できる、但し中身は顔の似た別人で、ならば本物の彼女は何処か別の場所に衣服を剥ぎ取られた状態で監禁されている可能性が高い。

八本指指揮下の組織とはいえ充分に統制の取れていない犯罪者たちの巣窟で裸を晒すこと、それ即ち……

 

 

「……手遅れ、かも」

 

「ラキュースには辛い思いをさせるな…」

 

 

沈痛な面持ちで残酷な真実を予見した2人の呟きと、開け放しの扉の向こうから聞こえたリーダーの悲痛な叫び声が聞こえるのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日は完全に落ち、夜の帳が訪れる。

 

王城、玉座の間は針一本落としても音が響くような静寂に包まれていた。

 

貴族たちは皆勢揃いし、頭を垂れ王の言葉を待っている。

しかし当の本人は何も発さず、ただ沈黙だけが場を支配していた。

 

 

「………………何故だ」

 

 

ぼそり、呟いた王の一言に貴族たちが震え上がる。

 

 

「何故だ」

 

 

誰に問われる訳でもなく、自分に言い聞かせるように。

 

 

「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ」

 

 

壊れたテープレコーダーのように同じ単語を発し続けるその姿を、嘗ての彼を知る者が見たらどう思うだろう。

 

 

「何故、ラナーは死なねばならなかった…?」

 

 

怨嗟を込めた呪詛、あるいは自分自身への告解のように王は呟く。

 

 

「あの娘は国を憂いただけだ。

無力な我が身と知りながら、それでも懸命に尽くそうとしただけの娘だった。

それが何故、何故ェ……ッ!!」

 

 

 

「こんな最期を迎えなければならない!!」

 

 

呟きは慟哭へ。

 

 

 

 

ラキュース率いる蒼の薔薇による報告。

該当施設の地下に存在する隠し部屋にてラナーを発見、その身は既に事切れており、遺体には複数箇所の深い傷跡と性的暴行を受けた痕跡がみられる。

攫われてからこの数時間の間、恐らく複数人から嬲られていたのか小綺麗だった顔は酷く汚され、とても直視できるものではなかった。

一番最初に発見したラキュースが半狂乱で我を忘れて《死者復活(レイズデッド)》を行おうとしたのをメンバー総出で制止し(レベル不足で灰になるため)、遺体を王城へ搬送。急遽呼び出された()()の神官の手によって検死が行われ、彼女の死亡が決定づけられた。

 

本来なら王の隣、三兄妹の末妹が座る筈だった1番左側の席は現在空白であり、未来永劫埋まることはないだろう。

 

ポーションでも治癒できず、損傷の激し過ぎる遺体はもはや復活の余地なしとされ荼毘に伏される予定である。これは土葬が一般的であるこの世界においてかなり異質な決定であった。

 

皆に愛され、民を愛した悲劇の姫君はその遺体すらこの世界に残せぬまま永遠の眠りに就くことになる。

 

この事実を悟った第一発見者であるラキュースは現在ショックで宿に引きこもってしまっている。他メンバーが一緒に付いてはいるが、心境は決して穏やかではないだろう。

 

 

「父上、今はせめてラナーを弔いましょう。

無事に葬儀を終えれば今度こそ……」

 

「……………………分かっておる。

全ての元凶は犯罪組織、八本指。

もはや一刻の猶予もない、皆殺しだ」

 

 

議場からどよめきがあがる。

 

 

「奴らは皆、裁判に掛ける必要も無い。

これは王の勅命である、八本指に与する者は誰であれ何であれ即、死刑だ。

関わった者も、その家族も、一族郎党皆殺しに処す。

邪魔する者もまた同様に、関与したものと断定し、相応の罰を与える」

 

「王よ、流石にそれは…」

 

「越権行為が過ぎるのではないですか!?」

 

「いくら犯罪者とて法を護らず即殺など…」

 

 

いつもの野次、なのだが生憎今の彼…娘を殺され復讐の鬼と化したランポッサ王に対して悪手と言わざるを得ない。

 

 

「……そうか、衛兵よ」

 

「はっ!」

 

「今しがた儂に野次を飛ばした貴族3人、拘束し尋問せよ。

八本指の回し者かもしれん。」

 

「は……はっ?」

 

「二度は言わん、急げ」

 

 

言われるまま、数人の衛兵が先程野次を飛ばした貴族を拘束し廊下へと連れ出す。

突然の拘束にもちろん貴族だって黙っていられない、全力で抗議した。

 

 

「王よ、なんのつもりか!?」

 

「言ったであろう、儂の邪魔をする者には容赦はせんと。

儂の言葉を遮り八本指を擁護した、それが罪じゃ」

 

「横暴な…!許される事では……」

 

「ワシを誰だと思っている?」

 

 

抗議のために口を開いた貴族の顔が王と相対し固まる、同様に拘束された貴族達も表情を凍り付かせた。

 

そこに座るのは、普段の王ではない。

今までの彼は枯れ木のようにやせ細り、白髪で年配特有のくたびれた老人だった筈だ。老齢ゆえ甘い対応しかできず、覇気を失った死にかけの老いぼれだったからこそ貴族たちは虎視眈々とその椅子を狙えていた。

 

だがどうだ、今の王の姿は。

娘を失い、怨嗟に塗れた幽鬼のような佇まい。

愛情が反転し報復心の塊となったその瞳はギラギラと獰猛に輝いており、復讐に燃えるその姿は普段の彼とあまりにもかけ離れている。

 

そこには鬼が座していた

 

 

「知らぬなら教えてやろう。

儂はこの国を統べる王、三代目ランポッサ。

リ・エスティーゼは全て等しく我が庭である、であれば庭を荒らす害虫が出たのなら駆除するのが道理であろう?

よいか、もう一度だけ選択肢をやる」

 

「貴様は王国の民か、それとも害虫か?」

 

 

古参の貴族曰く、現役時代のランポッサ三世は苛烈な王であったらしい。

暴君と呼ばれるほどではないにしろ厳格で、規律を破る者や怠惰を見せる者には重い罰を下す。

時には側近や使用人すら処罰するその辣腕っぷりが貴族達からたいそう恐れられていた。

そんな姿が毎日のように見られたそうだ、それが今まで八本指という国ぐるみの問題を先送りにされてきた王国が彼の代で今日まで国としての体を保っていた理由のひとつでもある。

しかし時が経ち、老化とともに感情の起伏が穏やかになり、婚姻し子が産まれたりなど数々の要因が重なった結果、現在の王がある。

 

貴族の中でもこの事実を知っているのはほぼ同世代にして彼とも馴染みの深いウロヴァーナ辺境伯と、まだ王国が帝国と元気にドンパチやれていた時代に実力でのし上がったボウロロープ侯くらいのものか。

ほとんどの貴族は世代交代により若い者へと移り変わり、優しく甘い枯れ木のような王しか知らない。

 

それがどうだ。

 

地獄の閻魔と見まごう豹変ぶりに情けない悲鳴を漏らし、反論する余裕もなくなった彼らは力なく衛兵に連れていかれた。

同時に、ここにいる全ての人間が理解した。

 

王は復讐に身を焼かれ狂ってしまった。

 

最後の歯止めだったラナーが死に、枷の切れた憤怒のまま、冷静に狂っている。

 

それを嘲笑おうものなら、憤怒の焔は容赦なくこちらへ飛び火するだろう。

 

それを正しく理解した者たちは今までの態度を続ければ自身の首が物理的に飛ぶであろう未来を想像し、騒がしかった議場も徐々に萎縮し始めた。

が、それすら理解できない、「大した事ないだろ」と侮る者が一定数居るのもまた事実。

 

 

「ガゼフよ」

 

「ハッ!」

 

「剣を良く研いでおけ」

 

「……御心のままに」

 

 

告げる王と静かに腰剣に手をかける戦士長。

その僅かなやり取りだけで否応にも理解する。

この国最強の男は王の剣、命じれば躊躇いなくこちらを斬り殺すだろう。

物理的な脅威が目の前にある以上、どれだけ腹の底で王を罵倒しようとも今は平伏するしかない。

貴族達は静かなものだ。

 

この日、就任以来最も静かでスムーズに進行する御前会議だったと長年近衛を務める古参兵は語った。

 

どんなに怒ろうと王を「所詮は老いぼれ」と顔を隠して舌を出してきた者たちは思い知る事になる。

目先の利益のみに拘って手を付けた麻薬(どく)が、先王憎しの浅はかな感情で僅かなりとも関わってしまった八本指(あく)が、否応なしにその身を蝕み滅ぼす事になろうとは。

 

 

 

後悔するのは何時だって、手遅れになった後なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上」

 

「……どうした、ザナック。

こんな夜更けに」

 

「あの場では申せませんでしたが、ラナーより遺言状を預かっています。

この事は長兄にすら内密にして欲しいと、妹は言っておりました」

 

「……!!そうか、あの娘は最期まで…

見せてくれるか?」

 

「はい、どうぞ」

 

「ふむ……

………………ッ!?……………。………

ザナックよ」

 

「なんでしょう」

 

「王国は、好きか?」

 

「ッ!ええ、もちろん」

 

「そう畏まるな、此処には貴族の目もない」

 

「…………わた、俺は…この国が好きだ。

ずっと育ってきた故郷で、美味い物や綺麗な景色が沢山あって、そんな物を作れる職人や生産できる民は宝だと思う。

王国の誰もが幸せであり続ければいいと思ってる。

それがどんなに絵空事で夢物語だとしても、〝そう〟望むくらいはしたっていいはずだ」

 

「……そうか。

儂の眼も曇ったものだな、こんなにも近くに答えはあったというのに」

 

「それは…」

 

「よい、今はラナーを弔い伏せるとしよう。

さすればザナックよ、お前には成すべき事がある。分かっておるな?」

 

「……はい、父上」

 

「交渉が滞るようであれば儂の名を出して構わん。

覚悟を決めねばなるまい。

此処に書かれていることが真実であるならば、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帳も深く、王都は静寂に包まれている。

日が昇れば活動し、落ちて辺りが暗くなれば寝る。多少のズレはあれどこの世界の人間に染み付いた生活サイクルは一貫していた。

火を焚けば辺りは照らせるが、燃料代だって馬鹿にならない。故に暗くなればほぼ全ての人間が眠り、睡眠をとる。

 

そんななか、皆の寝静まった王都郊外のレストランにて。

 

 

『《枝》から《幹》へ。

《金融》は予定通り《巣》へと潜った』

 

『こちら《花》。

《窃盗》、《密輸》、《賭博》は既に《巣》へ篭って待機中。

《幹》からの命令を請う』

 

「了解、《花》と《枝》はそのまま監視を続行。

《蜂》を向かわせて出入口周辺を固めて。

《蟻》、《麻薬》と《奴隷》の同行は?」

 

『両名とも到着間近だ、《麻薬》の方は50人ほど護衛を引き連れてるのを確認した。

その中で《暗殺》、《警備》も目視で確認、《麻薬》が囲いこんだらしい。少なくとも30分以内に《巣》へ合流する見込み』

 

「ま、一番お金を持ってるものね…了解(ラジャー)

《幹》より全部隊へ。

〝審判の時来たれり〟

合図があるまで待機せよ」

 

『『『『『了解』』』』』

 

 

「…中にいる護衛は全部署含めてざっと200人くらいか。

先輩、あと30分だって」

 

「ええ、ええ。問題ありませんわ。

予定通り事を進めましょう」

 

 

氷帝重機兵団(レギオン・メビウシス)

 

 

レイラの手から広がる魔法陣、急に辺りの気温が下がり、空気中の凍結した水分がブロックを積み重ねるように組み上がる。

 

 

制圧部隊(コンキスタドール)

 

 

やがて彼女の周りには腰に鎌刀を提げた蒼色の鎧騎士が何組も集い、跪く。

一体一体が芸術品といっても過言ではない作り込み、その中心に佇むレイラはさながら女帝のよう。

夜闇に浮かぶレストランを背景に、残った隊員達の前で彼女は自ら聖書を広げ、諭すように読み上げる。

 

レイラの言葉に耳を傾け、静かに祈りを捧げる眼前の隊員達はもちろん、通信媒体も兼ねた魔法の聖書を通して各都市に潜む全隊員にも通達されていた。

 

 

〝清聴せよ、清聴せよ〟

 

〝我等は代行人である〟

 

〝ただ伏して御主に赦しを乞い、ただ伏して御主の敵を打ち倒す者なり〟

 

〝これは審判である〟

 

〝被告、王国貴族〟

 

〝被告、犯罪組織『八本指』〟

 

〝過誤にその身を蝕まれ、罪に魂を焼かれる哀れな咎人たち〟

 

〝その罪が死によって晴れるのならば〟

 

〝我等は束の間、嵐となろう〟

 

〝一筋の稲妻となろう、逃れられぬ暴風となろう〟

 

〝心無く、涙も無い、遍く脅威となろう〟

 

〝そう有れるなら、我等は神の道具であればいい〟

 

 

 

Amen(そうあれかし)

 

 

 

静かにそう締め括り、本を閉じる。

 

服装は潜入時の地味な衣装ではなく、夜闇に紛れる漆黒のドレスと銀に輝くストール(魔剣ジゼル)を肩に掛けた本気装備で、さしずめ聖女のような佇まい、隣のセーラー服姿の《占星千里》も相まって異質な雰囲気を作り出していた。

 

 

「さぁ皆様、粛清の時間です。

赦免(しゃめん)宥恕(ゆうじょ)も此度は不要。

静かに、確かに、存分に主命を全うなさい」

 

「寝ている羊たちを起こさぬように、ね」

 

 

数多の鎧に囲まれて、しぃーっと人差し指を口元に当てながら、妖艶な笑みで命令を下す氷の魔女。

悪戯を企む少女のように軽々しく、組織殲滅を言い放つ。整った顔に黄金の(ほし)がふたつ、見るもの全てを魅了するように輝いていた。

その瞳に脳を焼かれた水明聖典の面々が深く頷く。

 

隊員達は知っている、漆黒聖典の問題児だなんだと言われているこの娘こそ神の傍らに最も近い、尊き導き手である事を。

決して公にはされないが、彼女が破滅の竜王なる世界を滅ぼさんとする存在を討ち取った張本人だということを。

 

他者を否応なしに巻き込み魅了する才能。

圧倒的なカリスマを垂れ流すこの女は己の放つ輝きがどれほど周囲に影響を与えるのか自覚もないまま今日も破滅フラグを回避したい一心で笑顔を振りまく。

 

そのとめどない魅力に惹かれ、或いは比類なき強さに惹かれ、彼等は集った。

真の意味で人類の守護者足る為に。

 

 

「六大神の名に誓い」

 

 

『全ての不義に鉄槌を』

 

 

漆黒聖典第13席次、及び闇の神スルシャーナを祀る筆頭聖女の詠んだ有難い文言を胸に顔を上げ、信心深い隊員たちは一糸乱れぬ動きで四方に散らばり、それに続く氷の鎧達。

満足したようにレイラは隣に控えた《占星千里》へ目を向ければ、彼女は呼応するように頷いた。

 

 

「密造施設128箇所、密売施設73箇所、国内全て捕捉、包囲してある。

夜襲を掛け先に周囲を制圧すれば《獄界絶凍》のゴーレムが…」

 

「全て片付けるでしょう、そういう風に作っておきました」

 

 

レイラの作ったゴーレム、『征服者(コンキスタドール)』の名を冠したそれらは今回の作戦用のため特別に組まれたものだ。

普段使いのゴーレムほど耐久力はなく、鎌刀による攻撃も殆ど見掛け倒しだが、代わりに速力が高く高機動なのと、製作者の合図で外部に向けて強力な冷気を放ち続ける仕様になっている。

 

王国に流通する麻薬、名を『ライラの黒粉』。

ライラというのは土地の名であり、原産は聖王国南部のごく一部に生息する植物だ。

現地の人達はこれを乾燥させすり潰し、粉状にしたものを少量取り込むことで漢方薬や痛み止めに使用していた。効能もさして中毒性の高いものではなく、薬学的にも利便性のある〝薬草〟として密かに親しまれていたものだった。

 

それをたまたま手に入れた八本指の密売人が品種改良し、悪用されたのが現在王国に蔓延している違法薬物である。

中毒性の上昇はもちろん度重なる改悪により全体が黒く変色し、毒々しい見た目となったその薬草はすりおろした粉も真っ黒に染まっており、〝黒粉〟の由来とされている。

そんな〝毒草〟、実は暖かい聖王国南部で栽培されていた関係上寒さにとても弱い。

 

この事実を《占星千里》は流通する麻薬の販売履歴と生産頻度から割り出し、《天上天下》監視のもと販売者から言質も得た。

 

ならばあとは簡単だ、レイラの作るゴーレムが畑ごと冷やしてしまえば寒気に弱い毒草は根枯れをおこしやがて使い物にならなくなる。

使い物にならなくなった麻薬に最早商品としての価値は無い、それが王国中の栽培所で起これば生産は完全にストップし供給源も絶たれるだろう。

 

同時に流通も密売施設を襲撃する事で迅速に断ち、例の如くゴーレムが在庫も一掃する手筈。

 

それら全ての出来事が迅速に、一晩で起こる。

現代の特殊部隊ならともかく、せいぜいが中世並の異世界の組織なら本来到底成し得ることはできないだろう。

作戦を広範囲にかつ確実に遂行できる人的資源と宗教による目的意識の一本化による統率力、これも法国の持つ強みのひとつだ。伊達に600年人類の裏で暗躍している訳じゃない。

 

当然、八本指麻薬部門はこの事を知る由もない。

彼等は今『法国の放り投げた金貨100万枚』と『第三王女の死』で頭が一杯。故に〝いつもの集合場所〟で各部門のトップ達が集い、今後の組織運営について話し合う機会を作っていた。

ならばそこを迅速に襲撃、制圧する、それが彼女の仕事だ。

 

 

「チンピラとはいえ武装した兵隊が少なくとも150人以上、それに暗殺部門と警備部門の精鋭50人が《巣》の中で待ち構えてる。

……本当に先輩一人でやるのね?」

 

「ええ。貴女は全体の指揮がありますし、《天上天下》は今も国中を奔走していますから。

おっと、八本指の首魁達は見せしめになってもらわないといけないので殺してしまわないよう加減しないといけませんわよね」

 

 

おほほほほほ、と悪びれる様子もなく上品に笑うレイラに《占星千里》、本名ルリ・ヘティス・キスタインは苦笑し、疑問を口に出す。

 

 

「ラナー姫のこと、本当に大丈夫なんでしょうね」

 

「もちろん、ネタばらしは全てが終わった後にお話し致しますとも。

今は悪党を成敗することだけ考えていればよろしくってよ」

 

「蒼の薔薇…ていうかラキュースからスッゴイ恨まれる気がするわ。予知夢無くても分かる」

 

「ンッンー…ま、その辺はおいおい考えましょう。

さあさあ、Let’s大粛清ですわ!」

 

「天性の人たらし…

先輩ってばいつもそうじゃない、どうなっても知らないからね」

 

 

 

 

王国国民が寝静まり、夜の帳が降りた頃、王都中を駆ける影が複数。

フードを目深に被った黒い影、その少し後ろに縋る蒼い影、いくつもの黒と青の集団は夜闇を裂くようにそれぞれ目的の地へと迷いなくひた走る。

 

 

 

雌伏の時を経て、護法国家が手癖の悪い指を切り落としにやってきた

 

 

 

 

 









ランポッサ
キレた

ザナック
覚悟をキメた

豚ッファン
死んだ

ラナー
死んだ?

ラキュース
曇った

レイラ
オリチャー発動!
作戦前は自前のポエムを読むと何故か部隊の指揮が上がるので毎回やってるもよう、信仰ってすごいね!


次回
さあ、八本指解体ショーの始まりや
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