破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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2 話 目 だ


※キャラ崩壊するぞ!気を付けろ!忠告したからな!









27 破滅フラグ?しかない王国編エピローグ…

アダマンタイト冒険者グループ、『蒼の薔薇』

 

王国最強の冒険者グループの1つであり、今回の八本指騒動の裏で密かに活躍した功績を称え、叔父と共にそれなりの報酬を貰った。

 

しかしリーダーの表情は暗い。

 

別に報酬の額に不満があるとかじゃない、アダマンタイト冒険者に到達した時点で金銭事情に困った事はないし。

 

 

「気持ちは分かるがよ、あんま気ぃ落とすなラキュース」

 

 

ガガーランに肩を叩かれるも依然として彼女の表情は暗い。

 

既に国を挙げたラナーの告別式は終わり、元凶であった八本指の幹部たちも仮死状態から解凍された後新王直々の指示の下8人全員が公衆の面前のもと処刑。

 

国民の罵声を浴びせられ、無様に喚きながら刑を執行される幹部達の姿はとても巨大犯罪組織の首領とは思えなかった。

 

組織そのものは残っているものの、麻薬という大きな収入源を失った八本指はもはや嘗てのような影響力を発揮出来るはずも無く。

残った末端の構成員たちも排除されるのは時間の問題だろう。あの地下通路には幹部護衛のため他部門に所属していた腕利きの悪党が何人も居たのだが、例によって全員氷漬けのまま帰らぬ人となった為護衛もろくに出来ない烏合の衆だ。

 

金と権力と戦力を同時に失った八本指の瓦解は砂山を崩すより簡単だった。

それよりも討伐隊が動くより先に襲撃を察した一部の残党は国外へ脱出してまった事が懸念材料である、海を渡った所で足取りが追えなくなったため詳細は不明だ。恐らく聖王国、それも治安の安定していない南部付近と考えられる。

 

また関わった貴族達、その家族にも相応の罰が下る。

悪党に手を貸した者に慈悲など要らない、とばかりランポッサとザナックの手によって今も多くの者がその罪を償わされている。

それが新王の最初の仕事であり、今まで蓄積していた膿を吐き出す王国始まって以来の大粛清。

 

これによって派閥の均衡は崩れ、大きな混乱が訪れると予想していたのだが…そこに歯止めを掛けたのがレエブン侯だ。

 

このことを見越してかたまたまなのか、彼が事前に選別していた有能な為政者の卵たちが指揮を執り、レエブン侯の名のもとに代理として領内の政務を行った。

いずれも貴族家の次男や三男坊、また商人上がりの一般人出身という世襲や身分に囚われない立場でありながら、頭を使い民を導いていく姿は人々の心の支えとなる。

 

本来なら家督を継ぐことなく、日の目を浴びる事もないはずの者たちが彼によって登用され、活躍することで混乱は最小限に抑えられた。

「蝙蝠」と揶揄される彼だったが六大貴族の誰よりも国を想い、入念に準備していたのが功を奏したらしい。それに潔白が証明されたペスペア侯も加わり、ザナックと共に三大巨頭として今も山のような政務に取り掛かっているのだとか。

 

因みにランポッサ王と旧知の間柄であり、此度の粛清において息子二人を処罰された古株ウロヴァーナ辺境伯も、息子の愚行を容認しながらも本人は潔白だとして比較的軽い処分で済まされている。

それでも全財産の差し押さえや常に王の監視の目が光っているので殆ど保護観察処分状態である訳だが、罪滅ぼしの意味も兼ねた本人たっての希望で辺境伯としての人脈や人徳を駆使し一刻も早い混乱収束のため尽力しているのだそう。

 

それ以外の貴族達の動向はお察しのとおり。

汚職に手を染めた者を今のランポッサ王が赦しておくはずも無く、財産没収の後当主のクビは文字通り刎ねられ、何もかも失ったボウロロープ、ブルムラシュー、リットンの三名家は悲惨な末路を辿る事になった。

名家から没落まで真っ逆さま、当主の犯した大罪を子孫たちは今後一生償い続けなければならない。

特にブルムラシュー領にあった鉱山とボウロロープ領の私兵達を王家直轄の下統治できる影響は大きく、今後の王国にとって良い影響を及ぼすはずだ。

私兵達はみな戦士長直々に扱かれて、将来はまっとうな王国兵士として活躍してくれる事だろう。また今回の掃討作戦においてガゼフら精鋭部隊の働きが顕著になる事で国有軍の必要性を際立たせる事となり、王国では徴兵以外に専業兵士を育成する…なんて計画も立てられている。

リットン領?特筆すべき事は何も無かった、強いて言うなら領主の評判が頗る悪くて家ごと滅んだ時に領民達が大喜びでお祭り騒ぎになったくらいだろうか。どんだけ嫌われてたんだあの男。

 

なお、この騒動の裏でも静かに法国は動いており、国内で最高クラスの軍事力を持つとされるボウロロープ領の一部の私兵達による暴徒化を未然に抑えたり、各領地の混乱の鎮圧にも隠れて一役かってるのだが、誰も知る由もない。すべては「見知らぬ善意の一般人」の手によって行われた。

 

 

そしてそんな貴族達と八本指に唆され、反逆罪の片棒を担いだ第一王子バルブロ。

彼は今後一生を牢の中で過ごすことになる。

議事の間であの後激昂し、ザナックへ殴りかからんばかりに詰め寄った彼を止めたのはガゼフ戦士長だった。

私欲に走り犯罪者となった兄と国のため勇気を振り絞り立ち上がった弟、どちらを守るかなど言うまでもない。

調査の結果、三名家と八本指まで巻き込んだ大規模なクーデターの計画書まで見つかり、いよいよ言い逃れ出来なくなったバルブロは投獄。

誰の目にも止められず、緩やかに死を待つだけの終身刑。それが彼に与えられた罰だ。

 

本来なら幹部ともども処刑されるのが常であったが、 新王ザナックの温情により幽閉処分を受ける。

有事が起こった際の首切り要員という側面もあるのだろう。

ともあれ、今後一切表舞台に出てくる事はない。

 

かくして王都における八本指動乱事件は幕を閉じる。

 

仇は取った、悲願だった麻薬撲滅も達成し、王国の未来は護られた。なのに親友を失った事実はラキュースの心を今もじくじくと蝕み続けている。

 

アズスのカウンセリングによって一度は持ち直しつつあった彼女も、全て終わった後には喪失感しか残らない。

 

 

「大丈夫鬼リーダー、おっぱい揉む?

揉ませてくれてもいい」

 

「………」

 

「じゃあ遠慮な…ぷぎゃっ

 

 

おもむろにラキュースの胸元に手を伸ばすティアにガガーランが拳骨を落とすも、当の本人はどこか上の空。

 

 

「痛い、私なりに気を使ってるのに」

 

「どこがだよ」

 

「ちゃんと相手に了承を得た」

 

「得てねえだろ、ラキュース無言だったぞ」

 

「沈黙は肯定と同じ」

 

「ンなわけねえだろ人の心とかねえのか」

 

 

そんな漫才も何処吹く風か、宿の窓から街を眺めるラキュースに2人はため息を吐く。

頼りにしていたアズスは報酬を貰ってさっさと帰ってしまったし、頼る術がない。

 

抜け殻のような彼女にかける言葉も見つからないと、頭を抱えていたそんな時。

 

ノックの音が部屋に響く。

 

ここは安全な宿内なのだが、一応それなりにティアが警戒し、呆けるラキュースの代わりにガガーランが応答する。

 

 

「あいよォ、どちらさんで」

 

「スレイン法国より参りました使節団の者でございます。

先の事件でご活躍なされた蒼の薔薇の皆様にご挨拶をさせて頂きたく思い、参りました」

 

「あぁ〜〜…悪いな、今ちょっと立て込んでんだ。

面会は今度にしてくれねえか?」

 

「そうですか…それは残念です。

我々はもうすぐ国へ戻らないといけませんので。

では…こちらをお渡ししておきますね」

 

「……?招待状かこりゃ、オレたち5人分の」

 

「はい。

此度の皆様方のご活躍、()()()()はたいへん満足しておられます。

つきましては慰労も兼ねて小規模ですが宴を催しておりますので、その招待に」

 

「なるほどねえ、ウチらからすりゃ複雑だが…

一応は受け取っとく、行くかどうかは他の面子と話してからだ」

 

「参加は自由ですのでお気の向くままにどうぞ。

来ていただけるのであれば、美味しいお酒と料理でおもてなし致します、と総司令様は仰せです。

サプライズも用意しているので楽しみにしていて欲しいとも」

 

「サプライズぅ?胡散臭えなぁ…」

 

「ふふふ…それでは、失礼致します」

 

「はいどーもどーも」

 

 

そう告げて去っていく法国の使節、そういえば宿が一緒だったなと頭の隅で思い出した。

 

 

「ラキュースどうする?

漆黒聖典サマから直々に宴会のお誘いだとよ」

 

 

どうするも何も、お通夜状態のラキュースからして行くのは無理な話だ。

会場はおおかた例のレストランだろう、前に食った時の飯はかなり美味かったし自分好みの味付けだったから参加したかったな…と心の隅で思っていたガガーランは肩を竦め、招待状をラキュースへと手渡した。

 

 

「………そう」

 

 

ぼーっと窓を眺める。

 

王都でできた初めての友人。

貴族なのに冒険者になるという自分の突拍子もない提案を笑って了承し、アダマンタイト級に上り詰めた今でも変わらず接してきてくれたラナー。

一緒にお茶を楽しんだり、新しいマジックアイテムを興味深そうに眺めたり、近衛のクライムとの馴れ初めを顔を赤くしながら語ってくれたり。そんな光景ばかりが脳裏によぎる。

 

 

(ラナー…やっぱり貴女がいないと、私…)

 

 

喪失感に暮れて抜け殻のようだった彼女の手元には、あの漆黒聖典からの招待状。

 

ふと、中身を出して内容を目で追った。

 

まだ吹っ切れた訳じゃない、けれど陰鬱なこの気持ちを少しでも切り替えたくて口に出す。

 

 

「……いいわ、行きましょう。

せっかく催してくれたものを無下にするのも心苦しいし、彼女に限って罠という事も無いでしょう」

 

 

彼女…漆黒聖典の女は言動こそ怪しく、芝居がかった口振りで自分たちを何度も欺いては水面下で勝手に行動してはいたけども、一貫してそれは八本指の撲滅、ひいては初めて話した時からずっと王国の浄化の為だった。

その行動には王国への誠意がある。

地下通路の件もきっとあの人が先んじて制圧していたのだろう。

 

あの場に居た八本指、普通に王国軍が突入していればその地形と入り組んだ通路で時間を稼がれ、幹部達を取り逃したかもしれない。そのようなミスが万が一にも起こらない為に先手を打たれた。

アズスが御前会議で語ったように、「お膳立てされていた」のだ。

 

重要人物は生かし、残りの厄介な警備たちのみを葬り去った事により組織は著しく戦力を欠き、王国軍でも対応できるまでに弱まっている。

 

公開処刑によって高まる国民の支持、麻薬の在庫一斉処分、汚職貴族の摘発など、当初は他国の介入に不安だったものの蓋を開けてみれば王国の大勝利だった。

それもほぼ全て法国が先んじて接待して、いい所だけを王国(我々)がかっさらう形で。

 

 

(計画も工作員の手際も超一流、到底王国には真似出来ないレベルの仕事だった。

人類救済を本気で掲げているだけあるわ)

 

 

羨ましくない、と言えば嘘になる。

王国が如何に脆いか、600年という国家の重みをラキュースは今回肌で感じる結果となった。

 

 

(あとカッコよかったし…

ミステリアスな氷の魔女…まさにクールな仕事人って感じ、ああいうスマートなカッコ良さも今後の参考にするべきかしら)

 

 

あとレイラを見て変な電波も受信してた、大丈夫かこの女。

 

 

「そうと決まれば買い物に出てる2人にも知らせないと」

 

「おいおい大丈夫かよ、誘った手前お前さんの調子が戻らねえまま行くのは…」

 

「心配してくれてありがとうガガーラン、でももう平気。

少しでも調子を戻したいから出席するの。

それにあの店の味、気に入ってたのよね」

 

「ハハッそりゃ同感だ!

落ち込んだ時ゃ美味いモン食うに限るぜ」

 

「お、調子戻った鬼リーダー。

では慰労も兼ねて胸をひとも…み''っ

 

「余計な事してないで早くティナ達に伝えてきなさい!」

 

「いけずぅ…」

 

 

ラキュース怒りの鉄拳を食らい、頭にたんこぶを腫れ上がらせながらぶーたれるティアは窓から跳ぶ。

 

それを見送って、彼女もガガーランと共にパーティ出席の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

 

 

「ようこそ蒼の薔薇の皆様、お待ちしておりました」

 

 

レストランの中はお祭り騒ぎといった様相で、誰も彼もが酒瓶片手に騒ぎあっている。それはレストランというよりは酒場のような雰囲気で、蒼の薔薇の面々はそれはそれは歓迎された。

しかしこのレストランに居るのはほぼ全員が工作員だというのだから素直に喜べない、前みたいに急に黙って見つめられるのは心臓に悪いから勘弁して貰いたい。

 

「駆け着け一杯!」と差し出されたグラスをやんわりと断りながらガガーランへ流し、彼女が景気よく飲み干して店から歓声が上がるのを見届けて、店員に案内されるまま5人は2階の個室へと向かう。

 

 

「総司令様、失礼致します。

蒼の薔薇の皆様をお連れ致しました」

 

「入って貰って頂戴」

 

「はい。

どうぞ皆様」

 

 

言われるがまま入室した先には7人ほどが座れる大きな円卓と、それぞれに席が用意されており、軽装にエプロン姿で髪を纏めたレイラとメガネの店員、《占星千里》が出迎えてくれた。

 

 

「ようこそ皆様、さあ座って下さいな」

 

 

座るよう促され、卓へと腰掛ける。

 

 

「あらためまして、この度は任務遂行の為の御協力感謝致します。

おかげで円滑に仕事を終える事ができました」

 

「蒼の薔薇の皆様が望まれるなら法国からも相応の報酬をご用意致しますが、どうしますか?」

 

 

《占星千里》の問いにラキュースは迷わず首を横に振る。

 

 

「いいえ、王家から既に結構な額を貰っているからもうこれ以上は遠慮するわ。

お金に困ってるわけでもないし」

 

 

因みに、レイラが八本指を釣るために用意した100万枚の金貨は後の謁見の際、正式に王家へ引き渡された。法国はまだ様子見ではあるが、このまま王国が良い治世を保てるのなら嘗てのように支援を続けるつもりらしい。

これは王国のバックに法国が着く、と言外に語ってるようなものであり、今後の近隣諸国との関係構築にも影響を及ぼす事だろう。

今の王国なら邪な貴族に横槍を入れられることも無く、100万の大金も正しい使い方を成すはずだ。

 

 

「あらそう、無欲ですのね」

 

「何となくそんな気はしてたけど…

分かりました、そのように」

 

「それにしても八本指の処刑はともかく、新王陛下が貴族達の大粛清まで速攻で行うのは予想外でした。

『鉄は熱いうちに打て』って事かしら。

確かに証拠は抑えましたけれど、そこまで思い切った方針を取るなんてねぇ」

 

「やっぱり貴女達が密かに汚職の証拠を彼へ渡していたのね。

どうりで気味が悪いくらいスムーズに粛清が進むと思ったわ」

 

 

ラナー経由でザナックへ、ザナックからランポッサへと渡った資料は本来ならばレイラが抑えていた貴族達の汚職の証拠。

本国に報告すらしていなかったそれを王国の判断に任せるのは賭けだったが、上手く働いてくれたようで何より。

 

 

「うふふ、これでも貴女達には感謝してますのよ?

さぁ、難しい話はここまでにして。

目標達成のご褒美として簡単ですが祝賀会と致しましょう!

私、腕によりを掛けて作っちゃいますわよ!」

 

「えっ!?貴女が作るの!?」

 

「何か問題でも?

心配しなくても毒や薬なんて仕込みませんから安心なさい。

私、料理には真摯に挑んでますので」

 

 

そう胸を張るレイラからは氷のような雰囲気は感じられない。

随分と暖かい、お節介焼きの姉のような印象を受けた。

驚くラキュースだがこっちが素のレイラなのだ。

 

仕事とプライベートは分けるデキる令嬢(自称)。

 

鼻歌と共に次々と料理を作り上げていくレイラを見ながら、コソコソとガガーランが隣のイビルアイに呟いた。

 

 

「なんか随分と雰囲気変わったな」

 

「油断するな、工作員だぞ。

それに私が食えない事を分かってる癖にあんないい匂いさせやがって、くそぅ…」

 

 

イビルアイは吸血鬼、アンデッドだ。

この世界のアンデッドは匂いは嗅げるが食事ができないルール、どうゆう理屈か分からないが、飲み込んだ食べ物は消化出来ず舌の上で灰になる。

なので吸血鬼になってこの方食事など取ったことがないのだ。

普通のアンデッドなら食事の有無など気にしないだろうが、彼女は理性ある吸血姫(特殊個体)ゆえにそれがもどかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《占星千里》ちゃん、そろそろ完成しますから彼女を呼んで来てくださいます?」

 

「あーはいはい、りょーかい」

 

 

そう《占星千里》と呼ばれた少女は奥の部屋へと消えてく、間もなくして大量の料理をレイラが円卓に並べ、大皿に肉料理を中心とした品々が食卓を彩った。

 

 

「ほっほ〜〜コリャすげぇや、特殊部隊ってのは料理の腕も一流じゃないといけない決まりでもあんのかね」

 

「淑女の嗜みです、ここのレストランにメニュー提供したの私ですし」

 

「…マジか」

 

「マジですわ」

 

「…?席が1つ空いてるみたいだけど、さっきの娘が座るの?」

 

「いえいえ、実はもう1人サプライズゲストがおりまして。

少し前から贅沢な居候が私の所に転がり込んで来たんですよねぇ」

 

 

呆れたように呟くレイラに首を傾げていると、先程《占星千里》が入っていった扉が開け放たれ中から少女が顔を出す。

 

パジャマ姿でいかにも寝起き、前髪は垂れ下がり髪留めを使い辛うじて確保した視界から眠たげな瞳を覗かせる、見覚えのある少女。

 

 

「ちょっと姫様!…あ、元姫様か。

せめて着替えてから出て下さいよ!」

 

「いいじゃないですか別にぃ…

せっかく王家のしがらみも無くなったのだから今くらい好きにさせ………て……」

 

 

蒼の薔薇の面々が吸い込まれるように少女へ釘付けになる、それに気付いた少女は一瞬跳ねてから猛スピードで《占星千里》を連れ目にも止まらぬ速さで扉の向こうへ舞い戻った。

 

 

『…私の見間違いかしら《占星千里》様、どうしてラキュース達が此処にいるのかしら』

 

『先輩が呼んだんです』

 

『私の生存は極秘情報ではなかったの!?』

 

『貴女が友人に黙って姿を消そうとするからでしょ。

もう直ぐ王国を旅立つから最後に皆で腹割って話をしようって先輩の計らいです、早く着替えてホラ』

 

『あの女ッ……』

 

『初めて会った時と比べてだいぶイメージ変わりましたよね…』

 

 

なんだろう、なんか扉越しにブツブツ聞こえる。

それからしばらくして、ドタバタ音が聞こえた後に再び扉がゆっくりと開く。

 

 

「え〜っと…ラキュース、久しぶり…?」

 

 

死んだはずのラナー姫が、簡素なワンピース姿ではにかむ笑顔と共にそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳でぇ〜〜〜…本日はスペシャルゲストのラナー様にお越しいただいております!

 

わぁーパチパチですわー、ドッキリ大成功ですわー

 

蒼の薔薇の貴重な呆然顔、私でなきゃ見逃しちゃうね。特にラキュース、鳩が機関砲食らったような顔してます。

 

何を隠そうラナー姫、私と話したその日に連絡を取ってきて「私に良い考えがある」って提案してきたんですよ。

自分は死んだ事にして、ランポッサ王やザナックを焚き付ける作戦は目論見通り大成功。結果として八本指討滅に留まらず六大貴族が崩壊するほどの大戦果、王国始まって以来の大改革を招いて事態は収束しつつあります。

 

麻薬の脅威も消え、国も浄化されめでたしめでたし……ってんなわきゃねえ〜〜ですわよ!!!!

本来なら生かして安全に亡命させる算段だったのに、あの姫様が急に予定捻じ曲げて死ぬとか言い出すもんだから計画を大幅に変更するハメになりましたわ!

 

なーにが「第三王女死亡のインパクトで王国に揺さぶりをかけて、八本指を誘き寄せるためのさらなる餌になるし、私も重責から解放されて一石三鳥ですね」ですか!

貴女がさっさと逃げたいだけでしょ!

 

突貫工事で現場と死体偽装するのにどんだけ苦労したと思ってますの!?納期直前の仕様変更とか現代日本のお排泄物(クソ)企業だけになさい!

タダでさえ働き過ぎな水明の皆さんが過労でぶっ倒れちゃうでしょーが!

 

しかもあの女、私が必死にチャート練り直してる間にこっそり風の巫女ちゃんとマジックアイテムで映像繋げてクライム君を四六時中監視してましたものねぇ!?

巫女の働かせ過ぎだって風花聖典からクレームが来ましたわよ!

 

ラナーったら死を偽装して王女の責務から解放された次の日から外出禁止なのをいい事に部屋に引きこもって、随分楽しそうに『The・無限耐久クライム監視室24時』やってましたし、こまめに水分を補給してると思ったら取り替えるシーツが毎回やたら湿ってるってハウスメイドから苦言を呈されたのですが。

サカり過ぎじゃないですか?この後ラナーは彼を迎えに行くって鼻息荒くしてましたけど、王女というタガが外れて理性までトんじゃったのかしら。

 

ハッ!?もしかして原作とは違うタイミングでラナーを自由にしてしまった反動が…?

悪魔に誑かされないルートの彼女から責務としがらみを取り上げたら、後に残ったクライムへの執着心が暴走して、それでも画面越しにしか会えないお預け状態に陥った結果溜まりに溜まった愛欲で『クライム絶対犯すウーマン』が誕生してしまったのか!?

 

これも人の愛の形ですけど、拗らせ過ぎでしょ!千年先も見通す頭脳がピンクに染まりきってません!?

 

こんなの解釈違いでは!?いや正史通りの完全異形化精神モンスター小悪魔ラナーちゃんもお断りなのですが!

 

邪悪なディズ○ープリンセス化するより全然マシなのですけども!

 

それにしても生活環境が変わった途端姫だった時の面影は消え失せて、ズボラで生活感丸出しの少女ラナーが爆誕してしまった訳ですが、これも彼女のクラススキル《ジーニアス》の影響なのでしょうか。

 

確か原作はほぼずっとクライムが一緒に描写されていましたし、姫という皮を被りながら彼のためにずっと演技をしていたのでしょう。

ラナーの《ジーニアス(希少クラス)》は「基本職の置き換え」だったハズなので、《姫君(プリンセス)》という基本職を得ていた環境が王女の立場を捨てた事により置き換わって《自宅警備員(引きこもり)》に転じた可能性が微レ存…?

 

 

えぇ…(困惑)

 

 

ゲームの世界って怖いですわ。

 

 

「ねぇ」

 

「これはどういう事?」

 

「詳しく、説明しなさい。

私は今冷静さを欠こうとしているわ」

 

 

おおおお落ち着きなさいラキュース、とりあえずその無表情で構えてるキリネイラムを鞘にお戻しになって?

 

 

「見たままですわ。

実はラナー、死んでませんでした。

王を焚き付けて国を回す為の引鉄になる為に死を偽装したんです、効果はご覧の通り。

王国には劇薬を投入してでも反省してもらう必要があった、それだけですよ」

 

「…ッなら内通者の私に一言言ってくれても」

 

「貴女は既に失態を晒した後でしょう。

あの時点で隠し事には向いてないと悟ったので今回は敢えて知らせずにおきました」

 

 

いやー名演技でしたわね。と素知らぬ顔で言ってやるとぐぬぬ顔のラキュース、顔芸の面白れえ女ですわね!

 

 

「あまり彼女を責めないでラキュース、元はと言えば私がお願いしたの。

私が表舞台から去る程のショックならお父様はきっと本気になってくれる、そう確信していたから」

 

「ラナー……」

 

「第三王女は死んだ、此処にいる私は名も無い屍。

後悔はないわ、国のため私が望んだ事だもの。

…それに憧れてたのよ、もし『王族のしがらみも第三王女の責務もない、普通の女の子』で居られたらって。

こんな形で夢が叶うとは思ってなかったわ」

 

「っじゃあクライムとは……」

 

「ええ、この祝宴が終わったら迎えに行くつもり」

 

 

ラナー、ニッコリというかニチャア…って感じの笑い方なんですけど。

ラキュースは感動のあまり細かい所気にしてませんわね。

 

 

「そう……ッ」

 

「ごめんなさい、心配かけて。

私はもう大丈夫だから」

 

 

ぎゅっとラナーを抱き締めるラキュース、感動的な友人との再会を堪能して貰いましょう。

 

これが演技だとしても、良い友人を持ったのですから大事になさい。

 

この祝宴は事前連絡無しなのでラナーにとってもサプライズでしたけど、決してチャート変更の意趣返しとかではありませんよ?だから私だけに見えるように睨みつけないで下さいまし、おほほほほ。

 

さあ、これで王国の問題は万事解決!

八本指幹部の処刑風景は議会にリアルタイム中継致しましたし、これで神官長のお歴々やルーファス様もご満足してくださることでしょう。

 

ヨシっ!

 

あとはこのまま原作開始後の蒼の薔薇の幸運を祈りながらラキュース達と戯れて、ラナーと一緒に捨てられた子犬ちゃんを回収すればこんな国さっさとオサラバですわ!

 

そうそう、隊長に渡すよう言っていた聖王国にいるケラルト様宛の招待状、ちゃんと渡してくれたかしら。

聖王国も法国に劣らずの被侵略国家ですし、同盟を通して色々サポートしてあげたいのです。

1番はケラルト様とカルカ様の御身の安全とレメディオス様の精神の安全を守護ってあげたい(切実)。

いやほんとに、書籍読んでて心が痛くなりましたわよ。

聖王国なんも悪い事してないのに!

種族的に主人公とは相容れないだけなのに!

たまたま立地と条件がデミえもんのお眼鏡に適っただけなのにぃ!

 

あんなやり方○惨様だってドン引きですわよこのドブカス!

 

道行く村々がぜんぶ皮剥ぎ羊皮紙工場になってたら私、正気を保てる気がしませんわ!

 

うぅ……あの惨劇を思い出すとまた下っ腹がキュウゥゥッとします。本の中の出来事ではなく現実で起こりうる未来なのが余計に…

 

 

 

 

ふざけるな……ふざけるなッ!!馬鹿野郎ッ!!

 

うわあああああああああッ!!

 

 

 

 

………………フゥ〜〜…スっとしたぜぇ。

 

迫る破滅フラグでトチ狂いそうな時は叫んで落ち着くに限ります。

ちゃんと心の中だけで叫んでるので無問題(モウマンタイ)、イマジナリーレイラは今日も絶好調ですわね。

 

あ、イビルアイにも招待状渡しときましょう。

ツアー様やリグリット様とも連絡する手段を持ってるでしょうし、お誘いして一緒に魔巧同盟に触れてもらっても良いかもしれません。

 

特に『始原の魔法』についてはツアー様に聞きたい事が山ほどありますし、良い機会ですわね。

確か原作では位階魔法が浸透してから使える者が居なくなったと記載されていたハズですけど、私と《無限魔力(セレスティア)》の推論が正しければ…

まあ解明出来たところで人の器に収まる規模の魔法では無いのですけど、破滅フラグ回避の可能性のひとつとしてやるだけ試しておかねばなりません。

 

フールーダ様然り、各々が雁首揃えて語り合う場って超大事ですし、この機会にガッツリ魔法の可能性について談義したいところ!

 

 

 

 

つーか原作開始前に王国が(多少)マシになっててラナーも不在って、アインズ様どうやって魔導国を建国するつもりなんでしょう…

 

アレ?

 

これって原作改変なのでは!?!?!?(n回目)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しとしと雨の降りしきる、王都へと繋がる街道の端を行く。

 

どんよりとした空は分厚い雲に覆われ、昼間にも関わらず薄暗い。

 

王都へ繋がる道として舗装された街道は 荷馬車が歩くには便利だが、こうして歩いていると何処か冷たい雰囲気を感じさせた。

 

王都内は未だ新王擁立と八本指壊滅でお祭りムード、外は雨にも関わらず建物に人はいっぱいで、酒場なんかは稼ぎ時だと昼から店を開け案の定いっぱいだ。

 

そんな中、人っ子一人いない雨の街道を歩く少年がひとり、雨に濡れるのも構わず幽鬼のような足取りでぽつりぽつりと歩いていた。

 

かくして悲願の八本指討滅は成った。幹部の首は晒され、復活の余地を無くすため身体は荼毘に伏されることとなった。

汚職貴族たちも次々とその化けの皮を剥がされた(半分くらい自滅だが)後殆どが温情の余地なく罰された。

皆の頭を悩ませていた麻薬も軒並み消滅し、もう王国に蔓延る事は無いのだろう。

民に笑顔が戻り、王国は他国からの信用を取り戻す。

 

生まれ変わった王国はきっと繁栄の道を辿るだろう。

 

 

 

なのに周囲の浮ついた雰囲気には目もくれず少年の胸にはぽっかりと穴が空いたまま、ふらふらと街をさ迷っていた。

着ているのが高価な白金の鎧でなければ浮浪者にでも勘違いされていただろう。

 

 

「………俺は、何をしていたんだ」

 

 

嘗て己を救い、傍で守護し続けてきた存在。

ラナー姫は死んだ。

王国を救う為の代償だと言わんばかりに、犯罪組織の手によって殺された。

 

自分は何をしていたのだ。

 

姫専属の護衛と謳っておきながら、いざという時にはなんの役にも立てない。

精々が第一発見者になるのが関の山だった。バルブロの言う通り、近衛を務める自分が有事に側へ居れなかった時点で殺したも同然だ。

 

問題が解決したあともガゼフ戦士長は自分を気遣い、色々と新たな配属先や転属の道も示唆してくれたが、王都で自分が自分で居られたのはラナー姫の護衛だったから。

それすら無くなった自分には最早居場所などありはしない、彼の誘いを丁重に全て断って、こうして路頭に迷う。

 

なのに姫から貰ったこの鎧だけは手放せず、場違いな自分と対照的に雨に濡れてもなお輝き続けるこの鎧を酷く疎ましく思った。

だがこれを捨ててしまえば、姫との大切な時間すら無くしてしまう。

思い出が呪いのようにのしかかり、鎧の重さをいつもの何倍にも感じる。

 

 

「ふざけるな……ふざけるなよ…馬鹿野郎…ッ」

 

 

雨と一緒に涙がボロボロとこぼれ落ち水たまりに溶けていく。失意に暮れて歩くうちに、いつしか人目の付かぬ場所へ辿り着いていた。

 

そこは自分とラナー姫が初めて出会った場所。

なんてことは無い、街道沿いの一角だ。

ボロ切れを服のように纏い、文字通りゴミの様だった死にかけの自分をどういう訳か彼女は拾ってくれた。

不衛生でマナーもなっていないガキを彼女は見捨てずに、文を学ばせ、剣を学ばせ、近衛として傍に置いてくださった。

自分を傍に置く事で貴族達に心無い言葉を吐かれても、兄弟に揶揄われてもなお自分を手放さなかった。

 

亡くなられてからも皆に愛され、最期まで清廉であらせられた。

 

なのに自分はどうだ

 

恩を返すどころか近衛として最低限の仕事すら果たせていない。

 

養われるだけの穀潰しではないか。

幹部は皆処刑され、残党ももう烏合の衆だ。復讐の機会すら失った。

 

膝から崩れ落ち、街道の隅にずぶ濡れのまま蹲る。

雨で身体が冷え、連日の寝不足と食事不足で身体は鉛のように重い。そこに精神的な負荷が重なって、今にも力尽きてしまいそうだ。

しかし己の無力を、無知を、無能を呪い、いっそこのまま凍死しても構わないと本気で考えていた。

 

ラナーの居ない世界に自分が居ても意味は無い、絶望に囚われた思考と判断力は己が思うより弱く、脆い。

 

重くなる瞼、雨の音に消えるようなか細い声で嗚咽と共に呟く。

 

「もう…しわけ……ありません……

ラナー…様……ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな所で蹲っていては風邪を引いてしまいますよ?」

 

 

馬車の止まる音。

扉が開き、差し出された傘に思わず顔を上げた。

 

図らずもそれは、あの日の自分を救ってくれたのと同じ構図で。

 

 

「ラナー…さま……?」

 

 

夢か幻か、死んだはずの主が目の前で微笑んでいる。

嘗ての時と同じ、天使のような柔らかな表情で。

 

 

「迎えに来るのが遅くなってごめんなさい。

さあ、クライム」

 

今度こそ、私に付いてきてくれる?

 

 

差し出されたその手が幻でも構わない。

冷える身体で最後の力を振り絞り、騎士としての矜持も忘れ、縋り着くようにラナーへと抱き着いた。

 

 

「らなーさま…ッラナーさまッ……!!」

 

「ぁっ…♡ぅン♡……もう、クライムったら…♡」

 

 

優しく頭を撫でられる、それだけでいい。

これが死に際の幻だとしても今は……

 

 

「ラナーさま…俺…は……」

 

 

彼女に触れていられる喜びに浸りながら、重くなる頭と意識に思考が溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………クライム?」

 

「どうやらかなり衰弱しているご様子。

手当もしないといけませんし場所を変えましょう。

貴女も馬車の中に戻りなさい、人気が無いとはいえ誰に見つかるか分かりませんわ。」

 

「はい…

あぁクライム、こんなに冷たくなって…私がいない間一人で悩んで、苦しんで…

私が居なくてさぞ心細かったでしょう……ふひっ」

 

「ニチャニチャ笑ってないで貴女も手伝う。

イチャつくのも彼の体調が戻ってからになさい」

 

「分かってます、分かってますよ?

うふふっ…ふふふふふへへ…♡」

 

「何このヤベー女(驚愕)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『止めろ!今すぐ止めさせろ!

俺は八本指窃盗部門の長だぞォ!』

 

『クソがァ!クソ王族が!必ず殺してやる!』

 

『ヒィ〜嫌ぁー死にたくない!

こんな所で死にたくないわァー!!』

 

 

広場に特設された処刑場に8人各々の不協和音が響く。

 

磔にされ、首を晒された彼等の運命など誰が見ても明らかだ。

 

 

『死ね!死んじまえ八本指!』

 

『アンタらのせいでウチの倅(せがれ)は死んだ!』

 

『ワシの孫もじゃ!報いを受けろ!』

 

『死んで呪われろ人でなし共ォ!!』

 

 

罵声飛び交う衆人環視の中、現れた新王ザナックが淡々と罪状を読み上げる。

羊皮紙に纏められたのはごく一部に過ぎず、本当は何巻にもなる程彼等の罪は積み上がっているが、全部数えればキリがない。

 

読み上げが終われば、あとは簡単だ。

 

今まで何人の罪人の血を吸ってきたのだろうか、赤錆と鈍色に輝く巨大な斧を引き摺って登場した処刑人に幹部たちは同様に悲鳴を上げ、更に喧しく喚き立てた。

 

そんなから騒ぎも王による死刑執行の合図まで。

一人、また一人とその首を落とされ、やがて最期まで枷を力づくで抜けようと騒いでいたコッコドールの首が宙を舞ったのを最後にザナックが声を大にして言い放つ。

 

 

『聞け!

私はあらゆる不義、悪徳を赦さない。

我が心はいつも民と共にある、お前たちの信あるからこそ私がある。

此処に誓おう、新王ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフは偉大なる父に代わり、亡き妹の誇りと共に新たなリ・エスティーゼ王国を皆と共に歩むと!

約束しよう、お前達が後の世に王国民であったことを誇れるように!

10年先、100年先の子孫達に胸を張れるよう、全力を尽くす!』

 

 

だから私に付いてこい…ッ!!

 

 

そこにおわすはいつもの第二王子ではない、〝覚悟〟の決まった男の力強く覇気の有る叫びが響く。

父から王の装いを譲り受け、王冠輝く恵体の王がマントを翻した。

怒号が歓声に変わる。悪を誅する新たな王の誕生に国民が沸く中、それを映像越しに眺めていた神官長一同は満足そうに頷き、視線は同じく映像を共にするルーファスへと移った。

本来なら同席することすら不敬にあたるが、御身きっての提案で供をする事を許された。それだけで神官長達は皆万感の思いである。

 

 

〝うん〟

 

 

響く短い頷きと零れる御言葉。

それだけで名だたる神官長は理解した。

漆黒聖典の仕事はご満足頂けるものだったと。

 

 

〝《獄界絶凍》らが戻り次第、漆黒聖典全員を集める〟

 

〝法国民へ向けて触れを出せ〟

 

「はっ…ルーファス様、それは…」

 

〝私が直に話す〟

 

 

今まで秘匿されていた神の使徒が表舞台に現れる、それ即ち…

 

 

〝人を変えるのに600年は充分過ぎた〟

 

〝父の遺したお前達を護り、導くのが私の使命〟

 

〝500年も遅刻してしまったけれど〟

 

「全国民に対して演説を行うおつもりですか…!」

 

 

使徒の御言葉の途中で口を挟むなど不敬罪で無礼討ちも百も承知だが、それすら忘れる程の驚愕。他の神官長が驚愕に表情を染めるなか、震える声でレイモンの絞り出した呟きにルーファスは首を縦に振った。

 

使徒の復活、それを全国民に対して発表する。

 

一般の国民はルーファスの主人であるスルシャーナと共にレプリカが年間行事等で一般公開されている為、詳細は知らずとも偶像の存在として認知しており幸いにして一定の知名度はある。

 

それよりも現人神として存在するルーファスが表に出る事で、今まで燻ってきたスルシャーナ教がその勢力を増すであろう事が容易に想定できた。

 

なんせ他の教えと違い、スルシャーナ教に限りそのNo.2が存命しているのだから。

信徒からすれば永年推してた空想上のアイドルが突如現実に降臨したようなものだろう。

 

絶対に狂喜乱舞する、各宗派の代表者でもある神官長は信徒の立場を自分に置き換えてみればよくよく理解出来た。

 

だが同時に他宗派からの反発も予想される、特に真逆の思想が強いアーラ教徒からは強固な姿勢を取られるかもしれない。

それすらも加味してルーファスは表舞台に立つ。

 

 

〝人外蔓延るこの世界において、ヒトの存在は余りにも小さい〟

 

〝けれど私は、それでも前に進む事を止めない者たちを知っている〟

 

〝暗闇の中、必死にもがき得た光の尊さを知っている〟

 

〝パ…父の惚れ込んだ人類(あなたたち)を知っている〟

 

〝だから私も諦めない〟

 

〝お前達は、どーする?〟

 

 

偉大な父の面影を追い、彼が遺したものを護るため。

手札は決して多くは無い、ユグドラシル(ゲーム)とは違い国民一人一人に意思があり、目を覆うような醜態や、背けたくなる邪智も時にはあるだろう。

だが人の輝きが何より尊い事であるとルーファスは知っている。レイラがおり、自分が目覚めた事がその証左なのだ。

その輝きを絶やさぬため、500年前のように理不尽な悪意から皆を護るために彼女は顕現した。

 

もう何度目かも分からない、脱水症状になるんじゃないかと思うくらいの量の涙を床にぶちまけながら、神官長達は深く深く頷いた。

 

驕りを捨てよ、我等と共に歩め。

 

神の救いは此処にある。

 

600年の時を経て、奇跡は我らの下に降りて来てくださったのだと。

その事実を受け、同じ時を生きる事を赦された喜びを噛み締めながら、彼らは嗚咽混じりに肯定の意を示すのだった。








これにて王国編、完結
よし、キャラぶっ壊して原作主人公のルートめちゃくちゃに壊してやったし、失踪すっか!




改変された王国

八本指壊滅、六大貴族は三大貴族にまで減少
そのうち1つはほぼ王家に接収され名前だけの名家
レ エ ブ ン 侯 大 勝 利
これにはリーたんもニッコリ
第一王子は離宮へ幽閉され、第三王女は死亡扱い(飼い犬と共に法国へ逃亡)
第二王子が4代目国王として就任し、先代王ランポッサは相談役として現役を引退
先王勅命のもとガゼフ戦士長率いる精鋭部隊はザナック新王指示のもと活動するようになった。
また国内有数の大鉱山を王家直轄領として運用することができ、自らの懐に溜め込むばかりだった先代所有者と違い金回りも少しはマシになるだろう
また軍の国有化も開始、まだまだ規模は小さいが戦士長の精鋭部隊を筆頭に元ボウロロープ侯の施設軍隊1万人を専業軍人として迎え、戦力の増強に勤しむ。
さらに新王たっての意向により従来の魔法詠唱者軽視の思想を捨て、魔法教育に重きを置く事を国の方針として決定
法国に協力を仰ぐ形となる
王が直々に使命したのは亡くなった第三王女ラナーと仲が良かったらしい魔法教授だそうだ…

なおこの大改革の裏で一番割を食ったのは帝国及びジルクニフ
内通者だったブルムラシューの処刑、没落
これにより収穫時期に戦争をしかけ、国力を削ぐという戦法が実質実行不可能になり、情報戦がやりづらくなった
更に法国からの援助を知り、バックに法国が付いているということを察知
国の立て直しに協力しているのが周辺最強国なので迂闊に手を出せない状況に
結果王国の復興を指をくわえて見ているしか出来なくなった

あとジルクニフは絶対ラナー死んでねえだろって思ってる
国の裏で密かに動いてる筈だと勘違い、本人はさっさと逃避行しちゃったのにね

更に精査した情報の中から彼女の友人関係にレインの存在を確認、その後新王ザナックが法国へ魔法教育の橋渡し役としてレインを使命した事で「全部あの女の思い通りか!」って執務室で叫んだ
幸い髪はまだ無事だった、おいたわしやジル上…





法国(本作のすがた)

ルーファスが 表舞台に あらわれた !
6つの宗派の統一にかかる、それに生じる社会の混乱も想定済みなのでなるべく穏便に、人間を傷付けず終わらせる予定
基本的に今まで通り神官長が国の運営を行うが、ルーファス謁見のもと行われるので下手な事言えなくなった、現人神の影響で精神に変なバイアス掛かってる
プレイヤーへの対応は未だ検討中、ルーファスという神が居りながら他の超越者をホイホイ迎え入れていいものか…と信仰心が試されている
王国への支援は継続、定期的に監視の目はあるものの新王のもと概ね順調、戦士長暗殺の話は立ち消えに
竜王国はレイラ担当、聖王国は隊長担当、王国はレインが橋渡し役として担当……え?これ(わたくし)だけ過労で死にません?

わりい、主人公死んだ






ラナー(本作のすがた)

堕落の経緯は概ねレイラが語ったとおり
軟禁中はずっとクライムが曇る顔をオカズに飯食ってた(意味深)
肩書きもしがらみも捨ててクライムを愛して良いのか!?いいぞ、腹いっぱい食え(性的な意味で)
逃亡後はレイラの自領にて与えられた一軒家で2人暮らし、一応仕事は与えられるもののそれ以外は2人っきりで過ごせる環境を手に入れた
衰弱したクライムをラナーは付きっきりで看病し、体調が戻ると同時にラナーのタガが外れて大暴走
予めレイラから渡されていた避妊薬を飲んで昼夜問わず3日くらい合体し続けた
クライムはまた体調を崩した
元々両想いだったので様々なしがらみが取り払われた今2人を隔てる者は何も無い、存分に励んで欲しい
頑張れクライム
子供を作るかはまだ未定、ラナーの決心が着かないらしい
諦めてたわりには結構おセンチですのねって口を滑らせたレイラはラナーからめっちゃ睨まれた

Wow wo!ラナー、『アイドル』歌え!






クライム(忠犬→バター犬→夫)無事人間になれたね☆

夢だけど、夢じゃなかった!
もう逃げられない
国もなにもかも全部捨てたがラナー様と一緒で幸せなのでOKです!
昼間は農作業に勤しみ、夜はラナーに組み敷かれる毎日を送る
最初はいちゃらぶックスのみだったが最近変なプレイが増え始めて不満はないが不安になってきた
彼女曰くクライムの全てを知りたいらしいので是非もない

ラナー様、その手に持っている玉がいくつも着いた柔らかい紐のような物はなんでしょうか…?え?私はもう使ったから次は貴方の番?え…それを後ろに…ファ!?

頑張れクライム、奥様の性欲は底なしだ!
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