破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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自己紹介回

wikiで調べても殆ど情報の出てこなかった法国の話(殆どオリジナル設定)

なんか評価伸びてるけど後はオリキャラオリ設定の嫌いなニキが沸いて右肩下がりに落ちるだけだから気が楽やな






3 破滅フラグしかない悪役国家の令嬢に転生してしまった…

 

ごきげんよう皆の衆、私ですわ!!

 

初めましてですわねえ、ええ!

 

(わたくし)の名前はレイラ・ドゥレム・ブラッドレイ、宗教国家スレイン法国の辺境に領地を頂く領主の娘ですわ。

お父様はゲバルト・レーム・ブラッドレイ、お母様はカナミ・ブラッドレイと言いますの。お母様は私が幼い頃に病で亡くなってしまいましたが…お父様は今日も元気に領地に近寄る侵略者を真っ二つにできるくらいには元気ですわ!

我が領土はアベリオン丘陵付近に土地を持ち、丘陵から流れてくる亜人種の侵略者やモンスターを討伐し、人類の境界線を護る防人としての役割も務めています。他にも王国ほどではないですが肥沃な土のおかげで農業も盛んですわね。

何より食べ物が美味しい!空気がうまい!高地なので夏でも涼しい!

私の心の軽井沢は此処に有りましたの!

 

そんな優良物件に貴族として産まれ落ちた私

 

恵まれた才を持ち、容姿も完璧!まさに勝ち組お嬢様ライフを満喫しているのです!

オーッホッホッホッホッホッホ!!!!

 

 

 

 

……なぁーんて言うと思ってましたかばかちんがァ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

私に“前世の記憶”がある事に気付いたのは5歳の頃、テンプレよろしく庭で遊んでいた時に転んで頭をぶつけた時でした。

前世の私は社会という身体を動かすために働く社畜(さいぼう)、可もなく不可もなくド平民の労働階級でしたの。恋人も作らず漫画やアニメを読み漁って残りの人生を消費するだけだった私は病で斃れ、今こうして新しい人生を歩んでいるのです。よくある転生モノですが、実際味わってみると不思議な気分ですわね。

そして前世の記憶を取り戻した今、この世界がどんな場所なのかをハッキリと理解してしまいました!

 

 

~『OVER LORD』~

 

 

この世界ではアンデッドの最上位個体を意味する言葉。

大元はWeb小説でしたか?書籍化されてアニメにもなった前世では超有名小説です。

主人公はゲームのアバターのままギルド拠点ごと転移してしまい、異世界とゲームの差異に戸惑いながら愉快な仲間たちと気まま()な異世界ライフを満喫するダークファンタジー物語…そんな世界に私は令嬢として生まれ変わりました。

 

破滅フラグしか建たない人間国家の令嬢として

 

私の住む国、スレイン法国。

亜人によって虐げられる人類を守る為作られた宗教国家。人類が生存圏を得てから600年もの間守護し続け、人類を守る為なら虐殺さえ厭わない、そんな国。

亜人死すべし!異形種滅ぼすべし!と日夜叫んで神に拝み倒す変人の集まりですの(ド偏見)

 

…ここまで聞いて

「人類側の強国家に転生したなら人生安泰やん」とか考えちゃってる転生初心者のソコの貴方!そのお花畑の脳みそに口から手ェ突っ込んで《内部爆散・氷(フロズン・インプロージョン)》喰らわしますわよ?

 

この『OVERLORD』という作品、主人公のアバターはなんと異形種なのです。部下も勿論異形種、更にカルマ値という人間に対する好感度みたいな数値が最低に設定されていて、それこそ人類をゴミのようにしか思っていない集団。破滅を回避しようと直接接触しても私の国は異形種抹殺が当たり前の人類第一主義宗教国家、相性は最悪!絶対マトモに取り合って貰えるはずがありません!下手したらその場で首が飛びます、物理的に。

 

 

更に絶望的な事に主人公勢の強さもインフレていて、私の国は他の国と比べて国力も高く、神の血を覚醒させた神人が居るにもかかわらず大概の人間は主人公の幹部の下っ端の下っ端にも勝てません。

数値化した感じ主人公のLvが100なら法国最強(イロモノ)集団漆黒聖典の平均が35~40前後ですかね…因みに原作はレベル差10あると力の差があり過ぎて勝負にならないと言われていますので、察して下さいまし。これでも法国は軍事力だと周辺国最強レベルなんですけどね…

主人公の部下も当たり前のように100揃いの上、スレイン法国より遥かに強力なマジックアイテムで武装している為、例え国宝で完全武装した私や《絶死絶命》ちゃんが組んでも守護者全員に勝てる見込みは絶望的…ていうか全体的には0です、物量が違い過ぎます。奇跡も魔法もありませんわ。

更に更に、私の記憶が正しければ原作ではこの国、愚かにも物語の最序盤で主人公の仲間に喧嘩を売ってしまうのです!

私の国、上層部の人間は“人類を守護”する為ならなりふり構わないといった過激な思考をした老人ばかりで、どうも最近自分達の宗教観に合わない人間まで害を加え始めましたの。

 

私が目を光らせているからか、まだ実行には起こしていないようですが

 

人類守るために腐敗した王国を矯正したい

麻薬が国中に蔓延しててこの国はもう駄目だ

そうだ、王国には死んでもらおう

国力落とすために王国戦士長(ガゼフ)殺すわ

 

という考えに行き着く時点でかなり頭がアレですけれど…確かシャルティアでしたっけ?遭遇戦で仕方ないとはいえ洗脳を…配下を家族のように大事にしている主人公にとってある意味殺すより酷い事をやらかしてしまうのですわ。

これにより転移して間もない主人公と完全に対立関係に陥ってしまい、「相応の対価を払ってもらおう(凄み)」とか言われちゃうほど!法国は吸血鬼を洗脳しそこねたー残念だったなーくらいにしか思ってないんですから救いようがありません。

 

怒らせちゃったねえ!君たちアインズ様怒らせちゃったねえ!

 

原作はまだ完結していない為、結末を知らないまま私は此方に転生してしまいましたので詳しいことは存じ上げませんが、十中八九我が国がロクな結末を辿らない事は目に見えています。良くて漆黒聖典含む上層部皆殺し(殺されるならマシな方、生きたまま拷問回復の無限ループとか虫の苗床も充分有り得る)、悪ければ国民皆殺しでそのまま人類文明が崩壊する可能性だって有り得ますわ。ただでさえ亜人や異形種に種族差で押されて生存圏がマッハですのに。

 

そしてその中には当然、漆黒聖典である私やお父様、領民の皆様だって含まれてます。

私を大事に育ててくれたお父様や使用人のみんな、それに領内の国民だって皆生きているのです。ある日突然ゲームの世界からやって来た連中の機嫌次第で消されちゃうなんて耐えられません。全力で抵抗する所存ですわ!

 

 

その為に私は(したた)かに生きる事を決めましたの。

こちとら毎日必死に生きてるんですわ!畑仕事して領地の切り盛りしてビーストマンや亜人の撃退とかその身でやってみなさい!過去に何度も死にそうな目に会いましたのよ!

100年の揺り返しだかなんだかでゲームの世界からポッとやってきたチートの甘ちゃん連中なんかに第2の人生を奪われて堪りますか!

 

 

 

破滅フラグなんかに絶対負けない……!!

 

 

 

そんな私の意志に呼応するように、亡くなる直前に母様は私にこんな物を託しましたの。

見た目は金の枠淵の付いた豪華な厚手の日記帳、背表紙から4枚の天使の羽が生えていて、お母様がいつも肌身離さず持っていた思い出の品。《記録書(ダイアリー)》と呼ばれていたマジックアイテムを私は受け取りました。

 

「貴女が困ったらそれを頼りなさい、きっと力になってくれるから。

……お父様をよろしくね。」

 

そう言って若くして病で息を引き取ったお母様の《記録書》、そこには様々な事が書かれていました。

 

この世界の仕組みについての様々な考察、効率的なレベルアップの方法や位階魔法についての検証結果、そしてお母様の故郷についての記述も事細かに記されていましたわ。

 

そう、なんと私のお母様、どうやら「プレイヤー」だったらしいのです。

転移してきた時期は主人公(モモンガ)とはズレていたようですが彼と同じゲームの世界からやって来た住人…そういえば2人の出会いの話を興味本位で聞いた時お父様が「空から降ってきた」って真顔で言ってましたわね。

 

そんな便利アイテムとも呼べる代物を手に入れた私はその資料を参考に魔法の研究と自身のレベルアップを同時に進め、着々と実力を付けていきました。職業も魔法職と近接職をバランス良く取れるよう《記録書》を参考にした結果は上々、コツが分かればあとは速く、20歳にしてだいたい90レベル前後でしょうか?それくらいまでには成長致しました。お母様曰く『ガチビルド』って奴ですか、前世はゲームあんまりしなかったのでいまいちピンと来ませんが実力は付いているのは感じるので問題ありませんわ。

 

なんというかモンスターを討伐していると壁を超える感覚?がありますのよね。

ウチの領地は亜人種の生息地に近くレベル上げの素材には事欠きませんでしたし、慣れちまえばどうって事ぁねえですわ。レベリングの感想ですが、どうやらプレイヤーの血を濃く受け継いだものほど成長がゲーム寄りになるのか経験値が溜まりやすく、レベルも上がりやすいみたいです。《記録書》を受け取ってから15年間、ひたすらレベリングしていた。つまりゲームでいうと15年ログインしっぱなしでレベルを上げ続けていたと言うことになります。廃人かな?

ユグドラシルでは95から100までの5レベルを上げるのが地獄と言われていた気がしますので、如何にプレイヤーの血を濃く受け継ぐ私でもこの辺りが頭打ちでしょう。法国最強は番外ちゃんが居ますからね。

 

この世界、ホントにレベルが物を言うようで。どんなに筋肉質で屈強な男でもLvが5とかで、Lv15の華奢な女の子に喧嘩で負けちゃうんですわよね…その辺凄くゲームですわ。そのくせ《武技》の習得はレベルアップとは違い、ひたすら修練が必要で、現実基準で何度も身体に叩き込まないといけない。ゲームと現実がちぐはぐに混ざりあったややこしい世界なのですわ。

 

 

『レベル』はひたすらモンスター討伐、『魔法』は《記録書》に書かれているメモに寄るところの〝世界との接続〟の為法国の教材で勉強、『武技』はひたすら鍛錬、この3つをバランスよく育てる事が大事であるとお母様の《記録書》には記されていました。

 

前述の通りレベルは侵略者退治で滞り無く上がっていき、武技に関しては法国に教育機関があるのでそれをちょっと齧ってあとは反復練習あるのみ。

 

一番苦戦したのは魔法の習得でした。『世界への接続』と呼ばれる苦行…前世で言う数学と物理を足して2で割ったような、公式覚えて応用させる前世の私が1番苦手なやつだったので。

それでもレイラ頭脳と才能もあり頑張った結果第九位階の魔法まで習得が完了しましたの。

勉強中、突如私の脳裏に存在しない記憶が溢れだして知らないハズの高位の魔法もスっと頭に入ってきましたのよね、これもお母様のマジックアイテムのおかげかも知れません。枠が足りなかったのか回復等の信仰系魔法は流石に無理でしたがオマケに一つだけ「超位」の魔法も習得に成功しました!

 

多分習得した魔法が私の異能力のせいで尖ってたのと職業スキルのボーナスによるものでしょうか?主人公もオーバーロードにしか使えないスキルとかありましたし。

 

兎に角死にたくない一心で私はがんばりました。

来る日も来る日もレベル上げ!魔法習得!武技鍛錬!って感じで。

 

そうした努力の甲斐あって、私ことレイラ・ドゥレム・ブラッドレイはスレイン法国内でも指折りの実力者に数えられるほどになりました。男尊女卑の世界で手っ取り早く成り上がるには強さを証明するしかないんですのよ。

ぶっちゃけいくら偉くなっても破滅フラグの塊(ナザリック)の前ではなんの意味も成さないんですが…あの連中に敵対するにしろ迎合するにしろ、私自身が強くないと物理的に切り捨てられて終わりですものね。でも飛び抜けて強くても目ェ付けられますし、どうすりゃええんですのよ。

 

 

 

…それでも私は生きるのを諦めません。

お母様の《記録書》、そこには育成の解説の他にも当時の彼女の手記が記されてました。

日本語だから誰も読めないと思ったんでしょうね、前世日本人の私は読めてしまいましたが。

 

そこには腐りきったリアルの世界から異世界に飛ばされ、混乱しながらも仲間と大冒険を繰り広げた記録、お父様と結ばれ、この領地を割譲されてから二人で奮闘した輝かしい思い出も残されていました。

領民を愛し、夫を愛し、この世界の人類を愛したお母様の赤裸々な手記を拝読して尚更この国を玩具にされたくないと思ったのです。

 

 

ならば私は持てる全てをもって破滅フラグをへし折り、領民を、人類を存続させ続ける!

あわよくばナザリックに取り入って庇護下に入る!

その為ならプライド捨てます!靴舐めます!そのくらいの覚悟で挑みますのよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねーちゃんどしたの?凄い顔してるけど…」

 

オットいけない、そういえば私あの報告会が終わった後我が家の庭でクレマンティーヌと鍛錬するんでしたわね。

 

「失礼、少し考え事をしていただけですわ。

クレマンティーヌ、いつでも掛かってらっしゃいな。」

 

「おっけーいくよ…《流水加速》ッ!!!」

 

屋敷の庭で向かい合う私とクレマンティーヌ。

クラウチングスタートからぼんっ!と風を切る音がして目の前にいたクレマンティーヌが消えた、あの子お馴染みの『超加速からの急所刺突(スっと行ってドスッ!!)』だ。

反射的に首を傾けると次の瞬間には首のあった場所をスティレットが通過していた。因みにこれ、私じゃなかったら死んでるんですが!いつも通りですわね!

 

「更に速くなりましたねぇ、クレマンティーヌは強い子ですわ。」

 

「えへへ〜」

 

「では、参りますわ…よっ!」

 

「ッッ!!」

 

無手の私とスティレット装備のクレマンティーヌの組み手で風が鳴る。レベル差にものを言わせたなんちゃって格闘術、通称《令嬢神拳》が唸りますわ!

この世界は私にとってリアルな現実。ゲームと違って匂いや味もありますし、気配だって感じます。

現実でしか味わう事ができない体験、経験と実績さえあれば武技などなくともこの速度程度なら反応は可能ですわ。料理なんかスキル無くても経験でできますし、このようになんちゃって格闘術だってできてしまいますの。寧ろ前世より身体が動くのでイメージを直ぐに形にできますわ!ありがとうブルー〇・リー、ありがとう麻婆神父!

 

線のように流れるクレマンティーヌの剣の軌跡を受け流すこと5分、《流水加速》の反動で動きが鈍った隙を突いて懐に入り込み加減した鉄山靠もどきを打ち込みます。

ゔぇッ!?と呻き声が聞こえてクレマンティーヌの身体が後ろに吹き飛び背中から芝に激突しました。

 

「…7分40秒、前回より30秒以上長くなりました。

そろそろ《流水加速》の継続時間は人類一になるんじゃありませんこと?」

 

「あいったたた…ホント?」

 

「ええ、負担のかかるこの技をここまで長い間掛け続けられる人間は私の知る限りいません。

高速戦闘なら法国内に敵は居ませんわね。」

 

「ねーちゃんと隊長と番外を除けば、でしょ?」

 

「私達は数に入れるだけ無駄ですわ。

誇りなさい、貴女は強い。見知らぬ誰かの評価など実績で跳ね返してしまえば良いのです。」

 

「……うん!」

 

少し考え頷く義妹。

クレマンティーヌ・ハイゼア・クインティア。原作だとサイコパスで殺人鬼だった筈なのですが、クインティア家の許嫁になって幼い頃から私と一緒に居た影響なのか元の破壊的な性格はなりを潜めて、健全に成長しました。

つーかサイコキラーじゃないクレマンティーヌとか唯の正統派美少女なんですが!?実際お見合いの誘いとかが毎日来てるらしいです、本人にその気は無いと言ってましたけど。

家族が兄のクアイエッセ様にばかり構ってたのが原因で性格が拗れてしまったと原作情報で知っていたので、家族の分まで私が構ってあげたら凄く懐かれました。これって原作改編なのでは?

もしかして私、何かやっちゃいました!?

 

でもスれる前のロリロリクレマンティーヌちゃんは猫みたいで可愛かったですし、そんな子が親からネグレクト食らってたら構わずにはいられませんよね?

 

 

そのまま組手を何度か繰り返し、太陽も真上に差し掛かった頃。クレマンティーヌにも疲れが見え始めたので今日はこの辺で止めにしておきましょうか。

 

「今日はこの辺りにしておきましょう。

明日は竜王国ですし、任務に支障が出ては本末転倒ですわ。」

 

「うん。

汗掻いちゃったよ、お風呂貸して〜。」

 

「ええ、構いませんわ。

ついでにお昼も食べていきなさいな、リクエストあります?」

 

「マジで!?

アレがいい!『ボンベグゥ』!」

 

「あーハイハイ、ボンベグゥですわね。作っててあげますから先に汗を流しておいでなさいな。

ベル、案内を。」

 

「畏まりましたお嬢様。

クレマンティーヌ様、此方へどうぞ。」

 

ボンベグゥ、すなわち前世でいうハンバーグの事ですわね。六大神様、即ちこの国を創ったプレイヤー達が伝えたとされていますが、こっちの世界で伝わるうちに段々訛ってこういう呼び方になったみたいです。他にも『アッポゥペィ』とか『カゥヒィ』なんかそれっぽい食べ物飲み物が存在しています。

メイド達に連れられてルンルン気分で去っていくクレマンティーヌを見送って、私も厨房へ急ぎましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タオルは此方にございます、何かあれば此方のメイドにお申し出下さいませ。

ではごゆっくり。」

 

「ありがとベルちゃん。お風呂お風呂〜♪」

 

礼儀正しく頭を下げて去っていくメイド長が見えなくなったので扉を閉めて汗でベタベタになったインナーを脱ぎ捨てる。

ねーちゃんの家のお風呂は広くて浴槽もデカいから昔から大好きだ。ウチも実家は結構金持ちだけど、ここまで広い風呂場は作れない。流石領主の娘。

夜になれば夜空を見ながら入浴できるようになっていて、確か六大神様も愛した《ロ・テンブロ》っていう作りだってねーちゃんが言ってた。お付きのエルフメイド達に背中を流され、身体を洗われた後沸かしてもらった湯船に肩までどっぷりと浸かる。

 

「あ''ああぁ〜〜…」

 

思わず口から情けない声が出てしまったけど、これがロ・テンブロの醍醐味だ。

 

『湯船に浸かってる間はね、だれにも邪魔されずなんというか…自由で…救われてなきゃァダメなんですわよ。独りで静かで豊かで…』

 

ねーちゃんの言葉を思い出す

 

 

 

私の義姉、レイラ・ドゥレム・ブラッドレイ。

出来損ないと言われた私と違い、才気に溢れて両親からもチヤホヤされてたクソ兄貴の許嫁としてやって来たブラッドレイ家の一人娘だ。

来たその日にクソ兄貴に勝負を挑み、ボッコボコに打ち負かして鼻っ柱をへし折ってやってるのを見た時は胸がスッキリした。

 

『わたくし、自分より弱い殿方に身を捧げるほど甘っちょろくありませんの。ごめんあそばせ。』

 

歳は兄貴より少し上くらいなのに信じられないくらい強かった。

大人たち曰く『神の血を引く子供』。魔法も使えるし槍術も、兄貴のテイムしたモンスターが手も足も出ないくらい強くて…傍目から見ても彼女が規格外な存在なんだって分かった。

 

領内に侵入した亜人種の侵略者30匹を1人で皆殺しにしたとか、あの歳で基本的な武技を全てマスターしてるとか、見たことの無いような強い魔法を使えるんだとか…

 

神の血を覚醒させた神人だって大人達はねーちゃんの事を持て囃してた。それがクソ兄貴の姿と重なってイライラして、最初のうちは笑顔で構ってくるねーちゃんをずっと無視してたんだ。

 

でもねーちゃんは他の奴らとは違った。

 

『邪ァ魔なんですわよ毎日毎日!

私は義妹とお話がしたいのです、悪質な宗教勧誘は引っ込んでやがれですわ!』

 

ある日、怒ったねーちゃんは神殿から勧誘にやって来た神官達を力づくで追い出して、扉を氷の魔法で固めてしまった。そうして2人きりになってやっと、本当の彼女を知ることができた。

見向きもされなかった私を、ずっとねーちゃんは見ていた。クインティアの片割れ、出来損ないの妹じゃなくて真っ直ぐクレマンティーヌ(わたし)を見てくれていた。

それに気付いた時は嬉しくて、思わずねーちゃんの胸の中でずっと泣いていた。

 

ねーちゃんに出会わずにあのまま大きくなっていたら、きっと何処かで私の心は壊れてしまっていただろう。そう思うと怖くなる。

 

 

それからずっと、私は強くなる為に鍛錬に励んだ。ねーちゃんの横に立つに相応しいクレマンティーヌ(自慢の妹)になる為に。

自分の価値を決めるのは自分自身だってあの人は教えてくれたから、他の奴からの評価なんてもう気にしない。

 

「もっと強くなんなきゃなあ……」

 

ぽつりと吐いた呟きは、湯気と一緒に昼中の空へ溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ずはナザリックとの接触を避ける事が第一ですわよね…だいたいファーストコンタクトが洗脳から始まるのがいけないんですわち〇ちん亭のエロ漫画じゃないんですからちゃんと挨拶を…って相手吸血鬼ですもんね法国民なら出会って5秒で即殺意ですわよね。

王国をなんとか出来ればガゼフの暗殺も有耶無耶に…そうすればカルネ村虐殺も無くなり陽光聖典が出張る必要もなくなるハズ…でもべリュース様の動向が最近怪しいんですよねえ、法国が(そそのか)さなくても勝手に離反するんじゃないかしら。」

 

封印の魔樹はいつ復活するんでしょう、《占星千里》ちゃんの予言は真っ先に私の所へ報告に来るように頼んでますから心配はしていませんけど、そもそも原作始まるまであとどれくらい経たないといけないのかしら?最悪私が独りで空想樹…もといザイトルクワエを伐採してしまえばカイレ様と『傾城傾国』が出張る必要もなくなりますわね。そうすれば吸血鬼洗脳も無くなって…ああでもジジイ共はぜったいザイトルクワエ欲しがりますわいっそ今のうちにあのなんちゃってゼー〇全員暗殺してしまいましょうか。使えないなら切り捨てるしか無い(物理)。これもスレインの未来の為…って何考えてますの救国の前に神都が大混乱になりますわ!

 

いちばん不味いのはこの国が下手な宗教国家なせいで諸外国への態度が悪いのと、国民の人間種以外への嫌悪感を払拭するのが難しいことですわね。歳を食ってる老人ほど亜人異形への嫌悪感というか殺意はマシマシ。500年以上こびり付いた法国の道徳()は伊達じゃないというワケか…

私の派遣先である竜王国や帝国との仲は悪くないんですけど、中身腐りかけの王国や宗教の解釈不一致で昔から犬猿の仲である聖王国なんかは見捨てる気満々で草も生えねえのですわ。辞めたら人類の守護者。

 

 

宗教思想ガッチガチの神都と比べて辺境に領地を構える私の所では防衛力強化って言っとけば大体の無理は通るので、オラサーダルク様からお借りしてきたヘッくんとムンちゃんが国境付近の防衛に当たってくれています。ドワーフ達の工廠やエルフのメイド達も領民達の意識改革の一環で采配したのですが、やはり最初は反応があまりよろしくなく、数年経ってようやくお互いに円滑なコミュニケーションを取れるようになりました。特にフロストドラゴンの2頭は子供に人気ですわね。

辺境でこれですもの。国の中枢に近づけば近付くほど差別意識は強くなる一方で、都市部にはとてもじゃありませんけど連れ出せませんわ。

 

……ゑ?オラサーダルクって誰か?

オラサーダルク=ヘイリリアル。アゼルリシア山脈にあるドワーフの廃都に住み着いている霜の竜(フロスト・ドラゴン)の王様ですわ。レベルは40代後半くらいでしょうか?昔フィールドワークしてたら偶然廃都まで辿り着いて、色々あって仲良くなりましたの。

なんかクッソ硬くて開けられない扉を開けて欲しいって頼まれました。

ドワーフ製の扉だったんですけど前世の様な電子的なロックではなくて変わった形の鍵穴が7つ有るだけの簡素な作りでしたので、水魔法を鍵穴に差し込んで凍らせ、即席の合鍵を作れば簡単に開きました。小さ過ぎて鍵穴見えてなかったみたいです、ドラゴン達は力づくで開ける気しか無かったご様子。

中は宝物庫だったみたいですわ、上機嫌のオラサーダルク様と交渉の結果、領地防衛の為にへっくんとムンちゃんを派遣して下さいました。

 

ムンちゃんは本当はムンウィニア=イリススリムというカッコいい名前の雌のフロストドラゴンです。嘗てはオラサーダルク様と領土争いを繰り広げていたらしいのですが負けて子供を孕ませられた挙句家庭内暴力を受けるようになったくっ殺系幸薄人妻ドラゴンですわ。

今回の派遣は自分から立候補したらしく、もう子供も産めない身体になっているのでDV夫から逃げる為のいい口実が作れたと話してくれました。

それでもドラゴンはドラゴンなのでその辺の亜人に負ける訳もなく、立派に仕事をこなしてくれています。

 

 

へっくんことヘジンマールは鼻先の眼鏡が印象的な太っちょドラゴン。ドラゴンなのにデブの引きこもりで本ばかり読んでいたから呆れたオラサーダルク様は勘当するつもりでこちらに寄越したらしいです。本を嗜むドラゴンって珍しいですわよね。

警備してもらうには流石に肥え過ぎていたので一緒に運動していたらちゃんとシェイプアップしてスリムなドラゴンに変わりました。その激変した見た目にムンちゃんも「痩せた姿は家族の中で一番父に似ている」と驚いてました。

でも中身は引きこもりなので話す時もオドオドしてます、可愛いですわね。

 

 

 

彼はドワーフ族の遺した書物を大量に持っていて、こっちへ派遣される際に全部持ってきたそうです。オラサーダルク様は書物に興味は無いらしく、私が開けた宝物庫の宝に首ったけだったのですんなり話が纏まりました。今は私の屋敷の離れに保存魔法を掛けて保管して、彼が何時でも取り出せるように整理してありますわ。

故郷の本ですので工廠のドワーフ達に試しに1冊持っていったら、今は廃れたルーン技術が全盛期だった頃の資料もあるらしく、感銘を受けた何名かは工廠で密かに新たな開発を始めたご様子。

 

私はここで閃いたのです!

アインズ様の大好きなもの、それは“未知”!

自分の知らないマジックアイテム、魔法、技術は彼にとって価値あるもの。コレクターの彼なら尚更のこと!

 

なら私の領地でしか作れない“価値”を産み出せば、もしバッドエンドで法国が壊滅してもワンチャン生き残れるかもしれない!(技術だけ奪われてポイーされる可能性もあるので安心とは言いきれませんが)

天啓を得た私はすぐさまへっくんとドワーフ達を立ち会わせ、ルーンを用いた新たな技術開発に乗り出しました。ルーン魔法とは位階魔法よりも昔に流行った魔法で現在は魔化技師も減り、廃れてるそうです。しかし工廠の親方達は「施工に時間がかかる分長持ちする息の長いマジックアイテムが作れるど!」と意気揚々と開発に乗り出しました。

調べたところによるとルーン魔法はかの竜王が行使するという『原初の魔法』との縁も僅かながらあるんだとか…それ程の歴史を持つ重要ファクターなのです。

 

 

まだ表には出しませんが、努力は着実に実を結びつつあります。私が考案した()()ももうすぐ完成しますしね。

あとは…羊皮紙に変わる新しいスクロールの素材も考えないと。

これは例の牧場化を回避する為の作戦です。スレイン法国も原作のローブル聖王国のようになってしまう可能性がある以上、羊皮紙()以上に魔法を込められる力を持った紙を探さなければ…!そしてそれをあの深読み悪魔にそれとなく発信すればあの惨劇は回避出来るはず…私の領地で牧場経営なんてさせませんわよ!

確かエルフの土地には植物から紙を作る技術があるとメイドの子達が言っていましたし、それをあたってみましょうか。エルフと法国は戦争中なのでおちおち現地まで向かう事はできませんけど。

 

 

 

 

 

破滅フラグを回避する為にはとにかく彼の気に入りそうなものを揃えて、極力関わらない様にし、出会っても高圧的な態度を取らないように…ああああ考えれば考えるほど後半は法国には無理な話ですわ!ホンット宗教国家ってクソですわね!

 

それと…もう1つ警戒しないといけないものがあった気がするんですが。何だったかしら?アインズ様関係ではなくて異世界(こちら)側で…あったような…

 

 

 

 

 

 

 

「おっとそろそろいい焼き加減ですわね。

クレマンティーヌはまだ戻って来ないのかしら。」

 

「クレマンティーヌ様は先程湯船から上がられたそうですのでもうすぐいらっしゃいますよ。」

 

「そう、じゃあ盛り付けましょう。

皿をとって頂戴。」

 

「かしこまりました、お嬢様。」

 

料理中に深く考え過ぎてしまったようですね。

メイド長にお皿を取ってもらって盛り付けて、パンと野菜を添えればこれでお昼ご飯として遜色ないでしょう。クレマンティーヌは食べ盛りですからこれくらいペロリですわ。

 

「お嬢様。」

 

「あら執事長(オルター)、どうかしまして?」

 

「番外席次様がいらっしゃっています。お通ししますか?」

 

「ファッ!?

あっ…ああそう、お通しして頂戴。」

 

「承知致しました。」

 

アイエエエ!?

番外席次!?番外席次ナンデ!?

神都の奥に軟禁されてるハズじゃなかったんですの!?

まさかあの時のリベンジ…?確かにこの前老害共に言われて“遊び相手”にはなりましたけど、こっちも死にかけましたしおあいこでは?

 

「よっす、《獄界絶凍》。来たわよ。」

 

なーんて思ってる間に執事長から案内された番外ちゃんが厨房に入って来てしまいました。

漆黒聖典最高戦力、番外席次《絶死絶命》。本名はアンティリーネ・ヘラン・フーシェ、スレイン法国の文字通り最終兵器にして聖典一番の問題児ですわ。これでもエルフと人間のハーフらしく100歳越えてるらしいです。

プレイヤーの血を引く神人の中でもとりわけ血が濃く、恐らくレベルは100か限りなくそれに近いと思います。曰く先祖返り、とレイモン様は語ってました。

 

「あら〜こんな辺境まで良く来ましたわねぇ、元老院は許可したんですの?」

 

「許すわけないじゃない。」

 

「抜け出したんですのね…後で小言を言われるの私なんですよ?」

 

「そんときゃ殴って黙らせればいいのよ。

どうせこの国で私達を止められる奴なんて居ないんだから。」

 

監視役の風の巫女ちゃんからは何も聞いてませんし、きっと異能力使って来たんでしょうねえ…希少能力の無駄遣いですわよソレ。

なんの悪びれもなくヘラヘラ笑う彼女をとりあえず客間へ案内します。お菓子と紅茶を用意して準備は万端ですわ。

クレマンティーヌのボンベグゥはメイド長(ベル)に持っていくよう頼んでおきますか。

 

お客様のお相手が優先ですわ。

 

この子、割と性格が歪んでますのよね。自分を負かした相手の子を産みたいとか素面で言っちゃう系女子で、常に強者を求めています。生まれが複雑らしく、普段は表に出る事ができません。まあ半分エルフですもんね、人間主義の法国じゃ大っぴらに過ごせませんわ。

 

「それで、本日はどういったご要件ですか?

この前の続きなら絶対に嫌ですわよ。」

 

「え〜つれないなあ。聖堂の中は暇なんだもん、遊び相手がいないと退屈で死んじゃうわ。」

 

「貴女ねえ…そのナリでもこの国一の長寿なんですからもっと落ち着きを持ちなさいな。」

 

「歳の話は止めて。

ねえ、《氷帝重機兵団(レギオン・メビウシス)》またやってよ。アレ楽しかった。」

 

「人が必死こいて考えたオリジナル魔法をバカスカ壊される私の気持ちも考えなさい。」

 

少し前、元老院の命令でやらされた番外席次との戦闘訓練(ルール無用の残虐ファイト)

水と風の聖典から術者を集めて強固な結界を張り、被害を最小限に抑えながら他聖典観衆のもと行われたこの子のガス抜きはそれはもう酷いものでした。

私としては試作の魔法を試すのに丁度いいかな〜なんて軽い気持ちで許諾したのですが、非殺傷と決められていたはずなのにハナっから殺しに来るわ戦闘が激し過ぎて結界が破られそうになったから代わりに私が結界維持しながら戦う羽目になるわ挙句テンションの上がった番外席次が異能力まで使って仕留めに来るわ、散々でしたわ!

結果、私が魔力切れでギブアップしたのでそこで訓練終了となったのですが、あのまま続けていたら確実に腕か首が飛ぶところでした…あんな仕事隊長に投げときゃ良かったんですわよ。

 

「あ〜あ、アンタが男なら孕んでやっても良かったのに。なんで女なの?」

 

「私、今凄い理不尽な事を言われてますわね!?」

 

「…わりと真面目に嬉しかったんだよ。

私と同等に戦える相手を生まれて初めて見つけたんだから。」

 

急にしゅんっとなってしおらしい態度、上目遣いで寂しそうな表情。この子、普段大物ぶってる癖にこういう所あるから放っておけないんですわよね。ギャップ萌えというやつですわ。

 

 

「アンタもそのうちツアーに目を付けられるかもね。」

 

「…ツアー?どなたですか?」

 

「調停者気取りのクソトカゲよ。法国とそいつの取り決めのせいで私は自由に動けないの。

アンタは神人で私と同じ位強いし、そのうち接触してくるんじゃない?」

 

 

ツアー…つあー……?

ツァインドルクス=ヴァイシオン!?

あ''あ''あぁぁぁッ(クッソ汚い叫び)

そうでしたわ、完全に忘れてました!

白金の竜王、ツァインドルクス=ヴァイシオン。

アーグランド評議国の永久評議員にしてこの世界の仕組みを理解している(ドラゴン)の1人。原作でもなんか意味深な発言しながら伽藍堂の鎧を魔法で動かしてましたわね!相当な実力者のようでナザリックの守護者と戦っても引けを取らない強さを持っているのだとか、それに目を付けられると!?

やっべーナザリックに囚われすぎてこの世界の抑止力の事は完全に無視してました。確かツアーも中身がドラゴンだから特別人間を庇護する訳でもなく、“世界の調和”を保つ調停者(ルーラー)を勝手にやってるんでしたわね。過去にプレイヤーを殺したこともあるんでしたっけ?

 

そんなのに睨まれたらおちおち夜も眠れませんわ!危険視されて暗殺とかされたらどうしましょう…

 

「危険と判断されたら評議国と戦争かなあ、それはそれでちょっと楽しみだわ。あのトカゲを殺せば私は自由だもの。」

 

けっけっけっと可笑しそうにお菓子を摘む番外ちゃんの声も最早耳に入ってません、内心気が気じゃないのですわ!

 

「っべ〜ですわ、破滅フラグが増えましたわ…もう嫌ぁ…おうち帰る…」

 

「…?」

 

 

 

 

結局この後ルビクキューの話で盛り上がり、日も傾いたので番外ちゃんはお土産に用意したクッキー片手に帰って行きました。

…またレイモンおじさまからお小言を言われてしまいますわねこれは(名推理)

 

自室に戻るとクレマンティーヌがインナー姿で眠っていました、ご飯を食べた後番外ちゃんと会うのが嫌で私の部屋でそのまま寝てしまったらしいです。幸せそうなカオして寝ちゃってまあ…

起こして日が落ちかけているのを見ると慌てて帰っていきました。

 

 

 

 

 

その夜

 

 

 

 

 

「お嬢様、失礼致します。」

 

「入りなさい。」

 

自室で明日の任務の準備をしていた時。

コンコンと自室の扉をノックし、オルターが何やら黒くて長い箱を小脇に抱えてやって来た。

 

「先程工廠にて工場長が“これ”をお嬢様にと。」

 

「…思ったより早かったですね。」

 

高級そうな黒い箱を明け中身を確認する。

 

「図面通りの見事な出来栄えですわ、流石ドワーフはいい仕事をします。お給料を弾んであげないと。お父様のワイナリーから年代物を何本か譲って頂きましょう。」

 

「お伝えしましょうか?」

 

「いいえ、こういう事は私が直接お願いしなくては。仮にも彼等の事業主なのですから。」

 

「…支配者に相応しい振る舞いかと。

私のお勧めは78年と59年でございます。」

 

「あらそう、貴女が勧めるならそれを頼んでみましょうね。」

 

上機嫌で微笑みながら箱の中の“それ”を優しく撫でた。

 

「全長39cm、重量16kg、“それ”は最早お嬢様にしか扱えない代物となっております。」

 

「触媒は?」

 

「それぞれヘジンマール様とムンウィニア様の生え変わりで抜けた牙を使用しております、誇り高き霜の竜から賜ったものであれば格別の触媒になるかと。」

 

「綺麗にグリップに嵌ってますわねぇ、表面の処理も美しいですわ。」

 

「牙の加工と金属研磨はエルフのメイド達が行ったそうで。」

 

「素晴らしい。

ルーンを刻む為の“核”は何を?見た目はアクアマリンかサファイアですね。」

 

「お嬢様の魔法に合わせ変種のクリソベリルを取り寄せました。コストパフォーマンスの面でもこれならば軽い衝撃を加えるだけで理論上は発動可能です。」

 

「フロストドラゴンの触媒、エルフの細工、ドワーフの製鉄技術。すべて…すべてパーフェクトですわオルター。」

 

「感謝の極み…」

 

 

 

予め作っておいた太腿のホルスターに“それら”がピッタリと収まり、レイラは満足気にうなずいた。

この世界の魔法理論を研究し、エルフ、ドワーフ、フロストドラゴンの協力のもとにできあがった新アイテム。その名も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《撃杖(ショットワンド)》、完成ですわ。

実地試験は明日の竜王国で行いましょう。

待ってなさい破滅フラグ、私は絶対に負けませんわよ…!!」




オリ設定解説

《記録書》
ユグドラシル産アイテム
ゲームを始めた初心者に配られるお得セットのひとつ、文字通り日記を書けるゴミアイテム。一応初心者救済措置で取得経験値の増加や魔法習得速度上昇の効果も見込めるが装備枠ひとつ使う割に合わないため実装初期から使われる事は殆ど無かった。
度重なるアップデートに伴い素材を集め4段階まで強化することができ、第2段階でより高位の位階魔法の習得補助、第3段階で拠点間を移動する《転移(テレポート)》とダンジョンから強制的に退去する《穴抜けのヒモ(ダンジョン・エスケープ)》の魔法をこのアイテムで発動でき、最終強化すれば使い切りだが《真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)》も可能になる。初心者用装備ということもあって死亡時のドロップ率もかなり低めに設定されており、ユグドラシルではお守り代わりに持たれていた。
なお持ち主は「ちょっと便利な教科書」位にしか思っていない模様。


とんがり帽子下着姿の十一席時、『無限魔力』って名前だったんやな…初めて知った…

主人公のレベル詳細は次回で
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