破滅フラグしかない悪役国家に転生してしまった…   作:ハンバーグ男爵

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※オリジナル名称、独自設定、キャラ崩壊ありあり

原作ぶち壊しの地獄へようこそ、嫌ならブラウザバックしな







破滅フラグしかない原作が始まってしまった…
30 異世界生活は極悪ギルドホームとともに


 

 

 

 

城塞都市、エ・ランテル

 

 

2つの国を隔て、物流の要でもあるこの街。

三つの城壁に囲まれた堅牢な要塞の片隅で、人の集う騒がしい一角。

 

エ・ランテル冒険者組合には今日も多くの人集りができており、依頼を貼り付けるボードの前にはより簡単で高報酬な依頼を求めて待ち伏せる者も少なからずいる。

 

その中に一人、異質な雰囲気を放つ大男がいた。

 

室内だというのに全身真っ黒の鎧甲冑を身にまとい、大人一人分はあろう長さのグレートソードを二本も背中につがえた、真紅のマントを羽織る偉丈夫。

 

彼はここ数日クエストボードの前に入り浸り、依頼を吟味する常連客だ。

 

全身鎧ゆえその表情は伺えないが、コツコツと踵を鳴らしながら深く考え込んでいる様子が伺える。

 

 

「モモンさん!」

 

 

暫く考え込んでいた時、ふと自分を呼ぶ声に思考を中断し顔を上げる。

軽装備に身を包んだ茶髪の好青年が一枚の羊皮紙を握り締め、走ってきた。

 

彼の名はペテル・モーク。

金級冒険者チーム〝漆黒の剣〟をまとめるリーダーである。

 

 

「ペテルさん、どうでしたか」

 

「バッチリです、要望通りの依頼を持ってきました」

 

 

我が事のように喜ぶ彼が手渡すのは発行されたばかりの依頼書。

依頼内容は『坑道入口を占拠するはぐれトロール群の討伐』である。

場所はエ・レエブルの外れ、トブの大森林東方にあるウォー・トロールの縄張り争いに敗れた個体が複数人里へ降りてきて、近隣の街や村を襲っているらしい。

雨風を凌げる場所を求めて街付近の坑道を根城にしてしまったらしく、採掘作業も全面的にストップしてしまっているとの事。

平均より高い依頼料に加えトロールの討伐数に応じて報酬加算との事で、依頼主の力の入れようが伺える。

 

近年増加する鉱物需要を鑑みて、素早くより確実な討伐を願う。依頼書にはそう付け足してあった。

 

 

「必要な階級は金級以上の冒険者チームに限られますが、組合長の口利きでモモンさんとナーベさんも支援部隊という形で同行させてもらえるそうです」

 

「いつもありがとうございます」

 

「いえ!お二人が銀級以上の実力を持っているのは知っていますし問題ありませんよ。

僕らの方こそ、モモンさんの邪魔にならないよう全力を尽くしますね」

 

「邪魔だなんてそんな事は無いですよ、共に頑張りましょう」

 

(謙虚だ…その優しさが嬉しくもツラいよペテルさん)

 

 

屈託のない笑顔でそう答えるペテルにモモンと呼ばれた男は心の中でそうごちた。

 

冒険者同士のチームアップはこの業界では珍しくない、報酬は山分けだが依頼の確実な遂行に繋がるし人脈作りにも貢献してくれる。

前世で培ったなけなしの社交スキルに救われたな、と常々思う。

 

冒険者になって初めての依頼を共にこなした時からペテル達『漆黒の剣』にはお世話になりっぱなしだ。

 

身元の怪しい自分たちを邪険にすること無く、共に仕事をする先輩としてアドバイスや指導をしてくれる。

おかげでこの世界で冒険者として無事に旗揚げする事ができた。右も左も分からない中、初めて会った先輩冒険者が彼等のような善良な者たちだった事は幸運だろう。

 

 

(ペテルさんを出しにしてるみたいで気が引けるけど、今はなりふり構っていられないからな。なぜならば…)

 

 

 

 

 

(金が…無いっ!!!)

 

 

 

幸い、内心に留めた魂の叫びは誰にも聞かれることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めたら異世界だった、って陳腐な常套句はよく聞くけれど、いざ自分が体感すると本当に焦る。

 

 

名前は鈴木悟、プレイヤーネームはモモンガ。

10年以上続く元大人気ゲーム『ユグドラシル』のサービス終了日、自分のギルドで迎えた最後の時。

目が覚めたらそこは異世界だった。

 

 

身体はプレイヤーキャラだったオーバーロードになってるし!

 

ギルメンが丹精込めて作ったNPC達は自我を持って動き始めたし!

 

オマケに俺の事を「至高の御方」だとか持て囃して忠誠を誓うんだもの!

 

「端倪すべからざる」ってどういう表現!?褒められてんのか貶されてんのかわかんねえよ!もっと簡単な言葉で言ってくれ!

 

あっ…(フワァ〜)

 

……この身体はもう人間じゃない、アンデッドだ。

 

唐突に俺は人間じゃなくなった。

感情が昂るとさっきみたいに強制的に沈静化がかかるようになった。「精神作用無効」をもつアンデッドの特性だからだ。

 

そう。様々な検証の結果、あろうことかゲームの設定や物資を全て引き継いだ状態で異世界転生…異世界転移か?をしてしまったらしい。

 

本当にわけがわからないよ!

 

ペロロンチーノさんだったら「俺TUEEEE!!」とか「どんななろう系だよ!」とか言ったんだろうか…

 

ともかく文句を垂れていてもしょうがない、確かめないといけないことは山ほどあった。

身体の検証を色々と済ませた俺はギルド内に配置されているNPCの把握や施設の稼働状況、資源など諸々の確認を終え、気晴らしがてらたっち・みーさんの作ったNPCであるセバスの報告にあった外の状況をこの目で確認する事にした。

 

念の為の変装はデミウルゴスに一発で見抜かれて同行を許すはめになったけど、初めて見る澄んだ空に広がる満点の星には本当に感動したんだ。

ブループラネットさんの力作である六層の天蓋も美しいけれど、本物は迫力が段違い。

リアルじゃ汚染された雲に覆われて見る事のなかった空が一面に広がって、まるで宝石箱みたいだった。

 

そんな感動に浸っていた時、ふと視界の端に光る物が見えたんだ。

《飛行》でかなり高くから見下ろしていたから空ではなく地上に、森の中だというのにそこだけくり抜かれたように白く染まっていて、星の光を反射してた。

 

危険かもしれない。

ユグドラシルかも分からないこの世界は俺にとっては未知の連続、仮にLv100のプレイヤーでも即死してしまうようなデストラップでもあれば一発でお陀仏(既に死んでるケド)だ。

それでも溢れる興味を抑えきれない。

 

デミウルゴスがかなり渋ったが無理を言って共に確認に赴くと、そこは一面の雪景色。

辺りには冷気が立ち込めて、その真ん中にドデカい氷の塊が鎮座していたのだ。これには驚いた。

デミウルゴスが先行し入念な魔法チェックをした結果トラップ等は検出されず、一先ずは安全が確認されたので近寄ってみることに。

 

デカい氷の塊はどうやらトレント系のモンスターらしい、その形状から推察するにザイトルクワエという大型モンスターだ。

でも奴には脚の生えた個体なんていなかったし、この世界特有のモンスターなのかもしれない。

生命反応は完全に止まっており、ピクリとも動かないそれを眺めていると、厚着の蜥蜴人から声を掛けられた。

 

デミウルゴス、警戒するのは分かるけど取り敢えず支配の呪言で押さえ付けるのは止めなさい。敬語とか気にしないから、「平伏しろ」とか初対面の人…人?に絶対やっちゃダメなやつだぞ。

 

おかげで警戒心を解くのに苦労したよ…

 

名はザリュース、この付近にある蜥蜴人の村に住んでいて、自身の鍛錬の為に毎日此処へ来ているらしい。

レベルは…かなり低いな、20そこらじゃないのか?

 

身元は隠しながらこちらの状況を説明して、どうして森のど真ん中にこんな場所があるのか聞いてみると、過去にこのザイトルクワエ(ザリュースは魔樹と呼んでいた)は復活し、暴れようとした所を人間の勇者達によって討伐され、凍った状態で今も罰を受けているらしい。その影響で討伐されてからずっとこの一帯は冷気と氷に覆われているのだかとか。

 

氷の魔法で?こんな広範囲を?

氷原は見たところ小さな村なら田畑ごとすっぽり収まってしまうほどの面積だし、樹木系モンスターと相性の悪い氷魔法でどうやってここまでの威力を出したのか気になるが、樹の平均レベルはたしか80前後、なら少なくともそれ以上のレベルをもつ者がこの世界には複数人いる事になる。

 

自分の中で警戒レベルがひとつ上がった、自分のように転移してきた高レベルプレイヤーの存在は脅威たり得る。

なにせ『アインズ・ウール・ゴウン』は人間種PKの悪名高きDQNギルド筆頭だとユグドラシル内では有名だ。当時の俺達の評判からして、またあのゲームのPKマナー的に考えても人間種のプレイヤーなら出会えばまず敵対視される事だろう。

 

ちょっと忠誠心が天元突破してて怖いが、デミウルゴス達NPCは去っていったギルメンの遺した子供のような存在、そしてギルドホームは俺達の努力の結晶だ。万が一にもそれを破壊されてしまうのは避けたい。護ることのできるプレイヤーは俺一人なのだから。

 

ザリュースの兄が件の人物達と実際に話したそうなので詳しい話を聞くべく彼の村へと向かいたいところだが、生憎彼は他の街へ交易に出ているらしい。

そしてナザリックに俺が居ないことを察した守護者達がにわかに騒ぎ始めているとデミウルゴスから言われたため、ザリュースに連絡用のマジックアイテムを渡し今回は別れる事にした。

異世界に来て初の第一村人だ、この繋がりは維持しておきたい。

 

 

『御身自ら未開の土地にて情報を…更に人脈まで構築なさるとは。

流石はモモンガ様、どんな些末な存在にも利用価値を見出されるその御姿。

このデミウルゴス感服致しました』

 

 

帰り道でデミウルゴスが畏まってそんな事を言っていた。君が無駄に警戒心を煽らなきゃもっと話せたんですけどね、と心の中に留めておく。

忠誠心が高いのは結構だけど俺がめっちゃ賢くて何もかもお見通しみたいな雰囲気出すの止めてくれよ…ただ無闇に敵を作りたくなかっただけなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………

 

 

 

 

 

 

……もうね、疲れた。

ちょっと席を外しただけでナザリックは大騒ぎになってて、それを諌めるのには苦労したよ。

守護者達も心配していたし、アルベドなんかはニグレドを使って森をしらみ潰しに探させようとしてたし、俺の行動ひとつで皆に気苦労をかけてしまった。

 

皆の忠義は嬉しい、これは本当だ。

 

けど肩身が狭いよっ!

 

これが部下を沢山持つ上司の気持ち、なのかなあ…

 

 

 

 

明くる日。

ザリュースには兄が村に戻った時に連絡を入れて貰うよう言伝ているため、こちらは完全に待ちの状態だ。

 

今日はセバスと共にマジックアイテム《遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)》の練習中、たまたま見つけた野盗に襲われている村を助ける事にした。

アンデッドになってからというもの、人間の死生観が薄れてしまっている。人が死んでも虫が死んだ程度の気持ちにしかならない。

それでも襲われている村を助けようと思ったのは、隣に侍るセバスの姿にたっち・みーさんの面影を重ねてしまったからだ。

 

『困っている人が居たら助けるのが当たり前!』

 

リアルでは警察の職に就いていたという彼がいつも掲げていた言葉。

偽善であれなんであれ、助けるのに理由は要らない、呆れるほど善性だった彼の精神の表れだった。

 

そうときまればセバスを同伴させる。

ザリュースと接触した時、初手支配の呪言で無駄に警戒させてしまった反省を活かし、今度はNPCでもカルマ値の低くない、少なくとも0以上で人間に対して敵意を抱いていないであろう面子で向かう事にする。

過去のギルメンとの会話を頼りにNPC達のカルマ値を思い出す傍ら、一先ずはたっちさんの製作で安心と信頼のカルマ値極善NPCセバスに尋ねた結果、戦闘メイドのユリとシズを同伴させることにした。

ナザリックのトラップ全ての解除方法を知るシズを表に出すのには気が引けるが、他の候補が悪性のナーベラルとソリュシャンだったので不要ないざこざを避けるためシズに決定。

今思えばルプスレギナでもよかったかもしれない。気さくだしカルネ村が安定したらナザリックと村との橋渡し役として在留させるのもアリだ。

 

改めて考えてみるとウチのギルドってカルマ値低っくい奴しか居ないな、まあ悪役(ヒール)ギルドだったし仕方ない。

 

アインズ・ウール・ゴウンの前身『九人の自殺点(ナインズ・オウン・ゴール)』は狩られる立場だった異形種プレイヤーでも果敢に世界を旅する為のクランだったはずなのに、いつの間にか悪の組織みたいな扱いにされて、それにウルベルトさんや一部のギルメンが乗っかっちゃったから悪の印象が強くなった。ギルマスだった俺は攻略wikiに『非公式魔王』だとか書き込まれてたっけ。

 

以前接触したザリュースのレベルを鑑みるに敵はそれほど強くないはず。しかし予想外の事態に備えナザリックには完全武装のアルベド(セバスを同伴させる旨を伝えたらすっげえゴネてこのポジションに収まった)を控えさせ、転移で何時でも呼び寄せられるようスタンバイしてもらう。

周囲には隠蔽と索敵に長けた《八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)》4匹を密偵に飛ばし前衛セバスandユリ、後衛は俺とシズで固める。

パッシブだった《絶望のオーラLv5》を解除するのも忘れずに。

 

異世界に来て初めての戦闘はつつがなく終了した。

 

というかまったくお話にならない。

即死魔法の耐性無し、装備は貧弱、強さも脆弱、護衛用に出したデスナイト(Lv40前後)ですら無双ゲーみたいに暴れ回って敵の兵士をボコボコにしてたし。こちらの損害はゼロに等しかった。

 

唯一、転移直後に出くわした襲われる寸前の少女たちが俺の骸骨顔を見た時に漏らすほど怖がられ、精神的なダメージを受けた以外は。

 

 

「シズ、私の顔はそんなに怖いだろうか」

 

「……怖くない、です。

でも、普通の人間は普段見慣れないもの、なので。

びっくりしたんだと、思います」

 

「そうか……」

 

 

デスナイトと共にバッタバッタと敵を薙ぎ倒すユリとセバスを眺めながら、隣で護衛するシズと会話しつつ、俺はインベントリから取り出した手頃な嫉妬マスクで顔を隠す事に決めたよ。

 

 

 

『モモンガ様、二点ご報告が』

 

『どうした』

 

『ひとつ、村の西側より馬で接近する一団がございます。

数は15名ほど、安上がりですが鎧甲冑に身を包んでおりいずれかの組織に所属する騎士団の可能性が高い模様』

 

『もうひとつは?』

 

『ハッ!南からも謎の一団が接近中。

数は6名、装備を見る限りこちらは魔法詠唱者の集団かと。

ただ移動手段は馬ではなく、その…()()()()()()()()()()()()()()か何かに騎乗し高速で接近中。

距離は遠いですが速さが段違いです、程なくして村へ辿り着くかと思われます。

如何致しましょう』

 

 

え、何?馬はともかく謎のマジックアイテムに乗って高速で接近中ってどういう事だよ。

この世界独自のアイテムか?気になるけど危険だな…

一先ず警戒を続けさせる、ナザリックの戦力による迎撃は最後の手段だ。

 

ともかく今はこの争いを諌めることが最優先。

生き残った奴らはふんじばり纏めて拘束、亡くなった村人達の葬儀と遺体の処理も簡易的ながら行った。

アンデッド化を避けるため、またアンデッドが多いほどより強力なアンデッドが産まれるそうなのでそんな事態を避ける為に遺体は燃やすそうだ。この世界のアンデッドもあまり良いイメージを持たれていないらしい。

まあリアルで考えても死人が動き出したら怖いもんな。タブラさんがナザリックに寄贈してくれたホラー映画の中にもそんな感じの話が沢山あったし。

 

それにしても戦闘にはレベル差が反映されているのにアンデッドの発生条件は異世界基準なのか。中々にややこしい。

この村には居ないそうだが、後学の為魔法に詳しい人に色々と尋ねてみたいものだ

 

 

 

 

 

 

………………………………………

 

 

 

 

 

 

「俺の名はガゼフ・ストロノーフ。

リ・エスティーゼ王国にて騎士団長を務めている。

事の次第は概ね村長から聞かせてもらった。

此度はカルネ村の救援、まことに感謝申し上げる!」

 

 

そう深々と頭を下げる男、そしてそれに続く屈強な騎士たち。

報告にあった西から来る一団、どうやらこの先にある王国からやって来た正規軍らしい。

 

…装備の様子を伝え聞いた限り、正直人柄はもっと横柄な感じかと思っていたがそんな事は一切なく、ガゼフさんは王国騎士長に相応しい礼儀正しさを兼ね備えたリーダーだった。例の如くレベルはかなり低いけど。

後ろの騎士達も礼節を弁えているようで、彼等の高潔な信念と高い練度が伺える。とはセバスの言。

 

ガゼフさんの話を聞く限りだと、俺たちが壊滅させたこの集団はカルネ村に来るまでに他3つほど村を荒らし回っていたらしい。とんでもない荒くれ野郎どもだ。

敵の装備は隣国のバハルス帝国という所の物らしいが、どうにもきな臭い。

 

そうして俺と村長、ガゼフの3人でこいつらの処遇について話し合っているうちに、もう一方の一団がここまで辿り着いたのだが…

 

 

「我々はスレイン法国特別警邏部隊。俺はその部隊長を任されているイアン・アルス・ハイムという者だ!

近頃我が法国から落伍した没落貴族が身分を偽り、王国領付近で野盗を行っていると報告があった。

貴公らに話を聞かせては貰えないだろうか?」

 

 

ガタイも声もデカい男が開口一番そう言って、乗っていた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から降りた。

 

いやなんでバイクが異世界にあるんだよ!?

 

……あっ(フワァ〜)抑制が…

 

 

イアンと名乗る男が乗っていたマジックアイテム、見るからにバイクだ。

全体的にゴツゴツしているが、昔たっちさんが画像で見せてくれたハーレーなんとかというイカついヤツにそっくり。

いや、タイヤの部分はすっぽり無くなって代わりに半透明な薄緑の板の様なものが取り付けられている。それが二枚、さっきまでホバリングのように低空を浮いて滑るように移動してた。

 

もちろん、そんな物はユグドラシルには存在しない。

ユグドラシルはサービス終盤こそ人気モノに日和って強化アーマーなんかを実装したりもしたが、基本的に剣と魔法の世界観だった。

 

リアルだと一部の富裕層が観賞用に所有してたっけ。俺の会社の理事やその上の人達がそんな娯楽をやっていると小耳に挟んだような…

汚染の酷い外で車以外に乗るような物好きは居なかったけど。

 

イアンさんは同じくバイク(彼等は鉄騎馬と呼んでいた)に乗っていた部下と共に俺たちの所へやって来て、事情を聞いたあとこれまた深々と頭を下げてきた。

 

話を聞くにこの下手人共、元は貴族だったらしいのだが度重なる不正の横行に爵位を剥奪されたらしい。

そのまま野に下ったあと金にものを言わせ傭兵くずれを雇い、私腹を肥やす為村を襲っていた。

他国である帝国兵の鎧でわざわざカモフラージュしてから襲うあたり無駄に知恵は回るようだ。

 

 

「此度は本当に、本当に我が国の者がご迷惑をお掛けした!

既に犠牲が出ている以上言葉での謝罪に最早意味は無いのは百も承知なのだが…同じ法国の民として謝罪させて頂く!

本当に申し訳ない!」

 

 

そう地に頭を擦り付けながら村長とガゼフさんへ何度も謝罪するイアンさんら法国の人達。

 

4人で話し合った結果、彼曰く外交問題とかに発展しそうだとの事。

ざっくりと話してもらった感じ、ガゼフさんの所属する王国はイアンさんのいる法国に国家レベルの大恩があるらしい。

それも最近仲良くなったばかりで、新たな軋轢を生むのはとてもよろしくない、と。

なので賊はガゼフさん達王国騎士団が討伐したという事にしてこの場を収めたいそうだ。

被害にあった村にはイアンさんの伝手で補給物資も手配するんだとか。

それでも彼は犠牲になった他国の民に申し訳が立たないと拳を握りしめ悔しがり、怯える下手人達を殺さんばかりに睨み付けている。

根っからの善人なんだなあこの人。

 

それと手伝った俺たちも功労者としていくらか報奨を貰えるらしい。

 

要は「大人の事情」というやつである。

 

あるある、リアルでもあったよそんなの。

 

 

「法国としては()()()()殿()にも何かしら褒賞を受け取って頂きたいのですが…

まあぶっちゃけてしまうと口止め料ですな。自分の権限で出来ることならばなんなりと仰って下され」

 

「ふむ…ならば情報を頂きたい。

恥ずかしながら、私は研究に没頭していたせいか最近の俗世に疎く、人の世に顔を出すのも久しぶりなものでね」

 

「承知致しました。他にご希望は?」

 

「イアン殿が騎乗していたあの鉄騎馬とやら、どのようなものか見せて頂いても?」

 

「おっ!モモンガ殿は鉄騎馬の良さがお分かりになりますか。

そのご様子ですと魔法界隈の近状にも興味がお有りですかな?」

 

「大変興味深い。是非ともお願いします」

 

 

結果として俺は王国と法国の二国に恩を売れたらしい。

この後イアンさんにこの世界の魔法情勢について色々と話を聞き、途中から興味深そうに鉄騎馬を眺めていたガゼフさんも加わって鉄騎馬についての講義が行われた。

どうやら本当にここはユグドラシルではないらしい。どの国の名も聞いた事はないし。

 

……セバス、待機な?この人達に敵意はないし大丈夫だからアルベドは出てこなくていいぞ?

 

 

『承知致しました。アルベド様は私めが抑えておきます故、どうか心よりご歓談をお楽しみ下さい』

 

『下等な人間風情がモモンガ様と馴れ馴れしくしてんじゃないわよ…頭吹っ飛ばすわ…』

 

『アルベド様、どうかここはひとつ』

 

 

通信越しでもわかるアルベドの殺意にアンデッドの身体じゃなきゃチビってたね。

でも貴重な情報収集タイムなんだ、頼むぞセバス!

 

 

『《飛行》を超える移動手段』として法国から生まれた鉄騎馬には様々な派生があるそうで、彼の騎乗する【猛る牡牛(レイジング・ブル)】号は取り付け式の助手席含め最大3人まで乗れる大きな車体と圧倒的な走破性能が売りらしい。

他にも小回りと速度を兼ね備えた【嘶く隼(クライング・ファルコン)】号や大人数が乗ることを前提とした大型四輪鉄騎馬も存在するのだとか。それって完全に車ですよね分かります。

 

 

「《浮遊板(フローティング・ボード)》という魔法は初めて聞く。実に興味深い」

 

「元は積載許容量も少なく、使い勝手の悪い魔法だったのですが、ルーン魔法と共に改良がなされ、数多の技術者達の試行錯誤の末、使用者の消費魔力を抑えつつ馬にも劣らない速度での走行が可能になりました。

初心者は先ず【粗製の猟犬(スマート・ハウンズ)】シリーズから始めてみるのが宜しいかと。癖のない操作性で走りやすいですぞ」

 

「馬とは違い揺れは少ないのですね。その分頬を撫でる風が心地いい」

 

「以前レイン殿が街で乗り回しているのをチラリと見た事はあったが、実際に乗るのは初めてだ。やはり法国の発展は目覚しいな。

惜しむらくは魔法詠唱者でないと動かす事が出来ないことか。

ハハ、魔力が無い事を悔いる時が来るとはな」

 

 

助手席に乗せてもらって分かった。完全にバイクだこれ!

でも楽しい!リアルじゃ空気が汚な過ぎてバイクは自殺行為だったし、綺麗な空気の中風を切って走るのは気分爽快だ。胸の奥からワクワクが込み上げてくるよぉ!

 

…あっ(フワァ〜)喜びも抑制されるのかこの身体…

 

でも楽しかったのは本当だ。

なによりユグドラシルには無い完全な未知の乗り物に好奇心を擽られる。

魔法詠唱者なら運転出来るのが尚更に興味をそそった。

 

 

「ガゼフ殿、レインとは何方の事でしょうか」

 

「うむ、先程話した通り王国と法国は友好関係を結んでいてな。

恥ずかしながら王国ではまだ魔法詠唱者への理解が不十分ゆえ、そこで王が直談判し魔法詠唱者育成のため法国より派遣されたのが彼女なんだ。

王城で何度かお会いしたが【(ステラ)】の位階に名を連ねる者に相応しくとても理智的で思慮深い方だった」

 

(ステラ)、とは?」

 

「それは自分がご説明致しますぞ!

近年は魔法技術の発展目覚しく、文明開化の年と言われておりまして。

ルーン魔法を初めとした位階魔法を用いる技術を総称し〝魔巧〟、それを操る者達の階級を新たに〝魔巧位階〟と呼ぶようになりました。

(ステラ)はその位階の頂点、世に魔巧を広めた()()の賢者達の位を指します。

ガゼフ殿のお会いした方は《水鏡星》レイン・エルリク・ホーエンウッド女教授ですな。

水魔法の第一人者にして王国内殆どの都市の水路設計に携わる偉大な御方だ」

 

「助手である《雷冠星》ケレシア女史とも相まって、今では王国の再興に欠かせぬ逸材なのです。

いやあ、我々のような筋肉だけの男共には労働力しか提供できないのが心苦しい」

 

「因みに自分も日々の努力実ってこのとおり、魔巧位階【(トニト)】を頂いております」

 

 

そう誇らしそうに語るイアンさんの法衣の胸には雷を模した親指大のバッチが着いている。

 

位階魔法を改修したこの世界独自の魔法だって!?

 

き、気になる…!

 

ゲームにはない魔法技術に工夫しだいで変化する位階魔法。この世界には未知が多過ぎるのでは!?

 

でも楽しそうだなあ!

 

 

詳しい話を聞きたいがイアンさんはそろそろ本国へ戻らないといけないそうなので名残惜しいが歓談もここまで。帰り際に鉄騎馬の紹介状を渡してくれた。

 

 

「機会があれば法国へお越しくだされ!

この書状を見せれば法国にも問題なく入れましょう。

ただし鉄騎馬は製作予約待ちで職人が手いっぱいですので手に入れるには少々時間と金が掛かりますが…

いや自分が領主様に話を通せばなんとか…

ともあれ鉄騎馬の魅力を語れる同士にお会い出来たのですから誠心誠意ご案内させて頂きますぞ!

それでは御達者で!」

 

 

部下を連れてイアンさんは去っていく。

鉄騎馬の後ろに紐で繋がれた下手人の生き残りを引き摺りながら。

 

 

「それでは我々もこれにて。

王都にお越しの際はご一報下され。歓迎致します」

 

 

ガゼフさんたち王国騎士団は俺たちが始末した下手人の首を幾つか持って、討伐の証拠として王様に報告するそうだ。

 

 

そろそろ日が暮れる。

あわよくばこの世界の戦闘がどんなものなのか確認しておきたかったけれど、気になることが多過ぎてそれどころじゃない。

 

でもやっと自分の中で確信がいった。

この世界はゲームではない。かといって俺が住んでいたリアルの世界でもなく、多くが俺の知ってる法則とは全く異なる世界なんだ。

 

法国で生まれた鉄騎馬もそうだが、ガゼフさんの腰に佩いていた柄に目立つ赤い宝石がはめ込まれた両刃剣も、ユグドラシルでは見たことの無いものだった。

きっと俺の知らない未知の製法で造られたマジックアイテムなんだろう。もっと突っ込んで聞いとけばよかった!

 

自分の中でコレクター魂がウズウズしているのが分かる。精神の抑制がなされても尽きないほどの興味。初めてユグドラシルを遊んだ時に似たワクワクを思い出した。

 

惜しむらくはもっと自由な身の上で冒険とかしたかったな…とチラッとセバスに目を向ける。

 

 

「セバスよ、ご苦労だった。

こちらの話に付き添わせてしまってすまないな」

 

「とんでもございません。

モモンガ様の喜びは下僕の喜びにございますゆえ。

先の歓談がモモンガ様にとってより有意義な時間となれば、それは我々としても喜ばしい事に他なりません」

 

「そうか、彼等と話す私は楽しそうだったか」

 

「ええ、とても」

 

 

柔らかく微笑むセバスの隣に侍るユリ、シズも嬉しそうに首肯する。シズの方は無表情だからよく分からんけども。

 

ナザリックの支配者としては相応しくない振る舞いだったかもしれないけれど、後悔はない。

 

 

「一度ナザリックへ帰還するぞ。二人から得たものの中には皆に共有しておかねばならない情報が山ほどあるからな。

カルネ村との連絡役にはルプスレギナを指名する。村人との円滑な情報交換が可能になるよう手筈を整えよ」

 

「畏まりました。迅速に手配致します」

 

「この世界は私が思う以上の未知に溢れている。

だが恐れることは無い。アインズ・ウール・ゴウンはいつだって未知へと立ち向かってきた。

ならば今回もまた、新たな未知を楽しもう」

 

「「「はっ!」」」

 

 

最後に支配者っぽい事を言ったらちょっとオーバーなくらい反応されたので上手くまとまった感じがする。

魔王ロール疲れるなぁ…

 

ナザリックに戻ると案の定アルベドが暴走しかかっており、宥めるのに一悶着。

下僕達を集め情報を共有し、今後の方針について発表した。

 

 

 

今は自室で一人、思考に耽ると言う名目で護衛も部屋には居ない。

束の間のリラックスタイム。今のうちに頭の中を整理しておこう。

 

まずこの世界はユグドラシルに似た魔法が存在するがユグドラシルそのものではない。

当初は唐突にユグドラシルIIのオープンβテストでも始まったのかと思ったが、現地の人々と話した感じ彼らはデータなどではなく生きた人間だ。

 

ユグドラシルは正しくサービス終了した。が、ナザリックは終わっていなかった。

 

アンデッドの身体になってしまった今では殺人を犯しても虫を潰したような気分にしかならないが、話に出てきた魔巧位階の最上位、【星】の人達が人間である以上友好な関係を構築するために今後も不要な殺戮は控えた方が賢明だろう。

あわよくば引き抜き…いやいや話が飛躍し過ぎた。

 

二人に名前を聞かれた時咄嗟にモモンガ・アインズウールゴウンなんて言ってしまったけど、それはそれで通すしかない。

相手がプレイヤーならギルド名で炙り出せるかもしれないし、この世界に一緒に飛ばされたかもしれない他のギルメンの所にまで届けば…なんてのは希望的観測だけど。

 

 

ナザリックの防衛機構は問題なく機能する。

マーレの土魔法で誤魔化してはいるけれど、大墳墓が見つかるのは避けられない。

現状、俺たちはガゼフさんの居る王国領にギルドごと転移した形になってしまった。これって不法入国とかになるのかな…

融通利かせられるかは今後の交渉次第ってところか。

 

そして、鉄騎馬を始めとした未知の要素!

位階魔法と似て非なる新魔法の存在には驚きと喜びを隠せないな!

生産職のNPCに製法を覚えさせればナザリックで鉄騎馬を製作することだって夢じゃないはずだ。幸い資材は山ほどあるのだし。

 

 

ユグドラシルとは異なる完全な未知の探求。ナザリックを維持しながら、俺にとっては支配者ヅラしながらの重労働になりそうだけど、初心に帰って頑張るぞ!

 

 

そのために情報は何より優先して集める必要がある。

彼らは善良な人達だったけれど、ザイトルクワエを討伐できるレベルの強者が居るのは間違いない。

それに鉄騎馬の見た目は完全にバイクだった。ならそのデザインを考えた者はプレイヤーの可能性が高い。異世界からこっち、Lvの上限が分からない以上出会した場合友好関係を結ぶか、最悪でも不戦条約くらいに留めておきたいところだ。

ナザリックが誇る軍師ぷにっと萌えさん曰く、「戦は始まる前に終わっている」。事前の情報戦が敵を上回る唯一にして最強の手段なのだから。

 

諜報に長けたモンスターを召喚するのもアリだけど、せっかくの異世界なんだから自分の足で…

 

と、そこまで考えて2人が話していたこの世界の職業について思い出す。

 

 

 

 

「………やるか、冒険者」

 

 

 

そして意気揚々と始めた冒険者生活一日目にして、現地の金銭をひとつも所持していない事に気付き絶望する羽目になるのだけど。






原作、始めました



原作との違い

☆モモンガ、凍ったザイトルクワエに気を取られて世界征服発言無し(なお発言無しでも守護者の勘違いによってそのうち世界征服が始まる模様、これは公式発言である)

☆ファーストコンタクトはザリュース、ついでにデミウルゴス居るとまともに話ができないと学んだ

☆NPCに設定されたカルマ値に注目するようになった

☆魔巧同盟によって急速に魔法界隈が発展、位階魔法をアレンジした様々なオリジナル魔法が人類圏に普及した結果ユグドラシル外のマジックアイテム、魔法が各国に生まれる

☆エ・ランテルの魔術師組合を吸収した新進気鋭の魔法組織、魔巧同盟が組織化、拡大するにつれて階級が生まれた。
魔巧は万人に開かれており、ある程度の知識と魔力があれば登録可能。
よって各国では識字率の向上と魔法詠唱者の育成が急務となっている。
階級は上から星>>>>空=雷=雲>風>華
【華】は基礎を学ぶ研修生
【風】は基礎を完全に理解した証
【空、雲、雷】基礎魔巧習得過程を終え、独自の成長を遂げた者達、成長した系統によって称号が変わる
空は空間系や移動系魔法、雲は精神系と特殊系、雷は攻撃系統全般
階級によって格差を産むのでなく、あくまでも魔巧習得した者の証なので上に行くほど偉いという訳では無い
会員登録すると撃杖の購入や魔巧を用いたマジックアイテムの使用権を得られる。魔巧は専門知識であり、マジックアイテムにも相応の技量と知識が必要な代物である、それを正しく使用できる証、言わば免許証のようなもの

【星】に登録されているのは人類圏に魔法を広めた始まりの賢者七名、それぞれ《灼魔星》、《水鏡星》、《雷冠星》、《地彗星》、《氷極星》、《冥望星》、《陽明星》の称号で呼ばれている
誰がどの称号に該当するかはのちのち
基本的に【星】の階級は始まりの七名以外に就ける位ではなく、魔法界の常識を打ち破る様な偉業を成し遂げた者に与えられる
現時点で【星】に達する可能性のある者は魔巧同盟結成直後から《灼魔星》に仕える弟子一人だけ
人数が合わない?そのうち判明するから待って♡



本作のモモンガ
空きれい!空気美味しい!死んでるけど!
鉄騎馬かっけえ!未知がいっぱいで楽しいなァ!

ナザリック善性組
モモンガ様が楽しそうなので、OKです

ナザリック悪性組
やだ、我等の御方働き過ぎ、自分たちも力にならなきゃ!(悪性)

主人公
で て な い



原作始まった!始まっちまった!
説明不足とオリジナル設定でお気に入りと評価がガンガン落ちる未来が見えるゾ!
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